2019年01月09日

検証 長篠合戦

検証 長篠合戦 (歴史文化ライブラリー)
検証 長篠合戦 (歴史文化ライブラリー)

検証 長篠合戦 - 株式会社 吉川弘文館 安政4年(1857)創業、歴史学中心の人文書出版社

『長篠合戦と武田勝頼』においてはどちらかというと騎馬兵の合戦における立ち回りがクローズアップされていた印象があるが、こちらでは当時の鉄炮の運用についてより詳しく記述されていた印象。二冊そろって当時の合戦の姿というものをより正確に描きだそうとする研究は、その一部をあちらこちらでかじっていたとはいえ、まとめて読むと古いイメージで固定されていたのが否めない身には新鮮で面白かったこと。とはいえこれでもまだ研究途上のようですし、軍事史的観点から見る戦国時代というのもなかなか興味深いテーマではありそうで。

本書を読んでいて浮かびあがってくるのは、当時の鉄炮の使い勝手の悪さでしょうか。後代のあと知恵をもってすれば、鉄炮の採用は時代の変革であり、いち早くそれに手を付けるのは先見の明の表れであったのだろうなんて思えたりもするけれど、どうもそれほど決定的なアドバンテージがあったようには読み取れないのですよね。まず調達するだけでコストがかかる。鉄炮本体の国産地はかなり限られているため、輸入分を合わせても数をそろえるのには大名直属の鉄炮衆だけでなく家臣団からもかき集める分が欠かせなかったようで。また、本体のほかに弾丸や火薬などの消耗品も必要になってくるけれど、これも必ずしも勢力圏内で賄いきれるものではないので輸入して取り寄せなければならないものも発生する。しかも、それらは揃えるだけ揃えてあとは合戦のときだけ持ち出せばいいかというとそんなことはなくて、鉄炮衆の質や練度の向上のための訓練が重要になってくるため日常的に消費する分の調達も欠かせなくなってくる。実戦投入の前段階からしてやたらとリソースを要求されるのが伝わってくるんだけど、その上そうまでして鉄炮衆を配備しても、実戦の戦況に与えられる影響はそれほど決定的ではなかったりするようだからたまらない。よく言われるように連射性に難があるので射撃の合間には隙が生じるし(そのために多段撃ちがあるにはあるけれど)、そもそも雨が降れば使えないし……。鉄炮の採用に有用性はあるけれど、実戦での効果は局面的なものでしかなかったのではないかとも思わされる。けれどそれでも戦国時代の各勢力のもとで鉄炮が普及していったのは、矢合戦よりも遠距離から戦端を開ける有効射程の長さを有する都合上、敵がそれを持つからには、こちらも持たないことには一方的な戦とならざるをえなくなってしまう事情があったからではないかとも思ったり。

長篠の戦いの主要勢力の主である武田氏と織田氏にとって、鉄炮に関してのいちばんの相違は、地理的な両者の領国の位置がもたらす鉄炮本体や玉薬の調達しやすさにあったといえるだろうか。輸入原料が存在する関係上、西高東低な傾向が現れるのはある程度しかたのないことだったろうけれど、三千挺ともいわれる鉄炮衆を打ち崩すことができずに敗北を喫した長篠の戦いの結果を見ると、地理的な資源へのアクセス性が勝敗に与えた影響は無視できなさそう。

合戦における武田勝頼の敗因としては、そのほかにも鳶ヶ巣山砦の陥落などがあげられていたけれど、そのなかでも個人的には敵軍情報の誤認がいちばん大きかったのではないかと思えたり。鉄炮の装備云々以前に単純な兵力数の段階ですでに倍ほどの差があったにもかかわらず、それに気づくことなく思ったよりも小勢だぞとあなどってしまっていたようなので。諜報の失敗ともいえそうだし、裏返せば信長側による欺瞞作戦の成功ともいえそうで。そしてどちらにせよ、これは純粋に勝頼自身の決断の失敗なのであったという。父信玄から武田の負の遺産を受け継いだ悲劇の将としての勝頼像を否定する内容でもあるでしょうか。まあでも著者の平山先生はこの後著『武田氏滅亡』でも述べていたと記憶しているように、この合戦を滅亡の原因としてはいないのだけれども。

その他、鉄砲玉の成分の解析から東南アジアにまで広がる当時の貿易事情が見えてくるのは興味深かった。ここ、もっと深堀りした本はないだろうか。

そして、ポルトガル船からの鉄炮伝来以前の中国からの鉄炮の導入をさらっと既知の事実のごとく記す記述に衝撃を受けていた。いやまあそんな説もあるとかないとか見かけた記憶もあったように思うけど、自分が学校で習ったのはたしか1543年説だったっけ……。研究の進歩による新説との遭遇には驚かされるばかりですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 03:31| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月08日

シンデレラ・コンシェルジュ(1)

シンデレラ・コンシェルジュ (1) (フラワーコミックスアルファ)
シンデレラ・コンシェルジュ (1) (フラワーコミックスアルファ)

シンデレラ・コンシェルジュ 1 | 七島佳那 | 【試し読みあり】 – 小学館コミック

このコンシェルジュがハイスペック。調理にDIYに、ひとりでさらっとやってのける仕事のレベルの高さに、様々な要望に応えるお仕事の天職ぶりを実感させてくれる。とはいえ、そもそもとしてそれら数々のスキルを身につけるに至った経緯が、人並はずれた尽くし体質で新しく彼氏ができるたびに特技も増えていった結果だというのが泣けてくるところであり。そんなヒロインだから、特技としてのハイスペックさも男運のなさを象徴するものでしかなくて、誇れるものではまったくなかった。けれど、そんな彼女のあるがままの姿をすごいと言ってくれ、引き立ててくれる人との出会いがもたらされた。それがこの物語のヒーローであるキャラになるわけで。このヒーロー、ヒロインとはまた別の意味でいろいろできちゃう人ではあるけれど、そのせいで自分というものが空っぽになってしまっているタイプでもあるようで、それだけに似た部分がありながらも前向きなヒロインに目が離せなくなっていくところがあるようで。ヒロインとしても、呪いだと思っていたものに肯定感を与えてくれる人というのはなかなかありがたいものではあり、この時点で相性の悪くないふたりと思わせてくれるものがあります。今後、このふたりの仲がどう進展していくのかといったところですね。個人的には、ヒロインのハイスペックぶりについてももっと楽しみにしたいところだったり。

読切のほうはみごとなまでのケンカップルで。冒頭の別れ話の本気っぽさがマジだっただけに、最後でよりを戻す流れがケンカップルらしさをより感じさせてくれて。腐れ縁のようでもあるけれど、まあつまるところお似合いなふたりなんでしょうね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:19| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月05日

エクレア rouge あなたに響く百合アンソロジー

エクレア rouge あなたに響く百合アンソロジー
エクレア rouge あなたに響く百合アンソロジー

エクレア rouge あなたに響く百合アンソロジー:コミック | KADOKAWA

4冊目となる短編百合マンガ集。今回もすてきな百合がいっぱいないい一冊でした。感想は各話ごとにて。

カボちゃ「はじめまして、久しぶり」
自分にはないものを持った、特別な友だち。ふたりの間にあるのは思い出と、そこからくる好感と、ほんのりとしたあこがれと。進学を期に道はわかれても、お互いが特別なのは変わらない。なんというか、いいですよね。うん。

仲谷鳰「わたしカスタムメイド」
リアルに興味のないアバター作家とお近づきになるために、彼女好みの可愛いアバターを依頼しておじゃまする。短くまとまったそんなお話がとてもかわいかったです。

唯野影吉「あわせたら最後」
前回のキャラ! うーん、やっぱりコミュ障かわいい。

ヒロイチ「どん底の恋わずらい」
すっごいどうしようもない感じ。とてもいい。

北尾タキ「レジェンドと新人と私」
コメディタッチな社会人百合いいですわー。実年齢差二桁の先輩と後輩という関係で、基本的には一途な後輩をエースな先輩がようやるわみたいに見守ってるのがいい感じなんだけど、ときおりそんな関係性が逆転する場面も見どころだったり。

今回いちばんの好みは「レジェンドと新人と私」だったでしょうか。ほかの作品の女の子たちもいろんなかわいさがあって、やっぱりいい一冊でした。次にもぜひ期待したいです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 04:40| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月04日

女装コスプレイヤーと弟(1)

女装コスプレイヤーと弟(1) (ガンガンコミックスONLINE)
女装コスプレイヤーと弟(1) (ガンガンコミックスONLINE)

Twitterでたまに見かけては気になっていたマンガが書籍化されたとなればこれは買うしかないというところで(ちなみにTwitterで見かけてたのはだいたい和久井透夏先生(@TokaWakui)によるRTだったような気がします。女装系の作品のRTに個人的に定評のある方です)。というかこれコスネタ的によく書籍化できたなと驚くところですが、それはともかく。

弟よりも元カノとの関係が気になるんですけど! (女装)コスに夢中でそのまま自然消滅とか、なんかもうめちゃくちゃ詳しく知りたくなってくる情報なんですけど!

というか、主人公もそんな過去があるものだから、女装コスプレにも抵抗がないというか、ノリノリなんですよね。いやまあ自分で楽しむか、あるいは他人を楽しませることに楽しみを見出だすかあたりができないと、なかなか続かないものだとは思いますけど(一般的な趣味の話として)。そしてこの主人公の場合は自分で楽しむのがメインなタイプであるようで、メイク映えする顔をいかしたかわいい女の子のコスプレを自撮りなんかして楽しんでいたそうなのであったという。まあ本人が楽しいならそれでなによりなんだけども、自分で自分の女装コス姿をかわいいと言っちゃうあたりは、しかも照れながら言っちゃうあたりとか、それが元カノとの会話ということを考えてもね、もうね、かわいいよね。このシリーズ、コスプレのこととかよくわからず女装姿に恋してしまったフランス人の義弟のちょっとずれた愛情表現が萌えポイントなのかなと思うんですけど、個人的にはそっちよりもおまえがかわいいよという。

弟との距離の取り方に関しても、普段は男同士かつ義理の兄弟なんだけど……という事実によって一定以上に近づけさせてはいけないという抵抗感が働いているけれど、疲れてたりお酒が入ったりしてそういう心理が働かなくなってくると、べったり慕って寄りついてくる弟くんを自然に受け入れている瞬間があったりして、姉弟みというかおねショタみというかを感じられてグッドだったり。あと、弟くんによる人前だろうがかまわず押せ押せなアプローチで照れ照れになる主人公(女装)はまあ文句なしに優勝ものなので、もっともっと引き出してもらいたいところではあり。

1巻とナンバリングされてもいますし、2巻も楽しみにしたいところですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 03:17| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月01日

映画大好きポンポさん(2)

映画大好きポンポさん2 (MFC ジーンピクシブシリーズ)
映画大好きポンポさん2 (MFC ジーンピクシブシリーズ)

ジーン君がすがすがしいまでにクズだった。いや、映画バカだったということで。

うん。そう。映画バカ。ここまで自分の納得いく映画(=いい映画)を撮ること以外のいろんなことを放り投げてしまえる人ってめったにいないですよ。迷惑丸投げ、前言撤回、土下座敢行……いい映画を撮るためならプライドなんて端から捨ててかかるぶっ飛びようがすさまじかった。そうだよなあ、ジーン君って映画が好きすぎて好きすぎて、それ以外には何も要らないってくらいのやつだったよなあ。もともと根暗な社会不適合者でもあったし。

今回のジーン君がとんでもなかったのは、それを全部素でやっちゃうところで。最初はもっとスマートにやるつもりだったけどだんだん追いこまれてきて……とかではまったくなかったんですよね。自分がやりたいのは自分の納得いく映画を作ることであると、その抑えきれないほどの渇望に駆られるように動きだしたはいいものの、ポンポさんなしでは能力も足りなければ必要なコネもない。じゃあどうするかというところで選ばれるのが初手土下座であったということになるから呆然とさせられるところで。いやその、事前に迷惑かけた経緯とか、それがあったのにさらに……とか、とるべき態度としてのありえなさにジーン君株暴落不可避になるんだけど、でも最後まで読んでるうちに、それだからこそジーン君なんだよなあと納得させられてしまうのがすごいところであり。

人間としてはとても褒められたものではないんだけど、クリエイターとしてはたまらない魅力を放つバカでもある。そんなジーン君の映画バカぶりに魅せられるこの二作目は、冒頭で語られる続編ものに寄せる期待に真っ向から応えてみせた話だったと思います。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 19:50| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月30日

の、ような。(1)

の、ような。 1 (芳文社コミックス)
の、ような。 1 (芳文社コミックス)

好き。なんというか、もう……好き。あまりにも好みの中心を撃ち抜いてくる作品に出会うと、あれこれと言葉をひねりまわすよりもただただ「好き」という言葉しか出てこなくなるものなのだなあと、そんなことを実感させられる。このレベルになると、読んでて幸福感がすごいんですよね。自分でも気づいていなかった部分が満たされていく感じがするというか。やばい。やばい。とにかく……好き。全力でオススメします。

…………と、だけ書いて、作品の中身にまったく触れてないことに気づいたのでここから書いていくと。

あらすじとしては、ひとり暮らしをしていた作家の希夏帆(きなほ)のもとに、亡くなった親戚の子ども2人(中学生と幼稚園児)を彼氏が連れてきて、その彼氏ともども共同生活をはじめていく話。

個人的に、最近どうも家族ものの話に弱いんですよね。それも、血のつながった家族ではなく、そうではない者同士で家族になっていく話。なりよりも強力な血のつながりという絆がないからこそ、家族らしさの形という理想を手探りしていく様子がたまらなく大好きみたいで。この作品もその類型ではありました。

そのなかでも、この作品が特によかったのは、主人公の(とまで言っていいのかわからないけど少なくともメインの人物ではある)希夏帆というキャラクターについてであり。

両親を亡くしてしまった子どもを引き受ける人物として、これほどいいなあと思わされたキャラはどれだけぶりだろうか。このジャンルを好みだしてそれほどたってるわけでもないし、初めてと言ってもいいかもしれない。それほどまでに思わされたのは、中学生と幼稚園児という難しい年ごろの子どもたちを、親としてではなくあくまでも他人として、ひとりの大人として新しい保護者を務めていくそのスタンスにあったのであって。

希夏帆さん、自分の育ちでいろいろあったのか、とても子どもの目線に立った接し方をするんですよね。まあいっしょに暮らすようになったとはいっても知り合ったばかり。いきなり血のつながった肉親のようななれ合った空気を作りだすのは難しいかとは思いますが、かといって変によそよそしくなることもなく、印象としては常に一貫して、フランクな態度で子どもたちに接してるように見えるというか。ふたりの子どもたちがどちらも素直ないい子である部分も大きいんですけど、あまりにもいい子過ぎる部分もある。それで、迷惑をかけてないかと気をつかう子どもたちにあっさり困ってると認めてみたり、遠慮しがちな態度を見かねてあえて文句のひとつも実例として出してみたり、家族としてやっていくための必要以上の我慢を取り去るために子どもの思う大人っぽさからはちょっと離れた言動をちょくちょく見せる。子どもも大人もお互い慣れない相手との共同生活の中、子どもたちときちんと目線を合わせて、向き合って、歩み寄りを重ねて新しい生活を築きあげていく。そのスタンスは、一方的な教導関係ではなく、お互いをひとりの人間と認めて尊重しあいながらひとりひとりが主役となって家族の形をつくりあげていくかのようで。突然の生活の変化も含めて大変そうではあるけれど、それと同時に楽しそうだなあというのが伝わってくるんですよね。

彼ら子どもたちふたりを受け入れた理由についても、ここが特にすごいなと思ったところなんですけど、全然気負ったところがなかったんですよね。なにか特別な使命感めいたあったわけでもなく、かといって愁人くん(彼氏)が連れてきたからしぶしぶとというものでもなく。ふたりを引き受けることには賛成の意を表していたんですよね。それもごく自然に。助けが必要な子どもに手を伸ばすのは大人にとって当たり前のことだと言うように。これをなんの気負いもなく言えるのがすごいところで。そのうえで中学生と幼稚園児の男の子ふたりとその場で共同生活スタートできちゃうリソースの持ち合わせがあるのがさらにすごいところで。

希夏帆さん、年齢的には30代の半ばかそれくらいでしょうか?(同じ幼稚園のママさんよりやや年上な感じで読んでた記憶があるんですけど、あとから読み返すとそれっぽい描写が見当たらない……) まあそれはともかく、一般的な女性(とは)が家庭を持ち子どもを産み育てていく年齢をひとり暮らしで仕事に打ちこんできたことから、それなりの家事スキルはあり、居住空間も保有していた。それらは将来子どもを持つために準備されたものではなかったが、ふたりの子どもを引き受けるにあたって格好の用意ではあったわけで。〆切かかえた作家業に生活の変化はなかなか深刻な影響を与えるものの、そんな事情はあってもあまり表に出すことなく、むしろ他人より多く自分の時間を過ごしてきたのがそれを誰かのために使う番が回ってきただけだと、ごく自然に受け入れる様子に、なんだか理想の大人めいた姿を見た気持ちになるのです。本人自重してますけど、なかなかできることじゃないと思うんですよ(なにか、愁人くんとの関係で頼まれたら断れないものがあるようだけどそうだとしても)。

その意味で、愁人くんとの関係も気になりますね。もともと”半”同居状態だったとはいうものの彼氏どまりではあって。長い付き合いはあれど結婚はしていないという。文句はあれこれ言うものの、頼りにはしているしされている関係。もういっそ結婚してしまえばとも思うんだけど、それに対する回答は第1話のものがまだ有効でありつづけている状態であって……。うーん、なんなんでしょうね、このふたり。あの回答はあれでじゅうぶん理解できるものではあったんですけど。過去にあれに類するやりとりを経験してたりするんでしょうか。なんだかいろいろありそうな関係ではありまして。作中で連れ合い感が感じられるほどにふたりの過去が気になってくる感じ。同じ作中で男同士のカップルも友人として出てきてましたし、結婚の形というのもこの作品にとって重要なテーマだったりするんだろうか、どうなんだろうかというところ。

という感じでなんだかんだ書いてきましたけど、結論としては希夏帆さんが本当にいいキャラクターなんですよということで。
徹夜上等な作家生活に子どもたちとの共同生活が合わさって、ぼーっとした疲れ目な表情なことが多いですけど、それがまたいいというか。しかも、そんな表情をしていながら理想論的説教をかましたりするからなんというか、もう、好き。格好も基本的にラフなのにそのギャップがまたよくって。

そして、そんな希夏帆さんたちによってすこしずつ築かれていく家族の姿は、スタート地点ではいろいろ未熟だったのが、だんだん皆(特に大人の側が)成長してきてるのが見てとれて。向き合い、歩み寄りながら皆で足りないものを埋め合っていく家族。その基礎をなすのは家族というより共同生活なのかもしれないという気もするけれど、いいものですね。これもひとつの家族になっていく物語。

期待のシリーズですね。絶賛オススメします。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 21:03| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月27日

服を着るならこんなふうに(2)

服を着るならこんなふうに(2)
服を着るならこんなふうに(2)

「服を着るならこんなふうに」|ヤングエースUP

「俺だって欲しいんですよ スーツに合わせると大人っぽくしっかりして見えて あわよくば普段使いもできるような万能のコートが…」

なんだろう、とても最近の自分の心境とシンクロしたようなセリフが……。ごめんなさい、欲ばったこと言わずに何か買うことにします。

というのはさておき、今回は前の巻のラストで登場した樋口さん流のファッションの考え方が披露されるお話でもありまして。

樋口さん流、それは第一にしてなによりの趣味というレベルでお金をファッションにつぎこむものであり、1巻の話でへーへー言いながら読んでた人間からしてみればまるで別世界のようでもあるけれど、ひとつの方向性としてそうした路線もあるのだと伝えてくれるのであり、それと同時に無限にあるわけでもない元手でのやりくりの方法を教えてくれるものでもあり。いわば、基礎を学んだところで今度はそのすこし上のクラスをのぞいてみる感じでしょうか。

背伸びしないと手が届かないような感もあるものの、でもそうしていろいろ着こなしたりファッションの話をしてる樋口さんを見てると、これはこれでとても楽しそうでもあるんですよね。なににつけ、思いっきり楽しんでいる人を見てるとなんだかいいなあと興味がひかれるものもあるというか。楽しんでこその趣味であり、楽しみ方がわかってくるとより面白くなってくるのが趣味でもあるんだろうなと、本読み趣味の人間としてもわかる部分もあり。

そんな今回の話でいちばん面白かったのは、「流行のシャワー効果」と呼ばれていた考え方。これは服のトレンドの伝播経路に関するもので、おおざっぱにまず海外のトップブランドで最先端のデザインとして生まれたものが、何年も何年もかけて徐々ににその下のクラスその下のクラスのブランドに真似されていって、最終的にはファストファッションのお店でも見られるようになっていくという、そんな流れのことのようで。これを理解しておけば、あらかじめちょっといいお店で下見をきておいて、いいなと思ったようなデザインのものが手頃な店でも並ぶようになったところで手に入れることもできるし、またそうした知識をしいれておくことで大衆的なオシャレの流行を先取りすることもできるのだそうで。この辺、ひとつの流行だけで好みが満たされる人ばかりではないのではという気もするものの、むしろそれほどこだわりのない人にとっての手軽なチョイスとして有効に機能するものではないかと思ったり。

そんな感じで、今回もおもしろい話でした。躁的な買い物には気を付けたいですね……。

あと妹ちゃんも、今回もかわいかったですね。個人的にはメガネかけてるほうがかわいさアップして感じられるような気がしますがそれはともかく。

次回は、どんな話でしたっけ? まだ既読の範疇ですが、そろそろ記憶があいまいになってきてて。ともあれ、次も楽しく読ませてもらいたいです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 19:01| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。―AΩ―(1)

即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。-ΑΩ-(1) (アース・スターコミックス)
即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。-ΑΩ-(1) (アース・スターコミックス)

即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。−ΑΩ−|コミック アース・スター

あ、これおもしろいわ。

タイトル見て一発ネタかと思ってたんですが、読んでみるとそれだけで短いお話が作れそうな設定がこの一冊だけでもいくつも詰めこまれてる感じ。それになにより主人公とヒロインのキャラがいい感じで、掛け合いがとてもおもしろい。これを読み逃してたのは悔やまれる。

連載開始時点で1話目を読んで、これはおもしろいと思えたものだから、つづきも気になるし原作小説のほうで読んでいこうという気にもなったのだけど、文章で読むと1話から2話にかけてのやられ役がくどくて無理だったという。最近ちょくちょくあることですが、ともあれマンガで追っていく方向で。

それはそれとして、ストーリーとしては、即死チート持ちの主人公がクラスごと異世界転移させられて、スキルなしを理由にクラスの皆から置いていかれる系統の話。

ヒロインの壇ノ浦知千佳(すごい名前だ)も主人公ともども置いていかれた組なんだけど、このふたりの掛け合いが基本的におもしろいんですよね。元の世界からチート持ちだった影響か、異世界に来てもぬぼーっとしてマイペースなところのある主人公に対して、一般人代表のようにしてツッコミをいれていくスタイル。それもいきなり訳のわからない事態に巻き込まれた状況もあってかやけくそぎみなハイテンションのノリツッコミはテンポもよくて、シリアスな状況なのに笑いを誘ってくれて。クズな悪役の言動で気分が悪くなりそうな場面でも後を引かせない効果もあるように感じられたりして。個人的にこのマンガ版のテンポとは相性のいいところがあるのかもしれません。

というのもこの作品、登場人物にろくでもないやつが多いんですよね。知千佳がスタイルのいい女の子だとなると好き勝手な欲をあらわにしたり、特別なスキルを手に入れたことでそうでない人たちを見下したり。しかもそのほとんど全部が転移してきた日本人だったりするからあきれるというかかわいた笑いしか出てこないところで。まあ主人公も他人よりちょっとチート能力との付き合いが長いというだけで、中身は健全な男子高校生みたいなんですけどね。こんな状況を見れば知千佳ならずとも「ろくな男がいやしねーよ!!」って反応にもなろうというもの。

そんな感じで、日本人のダメっぷりやらヒロインによるテンポのいい掛け合いやらを楽しませてもらいつつも、話としてはまだはじまったばかりというところで。主人公のチート能力もまだその全貌はうかがいきれないところがあり、ヒロインの知千佳のほうもなにやらいわくありげなスキルを抱えてそうですがこちらもお披露目はまだ。つまり能力バトルものとしておもしろくなれそうな要素がまだ秘められてるんですよね。それに、転移先の世界についてもわからないことだらけであり。この先どういった方向に話が転がっていくんだろうかと、ふくらむ期待を抱きながら次の巻を待ちたいところですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:25| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月26日

兵農分離はあったのか

兵農分離はあったのか (中世から近世へ)
兵農分離はあったのか (中世から近世へ)

兵農分離はあったのか - 平凡社

もともと自分が「兵農分離」という言葉に持っていたイメージとしては、冒頭でもあげられていたような、軍隊の専業化、それによる強い軍隊(信長・秀吉勢力)、そして江戸時代の士農工商へとつづいていく階層分化の走り、という感じだったでしょうか。

けれどこの本によれば、歴史学における兵農分離論が含む範囲はもっと広いという。兵の専業化のほかに、武士の城下町集住、百姓の武器所持否定などといった論点が含まれるという。また、武士と百姓の身分分離に関しても、土地所有形態における論点や身分規定に関する論点が存在しているという。専業化に関しては、ここ数年で読んだいくつかの本からイメージを修正する必要を感じており、それがこの本を読んでみるきっかけにもなったのですが、それにしても思っていた以上に広範な議論のあるテーマのようで。織豊期にはじまる近世とそれ以前の中世との間を断絶ととらえるか、それとも連続としてとらえるかという時代区分論まで関わってくる奥の深い議論であり。とても面白い一冊でした。

タイトルで立てられている問いに対する著者の答えとしては、ひと言で言って「現象としてはあったが、政策としてはなかった」とでもいうところになるのだけど、それについてもなかなか興味深い議論がなされている。刀狩りや太閤検地など、身分統制を目的にしたとされてきた(そういうイメージで記憶されている)政策も、その法令の背景などと合わせて読み解いていくと、実際の目的は別にあったのではないかということがわかってくるという。また、城下町への集住も、詳しくみていけばそこまで徹底されていたものではないのだという。つまり、近世において兵農分離と呼称できる状態は進行してはいたが、それを目指した政策は存在せず、それどころかその進行度合いも各地でまちまちであったということになるようで。

なんとなくすっきりしない気分が残るのは、あくまで「(政策としては)なかった」でしかないのであって、それじゃあ「(そういう状態としての)兵農分離はあった」とも言えてしまうところであって。とはいえまあ、明解な結論が出ていないからこそ、議論が現在進行形なテーマでもあるのでしょう。なにより、戦国時代から織豊期にかけての時代に対するイメージのいいアップデートができたように思います。

個人的にいちばん面白かった部分は、第一章・第二章あたりの、戦争に参加する兵士たちの身分についての議論の紹介。信長や秀吉以外の戦国大名たち(例として北条氏・武田氏)の間でも百姓と区別しうる層が兵士たちの中心であったという、ここ最近の疑問にずばり答えてくれる内容で、たいへん面白かったです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 11:18| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月23日

薬屋のひとりごと

薬屋のひとりごと (ヒーロー文庫)
薬屋のひとりごと (ヒーロー文庫)

薬屋のひとりごと | ヒーロー文庫

小説発売当時はスルーしてた記憶があるんですが、マンガ版の発売で気になってきて、二種類くらいあるのの両方とも試し読みをしてみたものの、どちらも一長一短あってどちらを読みたいとも決めかねて。じゃあいっそのことと、その原作小説を読んでみようとしてみた次第。

そして読んでみると、これがおもしろいこと。

主人公である猫猫の変人ぶりがなんとも愉快であることで。後宮で毒見役を務めさせられることになるんだけど、薬屋の知識を活かして毒を見抜くだけじゃなくて、そのついでに毒の味わいを楽しむという常人離れした所業をしてみせるからおそれいる。小さなころから好奇心のおもむくままにちょっとずつ慣らしてたって、いやいやいや、その発想はおかしいでしょうというところで。毒を摂取しては吐きもどし、自分の体を傷つけては薬を試し、たまに加減をまちがえてはぶっ倒れ……。そりゃ、そんな生活してたら、虐待を疑われますわ。可哀想がられて甘やかされもしますわ。けれどその当人の実態はといえば、毒見役でありながら毒に当たって甘美に顔をとろけさせる、一風変わった少女なのであったという。しかも、十代にしてすでにザルな酒呑みというおまけつき。こいつはいろいろおかしな奴ですよ。

くわえて、薬屋は薬屋でも、花街に店を構えていた薬屋の養女であったこともあり、そちら方面の知識や影響もちらほらあって。上流階級の後宮の女性たちでは思いもよらない観点からその手の知識を伝えてみたりしてる様子はおもしろくあり。どちらかというと女性向けっぽい作風なのであからさまには描かれませんが、そのぶん避けることもなく出てくるネタはなかなかいいものであり。お上品な女官を花街育ちの「冗談」で黙らせるエピソードは、これまたきわどいながらも愉快なネタではあり。

また、埒の明かない女官たちにすごんでみせたり、後宮社会、そのなかでも妃の側付きクラスとしては異分子な出自をいかした立ち回りは自由さを感じさせてくれていいもので。向こうのほうからいろいろ関り合いを持つことになってくる壬氏なんかも、この辺の使い勝手のよさや型破りさを重宝しているのでもあり。まあ彼の場合はそれ以上にお気に入りの節がありますが、当の猫猫のほうがあまりにも鈍感に過ぎるので、玉葉妃ともどもお腹を抱えさせてもらったり。

ひとつひとつの話は掌編程度で、けれど切れ目なく猫猫による後宮での話がつづけられていく形式で。大きな話はまだありませんが、そのぶん一冊で両手に余るほどの話を楽しむことができた感があって、満足感の高い一冊でした。読み進めていくのが楽しみなシリーズになりそうです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 18:20| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする