2017年04月23日

本好きの下剋上 〜司書になるためには手段を選んでいられません〜(3)領主の養女(2)

本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第三部「領主の養女II」 -
本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第三部「領主の養女II」 -

立場が違えば善悪も違ってくる。養っている町長たちによってひどい目にあっている孤児を救ったつもりが、町長たちの側からすれば突然やってきた権力者に無理を押しとおされた形になっていたという。いいことをしたつもりなのに、実は全然ありがたがられてないどころか理不尽な権力者と映ってしまう。このすれ違った認識の発生が面白い。善とは何か、悪とは何かという問いになってくるところでしょうか。この場合、それはさしずめ見方によるというところで。ローゼマインにとっては間違いなく善行のつもりであったわけですよ。ひき離されそうになっていた孤児の家族をひきとったわけですから。第二部以降でくりかえし描かれてきた家族に対する思い入れの深さからも、あそこでのマインの選択はとても自然なものではありました。自明の理ともいえるほどに当然の善行とも。ひきとられた孤児たちにしても、最悪の事態を回避できたことは間違いなくいいことだったでしょう。けれど、一方の町長たちにとっては、なにも彼らを苦しめたり虐げたりすることが目的だったわけではないのであって。そこには一面的にはひどい目にあわせていると見える行為をも含んだうえで成り立っている人の営為があったわけで。それだけ取り除いてみたところで別のところにしわ寄せがいってしまう。そういう構造が存在してしまっていたんですよね。それを知らずに一か所だけ手入れをしていいことをした、一件落着と思えてしまったのは、事情をよく知らなかったからこその楽観でしょうか。あるいは権力の強さ・こわさというか。たまたま目についたことに介入するにも綿密な調査をしたうえでとなれば、ほかにもたくさん仕事を抱えている関係上、いちいちめんどくさいことこのうえない。その点、即座にばさっとやってそれまでということにしてしまえば楽だし気持ちもすっきりすると思うんですよね。そうして、下々の者から見たときには横暴な権力者ができあがっていくという。ローゼマインとしては、これまで偉い人たちの理不尽な要求にてんてこまいにさせられていきただけに、同じ立場に立たされる人の気持ちはよくわかっているはずなんですけど、それでもいつのまにか横暴を押し付ける側に回ってしまっていたということで。なかなか面白い展開でしたね。って、まだこの話つづいてますっけ。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 21:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月18日

citrus(1)新装版

citrus (1) 新装版 (IDコミックス 百合姫コミックス) -
citrus (1) 新装版 (IDコミックス 百合姫コミックス) -

親の再婚で姉妹になったふたりが、キスしたり密着したりキスしたり押し倒したり……いいですよいいですよー! 

とくに妹のほうの芽衣。品行方正な生徒会長かと思えばギャルっぽい見た目の柚子よりもはるかにキスに手慣れた感じがあって、あわてる柚子の反応を見て楽しんでいる風さえあるくらいなのが、読めない本心と合わさってドキドキさせてくれる魅力にあふれてて。けれどその一方で、真正面から向けられる熱い気持ちには弱かったりするのがかわいらしくもあり。

それに対して柚子はわかりやすい性格なんだけど、主人公としてはそれがまたよくて。つかめない芽衣の言動に動揺させられて、翻弄されて、平常心を失わされているうちに目が離せなくなっていくのがシンクロしていく感じ。オーバーヒートしすぎて自分でもわけわかんなくなってる感じのその感情がどう転がっていくのかと、楽しみな話ですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 20:14| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月17日

兄の嫁と暮らしています。(1)

兄の嫁と暮らしています。(1) (ヤングガンガンコミックス)
兄の嫁と暮らしています。(1) (ヤングガンガンコミックス)

嫁と暮らすJK、いいですね……。しかもこの嫁、ちょくちょく天然でのろけ話をくりだして自爆してるのがとてもかわいい。こんな嫁とJKのふたり暮らしとか、いいですよね。まあ兄の嫁なんですけど。

もともと他人だったこともあり、いっしょに暮らしているといっても家族としての気の置けない関係とまではいかなくて、まだお互い相手になるべく迷惑をかけないようにと遠慮しあっているところがあって。けれど少しずつわがままも言えるようになっていってるペースがいい感じであり。

そしてこの嫁なんですけど、兄の嫁であることから、主人公であるJKとの関係は義理の姉妹になるんですよね。つまり、嫁(兄の)であり義姉である人と同居してるJKという。本当にいいですよね……。義妹であるJKのことが心配で、精神的に不安定な時期だから(自身もそうだけど年上であるだけに)頼りにしてほしいし、けれど互いの距離感を手探りしながらの状態であるためにあまり気持ちを押し付けることもできず、ちゃんとお義姉ちゃんをできてるんだろうかと悩んでいる場面が印象的な人であり。そしてだからこそ、冗談のつもりだったとはいえ、JKのほうからわがままを言いだしてくれたことにぱっと顔を輝かせるのがとてもかわいらしい人であり。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 16:11| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月14日

あの娘にキスと白百合を(3)

あの娘にキスと白百合を 3 (MFコミックス アライブシリーズ) -
あの娘にキスと白百合を 3 (MFコミックス アライブシリーズ) -

やったー! 白黒がメイン(のひとつ)の話だー! 白峰さんのこと大好きな黒沢さんにペースを乱されまくりな白峰さんはやっぱりかわいい。さらに今回は、ライバル視してる黒沢さんから無邪気な好き好き攻勢を発揮されてやりにくそうにしてるいつものパターンに加えて、いつのまにかそんな白峰さんの反応を見こしてからかって楽しんでるようなやりとりも見かけられるようになってる? これは策士ですわ。なまじ白峰さんがライバル意識から意地になって素直になりきれないでいるだけに、余計にドツボにはまってしまって赤面してる姿がとてもいい。というか、黒沢さんも1巻当初の記憶と比べるとだいぶ表情豊かになってきましたよねとも思ったけど、だいたい白峰さんほかごく一部にだけで、それ以外の人に対してはナチュラルにひどい態度だったりするからやっぱり笑う。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 17:03| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月11日

左遷も悪くない(1)

左遷も悪くない〈1〉 (アルファライト文庫) -
左遷も悪くない〈1〉 (アルファライト文庫) -

悪くない。それどころかむしろ、めちゃくちゃいい。

単身、地方に追いやられた武骨な軍人ウリセスが、赴任先で嫁を取り、新たな家族との交流を通してあたたかな関係が築かれていく。そのエピソードの一つひとつがすごくいいんですよ。結婚して、新しい家庭がはじまって、お互いの理解を深めていって、相手の家族とも交流してと、書いていくとなんでもないことのようなんですけど、それでも実際に読んでみると心あたたまる話にしあがってるのは、人と人の物語だからこそでしょうか。

当初のウリセスの心算としては、本人も言っていたように、特別な期待なんてなにも抱かずに決めた結婚だったはずなんですよね。そろそろ身を固めてもいい年齢だと、そんなくらいの気持ちで。結婚してもなにが変わるでもなく、それまで通りに仕事をこなすだけだと。そう思っていたはずなのに、すぐにその結婚生活を悪くないと思うようになり、妻となったレーアやその兄弟たちとの交流が重なっていき、いつしか新たな家族を交えた生活が日常になっていく。仕事ひと筋だった実直な男が、家族とにぎやかに過ごす時間に幸せを覚えるようになっていく。この変化がものすごくよかったんですよ。見合いもなにもなく決まった結婚だからというのもあるのでしょうけど、結婚する両者にはそれぞれに身に着けてきたペースがあって、積み重ねてきた人間関係があって。それがすり合わされていくのが結婚生活なんですね。おおげさな言い方をすると異文化交流みたいなところがあるようにも思えますが、人と人との物語ということでしょうね。今ちょうどこういうの大好きなんですよ。家風というといいすぎですけど、言動の端々から、それぞれの家に形成されてきた人のあり方がありありと浮かぶようなというか。

それと、レーアのほうでも、父から話を聞かされていた憧れのウリセスと結婚できることになって、けれど彼の妻としてふさわしい女としてふるまわねばとプレッシャーを感じていたのを、ウリセスの言葉をはげみにがんばって、いつしかすっかり年下の弟たちをはげます側に回れるようになっていく流れもとてもよくて。仕事ひと筋で生きてきたウリセスのメソッドはどうにも上官と部下の関係のようでおかしくはあるんですが、ウリセスに対して愛情よりも憧れが先に立つレーアとしてはこのうえない激励のように感じている心情がとてもほほえましくて。そんなレーアもラスト付近ではすっかり違和感なくウリセスの妻としての立場に収まってて。これも結婚を通しての変化ですね。よいものよいもの。

とはいえ変わらないところもあって。その筆頭はなにをおいてもウリセスの仕事に対する誠実さでありまして。それが望外の結果として結実した新実の儀のエピソードは胸にしみる素晴らしい話でした。

そんな感じで、たいへん素晴らしい余韻にひたれる一冊。ありがとうございました。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月07日

2017年3月の読書まとめ

3月は19冊。20冊に届かなくなってしまった……。やはり平日にあまり読めなくなってきてるのが響いてるか。なんとかしたい。なんとかしたいんだけど、あらためてふりかえってみても特に忙しいスケジュールではないはずなので、どこをどうしていいのかよくわからないのが正直なところ。とりあえず、だらだらと手をつけてるやりたいこと・やるべきことを整理していくと、一気に進めるべきこととコツコツ積み上げていくべきことにわかれると思うので、その辺の調整かなーとは思いますが、ほかは本当になにも浮かばないという。遅れてた新刊チェックがまた最新に追いつけたので、それでちょっとずつ持ち直せないだろうかと考えてみたり。

いちおう、マンガや雑誌等を合わせた読了数としては40冊と、前の月と比べれば増えてすらいるんですけど、肝心のカウントしてる小説の読了数がこれではなんともかんとも。

3月読了分からのお気に入りは以下。上からお気に入り順。

[☆☆☆☆☆]本好きの下剋上 〜司書になるためには手段を選んでいられません〜(2)神殿の巫女見習い(4)  感想
本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第二部「神殿の巫女見習いIV」 -
ライトノベルより。ファンタジー。前の世界とこの世界を通して培われてきたマインの家族への思いが胸に迫る。

[☆☆☆☆]パレス・メイヂ(2)  感想
パレス・メイヂ 2 (花とゆめコミックス) -
マンガより。お気に入りに対する特別な表情を見せるようになった少女帝のかわいさたるや。

[☆☆☆☆]ソードアート・オンライン(9)アリシゼーション・ビギニング  感想
ソードアート・オンライン (9) アリシゼーション・ビギニング (電撃文庫) -
ライトノベルより。ファンタジー世界観のゲームの世界をSF的にとらえる描き方が実にいい。

[☆☆☆☆]裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル  感想
裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA) -
ライトノベルより。百合。ぼっちガールと非日常な美少女、命が危険にさらされる怪異と渡り合う経験を経ての、相手のことを必要と思う感情の発露がとてもいい。

次点としては、まず『魔法密売人 極道、異世界を破滅へと導く』(感想)を。異世界を手玉に取ろうともくろんだ末の皮肉な結末がやるせなくもたまりませんでした。加えて『本好きの下剋上 〜司書になるためには手段を選んでいられません〜(3)領主の養女(1)』(感想)も。少しずつ見えてきた貴族社会の様相がとても気になります。


そんなこんなで、月の後半になるにつれて読書の満足度というか、本を読んだという実感が薄れてきているような気がする今日この頃。数の上ではそんなに変わりはないはずなんですけど、原因不明の忙しさで疲れてるせいか、あまり素直に物語を楽しめなくなっているようにも思えたり。更新数が減っているのもその表れか。かといって、疲労回復を優先させて本を読むことをあきらめようとすると、それはそれで心がすさんでくるという。もうどうすりゃええねんというところ。

以下、読書メーター貼り付け。

3月の読書メーター読んだ本の数:19読んだページ数:6142ナイス数:4

ソードアート・オンライン (9) アリシゼーション・ビギニング (電撃文庫)
ソードアート・オンライン (9) アリシゼーション・ビギニング (電撃文庫)読了日:03月02日 著者:川原 礫
魔法密売人 極道、異世界を破滅へと導く (電撃文庫)魔法密売人 極道、異世界を破滅へと導く (電撃文庫)読了日:03月04日 著者:真坂 マサル
逆転召喚 2 ~裏設定まで知り尽くした異世界に学校ごと召喚されて~ (ダッシュエックス文庫)逆転召喚 2 ~裏設定まで知り尽くした異世界に学校ごと召喚されて~ (ダッシュエックス文庫)読了日:03月05日 著者:三河 ごーすと
やがて恋するヴィヴィ・レイン 2 (ガガガ文庫)やがて恋するヴィヴィ・レイン 2 (ガガガ文庫)読了日:03月06日 著者:犬村 小六
泣き虫姫が政略結婚したらとろとろに愛されました (乙蜜ミルキィ文庫)泣き虫姫が政略結婚したらとろとろに愛されました (乙蜜ミルキィ文庫)読了日:03月07日 著者:玉木 ゆら
黎明国花伝 星読の姉妹 (富士見L文庫)黎明国花伝 星読の姉妹 (富士見L文庫)読了日:03月09日 著者:喜咲冬子
アサシンズプライド 暗殺教師と無能才女 (ファンタジア文庫)アサシンズプライド 暗殺教師と無能才女 (ファンタジア文庫)読了日:03月10日 著者:天城ケイ
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習いIV」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習いIV」読了日:03月13日 著者:香月美夜
龍と狐のジャイアント・キリング  2.空飛ぶ機兵の大胆な墜とし方 (HJ文庫)龍と狐のジャイアント・キリング 2.空飛ぶ機兵の大胆な墜とし方 (HJ文庫)読了日:03月14日 著者:神秋昌史
ヤンデレ妹に愛されすぎて子作り監禁生活 (二次元ドリーム文庫)ヤンデレ妹に愛されすぎて子作り監禁生活 (二次元ドリーム文庫)読了日:03月14日 著者:栗栖ティナ
裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA)裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA)読了日:03月16日 著者:宮澤 伊織
壁と孔雀(ハヤカワ文庫JA)壁と孔雀(ハヤカワ文庫JA)読了日:03月20日 著者:小路 幸也
ソードアート・オンライン〈10〉アリシゼーション・ランニング (電撃文庫)ソードアート・オンライン〈10〉アリシゼーション・ランニング (電撃文庫)読了日:03月20日 著者:川原 礫
逆転召喚 3 ~裏設定まで知り尽くした異世界に学校ごと召喚されて~ (ダッシュエックス文庫)逆転召喚 3 ~裏設定まで知り尽くした異世界に学校ごと召喚されて~ (ダッシュエックス文庫)読了日:03月22日 著者:三河 ごーすと
異世界王子の年上シンデレラ (レジーナブックス)異世界王子の年上シンデレラ (レジーナブックス)読了日:03月23日 著者:夏目 みや
黎明国花伝 茅舟の王女 (富士見L文庫)黎明国花伝 茅舟の王女 (富士見L文庫)読了日:03月26日 著者:喜咲冬子
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女I」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女I」読了日:03月28日 著者:香月美夜
異世界で奴隷になりましたがご主人さまは私に欲情しません (eロマンスロイヤル)異世界で奴隷になりましたがご主人さまは私に欲情しません (eロマンスロイヤル)読了日:03月29日 著者:鳥下ビニール
後宮詞華伝 笑わぬ花嫁の筆は謎を語りき (コバルト文庫)後宮詞華伝 笑わぬ花嫁の筆は謎を語りき (コバルト文庫)読了日:03月30日 著者:はるおか りの
読書メーター
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書まとめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月01日

本好きの下剋上 〜司書になるためには手段を選んでいられません〜(3)領主の養女(1)

本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第三部「領主の養女I」 -
本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第三部「領主の養女I」 -

領主 とは

前回でもちらっと疑問に思いはしたんですが、第二部ラストの素晴らしさにすべて持っていかれた感がありまして。感想でも触れないままになってはいたものの、今回読んでてあらためてよくわからなくなってくるのがこの「領主」という地位ですよ。ローゼマインが養女として親子関係を結ぶことになった御家ではあるんですけど、この世界においてどの程度の立場なのか、微妙によくわからないんですよね。自分が領主という言葉を聞いてぱっと思い浮かべるのは、伯爵とか公爵とか、そういう爵位持ちで、王や皇帝なんかの主君から与えられた領土を統治する貴族のことで、家来や領民たちからすれば主ではあるものの主君に対しては仕える側に回る、いわば中間的な統治者なのであって。けれど、これまでの作中の説明では、ローゼマインが養女として迎えられた先は、中上級貴族と書かれていた人たちよりもさらに上に立つ権力者であるらしく。少なくとも伯爵の地位にある者が領主よりも下の地位と思われることは確かなんですよね。それどころか、前回から登場したギーベという称号が領主から土地を与えられた貴族を意味するものとして存在しているようで。このあたりのことを考えあわせると、領主の地位というものは少なくとも侯爵級以上。家来筋の者たちの爵位も自らの手で与えていると仮定すると、国王レベルの独立君主である可能性まで考えられるんですよね。まだ領地の外のことがよくわからないので確かなことはなんともいえませんが。

ともあれ、第三部のタイトルにもあるように、マインあらためローゼマインが養女となった先は、いち兵士の娘としての出自からしてみればとんでもないほどに高貴な領主様のもとで。新しい戸籍上の貴族の母や兄たち、養子先の母や兄や、側仕えや護衛騎士などなど、新キャラ多数登場で主人公ともどもまず名前を覚えるのにてんてこまいにさせてくれますこと。エピソードを通してであればそれほど名前を覚えることは苦ではないほうだと思ってるんですが、この一冊ではまだちょっとあやしい人たちがちらほらと。

とはいえ、いちばん記憶に残っているのはエルヴィーラお母様でしょうか。ローゼマインの経歴ロンダリングにて出自とすることになった騎士団長カルステッドの家の第一夫人であり、神官長フェルディナンドに対してアイドルのファンのように熱をあげる人でもあるおちゃめな奥様。なんですけど、それと並んで印象に残るのは彼女と夫であるカルステッドを中心にして見えてくる貴族の家庭の様子。ひとつの家庭だけを見て一般化してはいけないと思いますが、ともあれ具体的にいうと、男の社会と女の社会がかなりはっきりと分かれてますねというところ。夫と妻とはいえ別個の人間なので、それぞれの生きる世界があるというのは当然のことではありますが、カルステッド家の様子を見てると、男の社会は仕事の世界、家庭は女性と子供たちの世界であるように見えてくるんですよね。ローゼマインはそのどちらにも関わっているので両方の面を見ることができますが、片方の世界にいるときにもう一方の人たちが登場してくることはほとんどない。あってもほとんど主導権を握る側の決定を追認・実行する程度。役割分担がはっきりしているといえばそうともいえますけど、ここまで割り切ってるのはいっそドライとも感じられるというか。いっしょに悩んで助け合ってという仲睦まじさは見られない。甘々な新婚ものの話ばかり読んでるとおやっと思ったりもするのですが、それぞれがそれぞれの領分で貴族の社会を担っている姿を見てると、政略結婚の世界ならこういうものなのかなあという気もしてきたり。まあそれ以前に、単純に、成人している子供もいる夫婦としての長年のつきあいの中で形成されてきた呼吸なのかもしれませんけど。自分の子供ということにしたローゼマインをどう着飾らせようと悩むエルヴィーラに対するカルステッドの悟りきった感じの対応とか、領主家のほうでも、フロレンツィアさんが旦那の子供っぽいところをしかたない人なんて思いながらも領主夫人としてローゼマインの後見役を務めている様子とか見てると、いろいろ察するところがあったり。
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2017年03月30日

パレス・メイヂ(2)

パレス・メイヂ 2 (花とゆめコミックス) -
パレス・メイヂ 2 (花とゆめコミックス) -

今回もひきつづき、最高かという感想しか出てこない話であった。彰子女帝による前回の引き立てによって、パレス内部を中心に陛下のお気に入りとしての立場を知らしめられることとなった御園少年。帝の方でも、おおっぴらに引き立てたこともあって、彼に対する「ご寵愛」を隠さなくなってきてるのがとてもよくて。何かあれば畏まってしまう者たちの中で自分のわがままにつきあってくれる御園に心を許していたり、自分を慕うまっすぐでひたむきな姿に安らぎを覚えている様子のいちいちにもだえさせられる素晴らしさ。そして、外部から彼に勲章が与えられそうになるとすげなく拒否してみせて、自分の手で公式のものではない「ささやかな勲章」だけを与える場面。彼は自分だけのものだという意図の表れのようで、もう最高としかいえません。

鹿王院宮のほうはどうなるかと思いきや、直接的な事態にはならない様子。むしろ同じ彰子様を好いた男同士、帝のことを大切に思う者同士、対立するだけではなく協力関係にもなれるというのは、なかなかいい関係になってきてますよね。とはいえそれはそれとして外堀から埋めにかかってきてはいるので、緊張感は消えてくれないのですが。
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2017年03月23日

裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル

裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA) -
裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA) -

「コミュ障サブカルオタクに見せかけて依存症サイコパスだったとか、勘弁してくれ」(作中より引用)

いい……。向う見ずに突っ込んでいきがちな鳥子のセーブ役になるかと思いきや、むしろ鳥子がいないとだめになってく空魚(そらを)ちゃんかわいい。これは百合、といいきれるものかどうかはわからないけど、空魚の鳥子に対する感情はとてもいいものだと思うのですよ。

というかですね、この空魚というキャラ、ややネクラ入ってるぼっちでキョドりぎみの女の子という、それだけでもかわいいキャラなんですけどね。第一シーンの鳥子との遭遇場面でも、自分の世界に入っていたところに鳥子がやってきて。表面的には普通っぽくやりとりしてるけど、キョドってるのとまだまだ自分の世界から戻りきれてない感じのモノローグがおかしなテンションになってるのがまずおかしくって。というかこの話、全体的にネットスラング寄りの語彙(といっても2chとかよりもTwitterあたりのものな印象)がそこかしこに登場するんですよね。その辺は、空魚というコミュ障サブカルオタクなキャラのモノローグで語られるからこそでしょうか。すぐに大学ぼっちな事実も判明するんですが、ところどころで対人コミュニケーションに慣れてなさそうな雰囲気が伝わってくるのがかわいい。そんなキャラなんですよ。

だからこそですよね。空魚が鳥子に精神的に寄りかかっていくことになるのは。人づきあいの苦手な空魚にとって、鳥子って現状でただ一人の友達なわけですよ。こう書くと小桜さんがかわいそうになってくる気もするけど、どう見ても空魚の中で彼女と鳥子とは同格ではないのであって。ぐいぐい距離を詰めてきて、つれられるままに何度も裏世界にいっしょに行き来する仲で。デンジャラスにも銃器を使いこなせる武闘派だけど、その実、危なっかしいところもあって、空魚の都市伝説知識と合わさることで裏世界を探検するいいコンビになっていって。何度か命を落としそうな経験もしていくうちに、最初は警戒心もあったのがそのうちにすっかり裏世界で命を預けれるまでの間柄になっていってたんですよね。ぼっちだった女の子が、わずか数週間の間にですよ。そりゃあ、空魚にとって鳥子は特別な存在になりますよ。というか、空魚って鳥子の容姿にも惹かれてるような部分がありますし、もともとそちらの気があるんでしょうかね。まあそれはともかく。

その一方で、鳥子が空魚のことをどう思ってるかというと、空魚と同じく信頼できる仲間だと思っているのは間違いない。でも、同じく同様にたった一人の特別な存在とまで思っているかというと、そんなことはない。まだおそらくいまのところは。鳥子にとって唯一特別な人は別にいる。鳥子が空魚をつれだして裏世界に赴く理由は一にも二にもその人なのであって。つまり、空魚と鳥子の互いに対する感情は、だんだんかみ合わないものになっていってたんですよね。それが表に現れた第4章が、素晴らしかったんですよ。自分以外の人のことばかり考えている鳥子のことはいやで、でも鳥子に置いていかれてしまうのはもっといやで。一人で行ってしまった鳥子を助けるためには小桜さんを無理にでもつれだすわ、泣き言をいわれてもこきつかうわ、鳥子が見ていた幻を「ぶっころ」するわと、もう振り切れたような鳥子ひと筋ぶり。そりゃまあ、冒頭に引用した感想にもなりますわという。とてもかわいい。最終的になんだかいい雰囲気になったっぽく終わってますけど、正直なところ、その辺の気持ちのずれはまだ解消されてませんよね。一時先送り的な解決というか。そのうちまた再燃しそうでこわいんだけど、それはそれでぜひ見たいので、2巻もぜひ出してほしいところ。

あと、都市伝説をテーマにしていることもあってか、ホラーっぽいテイストでもいい感じのところがあったり。怪異を見つめているうちにそれを深く深く認識してしまって、その認識がものすごいスピードで意味の不明瞭な文章となって口から垂れ流しになる様子とか、それと第4章のMIBのところとか。こわいというかびっくりするというか、こういうのもいいですよね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 15:38| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月21日

本好きの下剋上 〜司書になるためには手段を選んでいられません〜(2)神殿の巫女見習い(4)

本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第二部「神殿の巫女見習いIV」 -
本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第二部「神殿の巫女見習いIV」 -

第二部完結巻。マインの家族への思いに泣ける。第三部のタイトルを見て察してはいたし、第二部途中から既定路線だったとはいえ、こんなにも早くそのときがやってくるなんて。急激な変化を余儀なくされて打ちのめされるマインや、マインの家族たち、ルッツやベンノさんたちの姿に胸が迫る思いでした。第一部から第二部への移り変わりも、マインたちの希望とは離れた思惑で決まってしまいましたけど、今回もまた否応なく重大な変化をつきつけられた形。マインや、彼女と深くかかわってきたすべての人たちに、強く生きてほしいと思わずにはいられません。

思えば、第二部二巻のラストくらいから目に見えてそこに至る流れがはじまっていたように思います。それ以前以後からラストにつながっていった流れもありましたが、特にマインの感情的な推移において。それ以前は、神殿で巫女見習いになったといっても、自宅からの通いであり、ルッツやベンノさんたちとも頻繁にやりとりをしていたこともあって、慣れない場所・慣れない人たちの中での巫女見習いの仕事といっても頼りなさを覚えていた節はそれほどなかったように思うんですよね。神官長のうしろだてもありましたし、側仕えの灰色神官・灰色巫女やその見習いたちを何人も味方につけていきましたし。けど、第二部二巻のラストで前世の記憶をふりかえることになって、そこで前の世界の母のことを意識させられて。なんの言葉も残すことなく今生の別れを果たしてしまった母への感謝の念や申し訳なさを抱く心境が描かれるにつれて、神殿での冬ごもりのときに肉親やごく近しい人たちが現れるとべったりひっつくくらいに甘えかからずにはいられなくなるほど家族への情愛を募らせていく心理がひしひしと伝わってきて。そういったことがあった末の今回の展開でしたからね。家族と離れ離れになる決定をつきつけられて魔力の暴走を引き起こすほどに取り乱すマインの気持ちがとてもよくわかってしまって。けれど、今度こそ大切にしようと思った家族とまた突然別れることになるつらさを誰よりも感じているにもかかわらず、それでも何があっても大切に思う人たちのために、心からの祈りをささげるマインの姿を見ていたらもうどうしようもなくなってしまって……。本のことばかりを考えていた前の世界での記憶があって。本のことだけでなく大切な人たちとのつながりが広がったこの世界で歩んできた道のりがあって。これまで生きてきたすべての人生があってこその感情ですよね。本当に、素晴らしい展開でした。

第一部ではゆっくりゆっくりと、わりとなるべくしてなるべきラストにいたった感があって。それに比べると今回はこの最後の巻で急展開という感じもあって、より一層感情を揺さぶらるものがあったように思います。

とはいえ今回の措置、領主側の視点から見ようとすると、それがいちばん手っ取り早かっただけという気もしなくはないんですよね。早いしもろもろの折衝を考えると楽だけど、関係各所がもっとも満足できる方法だったかという点ではどうなんだろうというか。もっと時間をかければその分だけうまく解決できるかどうかはなんともいえませんが、反論の余地を与えず自分たちで考えた決定をつきつけてくるところはさすが貴族というところ。その決定の絶対性がマインの大切な人たちへの思いと合わさって琴線にふれる展開になってくれてはいたんですが、その一方で逆らうことなどできない権力者の決断の暴力性とも映ってきて。やっぱり素晴らしい世界ですわと思う自分もいたり。

ともあれそんなこんなで、次回からは本格的に貴族の世界……になってるのかはわかりませんが、平民とは教養レベルが段違いな世界につづく道が示されたことは確かなわけで。そこにはさらにどんな世界が待ち受けているのかと、わくわくしているところです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:52| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする