2017年01月15日

2016年の読書まとめ

2016年は180冊。そんなに読んでたんだと自分でも驚いてますが、よくよくふり返ってみれば直近の9〜11月半ばごろまでの全然読めなかった時期が強く記憶に残っているのが大きいだけで、それ以外だとそんなに支障なく読めていた時期のほうが長かったみたいですね。2015年の79冊からは大幅増ですが、むしろこれはこの年が少なすぎたのであって、せいぜいその前の年並みくらいに戻ったというべきでしょうか。

2015年の目標で掲げた「月12冊で年間144冊を目指していきたい」というラインも余裕でクリア。というか、当時の自分はなんでそんなに読めない前提の想定をしていたのかと疑問も感じてしまう次第。その前後のまとめ記事を読み返してみると、歴史系の本への興味が高まっていた様子。そういえばそんなこともあったような……というか直近の9〜11月くらいにもそんなことがあったような……。つくづく進歩のないことで。

2016年のできごとで個人的にいちばんの特筆すべきこととしては、年単位で発生してた世間の新刊とのずれを解消できたことでしょうか。まあ解消できたというか、したという感じですが。ともあれ先ほどから何度もふれてる直近の全然読めなかった時期からの復活を機に、一度読む順番を仕切り直しまして。11月半ばころからは発売からそれほど間を空けることなく新刊を読める状態で再スタートできています。そうしてみて実感できることとしては、Twitter等で話題になっている本のことがよくわかるということですね。あの本たしかに面白かったよねーとか、積んでるあの本評判いいし楽しみだなーとか、個人的には興味惹かれなかったけど話題になってるし気に留めておこうかなとか、いろいろ入ってくる情報に対して当事者的な目線で接していける。ただそれだけのことが楽しいんですよ。新刊から遅れまくってたときなんて、最新の情報はほとんど、どうせ読むのはずっと先のことなんだしと、どうしても冷めた態度になってしまってましたから。読んでないものだろうとなんだろうととにもかくにも「ああ、あれのことね」とイメージしながら情報に接していられる喜びがあります。ただそれにともなって、仕切り直した時期以前に完結しているシリーズの続きを読むめどがまったく立たなくなってしまったんですが、これについてはすこし悩ましいところです。

二番目としては、このブログ的には一番ですが、感想の更新もかなり読了日に近づいてきたこと。現状がだいたい10日とすこしくらいでしょうか。まだ間があるといえばありますが、ブログを読み返すに最長で半年近くもたってから感想を更新してたようなので、それと比べれば個人的には賞賛すべきペースの速めようではないかとも思ったり。いやまあ、そもそもそんなにためこむなという話なんですが。というか、よくもまあそんなに経ってるのに感想書けたもんだと思ったりもしますが、そこはそれでもぱっと浮かぶ印象があるものだけ書いてたんだっけということで。一部のデータが消失してしまったため、だいたい3〜7月に読んだぶんは抜けてしまっていますが、一度書いたら満足してしまうところもあるのでそのままということで。ともあれ、これでラノベの話題がわかるだけでなく、自分からも話題の形成にうっすら関与していくことができればというところ。ひとつ前の記事の「好きなライトノベルを投票しよう!!」への投票もその流れですね。


という感じで、2016年の総括はこのあたりにして、2016年に読んだ中からのお気に入りを。今回もシリーズ単位で14作。半年分くらい読了感想データを失くしていることもあり、いつもに比べて紹介が雑になってる点はお許しを。やっぱりどこかに残しておかないと読んだ内容を忘れてしまうので。順番としては、最高5つ星で上からお気に入り順に。上のほうで書いてきたようなこの年の事情もあり、去年もそうでしたが、2016年内刊行の作品はほとんどありません

[☆☆☆☆☆]やがて君になる(1) / 仲谷鳰  感想
やがて君になる (1) (電撃コミックスNEXT) -
マンガより。恋する心が自分に訪れないことを悩む主人公と、そんな彼女にきらきらとした感情を向ける先輩と。なまじ最初に出会ったときは似た者同士だっただけに、ひとり特別な気持ちを抱くようになった先輩に嫉妬にも似た感情がゆれ動く。それがたまらなく愛おしい。そんな百合マンガ。お気に入りの筆頭がマンガなのはラノベ読み的にどうなのかと思わなくもないですが、実際そうなのでしかたがないのです。

[☆☆☆☆☆]年刊日本SF傑作選 さよならの儀式  感想
さよならの儀式 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫) -
国内SFより。SF入門におすすめの、珠玉の短編集。その2013年版。SFとしてのアイディアを傑作にまで高めるみごとな描写力の話に読みいる。特に冲方丁のごった煮でパンクな世界観は圧巻。

[☆☆☆☆]ドラゴンの塔(上)魔女の娘・(下)森の秘密 / ナオミ・ノヴィク  感想
ドラゴンの塔 上巻 魔女の娘 -  ドラゴンの塔 下巻 森の秘密 -
海外ファンタジーより。ただの村娘として生まれた少女が、魔法の才能に目覚めて王族との関係を持つまでになり、しかし最終的には魔女としての密やかな道を歩むにいたる、その起伏に富んだ物語が胸を打つ。領主に選ばれるはずが主人公にその座を奪われる形になった親友の少女とのその後も変わらぬ友情、助け合う関係もとてもいいものでした。

[☆☆☆☆]オーバーロード(5)王国の漢たち(上) 〜 (7)大墳墓の侵入者  / 丸山くがね  6巻感想
オーバーロード5 王国の漢たち [上] -  オーバーロード6 王国の漢たち[下] -  オーバーロード7 大墳墓の侵入者 -
ライトノベルより。好きな人を好きな状態のまま自分のものにするためならなんでもするというほどに、頭脳と権力を駆使して一人の青年を囲い込もうとするラナー様の異常な愛情が素晴らしい。クライム君には何も知らないまま、強く生きてほしいですね。

[☆☆☆☆]天冥の標(7)新世界ハーブC 〜 (8)ジャイアント・アーク(1) / 小川一水  7巻感想8巻PART1感想消失
天冥の標Z -  天冥の標8 ジャイアント・アークPART1 -
国内SFより。6巻の地獄絵図から、希望が見えるかと思いきやまるで見えてこない閉塞感にうめき声がもれてきそうな傑作SFシリーズ。8巻のPART1で時系列が1巻に追いついてまさにこれからというところなんですが、やっぱりもうこの人類は詰んでるような気がしてならないおそろしさ。イサリの健気さはそんな中で貴重な清涼剤と言いたいところなんですが、それすらも有終の美という言葉すら思い浮かんでくるからたまりませんね。

[☆☆☆☆]ティアリングの女王 上・下 / エリカ・ジョハンセン  上巻感想下巻感想
ティアリングの女王 (上) (ハヤカワ文庫FT) -  ティアリングの女王 (下) (ハヤカワ文庫FT) -
海外ファンタジーより。母の死により新たに即位することになった若き女王。経験は圧倒的に足りず、人間的にも未熟なところを抱えていながらも、教えこまれた女王としての責務を胸に危険もかえりみず突き進む信念の猪突さがさわやかな心地を与えてくれる。
邦訳2作目はまだ出てないようなんですが、本国で出た最後の3作目がそれまでと比べて評判かなり悪いみたいで、つづきを期待していいのか、このままいい作品だったという記憶だけ残しておいたほうがいいのか、悩ましいところです。

[☆☆☆☆]エスケヱプ・スピヰド(5) 〜 (6) / 九岡望  5巻感想6巻感想
エスケヱプ・スピヰド 伍 (電撃文庫) -  エスケヱプ・スピヰド 六 (電撃文庫) -
ライトノベルより。最終決戦に向けて、これでもかと因縁の糸を張り巡らせるお膳立ての数々。ついに戦端が開かれたときの弾けるさまざまな思い。その一つ一つが胸に迫るものがあるんですよね。

[☆☆☆☆]りゅうおうのおしごと! / 白鳥士郎  感想
りゅうおうのおしごと! (GA文庫) -
ライトノベルより。師匠と過ごしているときの可愛らしさが一転して真剣そのものな表情に変わるギャップ。えげつないほどの真剣勝負によってはっきりとわかってくる才能の片鱗。どこまで見せてくれるのかと、知れば知るほど期待を抱かせてくれるお弟子さんで。

[☆☆☆☆]クシエルの使徒(1)深紅の衣 / ジャクリーン・ケアリー  感想消失
クシエルの使徒〈1〉深紅の衣 (ハヤカワ文庫FT) -
海外ファンタジーより。官能と作りこまれた世界観のファンタジーの組み合わせはやっぱり素晴らしいですね。痛みを快感に変換してしまう被虐体質のフェードルが、一難去って、けれど安穏としてはいられずにまた夜の世界の妖しさと陰謀の世界の危うさに足を踏み入れていくのがとてもはらはらとさせられる面白さ。

[☆☆☆☆]折れた竜骨 / 米澤穂信  感想消失
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア) -
国内ミステリーより。魔法の存在する世界で論理を組み立て犯人を突き止めていく面白さ。魔法の存在を当たり前のものとして、けれど魔法を使わない場合も当然考慮に入れてという、ファンタジー世界ならではの描写がとてもよかったですね。犯人が明らかになった瞬間のやられたという感覚もたまらない。こういう話ならミステリーも悪くないと思わされた一冊。
ただ、少なくとも同作者でファンタジー世界の話はこれしかないみたいなんですよね。

[☆☆☆☆]海色のANGEL(1)ルーナとノア / 池田美代子  感想
海色のANGEL 1 ルーナとノア (講談社青い鳥文庫) -
ライトノベルより。容姿はそっくりだけど性格が反対の二人の人生が交わりかけたところで一気に交錯して通りすぎてしまう急展開。その少女に課すには厳しい運命に、つづきが気になります。

[☆☆☆☆]盟約のリヴァイアサン(4) 〜 (5) / 丈月城  5巻感想
盟約のリヴァイアサン IV<盟約のリヴァイアサン> (MF文庫J) -  盟約のリヴァイアサン V<盟約のリヴァイアサン> (MF文庫J) -
ライトノベルより。やっぱりこの作者さんのハーレム形成過程の描き方はとても好きですね。

[☆☆☆☆]ゲーマーズ! 雨野景太と青春コンティニュー  感想
ゲーマーズ! 雨野景太と青春コンティニュー<ゲーマーズ!> (富士見ファンタジア文庫) -
ライトノベルより。すっきりした人間関係からはじまって、あれよあれよという間に誤解が積み重なって複雑にねじれた構図ができあがっていくという、わかっていても笑わずにはいられない学園コメディ。

[☆☆☆☆]剣刻の銀乙女(4) 〜 (5) / 手島史詞  4巻感想消失
剣刻の銀乙女: 4 (一迅社文庫) -  剣刻の銀乙女5 (一迅社文庫) -
ライトノベルより。ルチルとエステルの、ヒロイン同士の関係がいいんですよね。互いを認め合って、主人公を通じた関係の外でも友情のような信頼関係が育っているのがうかがえる。これは百合でしょうか? いいえ、主人公も加えたハーレム関係の一角です。


以上です。感想が残っていないために読了直後は高評価をしていたはずなのにほとんど印象に残ってなくて見送ったタイトルもありますが、ひとまずこんなところで。

だいたい半分が非ライトノベル作品なのは近年の傾向通り。そのなかでもファンタジーとそれ以外が半々くらいなのは少し意外でしたが、ファンタジー以外のものは本当に面白そうだと思ったものしか手を出していないので、打率がいいのは当然といえば当然でしょうか。ライトノベル作品に関していえば、少女系の作品が一つもないのが物足りないところ。完結が早い作品が多いこともあって、無理やり新刊に追いつかせるまではあまり量をこなせていなかった影響かと思います。2017年はここを増やしていきたいですね。

同じく増やしていきたいところとしては、児童書もあげておきたいところ。児童書にラノベ読みに勧めれそうな作品を見つけるたびに、海外ファンタジーを最終到達点にして、児童書からライトノベルを経由してそこに到達するコースが描けるのではないかという希望的観測をふくらませている今日この頃でして。その補強のためにも児童書作品のことをもっと知りたいと思っていたり。というか、個人的に児童書でも楽しめるものがあるとわかってきて興味を持ちはじめたところともいえるのですが。


そんなこんなで、最後に2017年の目標を。

まず冊数に関してですが、言うだけなら1日1冊読めたらなーと言いたかったりもするんですが、さすがにそれが無理なのはわかりきっているので、月あたり20冊で1年では240冊くらいを目標にするのが現実的なところでしょうか。毎年夏から秋にかけてペースを持ち崩すことが多いので実現できるかはわかりませんが、それがなければじゅうぶん可能な数ではあるということで。それに、1日1冊を完全にあきらめるつもりもなくて。読んでる本は、いまもまとめでカウントしている小説だけではないんですが、それも含めれば達成不可能ではないのではとも思っていたり。マンガとかありますし。最近、百合が気になってるんですよね。

それと、さっきも書きましたが、海外ファンタジーおよびそういった作風のファンタジーを推していきたいなと。ライトノベルジャンルにおいて、ファンタジーはそれこそあふれかえってるわけではありますが、でもそれはあくまでもライトノベルジャンル内においての話であって。そこからはずれるとあんまり個人的に面白そうなファンタジーって見つからないんですよね。けど見つけると好みに合うものが案外多かったりするから、というよりいちばんのお気に入りの作品が見つかるのがジャンルの外だったりするから、詳しい人にどこをどう探せばいいのか教えてほしいというか、その代わりこちらからもいい作品があったら紹介しますんで的な、そんな感じのあれです。一応、現状の捜索範囲は海外ファンタジー、児童書、あとこれはまだ完全にこれからになりますがWeb小説というあたりを予定してます。それでどの程度いいものが見つかるか。

ともあれこんなところで。2016年ふりかえりと2017年の抱負はおしまいです。今年もいい作品にたくさん出会えることを祈りつつ。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 00:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書まとめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月14日

「好きなライトノベルを投票しよう!! 2016年下期」に投票します

まだいくつか、読んで面白ければ投票したい本はあるんですが、そろそろタイムアップということで、このあたりで投票します。

それにしても、この企画に投票するのって本当に久しぶりな気がするけどいつ以来なんだろうかと調べてみたら、なんと2011年下半期以来でした。実に5年ぶり。そんなに長いあいだ新刊から遅れを取っていたのかと遠い目をしたくもなってきますが、ともあれ投票です。

11月半ば以降に発売したシリーズ(の最初の1,2冊)しか読めていないとはいえ、読んだ中からどれを選ぼうかという作業はそれ自体がとても楽しいものでして。そんな中から選び出したるは以下の本。

■なんちゃってシンデレラ 王宮陰謀編  旦那様の専属お菓子係、はじめました。 / 汐邑雛 (ビーズログ文庫)
なんちゃってシンデレラ 王宮陰謀編 旦那様の専属お菓子係、はじめました。 (ビーズログ文庫) -
【16下期ラノベ投票/9784047343276】
シリーズ2冊目。主人公視点では最初からずっとそんな感じだったために過保護ぎみなのが普通なのかと思いきや、ほかのキャラの視点で見るとわかる人にはわかる溺愛ぶりと判明する甘々な関係の描写がとてもよかったですね。よくよく思い返せばもとからそんなだったような気もするんですけど、いやでもあれくらいは普通なのでは、とか感覚がおかしくなってくるナディル殿下とアルティリエのやりとりに幸せな気分にさせられます。そんな感じのことをもう少し長めに書いた感想はこちら

以上、1作です。

……ええと、はい、1作です。まことに遺憾ながら1作です。読んだ本を何度見返してみてもこれ以上出てきませんでした。

まじか…………。

久しぶりの投票が1作だけってあまり格好がつきませんが、かくなる上はいたしかたなし。もうひとつだけ、『愛玩姫の調教』も候補として考えはしたんですが、自分でもストーリーで評価してるのかえろで評価してるのか微妙な作品ではあるので、規定いっぱいに10タイトルあげてる中にしれっと紛れこませるならともかく、2タイトルのうちの片方がそれというのはちょっと……と考えたすえに見送ることに。

その辺も含めて、次回はもっと期間内の本をたくさん読んで、枠いっぱい埋めれるように面白い作品を見つけておきたいです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 03:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書まとめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月12日

やがて君になる(2)

やがて君になる (2) (電撃コミックスNEXT) -
やがて君になる (2) (電撃コミックスNEXT) -

そうなるかー……いやそうなりますねという2巻目。なにを言ってるかわからない感じだけど、実際難しい問題ではあります。

誰かを特別に思う気持ちがわからない主人公の小糸侑と、そんな彼女と同じく「好きって言われてドキドキしたことない」という生徒会長の七海燈子。似た者同士だと思っていたのに、燈子が侑への好意を抱いてしまったことから、半ば流されるように付き合いをはじめたのが侑だったわけで。基本的には二人の気持ちはかみ合わないんですよね。燈子のほうから一方的に好意を与えるばかりで。侑から返せる気持ちは心のどこを探してもなくて、せいぜい仲のよい先輩後輩関係としてのサポート程度。燈子のまぶしいほどの気持ちを見せつけられるほどに、自分も彼女のように誰かを好きになれるようになりたいと隠れて心を痛めてる侑とのすれ違いがなんとも切ないですよね。

……という一面もあったんですが、侑のほう、これ、正直もうかなり定義しづらい心理状態になってますよね。完璧な生徒会長だと思われている燈子の弱い一面を知ってるからこそ心配したり、彼女のことを好きになりたいという願いを抱いていたりと、広義の意味ではこれはもう燈子を好きになっているといってもいいのではないでしょうかという。槙くんから二人の関係を聞かれたときの態度なんて、自分のことよりも先輩のことのほうを大切に思う思考の表われのようで、それだけでいいものを見させていただきましたという気分にもなるんですよね。ただ、作中のその場面でも侑が言っているように、「普通」の範疇とも言ってしまえば言えてしまう。恋仲だと思えばそうともとれるし仲のよい先輩後輩だと言われればそうともとれるという、とても微妙な状態なんですよね。

「好き」って、どこからそう呼べる感情なんでしょう? たしかに侑には燈子ほどのきらきらした感情はうかがえないし、特別に思う人に対して心が高鳴るようなことも起きてはいない。けど、誰かを自分のこと以上に心配できるその気持ちは、まぎれもなく好意だと思うんですよ。そこに恋心が絡むか否かは別にしても。むしろこれは、恋や愛に対するタイプの違いなのかもしれないとも思うんですよ。燃えるような恋をする人もいれば、いっしょに過ごす時間がほかのだれよりも心地よくて、それがなにより大切だという人もいる。ドキドキする気持ちがそれを恋だと教えてくれることもあれば、「普通」の好意を積み上げたうえで気づけば総じて「普通」ではなくなっているということもある。いまの侑は、まだ燈子と特別な関係にあるというのは難しいかもしれないけど、いつかそこに届くのは可能だと思うんですよね。ラストの燈子のモノローグが不穏だったけど! めちゃくちゃ不安煽るモノローグだったけど! そこまで結構いい感じの将来予想ができてきてたのに、またすぐに不安にさせてくれることで。まったくもって、一筋縄ではいかない関係ですね。まあ前の巻の情報だけでも、燈子ってなんかしら過去に心の傷を抱えてそうではありましたが……。なかなかこじれることになりそうですね。

その関連で、ではないですが、今後にひと悶着ありそうなのが、侑と副会長の佐伯先輩の関係ですね。1巻でも、燈子が侑にご執心なのを面白くなさそうにしてるところありましたが、今回ひとつふたつ場面をはさむだけでさらっと二人の確執を描きだしててすごいなというかこわいなとも思ったり。とはいえ、侑が入学してくる前までの燈子と佐伯沙弥香の関係って、いまの燈子と侑の関係と似ているところがあるんですよね。ほかの人にはしないような相談を燈子がして、だれよりも燈子のことをよく知っていてと、まるでいまの侑が彼女の場所を奪ってしまったような感があって、それはたしかに面白くないだろうなというところ。とはいえ、侑とのいちばんの違いは燈子に対するスタンスですかね。彼女の場合は信頼と応援がうかがえる。それに対して侑は心配がとにかく先に立つ。この辺は、第一印象に由来するところなのかなと思いますが、なまじ燈子と接してきた年月の違いがあるだけに、結構深刻な対立になりえそうで、これもまた不安をかきたてるところですね。

さて、そんな問題も抱えつつ、生徒会の劇はどうなるのかとか、侑の気持ちはどんな変遷をたどっていくことになるかとか、いろいろ期待しつつ、3巻も楽しみにしたいですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 16:55| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月の読書まとめ

12月は20冊。11月に仕切り直しをして2か月目、調子のいいペースになったかと思います。ただ、それなのにもう新刊を買ってから読むまでの間が10〜15日ほど空いてきているのはちょっとまずいのではないかと思う次第。まあもともとそんなに読書ペースを上げれるわけではないとわかってはいたので、この機会に気になる新刊を全部読むのはあきらめることにしないといけないですね。悩ましい。とはいえ、個人的に気になる新刊以外にも、世間的に人気のあるシリーズも押さえておきたいですし、そのための余裕も確保した読書ペースにしておきたいんですよね。1月3日に投票締切を迎えたSUGOI JAPANの候補作も、この月はほとんど読むことができませんでしたし。いろいろ試行錯誤していきながら調整していきたいです。あと、小説を読むのが手いっぱいで洋書とかの方の余裕があまりなくなってきてるのはちょっと想定外。休日とか、へたするとブログの更新といつも見てるサイトの更新チェックと次の一週間の新刊チェックだけでほとんど終わってたりしますからね。なんだか日一日と、というレベルではないんですけど、ひと月前よりも今のほうが明らかにその辺のことをしているときの時間の経過が早くなっててこわい。

それはともかく、先月読んだ中からのお気に入りは以下の2作。

[☆☆☆☆☆]ドラゴンの塔 (上)魔女の娘 / (下)森の秘密  感想
ドラゴンの塔 上巻 魔女の娘 -  ドラゴンの塔 下巻 森の秘密 -
海外ファンタジーより。ただの村娘として生まれ育った少女が魔女としての道を歩むまでになる物語。大切な親友の少女を失いたくないという思いから伝統的な魔法とは異質な道を突き進んでいくことになるアグニシュカの行動、その行く末がとても印象深い作品でした。

[☆☆☆☆]愛玩姫の調教  感想
愛玩姫の調教 (乙蜜ミルキィ文庫) -
ライトノベルより。こちらの気持ちなどおかまいなしに、ただただ好きなように弄ばれるだけだと思っていた男たちの心の深い部分を知ることで、そんな彼らのことが愛おしくてたまらなくなる。この前後の明確な変化がこころよい一冊でした。ということを感想で書き忘れていたことを思い出してここで追記してみたり。

以上。もうちょっとあるような気がしてましたけど、あと一歩というところでこんなところだったでしょうか。ともあれ、これを上げたら次は1年間のまとめですね。

以下、読書メーター貼り付け。

12月の読書メーター読んだ本の数:20読んだページ数:6325ナイス数:3本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第一部「兵士の娘V」本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第一部「兵士の娘V」読了日:12月30日 著者:香月美夜
なんちゃってシンデレラ 王宮陰謀編 旦那様の専属お菓子係、はじめました。 (ビーズログ文庫)なんちゃってシンデレラ 王宮陰謀編 旦那様の専属お菓子係、はじめました。 (ビーズログ文庫)読了日:12月27日 著者:汐邑 雛
月とうさぎのフォークロア。 St.1 月のない夜、あるいは悩めるうさぎ。 (GA文庫)月とうさぎのフォークロア。 St.1 月のない夜、あるいは悩めるうさぎ。 (GA文庫)読了日:12月25日 著者:徒埜 けんしん
ある小説家をめぐる一冊 (富士見L文庫)ある小説家をめぐる一冊 (富士見L文庫)感想ぶっきらぼうな口調にいろいろ不安になるぐらいの生活破綻ぶりと不思議な力を持つという小説家。そして愚直で強面で家事に気の利く編集者。これは形は違えど主従ものの香り。とすれば、信頼関係がある程度できてきた次からが見どころか。この一冊では空野の力のことといい、どうにもまだ狐につままれたような感じがしてならない。読了日:12月24日 著者:栗原 ちひろ
愛玩姫の調教 (乙蜜ミルキィ文庫)愛玩姫の調教 (乙蜜ミルキィ文庫)読了日:12月22日 著者:月森 あいら
ドラゴンの塔 下巻 森の秘密ドラゴンの塔 下巻 森の秘密読了日:12月21日 著者:ナオミ・ノヴィク
ドラゴンの塔 上巻 魔女の娘ドラゴンの塔 上巻 魔女の娘読了日:12月20日 著者:ナオミ・ノヴィク
艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!5 (ファミ通文庫)艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!5 (ファミ通文庫)感想窮地に陥った仲間を自分たちだけでも救い出そうと動きださずにはいられない必死さ、駆逐艦の意地だね。(当時は)駆逐艦だけでしかクリアできなかったゲームの3-2の条件をしっかり落としこみつつ、今回も熱い駆逐艦魂を見せてもらいました。名誉駆逐艦の絆も、いいものですね。あと、陽炎が呉で訓練されすぎて軽巡洋艦娘からの鬼のしごきを率先してこなそうとしてひかれてるのは笑った。読了日:12月17日 著者:築地 俊彦
エルフ・インフレーション 1 (ヒーロー文庫)エルフ・インフレーション 1 (ヒーロー文庫)感想頭はよくないけど超楽天的な主人公。いいよね。おかげでたいていの展開は雰囲気暗くならずに明るく楽しめる。才能はあるけど魔力はない魔法使いのサラが、魔力はあるけど魔法の才能がない主人公の魔力を使ってめちゃくちゃなレベルの魔法をぶっ放して辺り一帯焦土にしちゃったのは笑った。オーバーキルすぎる。ついでに主人公も殺しそうになってたし。ラストが唐突すぎるきらいはあったけど、ともあれ次も楽しみにしたい。読了日:12月16日 著者:細川 晃
異世界修学旅行 2 (ガガガ文庫)異世界修学旅行 2 (ガガガ文庫)読了日:12月15日 著者:岡本 タクヤ
手のひらの恋と世界の王の娘たち (電撃文庫)手のひらの恋と世界の王の娘たち (電撃文庫)読了日:12月15日 著者:岩田 洋季
本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第一部「兵士の娘II」本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第一部「兵士の娘II」読了日:12月13日 著者:香月美夜
The Inquisitor's Tale: Or, The Three Magical Children and Their Holy DogThe Inquisitor's Tale: Or, The Three Magical Children and Their Holy Dog読了日:12月10日 著者:Adam Gidwitz
蜘蛛ですが、なにか? (カドカワBOOKS)蜘蛛ですが、なにか? (カドカワBOOKS)感想転生王子の妹のブラコン王女が気になりますね。まだちっちゃい女の子だからこその可愛らしさがあるけど、ともあれ小さいころから才能を褒めそやされてきた兄の姿をすぐそばで見ながら育つうちにすっかり懐いていっしょじゃなきゃいやという気持ちがふくらんでるの、いいですよね。その実、才能にあふれてるのは妹のほうで、妹の前でかっこわるいところは見せられないとがんばってきたというシュンもいいよね。お兄ちゃんだね。読了日:12月10日 著者:馬場 翁
艦隊これくしょん -艦これ- 鶴翼の絆 (4) (富士見ファンタジア文庫)艦隊これくしょん -艦これ- 鶴翼の絆 (4) (富士見ファンタジア文庫)読了日:12月09日 著者:内田 弘樹
軍服の花嫁 (ソーニャ文庫)軍服の花嫁 (ソーニャ文庫)読了日:12月09日 著者:富樫聖夜
サボテン王子のお姫さま (ソーニャ文庫)サボテン王子のお姫さま (ソーニャ文庫)読了日:12月06日 著者:八巻にのは
いじわる令嬢のゆゆしき事情 灰かぶり姫の初恋 (角川ビーンズ文庫)いじわる令嬢のゆゆしき事情 灰かぶり姫の初恋 (角川ビーンズ文庫)読了日:12月05日 著者:九江桜
造られしイノチとキレイなセカイ (HJ文庫)造られしイノチとキレイなセカイ (HJ文庫)読了日:12月03日 著者:緋月 薙
灰と幻想のグリムガル level.3 思い通りに行かないのが世の中だと割り切るしかなくても (オーバーラップ文庫)灰と幻想のグリムガル level.3 思い通りに行かないのが世の中だと割り切るしかなくても (オーバーラップ文庫)読了日:12月01日 著者:十文字 青
読書メーター
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 04:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書まとめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月08日

なんちゃってシンデレラ 王宮陰謀編  旦那様の専属お菓子係、はじめました。

なんちゃってシンデレラ 王宮陰謀編 旦那様の専属お菓子係、はじめました。 (ビーズログ文庫) -
なんちゃってシンデレラ 王宮陰謀編 旦那様の専属お菓子係、はじめました。 (ビーズログ文庫) -

王太子のナディル殿下に現れた変化が、いいですよね。実のところ、いまのアルティリエと接しだした前の巻からすでに変化はあったようなのだけれど、主人公にとっては実質的に会ったばかりのお相手であって。ふだんのナディルがどんな人で、二人でいるときにどんな態度を取るのかなど、他人から聞いた不確かな情報しかなかったため、あれが普通なんだと思ってしまうんですよね。けど、そうじゃなかったと。ナディルのことをよく知る弟殿下や幼なじみの側近たちが、そのわかる人にだけわかるとてつもなく大きな変化に驚いているのを知るにつれ、ああ、これ、主人公がすごい変化をもたらしてるんだろうなと実感させられる。この描き方、いいですよね。いやまあ、よくよく考えれば、抱っこで移動がデフォルトだったりと、いくらすでに結婚済みとはいえ、事前の情報からしてみればちょっと甘々すぎませんかと思うところもなきにしもあらずだったはずなんですが。でも、初対面のなぜか不機嫌オーラ出しまくってたときからそうだったんですもん。しかたないじゃないですか。あれ? なんか感覚おかしくなってきてる?

というわけで、アルティリエとナディルとのやりとりだけでもうもう満足度の高いお話にしあがっておりましたですよ。王太子として公正無私な態度を私生活においてまで貫いてきたナディルが、アルティリエといるときだけは自然体な態度で笑ったり、子供っぽくふてくされたり、主人公のほうでもナディルが守ってくれているとわかるからこそ、いきなりいつどこで命を狙われるかわからないアルティリエとしての生活を送らざるをえなくなったにもかかわらずそんな不安とうまく折り合いをつけて過ごしていられている。二人の時間を過ごすうちにできあがってきたこの打ち解けた雰囲気がですね、とてもいいと思うんですよ。ご立派な王太子殿下だと周りから思われて、そう期待されるがゆえにそうふるまいつづけているナディルの、そうではない一面につっこみを入れてみたり、そっけなく見えてしまいがちなちょっとしたメッセージにも愛おしさを感じたり、いやもう本当にいい雰囲気の二人ですよ。その合間に、主人公と交代するように消えていったしまった本当のアルティリエのナディルへの想いがかいま見える場面があったりするのが切なかったりしますが。

ともあれ、Arcadiaで読んでたときも、たしかこういう空気をいいなあと思っている間に事件の黒幕のこととかわりと忘却の淵へと追いやられていったような記憶もあったりしますが、今回ラストで結構そちら方面で大きな動きとなりそうな気になるところで終わってましたね。ここまでくるともう未読か既読か判然としないので、とてもつづきが気になります。

それと、前の巻にひきつづき、カバー下に舞台となる国の地図と、今回は宮殿の見取り図もついてましたね。あとがきにてふれられているので、これで多くの人が気づくと思いますが、知らなかったという人は見てみるのもいいと思います。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 15:07| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月04日

愛玩姫の調教

えろ要素のある話を読んでえろかったと書くだけの感想。に、またなってしまった気がする。

愛玩姫の調教 (乙蜜ミルキィ文庫) -
愛玩姫の調教 (乙蜜ミルキィ文庫) -

あらすじから期待していた通りの話を楽しませてもらいました。闇オークションで競り落とされ、所有者となった二人の男から代わる代わる与えられる快楽に翻弄されるばかりの羞恥の日々を送ることになった亡国の王女フランシスカ。望まぬ快感にのぼりつめさせられ、懇願しても止むことなく与えられる快感の数々に、早く終わってほしいと考える余裕さえなく押し流されていくままだった彼女が、あるときを境に変貌する。その後の姿はまるで主従が逆転したかのようで。満たされない心のままに彼女をよがりくるわせて愉しもうとする男に向けて自ら体を開き、自分の手で性感を高めてみせる姿の艶やかさ。かと思えばはちきれんばかりの欲望をたぎらせる男を制して、もっと甘えていいのだと、本当に望むものをさらけだしていいのだと慈愛の抱擁で包みこむようにしてみせる扇情的なしぐさ。そうして溺れるように彼女を求めだした男たちの心の奥深くにある部分を感じながらふけりゆく悦楽の世界の尽きせぬ心地といったら。何度達しようと放そうとしない男たちから与えられる強すぎる刺激に視界をちかちかと明滅させ、快感がどこからくるのかもわからないほどに頭の中まで蕩けきらせながら、深い満足感とともに果てていく情感の描写。素晴らしかったですね。

タイトルの「調教」とはいったい、フランシスカに対するものなのか、ダリウスとサディアスに対するものなのか。めくるめくような退廃的な世界でしたね。いやいいものでした。

あらすじから期待する話に入るまでにすでに全体の2/3が終わってたり、キャラの心情の変化が章と章の間で起こっているきらいがあるように思えもしましたが、それでも期待通りの素晴らしい話、楽しませてもらいました。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 20:43| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月02日

ドラゴンの塔 (上)魔女の娘 / (下)森の秘密

ドラゴンの塔 上巻 魔女の娘 -  ドラゴンの塔 下巻 森の秘密 -
ドラゴンの塔 上巻 魔女の娘 -  ドラゴンの塔 下巻 森の秘密 -

すごく面白かった。世界観、キャラクター、そして主人公の物語、そのどれをとっても素晴らしいファンタジー作品だった。もともとアメリカのSF・ファンタジー系のいくつもの賞で話題になっているのを目にしてて気になっていたのですが、期待にはずれぬ面白さで、いやもう満足満足。

なにがよかったかって、一番はやっぱり主人公であるアグニシュカが魔女としての道をかきわけ進んでいくことになる彼女の物語ですね。

魔法使いとしては、彼女の最初の師である〈ドラゴン〉を含めて何人も登場するのですけど、その中で彼女、完全に異質なんですよね。異端的ともいいますか。この世界の魔法使いというのは基本的に理論だった魔法を使うようで、国に登録されている魔法使いは皆、得意不得意はおそらくあるにせよ系統立てられた魔法を覚え使っているんですね。ところがアグニシュカの場合は完全に我流で、長年にわたって積み上げられた理論なんておかまいなし。呪文がところどころ間違ってようが効果自体は発揮させちゃったりするものだから、そんなことがあっていいはずがないと〈ドラゴン〉がキレそうになってたりしてておかしいのなんのって。上巻の前半はそんな感じのコミカルなノリもあったりして、楽しい場面も多かったですね。

とはいえ、話の舞台となる世界はそんなに楽しいとばかり言っていられるようなところでもなくて。主人公の生まれた村は深い森に接しているんですけど、この〈森〉というのがたいそうおそろしいところでして、穢れを宿しているんですよ。魔物が生み出されて付近を襲ったり、穢れを周囲にまき散らしたり。それらの対処を誤れば、文字通りに近くの村が飲みこまれてしまいかねないという。そんな邪悪な〈森〉との戦いがこの作品の大きな側面のひとつでもありました。

〈森〉絡みの事件が起これば主人公にとっても他人事ではなく、大切な人たちが巻きこまれることになる。役に立ちそうな魔法なんてろくに覚えていなくとも、事態を打開できるかもしれない選択肢があるなら手をこまねいてなんていられるはずもなく。ただただなんとかしなければという気持ちにつき動かされる中で開花していくアグニシュカの魔法の才能。それこそが感覚派の彼女の覚醒の瞬間でもありました。筋道だてられた理論ではなく、感覚で答えを見つけてしまう。誰にとっても唯一の正解ではなく、解答ありきでその時々によって自在に変化する解法を見出してしまう。再現しろといわれても難窮してしまう、おそらく当代で彼女にしか使えない魔法を駆使して〈森〉と戦い、その真実に近づいていくアグニシュカの姿は、まさに魔導書を通した彼女の魔法の師である〈妖婆ヤガー〉を彷彿とさせる魔女でした。

言ってしまえばこの話は、アグニシュカが魔女としての生を歩むようになるまでの物語だったといえるのかもしれません。〈ドラゴン〉や〈ハヤブサ〉といったこの国の魔法使いたちと彼女とではかなりの違いがありましたし、生まれからも魔法の能力からも〈森〉ほど彼女の魔法を活かせる道はあまりないことでしょう。正統派の魔法使いたちからすれば異様であやしげなイメージは免れられないかもしれませんが、それでも彼女の成し遂げたこと、その物語は深い印象を受けずにはいられないのです。その後の世界で彼女の名が歴史の奥底に埋もれていってしまわないといいなと思いますが、どうなることやら。訳者あとがきにて触れられているラストのちょっとしたネタのように、ひょっとしたらこの世界の民話の中に生きつづけるようになるのかもしれませんね。

それと、忘れていけないのは、アグニシュカの親友であるカシア。このキャラクターの存在が、自分をこの物語に没入させる要因になってくれたとも思っています。

カシアはアグニシュカと同じ村で生まれ育った少女で、すぐに服をぼろぼろに汚してしまう特技(?)の持ち主であるアグニシュカとは違って、辺境の村育ちにしては品があって、見た目はきれいだし、料理もうまいという非の打ちどころのないヒロインで、物語の始まった当初、領主である〈ドラゴン〉が領内の村から10年に一人召し上げていく娘はこの少女になるだろうと誰もが思っていたというのもうなずける人物像。けれど実際に選ばれたのはアグニシュカだったというところから話が進んでいくのですが、そのままフェードアウトして〈森〉に襲われる村娘Aみたいな立ち位置になってしまうかと思えばそんなことはなく、その後もアグニシュカの親友として、ほとんどヒロインといってもいいくらいの見事な役割を果たしてくれました。

特に上巻の山場が彼女の危機にあったのは間違いないでしょう。〈ドラゴン〉に召し上げられてからしばらくぶりに会ったカシアは、自分が選ばれると思っていたにもかかわらずそうはならず代わりに選ばれたアグニシュカに対してなんらの含むところも見せることなく、それどころか突然領主の塔で暮らすことになったアグニシュカを気づかうことまでしてみせて。あんまりにもいい子なので、彼女のことを失ってしまいたくはないと、なんとか助かってほしいと、アグニシュカともども願わずにはいられませんでしたね。上巻の山場というか、シリーズのクライマックス以上の山場だったような気すらしてますが、それはともかく。

その後も、物語の舞台が都に移ったりした後においてもカシアは結構キーになる役割を果たすんですが、そんな中でも持ち前の気丈さ、勇敢さを失わず、アグニシュカを助けながら立ち回る彼女は本当にこの物語のヒロインだったと思います。でも、思い返せば彼女、いちばん最初から、純粋に〈ドラゴン〉に目をとめられたアグニシュカをかばって自分の身を差しだそうとしたり、きわめて献身的な少女ではありましたね。彼女も彼女で、状況的に物語のその後ではいろいろ大変なことになりそうですが、きっとなんとかしてしまうことだろうと思わせる強い少女でもあります。というか、その後がいちばん気になるのはアグニシュカよりも彼女だったりします。

そんな感じで、ネビュラ賞・ローカス賞・ミソピーイク賞受賞の話題のファンタジー作品、とても楽しませてもらいました。周りに読んでいる人が見当たらないのが寂しいですが、個人的にはライトノベルを読んでる人にも勧めれるのではないかと思っています。特に、ひと頃の少女小説、今だとWeb小説からの書籍化として出てくるような一部の作品を好きな方に向けて、でしょうか。なぜかロマンスな描写が出てくるので児童向けとはとても言えませんが。

ともあれ、ドキドキハラハラしながらも最後にはあたたかな気分になれる、訳者あとがきより「おとなのためのお伽ばなし」。東欧はポーランドの民話をもとにしたという物語。気になる方はぜひぜひ。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 13:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月26日

The Inquisitor's Tale: Or, The Three Magical Children and Their Holy Dog

The Inquisitor's Tale: Or, The Three Magical Children and Their Holy Dog -
The Inquisitor's Tale: Or, The Three Magical Children and Their Holy Dog -

英語の文章をいろいろ読んでみたいと思って手を出してみた一冊。レベル的には小学生が読む児童書レベル。もうちょっと英語力があるつもりでいたんですが、これでもわりと単語を調べ調べ読んでいく感じになったので、自分にとってちょうどいいかやや簡単な程度のレベルだったのではないかと思います。それでも話を楽しみながら読んでいくにはちょうどいいくらいだったのではないかと。

内容としては、13世紀の若きルイ9世のフランスを舞台に、神の奇跡の力を持った3人の少年少女と1匹の犬を主役にして、彼らのことを直接見聞きした人々によって語られる二人称小説。

先見の力を持つジャンヌ、人並み外れた膂力を持つウィリアム、癒しの力を持つヤコブ、死んでよみがえった犬のグウェンフォルテ(この読み方でいいのかは不明。原語ではGwenforte)の3人と1匹が主人公。とある酒場に集った人たちによって物語の語り手に彼らの生まれ育ちが語られだし、出会った3人と1匹が国王と王太后によるユダヤ教文献に対する焚書から書物を守ろうとする事件のところで時系列が追いつき、その後は語り手の視点によって彼らの導く結末が描かれていく。

面白かったですね。あくまでも向こうの児童書レベルということもありますが、なじみの深い中世ヨーロッパを舞台にしたファンタジーであり、単語以外の背景にある文脈を理解するには特に困らず。3人の少年少女たちが無理だと思われた壁を乗り越えて目的を達成する流れは、越えるべき壁の困難さ、それを乗り越える彼らの力の奇跡のような発揮され方に、周囲の人々ともども「祝福あれ」と唱えたくなってしまいそうな盛り上がりがありました。

というのも、彼らが作中で戦った大きな障害が、ドラゴンと、王の軍勢でしたからね。巨大なドラゴンが出てきたときには、こんなの勝てるわけないじゃんと思ったりもしましたが、本当になんとかしてしまったからすごいというか。言ってしまえば勝つ必要はなかったとはいえ、騎士でさえ命を落としてしまうドラゴン相手にうまく立ち回る彼らの力はただの人のものとは思えないものがありましたよね。まあただ、なんというか、そのドラゴンの必殺技が「ドラゴンズ・ブレス(屁)」というのはさすがにどうかと思いましたが。おかげで、まず鼻が曲がりそうな悪臭が届いて、その直後に爆発的な熱が襲いかかってきてまたたくまに人が焼け焦げるという、地獄のような光景が現出してしまったんですが……。

国王や王太后のユダヤ人やユダヤの教えに対する態度は、まああんなものでしょうか。合従連衡上等なイベリア半島の人びとに比べて、フランス人は十字軍士として熱狂的なところがあったように思えますし。むしろ国王が小作人の娘、半分イスラームの血を引いた肌の黒い大男、ユダヤ人、犬とかいうぱっと見いかにもうさん臭い彼らの奇跡の力にひれ伏すほどの寛容性を持ち合わせたキャラクターとして描いていたことに驚いたり。いや、これも神に対する尊崇の念の為せるものといったほうがいいかも。信仰と合理性の天秤の上でとらえるのではなく、たとえそれを行ったのがどんな相手でも神がなさしめた行いならば敬意を表す。そんな篤い信仰心・正義感の持ち主であったととらえるべきでしょうね。さすが当時のフランス人……などと偏ったイメージで語ってみる。

巻末にキャラクターを創りだすうえで参考にした実在の人物についての簡単な解説も付されており、歴史好きとしてはそこも含めて楽しい一冊でした。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 16:12| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月24日

軍服の花嫁

えろ要素のある話を読んでえろかったと書くだけの感想。ティーンズラブ系の読み方として間違ってる気がしなくもない。

軍服の花嫁 (ソーニャ文庫) -
軍服の花嫁 (ソーニャ文庫) -

中盤の官能描写がかなりよかった。名目だけの側室になったはずがあやしまれないためにと体を求められて、香油の催淫効果もあいまって初めてなのに簡単に高みに追いこまれてしまうレイスリーネの感度のよさ。助けを求めてバードの名を口にしてしまったために王から執拗なまでの激しさで責めたてられて、何も考えられなくさせられてしまう激流のような快感の描写。さらにそれを連日連夜求められ、憎めば憎むほどに自分から秘所を濡らして求めだし、そんな自分のことがわからなくなりながらぐずぐずになるまで悦楽の淵を漂うレイスリーネの退廃的で艶やかな様子。とてもよかったですね。

同じ世界観で書かれた3冊目の話のようですが、ほかの話は読んでなくても問題なく楽しめました。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 04:46| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月20日

2016年11月の読書まとめ

11月は11冊。10月終了時点ではなんだかんだとそのまま小説から遠ざかっていくこともありそうに思えていましたが、結局戻ってきました。やっぱりね、小説を読むという行為がいちばん自然体で楽しめる、慣れ親しんだ趣味なんですよね。歴史も歴史で好きだし、そちらの系統の本を読むことが面白いのも事実ではあるんだけど、長期間それだけで走りつづけていられるほどの知的な体力はないと痛感させられてしまうんですよね。合間合間で小説をはさみながらであればもう少し続けていくこともできたように思うんですが、そうするとなかなか読み進まないことでストレスを感じてしまうし、かといって小説は読みたい本がすでにたまりにたまっていることもあり、一冊手を出したらもう一冊もう一冊と際限なく手を出さずにはいられなくなってしまうことがわかりきっていて。自分の中ではちょっとした時間に行える息抜きという立ち位置にはなれないものになってしまっているんですよね。結局ほかに代わりになれるものもなく、11月の上旬を終えるころには歴史方面はすっかり息切れ状態に陥っていました。そうしてまたどうしたものかと悩んだりもしましたが、最終的にはこれ以外まともにできることなんてないなーと小説を読むことに帰り着きました。なんというか、以前にも通った道のような気がして、いったい何をしているんだろうかとむなしくなってもきますが、精神的に心機一転できたということで、またいろいろ読んでいきたいところです。

短期的とはいえ、いちど小説を読むことから離れてまた戻ってきたこともあって、これを機会にともともと新刊の刊行から遅れに遅れていた読書ペースをいったん白紙に戻しまして、その時点の新刊からまた読んでいくことに。くわえて、ちょうどSUGOI JAPAN Awardの候補やこのライトノベルがすごい!のランキングが発表されたこともあり、疎くなりかけている世間の人気作に追いつくべくそれらも参考に読んでいこうかと考えているところ。投票企画は参加して、自分自身その盛り上がりに加わってこそ芯から楽しめるものだと思いますので。

そんなこんなで、11月読んだ中からのお気に入りは以下の3冊。

[☆☆☆☆]りゅうおうのおしごと!  感想
りゅうおうのおしごと! (GA文庫) -
ライトノベルより。将棋をはじめて3か月そこそこの、押しかけ弟子の小学生・あいが見せる気迫。そのあきらめをよしとしない勝負へのこだわりに才能の片鱗を感じさせられる白熱の将棋ラノベ。熱い。

[☆☆☆☆]ゲーマーズ! 雨野景太と青春コンティニュー  感想
ゲーマーズ! 雨野景太と青春コンティニュー<ゲーマーズ!> (富士見ファンタジア文庫) -
ライトノベルより。誤解に誤解が積み重なってどんどん愉快な人間関係ができあがっていくゲーマーたちの(ラブ)コメディ模様が面白い。

[☆☆☆☆]ティアリングの女王(下)  感想
ティアリングの女王 (下) (ハヤカワ文庫FT) -
海外ファンタジーより。即位まもない女王として教えを仰げる者はなく、信頼すべき女官にさえコンプレックスを隠せない。そんな後世に讃えられるという女王像からは距離のある未熟さを抱えながらも女王になるべく教えこまれた信念を貫き通す、その姿に未来の希望を見出さずにはいられないのです。

以下、読書メーター貼り付け。これもいつ以来でしょうか。もう1年以上貼れてなかったような気がします。

11月の読書メーター読んだ本の数:11読んだページ数:3169ナイス数:10オーバーロード7 大墳墓の侵入者オーバーロード7 大墳墓の侵入者読了日:11月30日 著者:丸山 くがね
安達としまむら (電撃文庫)安達としまむら (電撃文庫)読了日:11月28日 著者:入間 人間
りゅうおうのおしごと! (GA文庫)りゅうおうのおしごと! (GA文庫)読了日:11月27日 著者:白鳥 士郎
最後にして最初のアイドル最後にして最初のアイドル読了日:11月26日 著者:草野 原々
ゲーマーズ! 雨野景太と青春コンティニュー (富士見ファンタジア文庫)ゲーマーズ! 雨野景太と青春コンティニュー (富士見ファンタジア文庫)読了日:11月25日 著者:葵 せきな
Re:ゼロから始める異世界生活2 (MF文庫J)Re:ゼロから始める異世界生活2 (MF文庫J)読了日:11月23日 著者:長月 達平
僕たちは同じひとつの夢を見る (集英社オレンジ文庫)僕たちは同じひとつの夢を見る (集英社オレンジ文庫)読了日:11月21日 著者:縞田 理理
なんちゃってシンデレラ 王宮陰謀編 異世界で、王太子妃はじめました。 (ビーズログ文庫)なんちゃってシンデレラ 王宮陰謀編 異世界で、王太子妃はじめました。 (ビーズログ文庫)読了日:11月20日 著者:汐邑 雛
異世界修学旅行 (ガガガ文庫)異世界修学旅行 (ガガガ文庫)読了日:11月18日 著者:岡本 タクヤ
本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第一部「兵士の娘I」本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第一部「兵士の娘I」読了日:11月16日 著者:香月美夜
ティアリングの女王 (下) (ハヤカワ文庫FT)ティアリングの女王 (下) (ハヤカワ文庫FT)読了日:11月15日 著者:エリカ ジョハンセン
読書メーター
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 16:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書まとめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする