2019年08月04日

可愛いだけじゃない式守さん(1)

可愛いだけじゃない式守さん(1) (KCデラックス)
可愛いだけじゃない式守さん(1) (KCデラックス)

『可愛いだけじゃない式守さん(1)』(真木 蛍五)|講談社コミックプラス

かっこいい女の子です。イケメンな彼女です。最高です。こういうのすっごい欲してました。 ありがとうございますありがとうございます。

かわいいとかっこいい。この作品のヒロインである式守さんはその二面性できあがっているわけだけど、見どころはほとんどかっこいいところなので、かっこいい印象しか残らない感じになるという。ギャップで魅せようとしてるのかもだけど、正直なところ、ギャップもなにもなくともただかっこいい場面がかっこよくて最高なんですが。しかも、そういうかっこよさを見せるのが、決まって主人公の近く、ときには至近距離だったりもするものだから、間近でそんなイケメンオーラを真っ向から受けた日には、主人公ならずとも「好き……」なんて言葉が無意識のうちに漏れてもこようというもの。

3話は彼氏をリードするイケ彼女オーラバリバリだし、映画館のお話なんて、ひれ伏したくなるような横顔で。5話もそうだけど、身長差的には式守さんのほうがすこし背は低いはずなのに、見上げる構図になった瞬間のかっこよさの爆発ぶりがやばいんですよね。7話はもうあんなのプロポーズ不可避だし、8話はすべてをあずけたくなる安心感に包まれるものがあるし、もう本当にイケメンすぎてやばい。こんな彼女いたら、和泉くんどんどんダメにされちゃうのでは? 13.5話のツーショット写真、最高に最高でした。ありがとうございます。

まあ和泉くんは和泉くんで常人離れした不幸体質の持ち主のようなので、護衛だってできちゃうレベルの式守さんがいてくれてやっと不幸なばかりでない学校生活が送れるくらいのバランスで。その意味で、和泉くん的には式守さんへの感謝の気持ちは忘れられるものではないのかもしれない。まあイケメンなところを見せつけられるたびに好きな気持ちを新たにさせられまくっているのではあるけれど。

でも、それもこれもすべて、式守さん的には特に意識してやってるわけではなさそうなんですよね。なにげないしぐさにオーラがにじみ出てるというか、無意識でイケメンなんですよね。だから余計に心臓をわしづかみにされるような破壊力があるわけだけど。はー好き。

次の巻でもカロリー激高な話を期待したいです。
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2019年08月02日

愛玩調教 過保護すぎる飼い主の淫靡な企み

愛玩調教 過保護すぎる飼い主の淫靡な企み (ムーンドロップス文庫)
愛玩調教 過保護すぎる飼い主の淫靡な企み (ムーンドロップス文庫)

主従な関係のヒーローとヒロインの恋愛譚。まあ好きに決まってますよねという。

ヒロインはヒーローの一族子飼いの“番犬”のひとりであり、主人に絶対の忠誠を誓いながら主人の身を護ったり命じられるまま工作活動に携わる諜報員のような存在。ヒーローのほうは、そんな“番犬”を何人も抱えて規模を拡大させてきたマフィア的な企業の跡取りとして、各所に敵を抱えながらも着々と勢力を広げるやり手の御曹司。

このヒロイン・ローズからの主人・オースティンへの敬愛ぶりがすごくよかったんですよね。なによりも主人が第一な忠義ぶりと、直接本人へは伝えられないながらも描かれていく内心によってこれでもかとばかりに伝わってくるオースティンへの恋心。それらが合わさって、主たる一族への忠誠を骨の髄から叩きこまれる“番犬”たちのなかでも際立った主人への情愛の念を感じさせてくれるのがこのローズというキャラでありまして。

好みのファッション、好きな食べ物……。そういった、自分自身の記憶や感覚によって選り抜かれるはずのものでさえ、オースティン抜きにして思い浮かんでくるものはなく、徹底してオースティンありきでしか自分というものを考えることができないヒロイン。その首まわりにはオースティンの手ずからつけられたチョーカーが光り、専属として常にオースティンのそばに侍ることに意義を見出してもいる筋金入りの忠犬。オースティンから求められれば体を差し出すこともいとわないし、結ばれることの許されない主従の間柄を考えればそれはなによりのよろこびでもある。

そんな、秘めた恋心に身を焦がすヒロインが主人公の恋物語。あらためていいますけど、好きに決まってるじゃないですかというところで。

ヒロインは報われることのない恋心を胸に秘めた“番犬”で。けれどそれに対して主人が彼女のことをどう思っているかは、初めのうちはいまいちわからない。

任務で情人のフリをすることを命じられたかと思えば、恋人っぽく言い寄られたり、物陰で慰めを求められたりもして。ローズとしては恋心を抱くオースティンにそんなことをされればドキドキさせられっぱなしになってしまうところではあるけれど、一方のオースティンは演技でそんなことをしているのか、そのついでにちょっとした余興のつもりで楽しんでいるのか、その真意まではローズにはわからない。主人に与えられる快楽は至福の心地であるはずなのに、とまどいの気持ちが消しきれない。そんなうれしさと困惑が入り混じった頼りない心理状態がたいへんによかったのでありまして。

しかも、話が進むにつれて、ローズの側からはますますオースティンの考えがわからなくなっていく展開。オースティン抜きでは自分のことすらわからないのに、そんな自身の内面を掘り下げることを求められるような課題が次々に与えられ、オースティンのそばにいることが一番の存在価値なのに、オースティンから離れた世界で拠って立つ拠り所を身につけることを求められるような任務が課されるようにもなってくる。

もしかして自分はもう用済みになってしまったのだろうか、オースティンに捨てられてしまうことになるのだろうか。そんな不安から、せっかくできた友人とも悄然としてしか過ごせず、逆に主への募る恋心を意識せざるをえなくなっていく心情がすごくよかったですね。

ただ、オースティンの側から見れば、ローズを突き放したくなる気持ちもわかるというか。ローズをはじめとした“番犬”たちの主たる一族への忠誠心って、刷り込みレベルの教育による賜物以外の何物でもないんですよね。ローズがオースティンを慕う気持ちをとっても、彼がローズの専属の主だからという事実が根底の何割かにあるのは否定しがたい部分があって。

“番犬”としてのローズならば、オースティンが命じればどんなこともする。けれど、命じられるがままの人生にどれほどの幸福があるのか、ローズのことを大切に思えば思うほどにそこには疑問が湧き出てこずにはいられない。

そんな心理から生じたすれ違い。じれじれとした展開がとてもよかったです。

とはいえ、どれだけオースティンの側から突き放すようにしても、そうされるほどに彼への気持ちを募らせていくローズに対しては要らぬ心配だったところでもあり。どこまで突き放されようと、オースティンなしの人生なんて選べないローズの健気なほどの想いが発露する展開はたいへんいいものでした。

収まるべきところに収まった、とてもいい主従恋愛譚でした。どうぞお幸せに。
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2019年07月31日

虚構推理(1)

虚構推理(1) (月刊少年マガジンコミックス)
虚構推理(1) (月刊少年マガジンコミックス)

『虚構推理(1)』(片瀬 茶柴,城平 京)|講談社コミックプラス

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これ、めちゃくちゃおもしろい雰囲気してるじゃないですか。特に、主人公(でいいのかな?)の岩永琴子がそれはもういいキャラをしてまして。

一話での、一目惚れしたもう一人の主役・桜川九郎を射止めるべくあれこれ画策する様子とか、しかもそれを隠すことなくオープンにしてグイグイ押しまくっていくアタックぶりとか。そして、九郎の彼女(元カノ)に対抗心燃やして一方的なくらいに張り合っていこうとする態度とか。若干うっとうしくもあるんだけど、どこまでもストレートであるがゆえにどこか憎めないところがあるというか。

九郎としては、なんだかめんどくさげな女の子に気に入られてしまったとでもいうようなげんなり感をただよわせながらも、特に好みのタイプではない琴子をことさら拒絶する様子もないようで。琴子の口から「現在の彼女」を名乗られても、本当に?と疑いたくなってしまうところではあるものの、腐れ縁的に関係がつづいていくのはありそうなと思わされていくふたりのやりとりの雰囲気は悪くないのであって。

でもそれ以上によかったのは、やっぱりラストでの琴子とサキさんとの再会シーンであって。別れても九郎のことを忘れられないサキさんと、「現在の彼女」を名乗る琴子がばったり出くわして。サキさん相手に一方的にマウント取りにかかって女の戦いめいた恋のさや当てをはじめていく琴子はおもしろかったよねという。

それに、サキさんのほうも、どこか頼りないくらいの年下男子が好みということで、今でも別れた九郎のことが忘れられない様子をしっかり感じさせてくれてて、これはなんだかとても楽しみな雰囲気ですよというところ。

というか、こんな三角関係的なラブコメ展開が楽しみに思えるってどれくらいぶりだろうかと、読んでて覚えた自分の感情に驚きすら感じてもいるんですが、それはともかく、めちゃくちゃ楽しそうなシリーズですね。実は気になりすぎててすでに次の次の次の巻くらいまで読んじゃってるんですが。ともあれ、感想書けそうならそちらでもまた。
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2019年07月30日

Unnamed Memory(1)青き月の魔女と呪われし王

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王 (DENGEKI)
Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王 (DENGEKI)

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王 | Unnamed Memory | 書籍情報 | 電撃文庫公式サイト

このヒロインの魔女はかわいい。とてもかわいい。齢100をとうに超すほどの時を生きているはずなのに、成長が止まった外見年齢そのままの少女のようで。たいへんにかわいらしい。実年齢的にはるかに年下なはずの王子にことあるごとに求婚されて、ペースを崩されたりしながらも、それでもときに力いっぱい、ときにおざなりに毎回きっちり却下を突き返す対応がお決まりのやりとりになっててかわいいことかわいいこと。ティナーシャのかわいさだけでページをめくる手が進む進む。Web版などで先の展開を知ってる方たちはファンタジー作品としてのおもしろさをポイントとしてあげてるような気もしますが、個人的にはこの時点でのいちばんの見どころはなんといってもこの、長い時を生きてきたはずなのに色恋方面には弱いティナーシャの少女っぽさにあると思うのですよ。

というかこの、ヒロインにご執心でしょっちゅうちょっかい出してくる王子とそんな王子に調子崩されたりやいのやいのしたりしつつもやりとりの雰囲気自体は悪くない感じ、とても女性向けな作品のノリだと思うんですよね。主人公も男キャラではなくヒロイン側のほうではあるし。電撃の新文芸って、レーベルの母体を考えると男性読者を想定しているのではと思えるのだけど、そこからこの作品が出るというのはある意味でミスマッチというか。でも、現在の文庫に比べれば女性読者にリーチしやすい立ち位置だとは思うし、それに個人的にも「ヒロインかわいいで楽しめる女性向けのノリの作品」という、今まさに自分の好みな作品が男性読者の手に届きやすい形で世に出ているかと思うと、これはとても貴重な機会なのではと思えてもいたり。

というわけで精一杯にオススメしたい。

本気出せば災厄級の魔獣も一瞬でとは言わないけど屠れちゃう最強クラスな魔女が、一途な王子オスカーに一方的に気に入られてやいのやいのせずにはいられなくなっちゃうラブコメな空気の楽しさを。

「そうは言っても、お前は将来の王妃だぞ」
「ならないよ! 勝手な未来を作るなよ!」(83ページ)


こんなやりとりを一冊の中で何度となくしてるふたりのおおしろいことといったら。

オスカーから当然のようにスキンシップをされまくった影響か、そのうちにティナーシャのほうでも、髪に触れられる程度の多少のスキンシップは無心で受け入れている感があって。そういう場面を見せられるたびに仲のよろしいことでとにやにやさせてもらえることで。

そのうえ、オスカーが別の魔女ルクレツィアに会った後に王子からただよう女物の香水のような香りの正体に気づいたときのリアクションはあれはもう完全に浮気をとがめる恋人の態度でしたよね。周囲のツッコミが的確すぎて笑った。

おまけの、オスカーによるティナーシャの着せ替え遊びは本当にありがとうございますというところで。いつも忙しい執務の合間に好きな女を自分好みに着せ替えてお楽しみのオスカーさんは実にいいご趣味ですねという。そしてそれに渋々つきあわされるティナーシャの様子にはたいへんにやにやさせてもらえる一コマでありました。

気づけばファンタジー部分には全然触れてないけど、まあいいか。2巻でもこの空気を楽しめたらなということで。
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2019年07月28日

ふたりで恋をする理由(1)

ふたりで恋をする理由 1 (マーガレットコミックス)
ふたりで恋をする理由 1 (マーガレットコミックス)

ふたりで恋をする理由 1/ひろ ちひろ | 集英社コミック公式 S-MANGA

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電車でトラブってたところを助けてもらった先輩のことを好きになったと思ったら、その先輩の幼なじみでヒロインの同級生の男子からたびたび邪魔されてしまって……という、三角関係っぽいんだけど実は先輩だけちょっと輪からはずれがちな感じにも見える少女マンガ。

ヒロインの安堂さんと同級生の美園くんの関係がとてもかわいらしくていい感じになってますよね。

安堂さん的には先輩へのアタックを邪魔されまくってて関わりだした当初から印象の悪い相手ではあるんだけど、たびたび先輩に誘われるまま三人で過ごす時間を持っているうちにだんだんと素直じゃない一面が見えてきて印象がよくなっていっている様子がうかがえて。

美園くん的には、先輩に寄ってくる数ある女子のうちのひとりとして、先輩と関わり合いになる前に排除しようとしていたら、だんだんとただ先輩のかっこよさにあこがれるだけじゃない、芯があっていい子な一面も見えてきて。むしろ美園くんから安堂さんへの好意の矢印めいた感情が伸びだしているような感があって、とても気になるところではあり。

その一方で先輩は安堂さんから寄せられる好意に気づいているのかいないのか、華麗に受け流して人づきあいの苦手な美園くんの友だちとして収めようとしてる感のあるところが、なかなか油断のできないイケメンぶりであるところであり。恋のお相手としてはなかなか手ごわい人ではあり、ちょっとなかなかハードルの高そうな人ではあるぞという印象。正面から相手してもらうにはまだいくらかステップが足りなさそうではあるというか。

いやでも個人的にはやっぱり、先輩と違って女の子慣れしてない美園くんが暴走しそうな気配があるのが、それに対する安堂さんのリアクションとも合わせて楽しみなところであり。

絵的にもヒロインの女の子がどのコマ見てもかわいくていい感じなので、つづきもぜひとも楽しみにしたいところです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 23:31| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

春とみどり(1)

春とみどり(1) (メテオCOMICS)
春とみどり(1) (メテオCOMICS)

春とみどり | COMICメテオ

好きだった親友の娘を引き取るところからはじまる年の差百合マンガ。

これすごくいいですね。特に主人公のみどりが、年の割には頼りない感じなところが。

中学時代から地味でどんくさくてたったひとりしか友だちがいなくて。その友だちの娘はもう中学生になるくらいに時間がたっているのに、そのころからあまり成長している感じがなくて。

たったひとりの友だちの訃報に驚いて、その面影をくっきりと宿す娘の春子が身寄りのない状態でもてあまされているのを見ていられず引き取ることにしたはいいものの、まるでどちらが保護者かわからないくらいにみどりからはあまりあれこれしてあげられなくて。むしろ春子のほうが料理や服の買い物など、みどりのことをあれこれ助けてあげられてしまうくらい。

中学の頃のみどりとつぐみの関係もそんな感じだったようで。明るく友だちもいっぱいいたつぐみが、それでもみどりのことをなにくれとなく気にかけてくれたことから、好意にも似た感情を抱いていたようで。春子のふとした言動から昔の記憶をよみがえらせて、もういなくなってしまったつぐみを思い出して泣きそうになってる様子がとてもいいもの。そして親を亡くしたばかりのはずの春子に逆になぐさめられるのまでがセットでたいへんいいものいいもの。

みどりと春子の関係って、本当に回想で挟まる中学のころのみどりとつぐみの関係そっくりなんですよね。それはあくまでみどりの側の認識ではあるし、春子のほうも関係の糸口がそこであるがゆえにあえて母親っぽくふるまってるんだろうかと思える部分もなくはないですが、それを差し引いても、みどりにとってはまるで中学卒業以降止まっていたかのような時間がふたたび動き出そうとしているかのような予感を抱かせるふたりの時間はたいへんいい雰囲気ではありまして。

みどりのつぐみへの気持ちは、あれは好意といいきっていいのかも迷うような稚い感情であったようにも思えるだけに、それが春子と接していくうちに、どう推移展開していくのか、そしてそれを春子はどう思うのかなど、いろんな意味でとても楽しみになってくるところで。

どちらが保護者かわからないようなこの年の差百合、とても楽しみなシリーズになりそうな気がしますね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 21:51| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

異世界国家アルキマイラ 最弱の王と無双の軍勢

異世界国家アルキマイラ ~最弱の王と無双の軍勢~ (GAノベル)
異世界国家アルキマイラ ~最弱の王と無双の軍勢~ (GAノベル)

めちゃくちゃ熱かった。突然に転移してしまったゲームのようでそうでもない異世界で、けれどだからこそ、その世界で出会った人々はゲームのNPCのような存在感のうすさではなく、一個の生命を持った存在として認識され、記憶されていく。であるならば、その身に降りかかる不幸は決して機械的なイベントとは捉えられず、身近な人物に起きた重大事件として、巨大な衝撃を伴って伝えられることになる。まして、平和な日本で生まれ育った三崎司(プレイヤーネーム:ヘリアン)からしてみれば、見知った人の命が奪われるというのは、受け入れることを拒みたくなるような悪夢でしかない。つい一、二日ほど前まであれほど健気に笑顔をふりまいていた少女が、無残にもその命を絶たれてしまった。その喪失感。理不尽な振る舞いに対する憤り。けれどそれ以上に、それを防げるだけの“力”があったはずなのにという後悔と怒り。それらすべてが渾然となった激情に端を発して出される復讐の号令。それはまさに、王たる者の怒り。シミュレーションゲーム世界からの転移らしい、万を超す臣民たちを前にした激情の表明、ものすごく熱い気持ちを伝染させてくれることで。

けれどそれをしてのけた主人公のヘリアンというのは、平和な日本で生まれ育った一般人でしかないのであって。まして、人を率いた経験もあるわけではない学生の身。あるのはただただVRのシミュレーションゲームで王としてプレイしてきた数年の経験のみ。それだけでこれほど心に響く演説をしてのけるのだからすごいというか。

でもそれは、なによりその演説に乗せられた感情が心の底から沸き立ってとめどないほどの身を焦がすような思いであったからで。

この世界に転移させられてきたヘリアンは社会経験のない学生の身でありながら、臣民たちの上に立つ王としての立場で振る舞うことを余儀なくされた。ゲーム世界からヘリアンともども連れてこられた臣民たちは、リアルでのヘリアンのことなど知る由もなく。けれどゲームのくびきからはずれたキャラクターたちはプログラムの制約からはずれて生身の人間のようにイレギュラーな立ち回りを見せるようになって。

ゲームの世界での記憶を持っているので、ヘリアンへの忠誠はあり、信頼して命を預けてもいる。けれどその信頼は絶対ではないのであって。ヘリアンが仕えるに足る王とはみなされなくなってしまえば、リーダーシップなんてよく知らない学生としての素が出てしまえば、その信頼はどこまで崩れてしまうかわからない。まして、ゲームでは所詮バーチャルな世界のこととしておそれることのない苦痛や死についても、ここでは現実世界のような恐怖がつきまとう。

臣下だからこそ弱みは見せられない。それでいて、仕えるべき王としての威厳や正しさを失うわけにもいかない。異世界に転移させられたことを受け入れるや、そんな孤独な苦しみに疲弊していくヘリアンの心理はとてもいいものではありまして。

けれどだからこそ、王としての崇高さにとらわれずに接することのできる、国の外の人間というのは、この状態のヘリアンにとってはかけがえのない存在ではあって。王と臣下といった絶対的な関係ではない、対等な友人のような存在に出会えることの、なんとありがたいことか。

そしてそれだけに、そんな存在が不当に害されることの、なんと許しがたく憤ろしいことか。

ヘリアンごと転移してきた都市って、今回登場してきた勢力と比べればめちゃくちゃ強力で、復讐の様相はまさに虐殺と呼ぶにふさわしい展開ではあったんですが。そこに最強もののような爽快さは微塵もなく、ただただ生かしてはおけない仇敵をひとり残さず屠らずにはいられない怒りと哀しみが同居する蹂躙戦。はたから見ればどっちが悪役かわからなくなってきそうなくらいなんですけど、そうせずにはおけない心情もわかってしまうのではありまして。

ただ、それでもやっぱり復讐では失ったものを取り戻せるわけではなくて。どれほどの力を持っていようと、覆せないものは覆せない。親近感を持った友のような人物の喪失が、王として以前のヘリアンにとって、どれほどの罪悪感をもたらしたことか。償いのために文字通り命を削って〈秘奥〉を連発する姿はもうやめてくれと懇願したくなるような痛々しさではありました。

正義をなすのが王であり、己の口にした約束は命を削ってでも果たすのが王であるというのが、ヘリアンの拙くも譲れない王のあり方であるというのが、これでもかと伝わってくる展開。ただでさえ孤独で精神的に疲弊していっているのに、身体までこんなに痛めつけてしまっては、体がいくつあっても足りるものではないでしょうよ。けれど、そこまでしても自らの思う王としての正しいあり方を貫こうとする姿は、それこそまさに人の上に立つべき者の理想像をかいま見ずにはいられない思いを抱かされてしまうんですよね。本当に、熱い気持ちを抱かされる“王”ですよ。

そして、それほどの思いが報われたかのようなラストは、もううれしくてありがたくて、こみあげてくる熱いものをとめようがありませんでした。男泣きのヘリアンのイラストが最高に素晴らしかったです。

最高に、最高に熱量のこもった物語でした。こんな物語を読んだら、好きにならないなんてありえませんよ。

そのほかにも、キャラでいえば、ヘリアンの側近であり第一軍団長のリーヴェもなかなかに気になるキャラではありまして。主のヘリアンを敬愛し、転移直後の動揺するヘリアンにいつにない身体的接近・接触をされてこちらも内心動揺しまくってる様子がかわいかったですね。人狼系種族らしく忠犬ぶりを発揮して、ヘリアンの指示や判断をあれこれ裏を考えては持ち上げてくる感じもくすぐったいような、けれど憎めない感じが悪くないところで。

前半は内向的なヘリアンの心理と持ち上げ系忠実臣下たちのキャラクターがおもしろく、後半は物語の熱量にあてられるようにして一気に読みきってしまう、そんな感じの話でした。ものすごくおもしろかったです。この一個前に上半期ベストな小説作品に出会いましたが、これもベスト級な作品でして、こんなたてつづけにものすごくおもしろい作品に出会えていいんだろうかと、幸せすぎて不安になってくるぐらい。

ともあれ、オススメできる戦記作品。ぜひ二巻以降も期待したいシリーズですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:15| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月27日

ルミナス=ブルー(1)

ルミナス=ブルー(1) (百合姫コミックス)
ルミナス=ブルー(1) (百合姫コミックス)

作品紹介 | コミック百合姫 | 一迅社

写真を撮る側と撮られる側、その間に幼なじみや転校生、先輩や元カノといったいろんな関係性の影がただよう四角関係百合、的な。

「楽しくて明るくてアニメ化も狙えるような作品」(あとがきより)とは。前作『透明な薄い水色に』も読んでますけど、そちらで切ないぐらいの思いがゆえに傷つけあうようにしてしまう女の子たちの話を楽しませてもらった作者さんらしく、いまはまだ明るくかわいらしい女の子たちの姿が中心に描かれているようではありながら、そこかしこにシリアスな予感をひしひしと感じさせてくれる様子にワクワクさせられてるんですがこれいかに。いやむしろ、それこそが楽しみという感があるので、かわいい女の子たちの楽しいお話にはなりそうな? なんかニュアンスが違いそうではあるけれど気にしない気にしない。

それに、前作でも思ったけれど、切ないほどに思いつめてる女の子の表情がめちゃくちゃ魅力的な作者さんではありまして。今作でももうすでに、昔付き合ってたけど、今は別れてしまっていて、けれどまだそれぞれに残る一方の熱意と他方の冷淡な感情に思いつめるあまねの様子がそれはもういいものでありまして。さらに、そんなあまねをカメラ越しに観察する先輩の心理はたいへんに気になるところではありまして。それらがほかのあれこれも含めて、次の巻ではこれ以上に楽しめるものになっていくかと思うと、とても楽しみですよね。

一読ではまだ核心にいたらずややあっさり風味ながらも、関係性がつかめてくると非常に味わい深くなってくる。期待の百合シリーズですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:26| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月26日

オペラ座の恋人(5)・(6)

オペラ座の恋人(5) (オパール文庫) オペラ座の恋人(6) (オパール文庫)
オペラ座の恋人(5) (オパール文庫) オペラ座の恋人(6) (オパール文庫)

オペラ座の恋人D |オパール文庫
オペラ座の恋人E |オパール文庫

よかった……とは言えない部分も多々あったけど、でもひと言で表すならこの言葉になる。よかった……。

落ち着くべきところに落ち着くところを見届けられた安堵感。けれどそれ以上に、見違えるほどに立派になった結花の成長を思い返す感慨に。

思えば、クラシック音楽が好きすぎるだけで、自分に誇れるところがあるわけでもなく、友人らしい友人も大学に一人しかいなかった女の子が。ベルリンの歌劇場で果たした運命の出会いをきっかけにして、どれほど大人の階段をのぼっていったことか。

もともとクラシックつながりで覚えのあったドイツ語は長期休みに連れまわされるようにヨーロッパの各地をめぐるなかですっかり実用レベルになり、英語や礼儀作法もいろんな上流階級の人たちと接することで自然と使いこなせる水準で身についていき、それに関連してビジネス関連での興味や知識の幅も広がって、そしてなにより女性としての美しさも磨き上げられていって。

シリーズ後半と初期の頃を比べれば、もう違いは歴然ですよ。とりたてて言うところのなかった垢ぬけない女の子から、スキル面でも人脈面でも引く手あまたで目をひかれる魅力的な女性へと。その間、わずかに2〜3年。それだけあれば変化には十分ともいえるんでしょうけど、それでも大学生という可能性に満ちた期間を思わせてくれる見事なまでの成長ぶりですよね。こういう話は本当に胸をしめつけられるような、それでいて憧憬を抱かされずにはいられないような魅力で、心をわしづかみにされてしまうものがあります。

3・4巻からひきつづきの、結花の心の深い部分に巣くっていた恐れとの対峙については、微妙に解決してないような気がしてならないんですが、それでも結花本人が出した答えは、そうであるからこそ祝福せずにはいられない尊さがあって、いつまでもふたりの関係がつづくことを願わずにはいられない気持ちにさせてくれるものがあります。それに、何もかもを相手に預けきったペットと飼い主の関係(だけ)ではなく結花自身も積極的になるからこそ選び出すことができたふたりの形だと思うと、このふたりの夫婦の姿というのは、もう本当に、どこまでも祝福したい気持ちにさせてくれるんですよね。

愛する人ができて、賑やかな友人たちに囲まれて、幸せな家族と出会えて、一生ものの決意をして、一生ものの枷で縛りつけられて。そうして最後の最後にしみじみと幸せを実感する結花の姿が見れたのは、シリーズの結末としてなによりうれしかったです。

そしてそうなってもまだ貴臣の前で初々しく赤面したりする姿はあいかわらず男をそそる危うい魅力に満ちていて。この5・6巻だとふたりとも多忙でなかなか顔も合わせられない時間がつづいたりしていたことから欲求不満を募らせたり、会えた時間にその気持ちをぶつけるように互いに貪欲に体を求めたり、結婚するとなれば避妊も解禁で子どもができても構わない、むしろ早くにほしいくらいだよねな感じの浮かれたような行為の数々は、やっぱりとてもエロティックだったと思います。

結花本人としては、貴臣を中心とした周りに流されるようにして過ごしてきた結果。なので、本人としては自分がすごい人であるなんて(この期に及んでなお)微塵も思ってないんだけど、結婚式に集まったメンバーがもう本当にすごいんですよ。本人にはどれだけ自覚がないとしても、もうとっくに平凡どころではないですよね。

結花以外では、やっぱり絵里とラリーのカップルがよかったですね。ラリーからの公開プロポーズに取り乱す姿がすごくかわいかったです。エリー、お幸せに……。

それと、貴臣の姉の千煌さんも。貴臣が頭の上がらない存在として、基本的にどこでも我が物顔で振る舞う貴臣がやりこめられる姉弟のやりとりはそれだけでいいものでしたが、それにくわえて弟同様に結花の庇護者を自負する姿がとても頼れる女性ではありました。最終的には、結花とも家族としての絆で結ばれて、幸せの形をより広げていくことになって。この辺は本当にできすぎなくらいではあったんだけど、でもやっぱり幸せに満ちあふれた家族の姿というのは見ているだけでよろこばしいものがあります。

本当に、思えば遠くへ来たもので。全6巻、あとがきによると3840ページ。書籍のティーンズラブ小説としては異例の大作ながら、それでもあちらこちらとまだもっと見てみたかった場面がいくつも思い浮かんでくる。それほどにどっぷりと浸れる物語でした。

平凡な女子大生だった結花の、めまぐるしいまでの三年間の物語。素晴らしいシリーズでした。このシリーズを読んでいたここ二週間ほどはずっと、幸せな微睡みのなかで過ごしているような、幸せな読書の時間でした(読み終わった直後は頭がぼーっとしっぱなしで、なんだかまだ地に足がついてない感じもしますが……)。

素晴らしい物語をつむいでくださった作者さんに心よりの感謝を。


(以上、6月11日)

――――――――――――――――――――

(以下、7月26日追記)

ここ5・6巻の感想も、やや抽象的でいまいち思い返しの役に立たないので、もうすこし詳細に立ち入った感想を追記していきます。


5巻は前の巻からひきつづいて、第七幕の途中からの開始。

プロポーズされたと結花から聞かされて盛り上がる絵里とカレンに対し、ずーんと沈みこんでる結花の対比がおもしろい。

そうそう、貴臣のプロポーズの言葉って、「結婚してほしい」でもなく「結婚してくれ」でもなく、「結婚しなさい」だったんですよね。問いかけというよりも命令とか指示とかそういった感じの調子で。でもそれが貴臣らしいと思わせてくれるところでもあって。

その一方で、プロポーズが全然うれしくもない結花のほうでは彼氏の実家訪問というとんでもないイベントがやってくるわけだけど、お迎えの準備とかなにやらで飛び出す小道具がいちいち桁の違いそうな高級品ばかりで、それを普通のものとして扱う絢子夫人の純粋培養セレブぶりにはもう笑うしかない。

ただ、そんな浮世離れした女性にも、会話のなかで千煌さんや貴臣の母親らしいふたりとの共通点を見出されて緊張がほぐれていく様子はさすがというか。それどころか、久世家のなかでもタブー化してた千煌さんとの縁を取り持つような話題の広げかたをしていくものだから、結花の型破りな好印象キャラぶりにあらためて驚かされる思い。本人無自覚だけど、こういうところがセレブな人の間でも好かれるポイントなんですよね。


と、先走って結花四年生の四月の話が入って第七幕終幕となったわけだけど、その後に入るのは短編集。時間はやや戻って春休みの終盤、三月下旬から四月の頭にかけて。舞台はアメリカ。

この短編集になると、ふたりの雰囲気はもう、年甲斐のないハネムーンのようなイチャイチャな感じというよりも、ちょっぴり背伸びしながらも新鮮な体験に満ちた恋人同士の感じというよりも、すっかりふたりそろってあちこちに顔を出す姿が板についた、連れ合いのパートナーという感じになってましたよね。結花の心のうちはともあれ、婚約者といわれても違和感がない。それだけに、周りからも当然そういう扱いを受けてしっかり立場が固められていく様子が、単純に海外で開放的であることに加えて、いい感じの雰囲気ではありましたね。

海外では人前でいちゃつくのも当たり前と教えこまれてきた結花が、自分以外の男を牽制して独占欲むき出しに結花とキスする姿を見せつけたりするのに、これくらい普通のことだよねとばかりにしっかり甘えた態度でそれを受けいれている様子がたいへんかわいらしいこと。

そんな地で出会ったのは、スイスのマナースクールの同級生でもあったアメリカの資産家の令嬢ギャビー。彼女の両親は久世家よりも巨大な資産の持ち主であるというから驚きだけど(貴臣をしてウチはあれほど金持ちじゃないと言わせるんだから、まじでもう笑うしかない)、ディララ然り、あそこの同級生って、わりと本気で世界的にも有数の令嬢ばかりだったっぽいんですよね。リストを見た久世家の人たちは当時から騒いでましたけど、そのほどを実例つきで複数見せつけられるといやでも実感させられることで。

「……ねえ貴臣さん、自家用機って、そんなに誰でも持ってるようなもの……?」(5巻118ページ)

なんてセリフも出てくるくらいには、親ではなくご令嬢個人で自家用機持ってる人が友だちに何人もいる状態になってきてて、結花の交友関係もいよいよとんでもないことになってきてるよねという。実はもうこの面では貴臣すらしのぐレベルだったり? つりあわない、とは……。

まあそんなギャビーに買い物に連れまわされてきゃいきゃい言いあってる様子はとてもかわいらしいものでしたが。その結果、貴臣から渡されたカードであれこれ買い物してしまったと罪悪感で震えている結花の姿(とはいっても貴臣的には絶対大したことない額だけど)はとてもとてもかわいかったんですけど。

そうこうしながらもその一方で、資産家つながりで保護者同士、コネクションを構築しにかかる貴臣さんの抜け目のなさはさすが。ただ、

「私がこれまでアメリカで出会った中で一番頭の悪い連中は、八割方アイビーリーグ出身だよ」(5巻149ページ)

というのは。そりゃ、貴臣さんが接したことのあるアメリカ人はそういうエリートコース出身者ばかりだから、そんなことにもなるんでしょうよという、実に高度なジョークであった。笑える(真顔)。

まあでもそんな一面をさらっと見せつけてくれつつも、結花との間は当然のようにお熱いところを見せつけてくれるのはさすがというか。

結花に絵里との約束をぶっちさせてまで致しはじめる貴臣さんというのは、もう本当にやってくれるというか。まあ結花と一緒にいながら二晩連続でおあずけをくらうなんて、盛りのついた貴臣さんにそれ以上の我慢を求めるのは酷というものか。

でも、いくらなんでも、怒りの電話をかけてきた絵里に包み隠さずこれからするところだから待ってろと告げるのはそれは本当にどうなんですか、貴臣さん。約束ぶっちして致してたカップルって、結花まで巻き添え食って白い目で見られちゃうじゃないですか。対面するだにあの時間からつい今しがたまでねえなんて不機嫌に勘繰られる羽目になった結花さんは泣いていいと思う。いやでもそこで羞恥心から縮こまる結花はとてもかわいかったので、個人的には許したい。絵里的には知らない。

そんな絵里とラリーのカップルも、結花と貴臣のような甘々さはないものの、こちらはこちらでこのふたりらしく関係が進展しているようで? 絵里、傍目には構いたがりのラリーをうっとうしげにはねつけてる感じではあるけれど、どうもその実はツンデレであるらしく、きつめな態度の裏にある照れ隠しを結花もラリーもしっかり見て取って、かたや生ぬるく、かたやいとおしげにそんな絵里の様子をながめているふたりがたいへんにいい雰囲気ではありました。

貴臣の昔の女との邂逅(半年ぶり2回目)では、貴臣の恋人としてすっかり覚悟を固めた結花の態度が目をみはらせてくれるところではありましたね。千煌さんに贈られた薔薇の香りの香水の効果も相まって、ひと回り以上年上な妖艶な美女に囲まれながらもひるむことなく、自然と湧き出てくるような自信に満ちた態度で対峙をしてのける姿はまさに千煌さんを彷彿とさせるものがあって。頼もしさすら感じさせられるものがありました。結花、もうすっかり、押しも押されもしない、立派な貴臣の恋人になれてますね。そんなことをしみじみと感じさせてくれる一コマ。素晴らしかったです。

かと思えばその裏でどっぷり酔いの回った絵里が、普段のツンツンぶりもどこへやら、ラリーにされるがままにスキンシップを受けいれてにへらとしてる様子が最高にかわいかったです。ラリー、やるじゃないですか。このふたりのカップルって、結花と貴臣とはまた違ったニヤニヤ感があっていいですよね。まあさすがに酒を飲ませすぎたっぽいけれど。しっかりついてたオチには笑った。これはリベンジ必須ですよねえ。その場面はどこで読めますか?

婚約指輪を用意だけはしたものの不安に駆られてる貴臣、あの貴臣が不安な心情を表に出すなんてと驚かされるけど、それは結花との関係をそれほど真剣に心の底から考えていることの証左であり、なんだかとてもほほ笑ましい気持ちにさせられるものがありますよね。まあもともと結花にプロポーズすることは一種の挑戦ではありましたからね。

物質的には結花を呆然させられるレベルの贈り物を用意することはできる。けれどそれは必ずしも結花が喜ばせることができるものではなくて。でも、本人が望むところが極端に少ない結花が相手では、そんなことでしか自分の気持ちの強さ大きさを表現する方法を思いつけなくて。己の愚かさに自嘲しながらもそうせずにはいられないほどの結花への想いを伝えてくれる心情がいいものではありましたね。

加えて、時期を考えれば就活で盛大にすれ違った直後だけに、なおさら失敗の許されない緊張感が存在しているわけで。似合わないはずの自信のない感情がふっと漏れる様子すらいとおしい。そんな発言がいいものではありましたね。

そういえば、その就活に際して、結花の足からはさすがにアンクレットははずされていたわけだけど、ここであらためて贈られるアンクレットがダイヤモンド製って……貴臣さん、ああた、相変わらずさらっととんでもなくお高いプレゼントをくりだしてくることで。しかも本人的には高級さよりも足枷の強固さを象徴するための頑丈さを追求したらそうなっただけとか宣うからものすごい。ここまでくると貴臣以上の大富豪も珍しくなくなってはきたけれど、そうはいってもやっぱりすさまじい。

まあそれを受け取る結花のほうも、それほどに強く感じ取れる執着心にうれしさを感じている様子がかわいかったりして、やっぱりお似合いなふたりではあるよねと思わせてくれることで。


以降の第八幕・第九幕・エピローグに関する言及はわけることなく一括で。

言及すべきポイントといえば、まずはやはり結花の誕生日。一年前もそうだったけど、結花の誕生日にかける貴臣の意気ごみはすさまじいものがあるよなあと、あいかわらず驚かせてくれるもので。

結花としては、日ごろからあれこれ贈り物はされているし、それどころか生活全部の世話も至れり尽くせりなレベルで見られているくらいなので、はっきり言って誕生日だからといってとくにほしいものがない。けれど貴臣としては、結花に贈り物をする絶好の口実なのであって。自分にとって結花がどれほど必要な存在なのか。ほかの誰でもない結花のためならどれほどのことをしてあげられるのか。それを結花本人に示してあげられる一年に一度の機会なんですよね。

だから、欲しいものがないといわれると、それならそんな結花でも喜べるものをどれほど手をかけてでも見繕って用意してみせなければとより力が入るのが貴臣であって。そしてそうなることが目に見えるだけに、何か欲しいものを見繕わないといけないと考えるのが結花であって。まあ、何が贈られるかあらかじめ予想がついていたほうが心臓にやさしいのは確かですからね。ただし、それでも生半可なものをお願いすればその最上級品を用意されるのは明らかなので軽々しく決めることもできないという。

なんだろうか、この、誕生日プレゼントがうれしいようなこわいような、なんともおかしな気持ちにさせられる不思議な攻防は。

しかも、そうして悩んで悩んでやっと結花が誕生日に欲しい手ごろなもの(変に話が大きくなったりしないはずのもの)を見つけられたと思ったら、それでもやっぱりとんでもないレベルでスケールをでかくしてくれるのが貴臣さんであって。結花の望みの物を調達すべく某所に電話をかけだしたひと言めのセリフを見た瞬間に笑わずにはいられませんでしたね。その手があったか!って、むしろ感心してしまうぐらい。

いやまあ言葉上はたしかにそういう解釈も可能ではあったけど、いくらなんでも、いくらなんでも……。結花への贈り物は意地でも最上級のグレードをとでもいうかのような、貴臣さんの面目躍如ではあったでしょうか。意表を突かれて呆然とする結花がめちゃくちゃにかわいかったです。そんな結花の顔を見るために、ではないんだけど、でもそれすらも贈り物を用意するべく奔走した貴臣への報いになるんだろうなと思うと、つくづく結花に入れこんでるんだなと思わせてくれることで。


加えてはずせないのは、結花のひとりエッチシーン。長期休み期間ではない、お互いに多忙な時期だからこそ、逢瀬の時間を、夕食デートでの意味でも夜のベッドでの意味でも楽しみにしていたにもかかわらず、急な予定で都合がつかなくなったとなれば、高めていた期待のぶんだけがっかり感がいや増さずにはいられない。そしてそれは、結花への抑えきれない欲望をかかえた貴臣だけではなく、ここまでくるとそんな貴臣に与えられる快楽への期待を貪欲なまでに教えこまれた結花にとっても当てはまるものであって。

会えるはずだったのに会えないのがさみしい。ひとりで摂る夕食の時間が味気ない。貴臣に埋めてもらえるはずだった空白感を埋めてくれるものがないのがさみしい。膨らむだけ膨らんだ期待を満たしてくれるものが手に入らないのがもどかしい。そうした満たされないもどかしさに耐えられなくなって自分の体に手を伸ばしだす結花のなんといやらしかったことか。

疼く部分に手を伸ばして、下着のうえからでもわかるほどにひとり変化しているそこに羞恥を感じずにはいられない様子。けれど自分がそれほどにいやらしい姿になれることを貴臣から何度も突きつけられて知ってしまっている結花には、それさえもそうしてくれる相手のいないさみしさを加速させるものにしかならなくて。

こんな程度では満たされないと、さらには敏感なところに直に指を這わせていって、耳もとで貴臣にいやらしく言葉攻めされる妄想までして、おさまらない疼きをやり過ごそうとする。けれど、どれだけ自分で自分を慰めても、絶頂に達しようとも、自分の手では貴臣のいない空白を埋めきることはできなくて。涙さえこぼしながら、それでも満たされない自慰を止められずに自分自身をもてあます。

もう、こんな結花、本当にやばい。やばいぐらいのいじらしさ。やばいくらいのいやらしさ。こんな卑猥な場面を、どうにかこうにか都合をつけてやってきた貴臣が目撃しようものなら、そりゃあもう欲望全開になるのは必然というもの。いやらしいところを見られた羞恥に真っ赤になる結花の表情すらも堪能して、これでもかと愛を注ぎこみたくなる。そんなたまらなさでしたね。

「……一人は、寂しい、な……」(5巻462ページ)

思えば、これが膠着状態に陥ったふたりの関係の突破口になる糸口ではあったでしょうか。結花としては貴臣と一緒にいられればそれでよくて、貴臣としては結花と結婚して一生自分のもとに縛りつけたくて。ふたりの希望の妥協点は結婚以外には存在しない。けれどそれに待ったをかけているのは結花のほうで。久世の家に入る覚悟が固まらないからではあって。

貴臣としては、それならそれで久世家と関わり合いにならないところで一生自分が飼い養うことも可能ではあるしいざとなればそのつもりではあったはずなんだけど、それでもあえて結花の意思による歩み寄りを待ったのは、ひとつには就活時のような関係破綻一歩手前の状況にいたることをおそれて。でもそれ以上に、自らの意思で将来を選んでもらったほうがより幸せな関係になれると思っているからではあり。結花がまだ学生の身ではあることをお思えば、まだ猶予期間があるわけではありますし。こうした葛藤の期間も、そうした期間だからこそのよさを感じさせてくれる作品なんですよね。

ただし、既述の部分でも書いたように、葛藤の末に結花が出した答えは、予想していたものとは違いましたね。

永遠の愛を信じられない、結婚に希望を持てない。それが結花の心に巣くう最大の障壁であるのなら、永遠の愛を信じられるようになることこそがその答えだと思っていたんですよ。でも、そうはならなかったんですよね。予想外なことにというか。

ただ、よくよく考えてみれば、トラウマレベルで染みついた恐怖を、それほどあっさり克服できるだとか、一、二年で克服しなければならないなんて考えるほうが、見ようによっては酷というものではあったでしょうか。もっと長く時間をかけてでも、根気よく向き合いつづけることでようやく克服できるものなのかもしれないし、それどころか一生つきあいつづけていかなければならないほどに根深いものなのかもしれない。恋や愛は素晴らしいものではあるけれど、万能の魔法ではないのであって。

けれど、その代わりに結花が出した答えは、既述分で書いたように、もっと素晴らしいものだったんですよね。貴臣が一生涯自分を愛してくれるのかはわからない。それは結婚したとしても、なお。でも、それならばそれで、いずれ飽きられてしまうそのときをおびえながら待つのではなく、むしろ結花のほうから、飽きられてしまわないよう、気に入りつづけてもらえるよう、貴臣に愛されるべく努力をしつづけることで、貴臣に捨てられる日がくるおそれを小さくすることはできるかもしれない。

それは、ただ貴臣から与えられるがままに愛を受け取るだけの関係ではなく、結花からも愛を与えあっていく関係。一方的なペットと飼い主の関係ではなく、好きでいられればそれでいい恋人の関係でもなく、互いになくてはならない存在だからこそそばにいて支え合う関係。つりあいがとれないならばふさわしい存在になれるように己を磨きつづけ、互いにいっそう目が離せなくなっていくような関係。だれになんと言われようとまどわされない、ふたりが望んでふたりで決めた、ふたりだけの関係。

こうした関係を目指すと決めた決意をして尊いといわずに、ほかのなにを尊べるのか。最高に素晴らしいカップルですよね。まわりにあれこれ言われて苦しんだり、つりあわなさに悩んだり、恋人として自信を持てずに泥沼にはまってしまった時期があっただけに、それを越えて、よくぞここまでたどりついてくれましたと、拍手すら贈りたくなってくるレベル。

特に結花。はじめてのひとり旅なヨーロッパでのどこか心配になる雰囲気を醸しだしていたことを思うと、よくぞここまで強くなったものと感慨深い気持ちにさせられるものがあります。ここまで至るには結花ひとりの力だけでは到底ムリで、数々の友人や知人、なかでも貴臣と過ごした時間なくしてはなしえなかったことではあるけれど、それだけに、その後の人生をすっかり変えてしまうほどの出会いというものに、涙が出てくるようなありがたさを覚えずにはいられないんですよね。

ここまでいたって、ようやくふたりの結婚を祝福することができる。1巻のうちからすでに既定路線に見えていた結婚をおだやかに祝えるようになるまでにどれほどかかったことか。プロポーズでさえ頭抱えさせられるものがありましたからね。本当に、長かった……。けれど、待たされただけのことはあったという結婚への決意。結花と貴臣、最高に祝福したくなるカップルになってくれました。

「……ん。わたしは、貴臣さんの、もの。でも」
「でも?」
「貴臣さんも、……私のものだって、思って、いい……?」(6巻400ページ)


このやりとりで、もう、感無量にされてしまいましたね。対等な関係としての愛を自分から口に出して、それをまちがいなく保証されて、泣きたいほどの幸せに顔を染める結花。主に3・4巻の苦しい展開を読んできただけに、どれほどそうして幸せをかみしめる結花の表情を待ち望んでいたことか。

そうして覚悟を固めてしまえば、第七幕であれだけ人生賭けるレベルでがんばった就活もあまり意味がなかったのかもという感じになってしまうのではあるけれど、でもそれしかないという道を否応なしに進まされることになるのと、いくつか選べる中でしっかり自ら考えて選んだ道に進むのとではわけが違いますからね。

それに、就活も含めて、そうした可能性をつかみ取ったのは、まぎれもない結花の実力によるものであって。それもまたこれまでの過程を経てきた結花の成長を思わせてくれるものではあるんですよね。喜びもあって、悲しみもあって、けれどそれらのすべてに意味があったと思える終盤の結花の姿。本当にまぶしいほどの成長ぶり。

ちょっと家出したと思ったら、そこでもまた久世家以上の世界的なセレブとのコネができてしまったりして。それすらも将来の選択肢のひとつにできてしまってるあたり、本当にとんでもない成り行きではありまして。

「しばらくは、フリーターということに、なるかと思います」(6巻455ページ)

そんなハイレベルなフリーターとか聞いたことないんですけど……というレベルでオンリーワンな高度人材ぶりを見せてくれる結花さん。いっそそのままフリーランス化していけそうなレベルじゃないですかね。

それに結婚祝いには貴臣から財団なんてものまでもらっちゃったりして、あいかわらず度肝を抜いてくれるからすごい。しかもバチェロレッテパーディーでその話をしたら、参加メンバーが大富豪の娘たちばかりすぎて、彼女たちの実家も巻き込んでどんどん話が膨らんでいく様子とか、もう本当に笑っちゃうレベルの異次元空間ぶり。話の流れについていけずに呆然としてたりもする結花の様子がおかしくもあるんだけど、でも結花さんもすっかりそんな世界の一員になってしまったんだよなあ。

6巻の終盤はもう結婚ムード一色で、祝福気分をこれでもかと盛り上げてくれるのがたまりませんでしたね。6巻の表紙がもう万感の一コマ。初夜であいかわらず卑猥なことをしでかそうとする貴臣さんは貴臣さんだったけど、それに応えて変わらぬ執着心に幸せを覚える結花の様子はなによりいとおしいものではあって。

それに、エピローグで簡単に描かれるその後でも、変わることなく愛しあい恋しあうお似合いのふたりである様子が描かれているのが最高に最高すぎて。もう本当に、最高な物語でしたね。1巻でハマって、2・3・4巻と呼んでいくうちにどうしようもなく好きになった物語が、期待にたがわぬ素晴らしいラストを迎えるところまで見届けることができた。そのことに、心からの感謝を覚えずにはいられません。本当に、素晴らしい作品でした。


結花と貴臣のふたり以外のキャラでいえば、絵里とラリーのふたりがやはりこの二冊ではとてもいい雰囲気ではありましたよね。

このふたり、特に傍目にはじゅうぶん伝わってくるラリーとの甘い関係を指摘されて耳や頬を赤く染める絵里がとてもかわいかったんですよね。そのくせして絵里は絵里で必死に熱い関係を否定しようとするあたりが、古式ゆかしきツンデレとしてとてもかわいいかわいい。

絵里って、ベタベタするのがそこまで好きなタイプではないようなので、結花や貴臣ほどのわかりやすいお熱いカップルぶりを見られることはほとんどないんだけど、それだけに、素直じゃないながらもラリーの好意をしっかり受け止めていることが見て取れる場面は本当にいいものではありまして。いっそ一作書くぐらいの勢いでこのふたりの話をがっつり書いてほしい気もしますが、まあ言ってみるだけということで。

既述分にもありますが、ラリーから絵里へのプロポーズはたいへんににやにやしくていいものでした。ふたりとも末永く幸せになってほしいものですね。

そうかと思えば、結花から半年遅れの結婚式ですでに泣きが入ってるっぽい様子なのがまたにやにやさせてくれるんですけど。まあ、ラリーも貴臣に負けず劣らずの資産家一族の直系なので、あきらめて受け入れるしかないですよね。合掌。


ほかにもはずせないのは、千煌さん。千煌さんといえば、ここまでかっこいい女性というイメージが中心だったんですけど、終盤になるとかわいいイメージもかなり追加された感がありまして。

結花の家出に際して頼ってもらえなくてすねる千煌さんは最高にかわいすぎましたね。身重の体で結花のことを心配して、片手間のように貴臣をこき下ろして、その貴臣の目の前でしっかり結花は自分ものアピールしていく千煌さん、ホント最高すぎませんか。

それに、結花の結婚準備を進める姿もたいへんにかわいくて。旦那の家に伝来のティアラとか持ち出してきて結花をどん引かせているのがおもしろかったり。あげくの果てにこんな時にしか使わない久世家のツテを「もしもし、嶋田?」なんてカジュアルにコールしてみたり。わがことのような浮かれぶりがおかわいいこと。まあ貴臣に取って代わらんばかりの勢いで結花の庇護者を自認してる人ではありますからね。まさに娘を嫁に出す気持ではあったでしょうか。

エピローグでは自分よりも先に死んではダメと言われたりもしてて、これはもうプロポーズではとか思ったり(百合脳)。ここまでくると、千煌さん家の子どもになった結花というのも、見てみたかったですねという。いやまあそんなことになったら話が完全に別物になっちゃうんですけど。


既述分の冒頭でよかったとは言えない部分も多々あったと書きましたが、こまごまと書いても余韻に水を差すだけのなので、本筋にあまり関係ない箇所を二点ほど。

まず一点目は、アナルセックスは取り入れないでほしかったかなというところ。これは完全に個人的な性癖に合わなかったというだけの問題なんですけど、男キャラの尻に挿入するぶんにはまったくかまわないものの女性キャラのお尻は、やっぱりどうも……というところで。

二点目は、ビルバオでのテロ事件。あの時点での作中の年代は2014年3月だったと思うんですけど、その時期のビルバオでテロが起こる必然性はなかったように思うので、なんらかの背景説明がほしかったですというところ。そうでないと、ビルバオにいたずらに危険な都市という悪印象を与えている感があるので……。


まあそんなこんなもありましたが、あらためて最後まで読んだうえでの感想としてはやはり、最高に素晴らしい作品だったということで。個人的な2019年上半期のベストは文句なしにこのシリーズです。

1巻から読みはじめて、順番に感想を書いてから次の巻にという普段のペースでは辛抱しきれずに一気に読んでしまったこの3840ページ。期間にしては半月ほど。既述分でも書きましたが、最高に幸せな読書の時間が過ごせた日々でした。

結花と貴臣のふたりをはじめとした、さまざまなキャラクターたちが織りなす極上の物語を紡ぎだしてくれた作者さんに、心からの感謝を捧げます。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:59| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月23日

カノジョになりたい君と僕(1)

カノジョになりたい君と僕 1 (1) (アース・スターコミックス)
カノジョになりたい君と僕 1 (1) (アース・スターコミックス)

カノジョになりたい君と僕 - GANMA!(ガンマ)

これ、めっちゃおもしろいことになってる話だ。ラストがもうめっちゃやばい。

体は男の子で心は女の子なヒロインがいて、主人公はそんな彼女と幼なじみの女の子。体と心の性の不一致でいじめられたり無神経な扱いを受けたりするヒロインをパワフルに守ってあげてきた関係性のふたりだけど、主人公はそんなヒロインのことを小さなころから男の子として好きな気持ちを抱きつづけているという、実らない恋の予感をばんばん感じさせてくれる話。

主人公はヒロインのために、彼女が女の子として周囲に打ち解けられるように体を張って奮闘しているわけだけど、けれどふたりの好意の向きは決定的に交わらない。それどころか、なまじ彼女が女の子としての一面を表に出していけることを応援してきただけに、好きな人ができてしまうと、その恋心を応援しないわけにはいかなくなってくる。主人公のほうが、もっとずっと前から彼女のことを好きでいたにもかかわらず。喜ぶべきだと思うのに悲しくて仕方がない。葛藤する気持ちに泣きながら笑ってる表情が最高によかったです。これ、この先どう言う展開になってくんですか。めちゃくちゃ楽しみなんですけど。

この主人公、とてもかっこいい女の子ではあるんですよね。男の体なのに女子の制服を着ることにしたアキラちゃんがひとりでつらい思いをしないように、自分も学ラン着ることにしたり、彼女のために周りにぶつかっていくときもいつも真正面から全力だし。それがいちばんアキラちゃんのためになってるかというのはまた別問題ではあるし、そこを指摘されて素直にあーそーじゃんとなれるところは好感のもてるところでもある。

けれど、アキラちゃんに対する気持ちだけは、ままならなくてややこしい。一挙手一投足にドキッとさせられたり、そんな自分におちこんでたりする様子はとてもかわいいところではあるんだけど。それだけに、ラストの展開はなかなかにしんどいよねという。

これは楽しみな作品になりそうな予感。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:37| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする