2018年03月28日

狼と香辛料(8)対立の町(上)

狼と香辛料VIII 対立の町<上> (電撃文庫) -
狼と香辛料VIII 対立の町<上> (電撃文庫) -

狼と香辛料VIII 対立の町|電撃文庫公式サイト
狼と香辛料VIII対立の町(上) 支倉 凍砂:ライトノベル | KADOKAWA

いい感じの読み味。面白いなあ。こんなに面白かったっけ? 

アニメが放送してたころに何冊か読んでて、そのときにもそれなりに面白さは感じていたものの、展開だったりホロとロレンスの会話だったりが多少なりと頭を働かせることを要求してくるものであったせいか、読みつづけるのにエネルギーを必要とするところがありまして。なにかの拍子でストップしてしまってそのままになっていたのですが、昨今のシリーズ新刊発売の動きなどをみているうちにまたちょっと読んでみたい気持ちになってきまして。

そんなこんなで10年ぶりくらいにつづきを読んでみたんですけど、これが面白かったんですね。話については覚えてない部分も多々あるものの、それでもなんとなく思い出しながら読んでいくことができて。そしてなにより、ホロとロレンスの会話の空気がとてもいい。額面通りに受け取るのではなく裏の意味を読み解いてやる必要があるのはやっぱりその通りなんですけど、ふたりの距離感が縮まってるせいか、地の文でロレンスが理解しやすい補助線を引いてくれるので、すらすらと読み進めながらもするすると会話の流れを読み取ることができること。くわえてその内容の多くが、気心の知れたカップルによる機転を利かせたじゃれあいであるとなれば、言葉の裏にこもった甘い空気にあてられてこちらまでにやけてきてしまうことといったら。ああ、このシリーズこんなにも面白かったんだなあと、10年ぶりくらいに「新発見」した思いです。

再読とはまた違うんですが、昔読んでたシリーズを、時間をおいてからまた読んでみるというのも、いいものなのかもしれませんね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 18:09| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月19日

オネエ男子、はじめます。(1)

オネエ男子、はじめます。 1 (花とゆめCOMICS) -
オネエ男子、はじめます。 1 (花とゆめCOMICS) -

オネエ男子、はじめます。 1|白泉社
オネエ男子、はじめます。(1巻) | 白泉社e-net! 電子書籍

好きな女の子に男が苦手だからとフラれた主人公・高橋竜が、クラスメイトのオネエ男子・相良寅之輔に弟子入りしてオネエ修行をする話。4コママンガ。

めっちゃ笑った。好きな子にフラれて、でもあきらめきれなくて、なんとかお近づきになりたい。そこまではわかる。けど、どうしてそこからオネエの道を歩みだしてしまったのか。一歩目から方向性を間違えてしまった気がしてならない。でもおもしろいからいいか的な。

口調からはじまって、しぐさに気を付けてみたり、パンケーキを食べに行ってみたり、がさつな男子高校生がどんどん女子力高くなっていくのがおもしろい。そして、そんな兄貴にときおり女子として敗北感に打ちのめされてる妹のリアクションに笑う。

この巻の後半では女装にまで踏みこんで、順調に(?)がさつな男っぽさが消えてオネエ男子らしくなっている高橋だけど、肝心な目的である音鐘さんは空きスペースでのキャラ紹介で「あまり登場しない」と書かれる始末だったりして、完全に道を間違えてしまってる感がまた笑える。(終盤でおやっという展開があったりするけど、それがまたおもしろ……ややこしそうで、つづきが気になるところであり)

高橋の幼馴染の友だちである、燿市と伊織もそれぞれに個性的でおもしろくて。期待の新シリーズですね。

同作者の『水玉ハニーボーイ』のほうも読んでると、あちらのキャラに似た雰囲気のキャラを楽しむことができたり、あちらにも出てくるキャラの登場ににやりとできるかも。というか、あちらはあちらで、自分の美しさに自信ありなこちらの師匠とはまた違ったオネエキャラの登場するラブコメ模様が面白い作品ではあるので、片方が気に入ったらもう片方も読んでみるといいんじゃないかなと思います!
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:30| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月14日

動物になって生きてみた

動物になって生きてみた -
動物になって生きてみた -

動物になって生きてみた :チャールズ・フォスター,西田 美緒子|河出書房新社

この作者は変態ですわ。まぎれもない変態。

野生の動物の生態を描きだすために、その動物を観察する。それはわかる。けどそれにとどまらず、その観察や調査をもとにしたうえで、実際にその動物の野生の生活を実体験してみる。誰がそこまでやろうと思うか。

たとえば森に棲むアナグマのように地面を掘って穴ぐらをねぐらにしてみたり、また都会に棲むキツネのようにゴミ捨て場で食べ物を漁ったり、動物にとっての毛皮の代わりである人間の衣服については基本的にそのままではあるものの、それも時には人目がないのを確認して脱ぎさって世界を体感してみたり。こうして一貫した趣旨でまとまった文章にされないと頭のおかしい人としか思えないような行動をとりながら、いや、わかっててもやっぱり変態と思ってしまう体験をくりかえしながら、人間の目線からではない、その動物の感覚を通した世界の情景を再現しようと試みる。これが抜群に面白いんですよ。擬人化された動物の物語や、映像を通して見る動物紀行などは、それはそれで面白さがある。けれども、「動物になってみて」そこから見えてくる世界というのは、それらとはまた違った、おおいなる驚きに満ちている。

人間と動物は、まず目線の高さが違う。試しに自分のひざくらいの高さで周りの景色を写真に撮ってみると、それだけでも普段見るものとは違う風景が現れる。なんでもない障害物が大きな壁に見えたり、距離が縮まることで地面の存在がより意識されるようになるかもしれない。

また、人間は感覚器官のなかでも視覚からもっとも多くの情報を得ているが、動物の場合は必ずしもそうとは限らない。嗅覚が発達している動物もいれば、聴覚が発達している動物もいる。それらを完全に再現するのは不可能であるけれども、普段それほど意識していないだけで、人間自身の嗅覚や聴覚、触覚などでも、彼らの世界をある程度体感することは可能であるらしい。たとえば、地面から立ちのぼる熱気や吹き抜けていく風などから森の空気の流れを感じ、それに乗って漂ってくる匂いから周りの風景を脳内に構築したり。それはあくまで人間の感覚の範囲内ではあるものの、まさしく異なる感覚の持ち主になってみようとする試みで、未知の世界をのぞかせてくれるようなぞくぞくとした喜びを感じさせてくれるものがあって。

それらすべてが動物になってみたからこそわかる、というわけではないとしても、それらを動物の感覚を通して描くこと、描こうとすることは、それ自体がひとつの叙述の挑戦であり、人間にとってのひとつの新たな世界観の提示にほかならないと思うんですよね。そしてなにより、それらの描写が面白おかしくて、読んでいてとても楽しい。これはすごい本だと思いますよ。

動物になって生きてみるということと、人間社会の一員として生きることは根本的にあいいれないし、作者の体験は一見すると頭のおかしい人のようにしか思えないかもしれない。でも、動物の生態についての理解を深めること、それらをつきはなした描写によってではなくより内側から感覚的に理解するために、おおいに価値のある一冊だと思います。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 14:18| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月02日

彼女になる日(3)

彼女になる日 3 (花とゆめCOMICS) -
彼女になる日 3 (花とゆめCOMICS) -

彼女になる日 3|白泉社
彼女になる日(3巻) | 白泉社e-net! 電子書籍

どの話も三芳と間宮がいちゃいちゃしすぎててたいへんにやにやしかったです。ありがとうございました。

「羽化」にともなう体の変化があり、心の変化があり、それらにとまどいながらも関係を深めていったふたりが、満を持してラブラブムード全開な生活をお見せしてくれました。それぞれの両親に挨拶したり、旅行先ではやくも夫婦として扱われてうれしさを感じたり、誕生日プレゼントを渡すのもきずなを深める話になったりと、裏表紙の「結婚間近」な雰囲気をこれでもかと感じさせてくれる仲睦まじさでございました。

思えば、これまでの巻はふたりの関係がまだどうなるか、未知数なところが多分に含まれていたこともあり、ほかのキャラクターが間に入ってきたりといった展開もありましたが、この巻ではそんな展開もほぼなく、ほとんどまるまる一冊、三芳と間宮の話だったといってもよさそうな。なにより、上にもあげたようなイベントをこなしながらも、互いに対してドキドキする気持ちを抱いたり、安心を感じたり、互いの一番であることを求めあったり、そうした感情を通しての結びつきを深めていく様子がとてもいいものでありまして。そうして心からの幸せを表情にあらわす様子はこちらまであてられてしまいそうになるものがありまして。いいですよね。

そしてラスト、三芳と間宮の関係は、単に互いを好き合う男と女だからというだけのものではなく、小さいころからのつきあいを通して築かれてきた絆のうえになりたつ、このふたりだからこその関係なんだなあと思わせてくれる話がノスタルジックですごくよくて。一冊通してふたりへの祝福の気持ちがこれでもかと強められる話ばかりでしたね。

とはいえ次回予告によるとまだひと波乱あるようで……? どうなっているのか、楽しみにしたいです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 20:37| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月01日

エルフ皇帝の後継者(上)(下)

エルフ皇帝の後継者〈上〉 (創元推理文庫) -  エルフ皇帝の後継者〈下〉 (創元推理文庫) -
エルフ皇帝の後継者〈上〉 (創元推理文庫) -
エルフ皇帝の後継者〈下〉 (創元推理文庫) -

エルフ皇帝の後継者〈上〉 - キャサリン・アディスン/和爾桃子 訳|東京創元社
エルフ皇帝の後継者〈下〉 - キャサリン・アディスン/和爾桃子 訳|東京創元社

ゴブリンの王女との子という出自によって父帝からうとまれ、片田舎に追いやられていたエルフ帝国の第四皇子マヤ。そんな彼のもとにいきなり継承のお鉢が回ってきて、帝王教育もなにも受けていない状態から皇帝としての歩みをはじめていくことになる話。

これ好きなタイプの話ですね。新帝となる主人公マヤの視点にただよう自信のなさ。政治において儀礼的な面においても知識がなく、皇帝という立場は荷が勝ちすぎているのではないかと痛感させられる力不足感。ただ目の前で決められていく物事に唯々諾々と従っているのがいちばんではないかという思考がよぎる卑屈さ。けれど、それでも位に就いたからにはいい皇帝になりたいと願う気持ちはたしかに持っているのであり。自信のなさと前向きな気持ちの間でたびたび揺れ動くマヤの視点でつづられる、期待度ゼロの新皇帝の物語。すごく好きな感じの描写の調子でした。

それというのもマヤの育ちがいかにも不遇で。皇子として生まれていながら、主となるべく乗りこんだ宮廷において、まずそもそもその宮廷に不慣れであることが露呈するレベル。誰かと密談するならどこか、誰が権力を握っているのか、人間関係は等等、これから帝位に就こうというのにそれらの知識もなく、かといって信頼できる相談相手もいないところからはじまる宮廷生活。政治的な会議に出席してもなされる話はさっぱりわからないことばかりで、かといって質問しようにも初歩的な質問で話を遮るのは時間を無駄にすることでしかなく、また誰かに相談しようにも、親密な態度の者ならともかく、そのたび無知に呆れられるのはたまらなく恥ずかしい。劣等感を抱きながらも頼れる相手はろくにいない。臣下が皇帝を立てるのはあくまで帝位に対する敬意があるからであり、個人としてのマヤを見てくれる人はほとんどいない。いたとしても、個人としての信頼を寄せるよりもまず帝位に対する畏敬から一歩距離を取ってしまう。無能で、孤独で、どうしようもなくて、けれどそれでも自分が皇帝になってしまった。なってしまったからには、失敗しながらもすこしずつ皇帝としての歩みを進めていくしかない。ときには成果をあげて、すこし自信をつけて、けれどすぐにまた自信を失ってしまうような事態が起きて。全体的に自信のなさは変わりがない。それでも、そうして手探りしながらもすこしずつ進められる歩みはちらほらと認められだしていくもので。苦しい時期が長いほどにそのありがたさはじんと胸を打つものがあって。今はまだごく一部の近しい人たちだけであっても、いつかだれの目からもはっきりと立派な皇帝として認められる日がくるのではないか。そう思わせてくれるラストもあり、のちの名君による治世初期の苦労の日々を描いた話のようで、とても心地のよい物語でした。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:06| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月26日

2017年の読書まとめ


■概括

2017年は196冊。前年と比べれば微増。年の前半はいいペースで推移しつつも、夏から秋にかけてペースを崩してこのくらいに落ち着いたというパターンは前年とほぼ同じ。違う点があるとすれば、前年とは違って、年末になってもペースが復活してないところでしょうか。夏の終わりごろに夏バテで調子を崩し、外国語読むの楽しいで持ち直しはしたものの、そうすると読書時間はともかく読了数は伸び悩むようになるという。

ブログの更新頻度もそれにつれて増えたり減ったり。特に外国語の文章は、時間をかけたわりにはなかなか読み終わらなくて感想を書けなかったり、そもそもこのブログで感想を書くようなものではない単なるニュース記事だったり、だんだんとここで扱う範囲を超えてきている部分もあったり。

2017年の目標として掲げていたことはなんだったかと見なおしてみると、「ライトノベルの外のジャンルのファンタジー作品を開拓したい」的なことを書いていたようでいたようで。夏バテ前後で完全に別方向に読書傾向が向かってる今日この頃ではありますが、「洋書で読んだ」と答えて目標達成と強弁するのは許されるでしょうか? 当時と今とで気持ちの乖離がありすぎて、わがことながら判定不能。

■2017年に読んだ本からのお気に入り(11タイトル+α)

以下、2017年に読んだ中からのお気に入りの作品をシリーズ単位で紹介していきますが、夏バテからの復帰前後で好みの傾向がまた変わった感がありまして。当時の月次まとめではお気に入りとあげてたけど今ふりかえるとやや評価が落ちるものがちらほらあったり。正直なところ、一貫した視点で読んだ本をふりかえれる気がしません。なので、例年ならジャンル混合でお気に入り順にずらっと並べるところではありますが、今回はトピックごとに思いついたものからあげていく感じで。(刊行年は2017年にかぎりません)

●小説

まずは小説から。小説作品においては、夏バテする前に読んだ本が全体の4分の3を占めるという大幅な偏りにより、上半期のまとめとかなりかぶる内容になりますがご容赦を。

ファンタジー

小説作品の中でもいちばん多く読んでるジャンルはラノベ・非ラノベをふくめたファンタジー系。年の前半にはファンタジー的な面白さを持つ作品を月に一冊は紹介しようとしてました。読書冊数が落ちるとそれもストップしてしまいましたが……。

ともあれそんな作品群の中から第一に取り上げる作品はなんといっても、霧島まるは『左遷も悪くない(1)〜(5)』1巻感想2巻感想3巻感想4巻感想)。仕事ひと筋の堅物軍人として生きてきた男が、左遷された先の地方で結婚し、お相手の女性とともに新たな生活をはじめていく。これがすごくよかったんですよ。軍人の夫と家庭を守る妻の間で視点を入れ替えつつ描かれていく新婚生活の様子が。家族ぐるみの交流が深まれば深まるほど、この家族で育ったからこその性格なんだなあと思わせてくれるキャラクターの造形。生まれ育った家ごとにそれぞれの文化があり、結婚を機に交流が進み、ゆるやかに混ざりあって新たな家庭の文化がはぐくまれていく。まるで異文化交流のような変動を感じさせてくれる話がとても素晴らしくって。ファンタジーって、前近代を舞台にすることが多い都合上、キャラクターと生まれ育った「家」の関係性を盛りこんでくれると個人的にとてもうれしいんですけど、このシリーズでは受け継ぐにしろ反発するにしろ、父母や祖父母たちから次代へとつながっていく「家」の影響を感じさせてくれる描写が話の端々に見られて、すごくよかったです。
左遷も悪くない〈1〉 (アルファライト文庫) - 左遷も悪くない〈2〉 (アルファライト文庫) - 左遷も悪くない〈3〉 (アルファライト文庫) - 左遷も悪くない〈4〉 (アルファライト文庫) - 左遷も悪くない〈5〉 (アルファライト文庫) -

「氷と炎の歌」シリーズの外伝にあたるジョージ・R・R・マーティン『七王国の騎士』感想)も、そんな時の流れとそこに生きる人々の姿を描いてくれた素晴らしい作品でした。舞台は本編の100年近く前で、まだ戦乱が大陸を覆う前ということもあって、いくぶんかのどかさを感じさせる時代。けれど油断してると不意打ちのボディブローに苦しむ展開が待ち受けているのがこのシリーズではあり。出自は卑しくても騎士たらんとするダンクに対して、けれどそうした末の結果が取り返しのつかないものになったり、一概に正邪を断じられない事情がのぞけてきたり。読んでるだけでどれだけ頭を抱えたくなってきたことか。正義と思えたことも、悪と断じられたことも、ある一時点ではそうであっても、時代が下れば評価は変わるかもしれない。禍福はあざなえる縄のごとし。すべては時のみぞ知る。けれど、渦中に生きる人々はその場その場で決断し行動しなければならない。その難しさと、物語としてみたときの面白さを感じさせてくれる話でした。
七王国の騎士 (氷と炎の歌) -

非ライトノベルレーベルにおける国内ファンタジー作品としては、佐藤さくら「真理の織り手」シリーズ、そのなかでも特に二作目の『魔導の福音』感想)を。(三作目も2017年内に刊行されてますが未読。)生まれつき魔導を扱う素質のある者とない者とにわかれる世界において、しかし素質はあっても扱う術を知らない者は魔導を暴走させてしまいがちで、それがゆえに災厄をもたらす者として忌み嫌われてしまう者たちがいる社会の話。そこに生まれ育って、魔導を扱う術を知るがゆえに、身近な人たちがこうむる悲劇を知るがゆえに、不当なあつかいからの変化を求めて動きだすキャラクターたちの思いに打たれるものがある。閉塞感のある社会に変革が訪れようとしている、その兆しを感じさせる話が期待を抱かせてくれる。そしてなにより、シリーズ二作目の「福音」においては、そんな社会でありながら、一般に嫌悪される類の性質を持ちながら、それでもあるがままにふるまうキャラクターが登場する。作中で描かれるそのキャラクターの姿は、抑圧を感じていながらもとてもいきいきとしていて、まぶしく映るものがあって。社会をおおいに動揺させるだろう変化がもたらす先に、それでも確かな希望はあるのだと信じさせてくれるのです。
魔導の系譜 (創元推理文庫) - 魔導の福音 (創元推理文庫) -

その他のファンタジー作品としては、渡辺恒彦『理想のヒモ生活(6)〜(9)』もはずせません(6巻感想7巻感想9巻感想)。(最新10巻は2017年内刊行も未読。)このシリーズの面白さはなによりも主人公の思考をトレースできる描写のわかりやすさにあると思います。異世界の女王に婿入りすることになるといういきなりの立場の変化がもたらされて、かといってすぐに王配として身につけておくべき知識教養を備えられるわけもなく。重大な決断を迫られたときに周囲の人々の思惑や妻である女王に与える影響を勘案した末に決断に至る。そうした思考の過程それ自体が駆け引きめいていて、それでいながら考える主体が一人ないしはごく少数の同じ立場の人たちなので整然としていてわかりやすいんですよね。俎上にあがる問題も、対国内貴族から、他国の貴族や王族まで巻き込む問題へとだんだん大きくなってきてて、へたを打てば戦争にも発展しかねない問題でありながら、一概には判断できない難しい問題に巻き込まれるようになっていたり。そんな主人公ともども頭抱えるのも面白い。
理想のヒモ生活 6 (ヒーロー文庫) - 理想のヒモ生活 7 (ヒーロー文庫) - 理想のヒモ生活 8 (ヒーロー文庫) - 理想のヒモ生活 9 (ヒーロー文庫) -

キャラクターの関係性としていちばんの好みは、梨沙『お嬢様と執事見習いの尋常ならざる関係』感想)。主従譚で、恋物語。男装の麗人としても通る美しく勇ましい姫君と、彼女にふり回されながらも一心に思いを寄せる執事見習いと。幼いころに出会ったふたりの身分違いの両片想いの物語。こんなに好みが詰まった関係性はなかなか見つかるものじゃありません。そして、ラストがものすごく美しいんですよ。主従譚としてのふたりの距離感は崩さずに、それでいて二人の想いをこのうえなく確かに表現してくれる。最高です。最高に心を打ちぬいてくれる一冊でした。ただただ感謝。
お嬢様と執事見習いの尋常ならざる関係 (一迅社文庫アイリス) -

非ファンタジー

男装キャラの登場する作品をあげたので、そのつながりからノクターンノベルズの『瀬野家の人々』を。(※R18作品ですのでお気をつけを。)義姉によって女装させられていくうちにどんどんその素質を開花させていく主人公の話。外見的な面もさることながら、それ以上に精神的な面での変化が魅力的で。最初は女装を嫌がっていた主人公が、すぐに女装時のキャラができていき、心から女性になりきっていく。声も、しぐさも、外見も、嗜好も、どこをとってもすっかり女の子のようでありながら、それでいて本当のところは男性で、そんな自分に羞恥を感じてもいる。けれど、そうと知らなければすごくかわいくてきれいな女の子でしかないという。そんな倒錯的なかわいさに魅了される。さらには、この作品はR18作品であって。えっちな面でもとまどいながらも女性的な感覚を得ていく主人公の姿はフェティッシュなな魅力に満ちあふれていて、新たな世界が眼前に開けていくかのような思いにとらわれる。そのうえ、主人公が女装するだけでなく、義姉もときに男装をし、義弟も女装をし、男だと思ったキャラが女だったり、女だと思ったキャラが男だったりしていくうちに、男と女の境があいまいになっていく感覚に襲われる。異性装の物語、その魅力を髄まで教えこんでくれる作品です。
https://novel18.syosetu.com/n3752dr/ (※R18サイトに飛びます)

ジャンルとしての好みの補正がかかっているファンタジー以外でお気に入りと呼べる作品はかなりの面白さを有しているものばかりなのですが、なかでも2017年に読んだ中でいちばん面白かったと思うシリーズは、白鳥士郎『りゅうおうのおしごと!(2)・(3)』2巻感想3巻感想)。(4巻以降は未読。)アニメも放映されているのでご存知の方も多いかと思いますが、将棋の話。それも、プロやプロを目指すひとにぎりの実力者たちを中心にした話。これがとんでもない熱量を持った話でして。才能は基本的に持っていて当たり前。けれどその中で優劣がつけられていくシビアな世界。将棋しかないと言えるほどに打ちこんでいく世界だからこそ、その劣位をこのうえなくはっきり突きつけられる敗北の悔しさみじめさはいかばかりか。そんな厳しい勝負の世界を知れば知るほど、勝ちたい強くなりたいと願うがむしゃらな気持ちが心を熱くさせる。それでも将棋を愛する純粋な想いに胸を打たれる。実際にあったできごとをもとにしている話も多いようで、だからこその説得力でしょうか。素晴らしい物語です。
りゅうおうのおしごと!2 (GA文庫) - りゅうおうのおしごと!3 (GA文庫) -

●マンガ

小説作品からは以上としまして、次にはマンガから。こちらだと小説と違って読みたいと思う作品がファンタジーではないものが多くなるのが不思議なところではあります。とはいえ、小説に比べると読書量は少なめなこともあり、あまり長いシリーズは読み進められていないのですが。

そんななかでもいちばん読み進められているのが百合作品でして。2016年のまとめでも気になるジャンルとしてあげてました。そうしていくつか読んできたなかで、今いちばん気に入ってるシリーズは、缶乃『あの娘にキスと白百合を(1)〜(7)』1巻感想2巻感想3巻感想4巻感想5巻感想6巻感想)。中高大一貫の女子学園を舞台にした話で、メインで登場するペアはいつつも、各巻ごとにそれぞれのカップルの話が描かれていくシリーズ。すれ違いながらもきずなを深めていく女の子たちの姿がとてもかわいいんですよ。かわいい女の子とかわいい女の子の話はとてもかわいい。二人でそうなら、三人になればそれはもうとてもとてもかわいい。それぞれのカップルがうっすらつながりながら広がっていくかわいい女の子たちの世界はかわいさに満ちあふれていて素晴らしい。素晴らしいシリーズです。
あの娘にキスと白百合を 1 (MFコミックス アライブシリーズ) - あの娘にキスと白百合を 2 (コミックアライブ) - あの娘にキスと白百合を 3 (コミックアライブ) - あの娘にキスと白百合を (4) (MFコミックス アライブシリーズ) - あの娘にキスと白百合を 5 (コミックアライブ) - あの娘にキスと白百合を 6 (MFコミックス アライブシリーズ) - あの娘にキスと白百合を 7 (コミックアライブ) -

マンガは以上でしょうか。多少はまた読むようになってきましたが、まだこれぞというものを見つけ出す感覚は育ちきっていないようで。そこそこ楽しめるものは見つかるようになってきているので、もう少しという気もしていますが、さてどうか。

●洋書

ひきつづいては、2016年末くらいから手を出しはじめた(と記憶している)洋書の区分から。小説の区分に含めてもよかったんですが、外国語の文章を読む趣味とのつながりが深く、いまはともかくそのうち小説の枠内に収まりきらなくなっていくのではないかと思われることから別項で。

といっても、あげれる作品はまだひとつしかありません。Philip Pullman『His Dark Materials(1)Northern Lights』。日本では「ライラの冒険」のタイトルで知られるシリーズで、映画化もされているようです。ジャンルはファンタジー、よりもSFといったほうがいいかもしれません。物語がはじまるのはこの世界によく似た並行世界のオックスフォード。デーモン(dæmon)と呼ばれる、絆で結ばれた動物たちとともに生まれ育つ人々の世界。これが実に興味深い世界で。デーモン以外は現代の世界とだいたい同じなのかなと思ってると、「タタール人がモスクワに侵攻してるらしい」とか「カルヴァン教皇以来」とか出てくるから、ちょっとそれどういうことなのと気になってくるんだけど、物語の本筋にはそれほどかかわってこない。それらを雰囲気程度にして、主人公の女の子がさらわれた友だちやとらわれたおじさんを助けに雪に覆われた北欧の地を冒険する話。これがわくわくと読みいってしまうことといったら。行き場をなくした主人公が、その目的にすがって向かった北欧で戦いの世界に身を投じた先で、鎧を着た熊の戦士に認められる勇気を示すまでになる感慨深さですね。さらに、それだけで終わらず次の巻以降の展望を開きつつ、最後までシリーズの期待度を上げに上げて幕を引くラストといい、圧巻のシリーズ第一作でした。
Northern Lights: His Dark Materials 1 -

●その他(歴史)

フィクション作品としてはそんなところで、例年ならここでしめに入るところなんですが、2017年は(もっと前からだったかも?)それ以外の本を読む量も増えてきた年ではあったのでして。ふだんは紹介してませんが、読むだけ読んでそのまま放置してるのもなにかもったいないので、こういう機会にでも雑記程度になにか紹介してみたいなという気分になっていたり。

そういった本のなかで、読んでる数はともかくもっとも関心の高い分野は歴史。そのなかでもいちばん広くいろいろ読んでるのは中世スペイン史……ではあるんですけど、2017年内にはそんなに数を読めていなかったり。唯一あげれるのは、カタルーニャにおける11世紀の「封建革命」論についての記述だったでしょうか。(自分が読んだのはあくまでその論を紹介する記述でしたが。)中世の社会といえば、すぐに思い浮かぶのが封建制というイメージではあったんですが、それっていつごろできあがったものなんだろうかという疑問につながるものでして。高校世界史だと西ローマ帝国の滅亡やゲルマン人の大移動あたりで一度記述を区切るをイメージで、だとすると古代と中世の境目はそのあたりで、つまりゲルマン人の大移動以降の社会は封建制だったといっていいのかなと思っていると全然そんなことはなかったりするようで。古代末期なんて概念もすこし前にようやく知った手合いではありますが、どうも西ローマ帝国の滅亡後もローマ帝国由来の統治体制は結構しぶとく生き残ってたらしい。カタルーニャにおいては古代社会から中世社会への移行がなされたのは11世紀のことである、というのが有力な学説であるとか(10年以上前の論文では)。ほかの西欧地域でも同じくらいの時期が社会変動の境目であるとされているらしく(同上)、封建制とは何かとか、何をもって古代・中世とするのかとか、その辺の議論もあるみたいですけど、自分のなかでの中世ヨーロッパについての古いイメージはいろいろ解きほぐしてやる必要があるなと感じるところであり。

また、ほかにも興味のあるテーマはいくつかあって。2016年は感染症を題材にしたSFやノンフィクションへの関心が高まっていた時期だったんですが、その流れで2017年に読んだ本として、宮崎揚弘『ペストの歴史』がありまして。14世紀半ばには「黒死病」の名でヨーロッパ一円に猛威を振るった病気がどのように広まっていき、どれほどの犠牲を出していったのかと、様々な研究の積み重ねを通して克明に描きだされていく様相がすさまじいほどにおそろしい。けれど、この本が扱うのは「黒死病」だけではなく、その前の時代、その後の時代におけるヨーロッパでのペストの流行も射程に収めている。というのも、「黒死病」として猛威を振るったペストは完全にヨーロッパから消え去ったわけではなく、どこかに残存していた病原菌によって散発的に流行がくりかえされるようになったのだという。すなわち、ペストはヨーロッパに常在化するにいたっていたということで。いかにもおそろしい。そんなペストの歴史を、中近世の流行を中心に、18世紀における西ヨーロッパからの消滅までをまとめた一冊。歴史好きの方はもちろん、感染症テーマの物語のファンの方にも?
ペストの歴史 -

また、歴史を扱った本の面白さには、偶然性や複雑さの産物である歴史の流れを明快なテーマで読み解く面白さもあると思っていて、そういった本としては、深井智朗『プロテスタンティズム――宗教改革から現代政治まで』が印象に残っています。「九五カ条の提題」によって宗教改革が巻き起こるきっかけとなったドイツのルター。その登場前夜のキリスト教社会の状況から説き起こし、ルターが目指したリフォームの姿、それが当時の諸侯たちの思惑によってルターの意図を超えて政治的な動きとなっていく様子を描写し、ルターによる改革の終着点とさらなる改革を目指す洗礼主義の潮流にふれ、それらが流れいたった代表例としての現代のドイツとアメリカの社会が提示される。それらの概略を通じて、教会やキリスト教の改革を目指したプロテスタンティズムの理念、現代社会にも通じるその潮流を一読で概観する面白さですね。初学者でもわかりやすいのではないかと思える平易な記述でありながら、またそれゆえに細部をより詳しく知りたくもなってくる興味深い内容。とてもいい新書だと思います。
プロテスタンティズム - 宗教改革から現代政治まで (中公新書) -

紹介するタイトルは以上になります。やはりというか、夏バテ前までに読んだものが多いです。今年こそは夏から秋にかけてのペースダウンを避けたいところですけど、どう対策したらいいんでしょうね。体力でもつけますか?

■2018年の目標

2018年の目標については、正直なところ、どんな目標を設定すべきなのか、どんな目標なら達成がみこめるのか、皆目見当がつきません。毎年の状態をふりかえって言えることは、一年もの長いスパンでの先行きは見通せないということで。その程度には自分で自分が何するかわからないというところがあるんですが。短めの目標を立ててそれを目指しつつ、一年間の総量としてはそれらを単純に足し合わせた結果だけ見る感じのほうがよさそうな。

「今年はファンタジーをあさりたい!」みたいな目標も、自分がどういうジャンルを深堀りしたいのか自分のことながらよくわかんない感じになってるのが現状でして。とりあえず気になるものをあれこれ読んでいきながら、面白いと思った本を中心にブログを更新していけたらというところで。なんの具体的な目標もないまま2018年をはじめていく感じで。まあもう2月も終わろうとしてますが……。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 17:44| Comment(0) | 読書まとめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月21日

2017年12月の読書まとめ

12月は13冊。だいたい復調してたはず……だけど、小説を読むペースを落としたら、読了数は回復しきらなかったという。マンガ等を含めれば23冊。そのほか、英語やスペイン語のニュース記事を読んだり洋書を読んだりしてた模様(当時のメモによると)。

12月に読んだ中からのお気に入りはなし。ニュース記事を読んでるのが一番楽しかったような記憶。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 18:26| Comment(0) | 読書まとめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月06日

クリフトン年代記(1)時のみぞ知る(上)(下)

時のみぞ知る〈上〉―クリフトン年代記〈第1部〉 (新潮文庫) -  時のみぞ知る〈下〉―クリフトン年代記〈第1部〉 (新潮文庫) -
時のみぞ知る〈上〉―クリフトン年代記〈第1部〉 (新潮文庫) -
時のみぞ知る〈下〉―クリフトン年代記〈第1部〉 (新潮文庫) -

ジェフリー・アーチャー、戸田裕之/訳 『時のみぞ知る〔上〕―クリフトン年代記 第1部―』 | 新潮社
ジェフリー・アーチャー、戸田裕之/訳 『時のみぞ知る〔下〕―クリフトン年代記 第1部―』 | 新潮社

全体を通してさらっと軽い描写でありながら、転々ととどまることなく転がりつづけていく話が飽きを感じさせず、面白い。

戦間期のイギリスの労働者階級に生まれた少年ハリー・クリフトンが、貧乏生まれでありながら学業の成績からエリートへの道を進んでいくことになる物語。立身譚を予感させる第1部の話でした。

労働者の子どもは労働者として生まれ育っていくことが当然の社会で、数奇な縁から才能を見出され、母の苦労や支援者の助けを得ながらグラマー・スクールからオックスフォードへと、生まれを考えれば華々しいまでの学歴街道をひた走る。ここまでくればたいしたものですよね。そしてその過程では友情あり恋愛あり、楽しくも充実した学生生活を送ってる様子がほほえましくもあり。

ただ、話の進行はかなり早い。一冊で作中時間として10年以上経過してますので。プロローグ的な部分から数えれば20年以上ともいえるでしょうか。たしかシリーズ全体を通して人の一生を描くくらいの話になっていくんじゃなかったかというところ。

それもあってか、一つひとつのエピソードの描写ははかなりさらっとしてます。もっと描いてほしいと思う場面もあるんですけど、そうであっても先が気になって読み入らされてしまうのは、ひとつのできごとにあまりこだわることなくどんどん先へ先へと転がされていく展開の新規さに目を奪われてしまうから、なんでしょうね。それと、クリフハンガー的な章立て。章ごとに視点人物があっちに行ったりこっちに来たりするんですけど、多くの場合、それでどうなったんだろうかと気になるところでひとつの章が終わって次の章がはじめられる。それも、すこし前の時間から。だから、先の展開が気になってどんどん読み進めてしまう。同じ場面がくりかえし語られたりもしてるんですけど、先が気になる気持ちと、うす味な描写ゆえの不足感を満たしてくれる別視点の提供もあって、すらすらと読ませる面白さを感じる。この辺は、さらっとした描き方ゆえの味でしょうか。こういうのもまたいいですね。

実はクリフハンガーなのはラストもであって、第1部としてまとめるとどういう話だったのかといわれるととても困るところなのですよね。ハリーの少年期・学生時代の話でしたというくらいしかまとめようがなくって。終盤とか、もう完全に第2部につづく流れになってましたし。

とはいえ、それでも第1部のクライマックスはクライマックスはどこだったかと考えると、やっぱりハリーの結婚式だと思うんですよね。これもまたさらっといきなりハリーに恋人がいることが明かされて、学友ともども驚かされたりしたものですけど。というか、その場面にしても、まずその学友がとある女性にアタックするからハリーにもそのアシストをしてくれと頼む場面が先にあって、そっちはそっちでうまくいったのやらどうだったのやらと思っていたら、いつのまにかハリーのほうに恋人がいることが判明するという流れで。こういうのをさらっとやってくれるから面白いというか。

そして結婚式についていえば、自分でクライマックスとしてあげてますし、そこにいたるまでの描写的にもいかに運命的なふたりかという描かれ方をしてはいたんですけど、幸せな結婚式にはしてくれないから、この作者、やってくれるというか……。思えばこの第1部、シリーズはじまった当初から、ひとつの爆弾を抱えてましたね。当事者のうち一人でもその気になればいつ爆発してもおかしくないその爆弾が、いつ破裂するかと思っていたところ、それをあの場面に持ってきたのは、なんて面白ひどいことしてくれやがるというもので。ふたりの仲を深く描けば描くほど突き落とされる衝撃は増そうというもの。あれはもう完全に狙ってましよね。ふたりにロミオとジュリエットの演劇やらせるとかもうホント……。

でも、ふたりが知らない事実を知ってる読者の身からすると、黙ってるほうがむしろどんどん耐えがたくなってくる展開ではあったので、責めるに責めれないところがあるというか……。なんというか、もうふたりのめぐり合わせが悪かったとしかいえませんわ……。むしろ、ハリーが後にいうように、ことの告発はもうそれそのものが勇気ある行動としてほめたたえられるべきレベル。でもかといって、それで終わりにはならない事実をまたさらっと混ぜこんでくるから、気がかりを完全に断ち切ってももらえないところであり。ホントどうなるのこれ……。

ラストは別の意味で気になるヒキになってましたが、はてさてどうなっていくことやら。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 13:42| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月31日

くちびるに透けたオレンジ[新装版]

くちびるに透けたオレンジ 新装版 (IDコミックス 百合姫コミックス) -
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百合えっち。いいものでした……。かわいい女の子の体をかわいい女の子がいじめてるのって、視覚的にとても至福感があるというか。いろいろひっくるめてありがとうございましたという感想に集約されていく読後感。

そんな絵的な素晴らしさにくわえて、その雰囲気をひきたてて読み入らせてくれたのがそれぞれの女の子たちの関係性でありまして。

一作目の表題作は、都会から転校してきた洗練された美少女の叶に目を奪われた地味な少女の千鶴が想いを募らせていく話。ついつい見とれてしまうほどにきれいでおしゃれな叶のようになりたいという気持ちは、自分にはむりだと思うほどに憧れへと高じていって、しだいに同じように装い、そこに叶本人との接触の想像を重ね合わせるにいたる。病的な妄想めいた行為でありながら、抑えられないほどに募る憧憬と諦観をていねいに描いていくことで、繊細な想いの発露として表れるそれらの行動に目を離せなくさせられるものがあって。だからこそ、叶が千鶴に対して抱く感情が語られたときには、千鶴ともどもただただ信じられないような感情の爆発があったんですよね。クライマックスのもりあがりがとてもよかったというか。ありがとうございます。もうそれに尽きます。

ふたつめの「閉じててね、心」は、男女の恋愛にうといいとこのお姉さんと、彼女に自分だけを見ていてほしいと願う女の子の話。甘えるふりをしていとこのお姉さんを独占しようとする女の子と、そんな彼女にお姉さんぶろうとして独占されるいとこのお姉さんの関係性はとてもいい雰囲気でありまして。読切なのでページ数は一作目に比べるとかなり少なくはありましたが、それでも必要な部分はしっかりおさえつつふたりの関係を描いてくれて、視覚的にもやっぱり至福な場面がちゃんとあってと、こちらもよいものでございました。

繊細な雰囲気あふれる百合えっち、とてもよかったです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:04| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月25日

2017年11月の読書まとめ

11月は5冊。めちゃくちゃ少ない。マンガ等を含めても13冊にしかならないから、どれだけ本を読めてなかったのかがわかろうというもの。

それというのも10月からひきつづき、この月の半ばくらいまで精神的にかなりへこんでまして。具体的になにがあったというほどのことでもないんですけど、この本読んでなにになるんだろうなんて考えだしたらなにも手につかなくなってしまって。それでもぼーっとしてるうちに時間が過ぎてくのはもっとこわいので、とりあえずなにがしか読めるときはそれを読んで、できなさそうなら、それでもゲームならできるからゲームをしてるという日がつづいてた感じでしょうか。

月の後半くらいには持ち直せてたかと記憶してますが、持ち直す原動力になったの英語・スペイン語の文章を読むことだったので、カウントされる本の読書量としてはやはり伸びず。

この辺は、自分でも不思議に思うところではあるんですよね。読むのが楽なラノベよりも、比較して精神的な負荷の高めな外国語の文章のほうがまだ読めるという状態だったのは。自分のなかでの関心がフィクションからノンフィクションのほうに揺れつつあるのを感じる部分もありますし、日本語以外の文章も読めるんだと見栄を張りたい気持ちがあるのもたしかではあり。たぶん、そのときの自分の心理状態とうまく合致するものがあったんだと思います。

ただ、このころから、ラノベ読みとしての自己認識に対する違和感というか、Twitterラノベクラスタとの間の心理的な距離感というかを自覚するようになってきたように記憶してます。かといって、それではどこに自分のアイデンティティを置くかとなると、それがまたよくわからない状態なのですが。

11月に読んだ中からのお気に入りはなし。

次点として、マンガから『水玉ハニーボーイ(7)』(感想)を。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 12:43| Comment(0) | 読書まとめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする