2017年02月07日

あの娘にキスと白百合を(1)

あの娘にキスと白百合を 1<あの娘にキスと白百合を> (コミックアライブ) -
あの娘にキスと白百合を 1<あの娘にキスと白百合を> (コミックアライブ) -

いい。うん、いいね。この白峰さんと黒沢さんの関係。特に白峰さん側から見た感じ。それまでの自分のお株を奪うような何をやらせても一番な黒沢さんの登場に目の上のたんこぶが現れたようないらだちを隠せなくなっていって、でもどれだけ努力を重ねても追いつけない腹立ちが重なって本人に当たり散らしたら逆に気に入られてしまう出だし。嫌いな相手のはずなのに、なついたワンコみたいに無邪気な好意を寄せられると、心許せるわけではないんだけどペースを崩されてしかたがないという焦り具合がとてもかわいくて。たまに天才肌の黒沢さんにストレートに「2番」であることを突きつけられてぐさっときたりもしてますが、なんだかんだでほだされてきてる白峰さんはまあいい人ですよねということで。

それと、瑞希と萌の関係も。ときどき飛び出すクール系な萌による瑞希相手のナチュラルにひどいひと言に笑う。表に出るのは瑞希から萌への好意が中心ですけど、瑞希は自分を好きとはっきりわかってる上でからかってたり、なんだかんだで瑞希との関係を大切に思っていることが伝わってくる描き方をされていたりと、なかなか印象的なペアではあります。
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2017年02月06日

男装王女の華麗なる輿入れ

男装王女の華麗なる輿入れ (ビーズログ文庫) -
男装王女の華麗なる輿入れ (ビーズログ文庫) -

勢いに任せてぐいぐい進めてく感じのこの展開、嫌いじゃないです。考えるのが苦手な脳筋主人公リュカリスのもてなしに、愛想のかけらもなかったアルトゥールがだんだんと諦観に流されていく様子が見てて哀れを誘ったというか。でも、ほとんどはリュカリス側の視点なので、婚約者にどれほどそっけなくされても超絶ポジティブに解釈しまくって無理やりにでも仲良くなろうとするパワフルさが気持ちよくもありました。最後は男装の騎士らしく男らしくしめてくれた感がありますが、それと同時に本当にあの設定で話を一冊分もたせやがったと驚いてもいたり。
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2017年02月01日

ヒロインな妹、悪役令嬢な私(2)

ヒロインな妹、悪役令嬢な私2 (PASH! ブックス) -
ヒロインな妹、悪役令嬢な私2 (PASH! ブックス) -

クリスティーナって実はバカだったんだろうか。そんなことを思ったり。いや、前の巻ですでにマリーワからつっこまれてはいたけど、でもまだクリスの自称天才ぶりを否定できるほどの要素はなかったと思うんですよ。そりゃあときに抜けてる部分もあってマリーワに怒られたりもしてましたけど、勘所はしっかり押さえて年齢不相応なまでの礼儀と教養を身に付けてたはずだし、びしっとすべき場面ではシャルル命名:第二形態で見事にそれをこなしてみせることもできましたし。なので、涼しい顔でそれをやってのけてたわけではないにしても、自画自賛もこめての天才という自称には、ほほ笑ましい気分になりながらもクリスらしいと首肯させられるものがあったはずなんですよ。

けど、この巻の前半を読んでると、なんかもうやっぱりただの自称天才なんじゃないかというか。実は頭悪いんじゃないかというか……。ほほ笑ましい気分で擁護するにはさすがに隙が多すぎやしませんかね、このクリスティーナさんは。人目につくところではないから周りからの評価はそれほど傷つかないとはいえ、サファニアにいやがらせするつもりで自身のうっかりから自爆したり、王太子と低レベル極まる煽りあいをしたりと、読んでいてだんだんとアホの子を見るような目になっていくのを禁じえなかったというか。まあ、偉そうな王太子殿下相手に一切の遠慮なくさらに偉そうな態度でやりこめるところとかは最高にクリスティーナらしかったけど! 「めっちゃ我がままで自分がいちばん偉いと思ってるお貴族様」そのままで、否定できるところなんて少しもないんだけど! というか、それを作中でもつっこまれてて笑っちゃったんだけど、それでもそこに嫌みが少しもなくてむしろミシュリーの言うようなかっこいい印象を与えてくれるのがクリスティーナだけど! 

いやもう、笑った笑った。

でも、この巻の終盤になって、そうしてバカをやっていられる時間は終わってしまったと、そういうわけなんですね。小説家になろうにおけるいわゆる「悪役令嬢もの」の流れを汲むこの話はいよいよ本格的な幕開けを迎えると、そういうことなるようで。

この急展開はとにかく衝撃的でした。「悪役令嬢もの」の型となるゲーム世界に当てはめると、本来の主人公は妹のミシュリーで、彼女に立ちふさがる悪役令嬢の役に当たるのがクリスティーナという構図。このシリーズでは始まった当初からクリスティーナはミシュリーのことを世界でいちばん可愛く思ってて、ミシュリーもクリスティーナ以外のことはわりとどうでもよく思ってるくらいにお姉様中心に世界ができててと、決まりきった枠なんて知ったことかとばかりにシスコン姉妹ぶりを発揮しまくって、ここまでほほ笑ましい気分にさせてくれる関係を見せつけてくれてはいたんですけど……。将来的にも、仲がよすぎて独り立ちが心配ではあったけれど、そのままなら仲のいい姉妹としての幸せを見つけていってくれそうな、そんな関係だったはずなんですよね。

それなのに、そうなる未来は決して許されないとばかりの急展開。クリスが憎むところの運命によるものか、それとも血のつながらない妹であるミシュリーの出自が持つ因縁によるものか、どちらかが不幸にならなければならないとでもいうかのような転機を用意してくるのは、クリスならずとも呪詛の一つや二つを吐きたくなるような展開ですよ。二人がいっしょで幸せで、それでいいじゃないですかと言いたくなってしまう。シャルルも交えてわーわーきゃーきゃーやってるのって実に可愛らしくて、それだけで満ち足りた空間みたいな感覚さえ覚えさせてくれるものがあったんですから。

けど……なんですよね。どうしてと思うと同時に、この非情な展開を心の底から「いい」と思っている自分もいるんですよね。どうすればいいのかと正解のない苦悩に陥ることになったクリスティーナが下した決断。それがめちゃくちゃ自分好みの展開で。

そうなんですよ。クリスティーナは物語開幕当初からどこまでもぶれることなく妹第一のシスコンだったんですよ。そこにミシュリー自身の意思の介在があったとかどうとか言われてもいましたが、そんなことは抜きにしても、ミシュリーを世界で一番かわいいと思っていたのはまぎれもない事実で、シャルルのことを好きになっても、将来あとを継ぐことになる父親に逆らうことになっても、ミシュリーのことをなにより優先するのがクリスティーナという存在だったんですよ。それを妹ぐるいと呼ぶ者がいたとしても言わば言え。可愛がるに値する者をそれに値するだけ可愛がることになんのおかしなことがあるというのか。ましてミシュリーはお姉様大好きで甘えたがりな妹なのだから。

だから、二人のうちどちらかが未来を奪われることになるというのなら、自分から奈落の底に落ちていく。ミシュリーには真意など知ってもらう必要もなく、彼女が幸せをつかむための踏み台になれるならと、そのことに慰めさえ見出してみせる。これこそはクリスティーナというキャラクターの真骨頂でしょう。心を鬼にして悪役令嬢としての道を歩み始める彼女の心情が痛いほどに伝わってくる、なんとも胸に迫る展開。

けれど、素晴らしいのはそれだけではなくて。姉の突然の変化に不審を感じたミシュリーが、同じくシャルルが、サファニアが、レオンが、これまで彼女が心許してきたキャラクターたちが、いきなりそんなことになってしまったのには訳があるはずだと、そんな運命からクリスを救い出さなければと、それぞれ手を組んで動き出そうとする。これほど盛り上がる展開がありますか。願望交じりで期待せずにはいられないじゃないですか。

次回、最終巻。動き出す悪役令嬢の物語。その行く末が楽しみでなりません。


そうそう、それと、昔話で出てきたマリーワとイヴリアの関係性もとてもよかったんですよね。クリスティーナにとっては頭の上がらないマリーワが、イヴリア相手だと飄々とからかわれるのに感情を乱されて、淑女らしくない舌打ちまでしたりして。後年のマリーワがイヴリアを嫌いだったと思い返すことには間違いはないんでしょうけど、それでも気を許したような会話ができている場面を見るにつけ、嫌い以外のなんらかの感情を見出したくなってしまいます。その場面のイラストにただよう色っぽさのせいかもしれませんが。
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2017年01月31日

霊感少女は箱の中

霊感少女は箱の中 (電撃文庫) -
霊感少女は箱の中 (電撃文庫) -

『断章のグリム』は読む機会を逸してしまった感があるとはいえ、『Missing』や『夜魔』を楽しんだ読者としては、この作者さんの新作を読まないわけにはいかないでしょうということで。試し読みで読めた範囲での第一章のおまじないで起きた心霊現象も、作者さんらしくなにか来ると思わせてその期待通りにぞっとさせてくれる展開とその描写で、これだけでもうつかみはばっちりというもの。

けど、一番よかったのは何かというと、ラストに明らかになる今回の事件の真相だったんですよね。主人公である瞳佳の友人の麻耶という少女については、最初から多少予想はついてましたが、一部は当たりで、でも予想を超えたところで今回の事件にかかわっていて、そのかかわり方がとてもやるせない気持ちにさせられるものだったんですよ。瞳佳にとってはどうしようもないところで事件にかかわりを持つことになっていて、けれど彼女によって事件が決定的に悲劇の様相を帯びることを定めてしまった。それは瞳佳自身も考えたように、まさに瞳佳によって今回の事件が起こされたという決して動かすことのできない事実を彼女に突きつけるもので。巻き込まれた人たちの末路が悲惨なものであればあるほど、その数が一人二人と数え上げられていくことになればなるほど取り返しのつかない罪悪感に苛んでくれて。とても素晴らしい読後感に浸れる話でしたね。こういうの大好きです。もともと霊媒体質で心霊的な事件に巻き込まれがちだったという瞳佳ですけど、今回の事件ののち、どんな精神状態で学校生活を送ることになるのか。似たような境遇の真央とどんな関係になっていくのか。たいへん気になりますね。
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2017年01月29日

インヴィジブル・シティ

インヴィジブル・シティ (ハヤカワ・ミステリ文庫) -
インヴィジブル・シティ (ハヤカワ・ミステリ文庫) -

閉鎖的なユダヤ人のコミュニティに、自分を置いて出ていった片親がユダヤ人という出自のおかげですんなりと受け入れられて他紙の記者にはつかめなかった真実に近づいていくことになる奇妙な縁。面白かったですね。

宗教色の強い生活を送るユダヤ人社会を舞台にしながらも、その中で信仰生活に抑圧を感じる者、疑問を感じる者、けれど信仰を離れることを考えているわけではなく、より生きやすい生活、幸福になれる生活をあくまでも同じ信仰の内側で模索する人々の信仰生活の描写がよかったです。価値観とか道徳とか常識とか、分かちがたく生活の根底に根差している感じ。大仰に感じるようなものではなく、宗教ってこういうものなんだろうなあと。

被害者の情報も、一人の知人・縁者から聞いてわかった気になっていたらそれはあくまでも一面的なことにすぎなくて、信用を得ていくうちに何回かにわたって何人にも聞きこみを重ねていくことで後半にまでいたってやっと詳細な為人がわかる流れもよかった。何方向からも情報が集まることで平面的なプロフィールが立体的な奥行きを持ちはじめるようだったというか。この辺は、もしかしたらミステリーならそれほど珍しくはない描写かもしれませんが、普段読まないジャンルでもあり、新鮮に楽しむことができました。

最後、余韻を残しながらもこのまま続けようと思えば続けれそうな感じの終わり方だったなあと思っていたら、やっぱり本国では続編も出ているようで。そちらも邦訳を期待したいですね。今回の事件の取材を通して、嫌いだとばかり思っていたところから印象が変わってきた母親と出会うとしたらどんな再会になるんだろうかと、とても気になります。
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2017年01月28日

艦隊これくしょん −艦これ−  陽炎、抜錨します!(6)

艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!6 (ファミ通文庫) -
艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!6 (ファミ通文庫) -

陽炎、中間管理職的役職を拝命す。目の前で直率の駆逐隊5人を嚮導してればそれでよかった立場から、いきなり鎮守府に所属するすべての艦娘および事務作業等に関する処理を請け負う秘書艦になってしまいてんてこ舞いの陽炎の様子が面白かった一冊。着任早々、山のような書類を目の前にして途方に暮れてしまったかと思えば、前任者から仕事のコツを教わるうちに肩の力を抜いて駆逐艦陽炎らしい要領のよさと体当たりで解決するスタイルで秘書艦の任務もすぐに板についてしまうのが彼女のすごさであり。これを見せつけられると、期待の有望株という各所の評判も、陽炎がとまどうような買いかぶりというわけでもなく素直にうなずけてしまうところ。作戦指揮に関してはまだ迷いもみられるようですが、これも経験を積んでいけばなんとかしてくれることでしょう。弱気になったところを助けてくれる駆逐隊の仲間もいたりと、ここまでの第十四駆逐隊の嚮導としての経験が結実したこの秘書艦回だったように思いますね。曙はツンデレかわいい。次がもう最終巻ということで、名残惜しいところではありますが、どんな終わり方をしているのか、楽しみにしたいと思います。
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2017年01月26日

本好きの下剋上 〜司書になるためには手段を選んでいられません〜(2)神殿の巫女見習い(1)

表記上わかりにくいですがシリーズ4冊目。

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第二部「神殿の巫女見習いI」 -
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第二部「神殿の巫女見習いI」 -

階級が違えば常識が違う。平民である一人の兵士の娘から貴族階級である神殿の巫女見習いへと立場が変わると、これまた転生時のような感覚の違いに悩まされることで。第一部後半でようやく慣れてきたと思ってきたところにこれなのでまたまたてんてこ舞いになるわけですが、深刻になりすぎずにコミカルささえ感じさせてくれるのはマインの愛嬌のおかげでしょうか。本を読むことが大事でそのほかのことをめんどくさいからと無視してたら問題が起きたり、その性格を神殿でもさっそく覚えられて本を読ませないぞとちらつかせながら巫女見習いとしての学習をさせられたりとか、立場が変わって大変なときでもマインはやっぱりマインなんだなあと思わされるエピソードの数々にくすっとさせられるのがとても安心させてくれます。

階級と常識・感覚の違いをいちばん感じさせてくれたのはルッツとルッツのお父さんとのいざこざを神官長立ち会いのもと解決に導いた場面だったでしょうか。ルッツのお父さんは平民として、もっというと一人の職人としての理屈と感覚を言葉少なな性格とともにルッツにつきつけるんだけど、頭ごなしの否定に思えるその言葉が神官長の求めに応じて背景的な考えが明らかになってくるにつれて互いの認識の齟齬がわかってくる流れ。面白かったですね。ルッツのお父さんがあまりにも言葉少なすぎだったり、家族間のコミュニケーション不足だったりした面もあったとは思うのですが、ここで思わされるのは読者である自分も、この世界の昔気質の職人の感覚はあまり共有できていないものだったんですよね。マインという平民育ちの主人公に近い位置の人としてなんとなく理解できてきている気もしていましたが、ところ変われば常識も変わる。わかった気になっていると思わぬ勘違いをしてしまうこともあるのでしょうね。貴族階級の、人を使うのが当たり前、むしろ使わないのが非常識という感覚も、われわれ現代人からするとなじむのに苦労しそうですが、まあその辺はマインとしては慣れないとどうしようもない世界ですので、なんとかしていってくれることを期待しましょう。

メインの舞台が変わって主要な登場キャラにも変化があり、登場頻度が減ったことをさびしく思うキャラもいますが、ともあれ第二部もまだはじまったばかり。どんなところに落ち着くのか、どんなことをしでかしてくれるのかと、楽しみにしたいですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 21:52| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月21日

エクレア あなたに響く百合アンソロジー

エクレア あなたに響く百合アンソロジー -
エクレア あなたに響く百合アンソロジー -

百合アンソロジーという響きが素晴らしく聞こえる今日この頃。

どの話も10ページから20ページ台くらいの短編で、あまり情感を感じさせる間もなく終わってしまう話もありますが、設定からだけでもそこはかとなく漂う百合の匂いに目を細めて楽しむことができる話ばかりでありました。

●缶乃「無職とJK」
これはとても続きを読みたい話。ストレートに慕ってくる女子高生相手に真央がいつまで子供に対する大人として接していられるかがとても気になる年の差百合。最後のモノローグにもあるように、転がりこんでしまえば大人としての面子的なもの以外はすべてうまいこと解決しそうな構図なので、いつ転ぶのか、どう転ぶのかと、想像を膨らませるだけでも楽しさがあります。

●伊咲ウタ「かみゆい」
話のテーマでもある髪の描き方がたいへん眼福ものでした。チカがいじってみたいと思うカオルのさらさらつやつやとした髪、そう思うチカ本人のかわいく編みこまれた髪、とてもよかったですね。実際にカオルの髪をまとめることになった場面での静謐さの中にただよう色気もやばくて。ほかの作品も気になる作者さんですね。

●伊藤ハチ「うさぎのベルとオオカミさん」
これはもうなによりベルちゃんがかわいいですね。ちっちゃいながらも喫茶店の店員として素直で一生懸命なところとか。笑顔の似合う頑張り屋さんですね。そんなうさぎ娘の隣に表情に乏しいオオカミのお姉さんを並べるビジュアルが、なにか、こう……いいものがありました。

そんなところで、百合として楽しめてるかどうかはよくわからないところありますが、たくさんの短編が収録されているので、少なくともいくつかはいいものが見つかりますねということで。今後読むマンガの参考になればと思うところです。
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2017年01月18日

ヒロインな妹、悪役令嬢な私

ヒロインな妹、悪役令嬢な私 (PASH!ブックス) -
ヒロインな妹、悪役令嬢な私 (PASH!ブックス) -

なんだろう、この可愛いキャラクターたちは。自他ともに認めるシスコンで天才と自称してはばからない主人公クリスティーナ、お姉さまがこの世のすべてともいえそうなレベルで大好きな妹ミシュリー、社交の場で出会ってクリスティーナ大好きになる婚約者のシャルル。この3人が絡むともうとにかく可愛くて可愛くて。ミシュリーもシャルルもクリスティーナにもっと自分のことを構ってもらいたくてしかたないちびっこたちだから、こんなやつよりも自分を自分をときゃいきゃいけんかしながら主張しあってるのがたいへん可愛らしくて。シスコンなクリスティーナ視点では天使なはずのミシュリーの見えてはいけない黒い部分がのぞいちゃってたり、シャルルもふだんはわりとのんびりしたマイペースな感じなのにガチにマジげんかに発展しそうになってたりして軽くイメージがぶち壊されちゃったりもするんですが、そんなことさえほほ笑ましく思えてしまうのが幼い子どもたちのやりとりというもので。クリスティーナとしてもどちらもどちらで好きだからなんとかかんとかなだめすかそうとする苦労が手に取るようにわかるのがたいへん面白いんですよね。もう延々この3人だけで話を循環させててもいいんじゃないかというか、それがすなわち天国なのではないかと思ったりもしましたが、まあそれでは話が進みませんか。

けどやっぱり話の軸としてはクリスティーナがミシュリーのことを世界一可愛く思っているということで。シャルルのことも好いているとはいっても、やはり婚約者としての初来訪時にミシュリーとけんかするようなら帰れと真顔で言い放つシスコンぶりがクリスティーナというキャラクターの核なのであって。なによりも妹を可愛がりまくるのがクリスティーナらしさではあるんですよね。ミシュリーのほうでも、自分のことをかわいいとくりかえしくりかえし言ってくれるクリスティーナの自信にあふれた物腰をかっこいいと言って応えたりして。3人からシャルルを抜いた姉妹もたいへん愛くるしい仲のよさで。もうもう、この二人だけでも至福の姉妹愛空間でございました。

その一方で、マリーワとのやりとりはとにかくコミカルで。ムチまで持ち出す厳しい指導からエスケープしては怒られて、自分は天才なんだから本番ではあっと驚かせてやると大見得を切っては詰めが甘くて怒られてと、とにかくクリスティーナが調子に乗っては鬼の指導で泣きを見る展開に笑わせてもらって。でも、そうして何年も指導に当たってきたために本質的なところではだれよりもクリスティーナのことを理解していて、というギャップがたまに胸を打つからずるいんですよね。特にラストなんて、なんかもうじんとくるものまでありましたからね。というか、冒頭であの文章があっての、結局あれは何だったんだろうと思っていたらラストの場面ですから、一冊の本としての作りのうまさですよね。思わずうならされる構成の妙。たまらない満足感の残る読後感でした。

最近完結巻の出たシリーズではありますが、まだまだいろんな人に読まれるべき作品ではないでしょうか。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 14:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月16日

七王国の騎士

七王国の騎士 (氷と炎の歌) -
七王国の騎士 (氷と炎の歌) -

時代は違えど、やりきれない苦みとどこからかわき上がる高揚感が残る読後感。これこそは、この作者の描く『氷と炎の歌』の世界ですね。

そんなわけで、本編のおよそ100年前の世界を描いた外伝です。ウェスタロス大陸がまだ竜の紋章のターガリエン家によって一応の平穏に包まれていた時代。がたいがいいことだけが売りの放浪騎士ダンクこと〈長身のサー・ダンカン〉と、ふとした縁から彼の従士となることになった生意気盛りの少年エッグの二人を主役にした、中編3編からなる一冊。

やっぱり自分はこの世界の物語が好きなんだなあと再確認させてくれる話ばかりでしたね。一応続編の構想はあるらしいですが(本編の作業優先であと回しになってるらしい)、これだけで終わってても全然問題ない作りですし、『氷と炎の歌』シリーズに興味がある人、でも本編は分厚くて気おくれしてしまうという人に、まずはこの本から試してみてはと勧められる一冊だったと思います。ドラマ版もいい入り口になっているとは思いますが、映像と小説ではやっぱり受ける印象が違うと思うので。もしかしたら細かい部分でよくわからない箇所があるかもしれませんが、気になったら本編も読んでみてはというところ。そしてもし、この本の話が面白いと感じられて、もっとこういう話を読んでみたいと思った人には、迷わず本編へ進んでいただければ幸いです。そこには驚愕と興奮の戦乱の世界が待っていますので。


というところで、初心者の方向けの紹介はここまでにして、以下は*SPOILER ALERT*の注意書きのもとに感想を書いていきます。

まず読んでいてツッコミを入れずにはいられなかったこととして、「本編の100年前の話のはずなのに、本編にも登場してた人物がいるんですけど!」というのははずせませんね。いやまあ、御年100歳超という話ではありましたが。でも、100年ですよ? 1世紀もの時間というのは、地上に生きる人をまったく新しい世代に交代させるのにじゅうぶんな時間であるはずで。まして、医療技術の発達していない中世をモチーフにした世界ですよ。そんなところにこれでしたからね。登場人物紹介を見てもしやと思いはしたものの、為人を聞くにどう考えてもあの人で、驚くやら笑えてくるやら。とはいえ、そういう人物がいたからこそ、本編との地続きな世界をより一層感じることができたようにも思えたり。

100年もの隔たりがあれば社会にも大きな違いが生じるもの。上でも書きましたが、この外伝の舞台になるのはターガリエン家の御代のウェスタロス。牡鹿の紋章のバラシオン家はまだ諸侯の一角にとどまっていて、そしてなにより、本編で描かれているような予断を許さない過酷な戦乱の時代ではない。〈ブラックファイアの反乱〉と呼ばれる内乱が終結したのが10年ちょっと前のことで。ターガリエン家にその象徴たるドラゴンはすでにないものの、しかし彼らの統治を覆せるほどの勢力はまだなく。一朝ことが起これば国がひっくり返りそうな危うさはありながら、それでも表面上は王家の威勢を保ちつづけているという、そんな時代の話。

それと、季節も違いましたね。本編では、スターク家のモットーにもあるように、冬がやって来ようとしている厳しい環境での物語。それに対してこの外伝は夏。夏の入りから盛夏にかけてという感じでしょうか。短い夏の後に長い長い冬がやってくるという独特な循環をする気候であり、移り変わりに年単位の期間が普通に経過するという世界なため、話と話の間で数年が経過していますが季節は変わらず夏のまま。そんな、うだるような暑さの中での話。

話の内容を見ても、様々な地位や年齢の人物たちの視点から描かれていく本編とは違い、この外伝では視点人物は放浪騎士のダンクに固定されており、いわば下々の立場から見たウェスタロスが描かれていたように思いました。放浪をつづけながらも食い扶持は稼がねばならず、そのためにあれこれしてみるも王侯貴族たちの気まぐれによっては簡単に首が飛んでしまいかねずという、数日先は闇な世界。本編を読んでいると立場が上の人たちにもいつ不測の事件が起きて一族郎党もろとも生死にかかわる事態になるかわからない、油断大敵な暴力の階層社会を思い知らされたりもしたんですが、一方のこちらはある程度のところ「なるようになるし、なるようにしかならん」といった深く考えないことによる気楽さが根底にあるようにも思えたり。正直どっちもどっちな感じですが、この誰も彼もがしんどい生を過ごしているようにうかがえるところが、この世界観の面白さでもあると感じています。

では、この世界における騎士とはどんなものなのか。ダンクについては先ほどちらっとふれたとおりな感じですが、本文中で称していた“草臥しの騎士”だけが騎士であるわけではなく、というよりも彼らは騎士の中でも最底辺に位置する宿無し(つまり主のない)の放浪騎士にすぎないのであって。作中に登場する人物たちをながめていると、貴族階級の出身者が多いんですよね。公の位を有する有力諸侯の子息でさえも、位を引き継ぐ前は騎士としての敬称で呼ばれている者が少なくない。しかし騎士という言葉が指す人々には、上流貴族の子弟であろうと生まれの卑しい民であろうと関係なく含まれている。そこに共通するのはサー・〜の称号のみ。なので、典型的な騎士とはとなると、ちょっとイメージしにくい。現代に生きる我々が「騎士」という言葉からぱっと浮かべるイメージとしては、本編に出てきた〈花の騎士〉あたりが近いでしょうか? ほかの人物を思い浮かべる人もいるでしょうが、生まれが卑しく華やかさに欠けるダンクがそこにあがることは考えにくい。けど、それにもかかわらず、ダンクは一面的な騎士の理想像として描かれているんですよね。

強きを挫き、弱きを守ること。主君に忠節を尽くすこと。誇りと正義を忘れぬこと。それらは権力や財力や諸々を含めた力こそがすべてという有り様をことあるごとに見せつけてくるこの世界においても、騎士のあるべき姿としての共通理解が広く浸透しているようで。乱世ではない時代だからこその価値観なのかもしれませんが、だからこそそうありながら五体無事に諸地方を放浪していられるダンクの姿がとても稀有なものとして映るんですよね。まあ実際ダンクのような人物はこの時代でも珍しいようですし、精神的にも肉体的にも大けがは何度もしてるんですけどね。でもダンクの場合はそれでも懲りないというか、間違ったことをしたとは思っていないというか、そもそも過去のことを深くはかえりみない性格というか、騎士の務めを果たすべき場に居合わせると結局は考えるよりも先にあるべき行動をとっている。この辺は師であった〈銅貨の村のサー・アーラン〉の薫陶によるものでしょうか。もしかしたら「うつけのダンク」の本領なのかもしれませんが。しかしなんにせよ、彼ほど純粋に騎士道を体現している人物は出てこない。下層の者はその日の糧を得るために悪賢く立ち回り、上層の者は家や体面にしばられずにはいられなくて。なまじ世故に長けた者ほど保身の術を覚えていって、「うつけのダンク」だけが騎士としてあるべき行動を取ることができる。騎士というのは本来高貴な者の務める身分であるだろうはずなのに、この現実はなんという皮肉でしょうか。しかし、騎士道とは臣下の道とは似て非なるもの。「鈍なること城壁のごとし」。それはどんな世間のわずらわしさに対しても純粋な生き様を保ちつづけられることへの賞賛の言葉ともなりうるのではないかとも思ったり。

とはいえ、ダンクがそうありつづけられていることには、エッグの存在を見過ごすことはできないでしょう。老師と死に別れたダンクが道すがら出会った生意気ながらも愛嬌のある、妙に従士としての知識に長けた少年エッグ。彼が何者かについては、すぐに見当がつくところがあったので別段驚きはありませんでしたが、その豊富な知識も含めて、がたいがいいだけで頭のよくないダンクをくりかえし助けるに余りあるものではありました。彼がいなければダンクはいったい何度命を落としていたことか。とはいえ、エッグも少年らしく世間知らずなところがあって、ダンクより知恵はまわるものの詰めの甘さは隠しようもない。二人そろってそんなだからはらはらさせられることといったら。やはりこの時代は100年後と比べると平和な時代なのでしょう。総じてスマートに事件を切り抜けるということとは縁のないコンビではありました。でも、そんな二人が彼らのままやっていけるということが、この世界ではとても貴重なことだと思うのです。


さて、そんなところで各話感想を。ここからはSPOILER ALERTの度合いがさらに増しますのでお気を付けを。

「草臥しの騎士」

個人的にはこの話がいちばん好きです。本編っぽい雰囲気をいちばん感じたというか。出来した問題をなんとかクリアーすることができたと思ってほっとひと息ついた瞬間にうしろから頭をがつんとやられる展開がいかにもこの世界の話で、最初呆然としながらも読んでるうちにだんだん意味がわかってきて頭抱えながらにやにやとしてしまったことといったら。なんてことをしてくれおった。なんてことをしてくれおった……。この話を通してエッグが正式にダンクの従士になることもあり、その点だけ見ればいい話なんですが、崩れ去ったものがあまりにも大きすぎて慰めにはなりきらないという。やばい。

この一冊の中ではいちばん王族、つまりはターガリエン家の人々が登場する話でもありましたね。くわえて貴族の各諸侯家も。バラシオン家の〈笑う嵐〉は後世のロバート・バラシオンを彷彿とさせる人柄で、血筋ゆえだろうかと思ったり。それはそれとして、この話の時代の前の御世が下劣王とわれるエイゴン四世だったり、話中に登場する王子のエリオンの血の気の多さだったりと、ターガリエン家ろくでもない人物が多いなと思わされる話でもありました。そりゃあ打倒もされますわといいたくなるところなんですが、本編読んでるに最後の王はもっとやばかったみたいなんですよね。エリオンなら、もしかするとあのまま玉座に就いたらそんな感じになるのかもと思わせるところがありましたが。

「誓約の剣」

この一冊でいちばんハッピーエンドっぽかった話ですね。というか、この世界の話としてはこれはもうハッピーエンドといいきってもいいのではないかと思うのですがどうでしょうか。これはもう戦争だと思ったところから万事円く収まる急展開。ダンクが気を失っている間にほとんどすべてが終わってしまったので、彼ともども何が起きたかわからず呆気にとられた感じになるんですが、まあ解決したならいいか的な。ダンクもあとに残る形ではなくとも報われましたし、これ以上なにを望むことがあるでしょうか。……いやだって、この世界のことだから、欲張ったらその瞬間に利子つけて取り返されそうじゃないですか。

〈ブラックファイアの反乱〉が王土に残した影の深さに驚かされる話でもありました。15年もたっているというのに、正当な王に味方した者と反乱軍に味方した者の間で厳然とした戦後の立場の差が生まれている。そして、反乱軍とは自らそう名乗るものではないという、言われてみれば当然の事実が心に深く刺さる。この元反乱軍に所属した者の哀愁がなにより印象深い。

あと、レディー・ローアン・ウェバー、夫に4人も先立たれているという経歴で、〈紅後家蜘蛛〉とかいう毒々しい通り名にもかかわらず、その正体は25歳の可愛らしい少女然とした淑女とかいろいろ反則じゃないでしょうか。

「謎の騎士」

冒頭に書いたどこからかわき上がる高揚感をいちばん感じさせてくれたのはこの話。後世においてはひとつめの話と比べると歴史に埋没していってしまう話なのではないかと思うのですが、その背景にわたる話の規模、後世につながる影響を考えればいちばん大きな話だったんですよね。そんな危険な事態が進行しつつあるその渦中にダンクとエッグがひょっこり乗りこんでしまい……という、ある種ユーモラスな状況でありながら、決してコメディではないこの世界の物語としては洒落にならない大立ち回りが演じられることになるという。そんな、当事者のだれにとってもどうしてこうなったというしかないだろう展開で、けれどそんな中に下々の放浪騎士であるダンクの視点からはなかなか見えない上流階級の人々の思考が見えてくる。そうしてみると、いずれ本当にそんな世界にダンクが立ち入ることになる日がくるのかと、あわよくばの期待がふくらんでしまうのを禁じえないんですよね。

その一方で、おそらく『氷と炎の歌』シリーズの初心者の方が理解しづらい部分があるとしたらこの話だろうなとも思います。前の話と同じく〈ブラックファイアの反乱〉の影が絡んでくるんですが、本編第五部の訳者あとがきでもふれられていた本編とのつながりがここで明らかになりますし、〈血斑鴉〉の不気味なまでの暗躍ぶりは本編におけるあのキャラと同じ秘密を抱えているものと推測できますし。この辺はもう、気になる方は本編も読んでくださいとしかいえないところですね。

〈ブラックファイアの反乱〉関連についてもう少し。一方の雄であったデイモン・ブラックファイアって、そんなに正嫡の太子を廃してまでもと思われるほどに人望ある人物ではあったんだなあと驚かされる。よく考えればそうでもなければ反乱なんて起きないのではありますが。でも、その太子だってのちに有徳王と呼ばれている賢君なわけですよ。それなのに国を割るほどの内乱が起きてしまったというのは、ちょっと信じがたいところですよね。うかがい知ることができるかぎりでは、有徳王たるデイロン2世は武人としてはおそらくそれほどの才能がなかったんだろうというところ。政治面とか人を使う能力とか、そういった武人として以外のところで秀でていたのだろうけれど、太子時代にそれが世に知られることはなかったということなのではないか。そう考えると、ぱっとしない太子に対して名のある武人たちに慕われる異母弟という危険な構図が浮かび上がる。まあ、最後の一押しをしたのはエイゴン下劣王らしいので、やっぱり末期のターガリエン王家はろくでもないというところで話が落ちるのですが。


訳者あとがきがないのがやや物足りないですが、それについては先月発売のS-Fマガジン2月号もしくはcakesにて読むことができるので、自分のようにそちらも楽しみにしていた方はぜひ。

あとそういえば、この本からはすこし逸れるんですが、この感想を書くために本編の付録の年表を見返してたら、後の代の王様があの人物になってて特大の驚きを得た次第。そう思うと、この外伝シリーズの話も、印象が変わってくるところがあるような、ないような。いずれにせよ、やっぱりこのシリーズのつづきも出してほしいと思ってしまうところです。


そんな感じで、期待通りに楽しめる話ばかりで、たいへん満足のいく一冊でした。本編第6部はあいかわらずいつ出るかはわかりませんが、出れば面白いのはわかりきっているので、作者には気の済むまで作業を続けてほしいところです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 21:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする