2016年11月12日

エスケヱプ・スピヰド(6)

エスケヱプ・スピヰド 六 (電撃文庫) -
エスケヱプ・スピヰド 六 (電撃文庫) -

ついに脱落者が出はじめた。9人の《鬼虫》の仲間たちのうち、最初は九曜と竜胆のふたりだけだと思われていた生き残りが、話が進むにつれてひとりふたりとかつての因縁にみちびかれるようにふたたび集まりだし、衝突がはじまった。過去からつながる因縁の糸が太ければ太いほど、それがぶつかりあえばただでは済まないとわかっていたのですが、それでも退場していくキャラを見送るのはつらいですね。仲間が合流すればするほどにかつてのにぎやかだったころの9人の様子がうかがえてきていただけに、やっと取り戻せた仲間たちとのこれからの日々がぽろりとこぼれ落ちていくのを目の当たりにするのは。ひとりで何十何百何千の敵をも相手どれるすさまじい存在でありながら、その素顔はとても人間らしい感情にあふれていたと知ることができてきただけに。悲しい。やるせない。けど、ここが運命と決めた彼ら彼女たちの最後のきらめきはやっぱり印象的なんですよね。今回の柊がそれを象徴するように。目の前に自分のなすべきことがある。自分にしかできないことがある。それならば、たとえ命が失われてもそれをやり遂げようとするのが彼ら彼女たちなんですよね。そして、そうして燃え尽きていく姿は、やっぱり彼ららしいと思ってしまうところがあるんですよね。だって、彼らはもう、すでに一度死んでしまった身だから。死んでしまったはずなのに、死にぞこなって、よみがえって、いわば延長戦を生きはじめた者たちだから。よくわからないままにぱったりと止んでしまった戦争ではなく、今度こそ必ずこの国の未来のためにと信じて戦える戦いが目の前にある。ならば今度こそ、後顧の憂いなく渦中にその身を投じようとしていく彼らを、どうして止めることができるか。見ていてつらいけれども、それでもどうしてもそれはできない。してはならないと思ってしまうんです。叶葉と出会って変わった九曜を、過去の彼を知る者として未来の先々まで見つめていってくれる仲間が、ひとりでも欠けてほしくないと思うのに。前の巻までで積みあげ張り巡らされてきた因縁のもつれあいを思えば、これはまだまだ前哨戦のようにしか思えなくて。決着がつくはずの次の巻ではさらなる犠牲者が出てしまう気がしてならないんですけど、それでも九曜たちには悔いのない決着をつけてほしいと思ってしまうんです。そこまでたどりつくまでにさらに誰と誰が欠けてしまうことになるんだろうかと、考えるほどにこわくなってくるんですけど、それでも、彼らが命を賭すこの戦いの結末と彼らの行く末を見届けたいと思うのです。次、いよいよ本編最終巻。心して読んでいきたいですね。
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2016年11月10日

オーバーロード(6)王国の漢たち(下)

オーバーロード6 王国の漢たち[下] -
オーバーロード6 王国の漢たち[下] -

この巻はもうラナー様に尽きます。人間離れした洞察力と政治向きにも知る人ぞ知る頭の良さをフル活用して、お気に入りの少年ひとりを自分好みに仕立てあげ、囲い込もうというその異常なまでの執着心。たまりませんでしたね。事件への対処にうしろめたさの欠片も見せることなくすらすらとクライムに関する自分の願望を混ぜ込んで事を動かしていく様子とかね、明らかに異常なのにそれをどこまでも淡々と進めていくんですよ。もうどこかで見かけた、「クライムの最大の幸運はラナーに見いだされたこと。最大の不運はラナーに見いだされたこと」みたいなコメントが実にしっくりくるような、逃げ場のない周到な計画が張り巡らされている感じ。もう最高でしたね。困りますラナー様。そんなイキイキと。一心に敬慕の情を寄せる少年を。まるで籠の鳥を愛でるような。困りますもうどんな顔したらいいのか。実に素晴らしいお方ですね! クライムに関しては、まあ、がんばれ男の子ということで。ぜひともラナー様の計画通りに己の力不足を嘆く結果になってほしかった……この点だけは、かえすがえすも残念でなりません。ただまあ、結果が出る前に計画の全容が語られてしまった時点でこの結末は予想してしかるべきところではあったので、ここはぐっとこらえて次に期待したいところ。なにせラナー様の計画って、最終段階以外の途中経過はどういうふうにも改変可能ですからね。次こそはぜひ……。いやまあ、主人公サイドのキャラじゃないので、次の登場・活躍がいつになるかはわからないのですが。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 13:03| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月05日

2016年7月の読書まとめ

7月は21冊。先月末頃から急な思いつきで小説を書きはじめてみたはいいものの、そうすると読むほうがおろそかになってしまい、上旬はまったく読めず。それでも中旬以降はほとんど1日1冊ペースが達成できていたので、なかなかいいペースだったのではないかと。ちなみに書きはじめた小説は完成しませんでした。教訓としては、書きだす前にプロットの筋が通っているかちゃんと確認しておきましょうということで。

7月読んだ中からのお気に入りは以下。

[☆☆☆☆]クシエルの使徒(1)深紅の衣
クシエルの使徒〈1〉深紅の衣 (ハヤカワ文庫FT) -
海外ファンタジーより。昔読んだ『クシエルの矢』シリーズの続編。痛みを快感としてとらえてしまう体質の持ち主であるフェードルを主人公に据えた陰謀劇は、何年かごしに読んでも危ういくらいに魅力的で、その世界にひきこまれていってしまうものがありますね。さらに危険度が増して思える陰謀のふところへと飛びこんでいこうとする展開に、ハラハラしながらも続きが気になります。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 15:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書まとめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

3月から7月にかけての読了感想データ消失

タイトル通りです。スマートフォンの方で書いてそのまま機種本体に保存してたんですが、前触れもなくいきなり故障してしまったためバックアップを取ることもできず、残念ながら消えました。復旧するつもりはありません。そんなに数はなかったはずですし、さっぱりあきらめてそのつづきから感想に手をつけていこうと思います。とはいえ、小説を読むモチベーションとともに感想を書くモチベーションも下がっている現状、あんまり書ける作品もないかと思いますが。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 15:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月27日

2016年2月の読書まとめ

(文章の最終更新:5月26日)

2月は10冊。

うち、お気に入りは以下の2冊。

[☆☆☆☆]エスケヱプ・スピヰド(5)  感想
エスケヱプ・スピヰド 伍 (電撃文庫) -
ライトノベルより。最終決戦に向けて、これでもかとばかりに整えられていくお膳立てのたまらなさですよ。

[☆☆☆☆]灰と幻想のグリムガル(1)ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ  感想
灰と幻想のグリムガル level.1 ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ (オーバーラップ文庫) -
ライトノベルより。こういう文章が読みたかったんですよ。それも、自分が楽しみかたを十分に心得ているライトノベルの分野で。ありがたやありがたや。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書まとめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

灰と幻想のグリムガル(1)ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ

灰と幻想のグリムガル level.1 ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ (オーバーラップ文庫) -
灰と幻想のグリムガル level.1 ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ (オーバーラップ文庫) -

(文章の最終更新:5月20日)

あ、この文章めっちゃ好き。「」で改行せずに地の文が続いてくの、すっごくいい。さらにそのあとに「」でしめるのとか、もう最高。日本の作家さんの文章でこういうの読みたいって思ってたんですよ。アニメが面白かったからと原作も手に取ってみたら、こんなところでそんな文章に出会えるなんて。うれしくってうれしくって、色んな方向に感謝しまくりたい気分ですよ。

アニメが面白かったので、ネタバレにならない範囲で読んでいこうと、4話か6話あたりまで見たところで手を出してみたはずなんですが、まだ全然この巻の内容終わってなくて驚いた。メンバー喪失って、結構重たい話だから巻の最後の方に持ってきてると思ったんだけどなー。まあでもその分、アニメは一つ一つの場面が丁寧に作られてて、ゆったりしながらもいい雰囲気を作り出してくれてたんでしょうね。

あまり多くを語らず雰囲気で感じ取らせようとしてたアニメとは違って、こちらの小説ではこれでもかとばかりにキャラクターの心情が伝わってくる描かれ方。特に、迷いや動揺の気持ちが、まとまりきらない怒濤のような言葉の数々でもって表現されるのは、まるで読んでいるこちらまでそんな心情に陥いらされるかのような真に迫った語り口。すごいなあこういう文章。

一つの壁を乗り越えて、パーティーとしてまとまって、ちょっとだけ成長した一行に、次は、どんなダンジョンが待ち受けてるんでしょうね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 20:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月14日

エスケヱプ・スピヰド(5)

エスケヱプ・スピヰド 伍 (電撃文庫) -
エスケヱプ・スピヰド 伍 (電撃文庫) -

すごい。徐々に明らかになる敵側の面々が、主人公側とことごとく対になるような人物ばかり。一巻からして、過去を背負い、過去を乗り越え、いまを生きようという心情がばしばし伝わってくる話だったけど、ここにきてさらに過去からいまにつづく宿縁めいた対立の構図が見えてくる。その、これでもかどばかりに絡みついた過去からの因縁の、一気に弾け出す瞬間に向けて、ぞくぞくと期待混じりの震えが這い上がってくることといったら。両者の最終的な対決に向けて、どれだけお膳立てするつもりなんですか、この作者さんは。ここまでくるとさすがに並び立てない人たちもいそうで、その結末に至るのがこわくもあるんですが、でもやっぱりその先にどんな未来を見せてくれるんだろうかと期待せずにはいられない。このはりつめていく緊張感、たまりませんね。

あと、鴇子様の対になる存在としていきなり姉上様が登場したことにテンションが上がりまくりですよ。鴇子様って、皇女の記憶を持ったクローン体っていう、わりと属性分類上で扱いの微妙なキャラなんですけど、その姉上様は、これは正真正銘の皇女その人であるわけで。これで何の迷いもなくこの作品を推せるぞと……って、何の話ですか。そうじゃなくて、ここまで皇室が話に関わってくることは特になかったにもかかわらず、ここにきていきなりの登場。それも、敵側にただの一部軍人たちの暴走では片付けられない正当性を与える神輿になれるだけの権威を備えた人物。こうなると、対立の構図としてもいよいよもって白黒はっきりつけないわけにはいかなくなってきますよね。本当に、憎らしいほどの配役でよ。まあ、鴇子様同様の存在である可能性はまだ否定できないのですけど。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 00:52| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月02日

獣の奏者(3)探求編

獣の奏者 3探求編 (講談社文庫) -
獣の奏者 3探求編 (講談社文庫) -

あれほどきれいに片が付いたと見えたにもかかわらずのセィミヤの落ち着かな気な様子は、それだけ見ると首をひねりたくなるようなところでころではあるけど、前回ラストを思い出してみると、実は彼女、役としては主役級でありながら、明かされた真実に関していえば茅の外に近いところにおかれてましたっけ。目の前に動かしがたいまでの事実だけをつきつけられてから十年あまり、ここまで何の説明もなしって、エリンさんや、あんたら鬼かとつっこみたくなったんですが。そのことに疑問も抱いていたハルミヤならまだしも、セィミヤって、神にも等しき王家に生まれたからこそ高潔な心をもって国を治める指導者となろうという思いを心の芯にしてましたからね。それを人の座へと下ろしてやるということは、それはすなわちその芯を抜き取ってしまうということで。臣下たちはそれでも急激な変化を望まず彼女を立てようとしてくれてはいますが、そうはいってもセィミヤとしては何を心の拠り所としていいかわからないところでしょう。シュナンならばあるいは何か代わりになるものを一緒に見つけていくこともできるかと期待もできましたが、なまじ旧来の臣下たちがシュナンに敵意を向けるばかりに宮廷内の仕事ははかどらず。そして彼らがそんな態度をとるのは彼らがセィミヤを敬う気持ちを持ち続けており、シュナンこそは穢れた一族の者でありながら彼女を人の座へと下ろすこととなる変化をもたらした筆頭格と目されているからであり。セィミヤが彼らに率先してシュナンに協力するよう促せばそれである程度うまくいくだろうと頭ではわかっていても、それをすることは自分の立場がそうして引きずり下ろされてしまったことを自ら認めることと同義であり、最後にすがりつくはりぼてさえ失っては、彼女にとって生きている意味さえ見失ってしまうことになりかねないんですよね。それがわさるからこそ、セィミヤは一歩を踏み出すことができずに不安を取り去る救いの手を待つほかなくなっている。本当に、どうしてこんなになるまで放っておいてしまったのか。だから、王獣に可能性を見ればそれに飛びつかずにはいられなくなってしまう。うん。これはもう、前回、雰囲気だけいい感じにしてそれでよしとしてしまったツケの回収に回らなければならなくなった、そういう話でしょう。願わくは、真王の心に長く平安のもたらされんことを。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 19:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年1月の読書まとめ

以下、最終更新3月24日の文章なんで、現状のことを書いてるような部分はそのころのことということで。

1月は10冊。一日辺りの読書ノルマをゆるく復活させてみたところではありますが、成果は出ていると言えるのかどうか。 こちらよりも歴史系の本に対する熱が高まっているこの頃ですが、まあまあこちらもぼちぼち読んでいきたいです。

この月に読んだ中からのお気に入りは1冊。

[☆☆☆☆]天冥の標(7)新世界ハーブC / 小川一水  感想
天冥の標VII 新世界ハーブC (ハヤカワ文庫JA) -
国内SFより。一冊通した面白さというよりはラストで気付かされた事実に対する衝撃で持っていかれた感のある一冊。いやぁ、だって……ねぇ? 未来には希望が溢れてるって、信じたいじゃないですか。ある程度避けがたい問題が見えている近未来ならともかく、人類が宇宙に進出するような遠い未来であればなおさら。それなのに……という。苦しげなうめき声が漏れてしまいそうな読後感。それでもと、希望を願わずにはいられないシリーズです。

ほかに、『最後の魔法使者(1)魔法の使徒(下)』とか『いなくなれ、群青』とかも結構楽しめました。こういう作中の話やキャラクターの雰囲気がいい感じの話はいいですよね。何度か書いてる気がしますが、少し前からこういう作品に小説を読む快さを感じています。

以上、そんなところで。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 19:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書まとめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

いなくなれ、群青

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex) -
いなくなれ、群青 (新潮文庫nex) -

正義感と行動力に溢れる真辺と、彼女の行動に仕方なさそうに、でもそれが当然のように付き合う七草。この二人の関係はよかった。はじめはただの腐れ縁かと思ってたけど、だんだんとそれに加えて七草がそういう真辺のことを大切で、まぶしいくらいに心惹かれる存在だと思っているのがわかってくると、二人のやりとりそのものが快く感じられるようになって。けど、だからこそ、明らかになる真実はやるせなくて、七草の怒りに共感してしまう。たとえ難しいことだとしても、彼の願う通りになってほしいと思ってしまう。結末は、これでよかったのか、どうなのか。よかったんだろうと想像をめぐらせるにとどめるか、シリーズ第二作にも手を伸ばすか。悩ましい。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする