2018年09月20日

図書館の大魔術師(1)

正式なタイトルは「くにがまえ」に「書」と書いて「図書館」と読ませてるんですけど(作中では中央図書館を指してるっぽい)、変換して出せなかったので便宜的に。

図書館の大魔術師(1) (アフタヌーンコミックス)
図書館の大魔術師(1) (アフタヌーンコミックス)

http://afternoon.moae.jp/lineup/870

すごくいいプロローグだった。ここから、無限に期待を膨らまされる物語がはじまる。この先には、どこまでも広がる冒険の世界が待ち受けている。そんな、とんでもなくワクワクさせられる気持ちとともに読み終えた本を閉じる。これがどれほど幸せな読書体験であることか。この物語自体が本に対する無限大な希望と憧憬でできあがっているように、この物語は読み手にも無限大な希望と興奮を与えてくれる。これは本に対するあふれんばかりの愛によって作り上げられた物語であり、読み手にもその焦がれんばかりの熱を伝染させてくれる物語である。本をめぐる物語としてこの上なく素晴らしい作りで、本への愛を叫んだ物語として素晴らしい力強さで、そして本の面白さを伝える物語として素晴らしくいい話で。これはまぎれもない傑作であると、声を大にして叫びます。

……と、書いたところで、内容にいっさい触れないまま言いたいことほとんど言いきってしまった感もあるんですが、なんとか残りのことを書いていくとして。

この巻の大筋の流れとしては、本好きな少年による出会いと旅立ちの物語ということになると思います。ある村に本の好きな少年がいて、村の図書館で本を読むことを楽しみにしているんだけど、貧民街の子どもであるがゆえに館長に立ち入りを禁じられていて。そんなところに、ある時、中央図書館から何人かの司書がやってくる。その世界において特別な存在である彼女たちとの交流を通して、少年は本への思いをより強いものにしていくことになる。そんな感じの話であり、まるまる一冊通してこれからはじまる話のプロローグでもありました。

ですが、プロローグであるにも関わらず傑作の感さえ抱かせるのは、それほどまでの物語が描かれていたからで。そして、その物語を演出してくれたのは、主人公である少年が初めて目にした司書の女性(少女といってもいいかもしれない)・セドナのキャラクターに負うところが大きいと思うのであり。

セドナ=ブルゥ。中央図書館の司書にして、その中でも若手の期待株(であるらしい)。けれど、そういった肩書きやそれに伴う評価をわきにおいて、彼女が物語において果たした役割、それが由来する一番のところは、彼女の芝居がかった言動にあるのであり。普通でないことをとらえて特別と言い、偶然をとらえて必然と言い。そこに感じるのは物語の力に対する信頼であり、人の持つ可能性に対する希望であり。そしてなにより、彼女の言葉には聞かせる相手にそれを信じさせる自信があふれており。いうなれば、彼女は抑えつけられてきた者の口から目をみはるよう物語を紡ぎださせる優れた聞き手であり、自らを取るに足らないと感じる者から秘められた力を引き出させる優れた演出家であり。今回、彼女が少年に及ぼした影響は、少年からしてみればまさに天の使いのようであったかもしれない。けれど、彼女からしてみれば、ちょっと背中を押してやっただけなのかもしれない。そう思わせるところが飄々とした彼女らしさであり、気取ったところのある彼女らしさでもあり。まあこの点、裏を返せば中二病っぽくもあるところで。そのため、同僚からは残念な子扱いされてる部分もありますが、しかしこの巻における彼女と少年の物語は、その一面がまがい物ではない確かな彼女の力なのだと思わせてくれるものがあったのです。そしてだからこそ、その物語に心を震わされるほどの熱量を感じるのです。

そんな出会いがあっての旅立ちとくれば、少年の心に宿る思いはいかばかりか。村の外に待ち受ける世界に期待を膨らませながら、次の巻の発売を待ちたいですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 14:12| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月11日

服を着るならこんなふうに(1)

服を着るならこんなふうに (1) (単行本コミックス)
服を着るならこんなふうに (1) (単行本コミックス)

https://web-ace.jp/youngaceup/contents/1000029/comics/968/

1巻の内容はWebで読了済み。というか、Webで全話公開してるものだから、たぶん3巻くらいの内容までついつい読みふけっちゃって、おもしろいからあとは本として買って読もうということにした次第。

で、あらためて読んでみると、これがやっぱりおもしろいんですよね。どこがいいかというと、いちばんには主人公の妹がかわいいんですよ。そこかよという感じですけど、ええ、はい、そこなんです。これは、表紙の画像だけ見ててもピンとこないものなので、ぜひWeb掲載のものでもいいので中身を見てもらいたいんですけど、この妹、毎回ビジュアルが変わるんですよね(妹に限った話ではなかったと、全部書いたあとに気づいたんですけど、いまさらまあいいか……)。ファッションに関しては語彙が貧弱にもほどがあるのであまりくわしい説明はできないんですけど、服装・髪型等、毎回なにかしらの変化がついてます。それもあって、これという固定的な外見のイメージはできにくいんだけれど、常に変化がつけられることでついつい注目がひかれるところがあって。そして、それぞれ異なるイメージを抱かされつつも、そのどれもが似合っててなんだかいいなあと思いながら読んでいるうちに、ああこのキャラかわいいなあと気づいたりするのです。個人的には、特にメガネのあるなしでの印象の違いが大きいように思いますね。

話の本筋としては、そんなおしゃれさんな妹によるところの、「服を買いに行く服がない」レベルのファッション音痴な主人公へのメンズファッション指導マンガということで。自分もそちら方面のセンスは壊滅的なんですけど、お話の作り自体はオーソドックスというか、お出かけ時の服装に困っていたところに半信半疑ながらも妹の指導を採り入れてみることで、たしかに見た目のイメージが変わって、それとともに周りからもファッションを褒められるようになったりして、自分のスタイルに自信が持てるようになっていく感じというか。だいたいはそのくりかえしなんですけど、こういう成功イメージをくりかえし追体験するような話は、読んでいてそれだけで楽しいものがありますし、その話の中に、詳しい人(監修協力してるラノベもありましたっけ)によるしっかりしたファッション理論が混ぜこまれているものだから、そしてそれが苦にならない程度の絶妙な分量であるものだから、読んでるうちにするする頭に入ってくること。これなら自分にもできそうかと、前向きな気持ちにもなれてくるんですよね。一時期、本屋でビジネス書のコーナーに置かれてるのを見かけたりして、マンガなのにと思ったりもしたんですけど、これはそこにあってもおかしくない内容だと思いました。

さて、この巻のラストは新キャラの登場で次につづく感じで。ここまでの話が完全初心者向けの無難な基礎理論だったとすると、また別方面からのファッションの楽しみ方を提示してくれるキャラでもあり。そちらもまた、本で読んで楽しみたいところですね。

(Web掲載ページ)
https://web-ace.jp/youngaceup/contents/1000029/
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 03:37| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月07日

オネエ男子、はじめます。(2)

オネエ男子、はじめます。 2 (花とゆめCOMICS)
オネエ男子、はじめます。 2 (花とゆめCOMICS)

https://www.hakusensha.co.jp/comicslist/51481/

基礎化粧品代でおこづかいがカツカツな男子高校生、なにかがおかしいんだけど、面白いからまあいいか。そんな感じのシリーズ2巻目。

男子が苦手な意中のクラスメイト・音鐘さんとお近づきになりたいと思ったまではよかったものの、第一歩目をまちがえてしまった感はすでに覆い隠しようもなく、交流イベントが進むのは女装姿でのときばかり。それどころか、恋愛イベントの予感すら漂ってきてるのは、ギャグとして笑えばいいのか、疑似百合的なものとしてテンション上げていいのか。なかなかリアクションに困る状況になっているところであり。

まあドツボにはまってるのは全部自業自得なんですけどね。好きな女の子とのデートイベントとか、そんなの即答でOKするよね。気の重くなるような打ち明け話なんて吹っ飛んじゃうよね。わかるわかる。でもね、そのイベント、女装が前提ですから! 男の姿ではほとんど箸にも棒にもかかってませんから!

高橋、残念な子……。というか、戻ってこれなくなる前になんとかしようね……?

けれど今回の個人的なハイライトは、なにをおいても燿市のひとりお出かけシーンだったと思うんですよね。こいつ、完全に女装にハマってますやん。あまりにもノリノリすぎて、ふつうに超可愛いんですけど、なにこの子。あの場面だけでその筋の人()にとても訴求力がありそうな気がするんですけど、どうでしょ白泉社さん(何の話だ)
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 19:58| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月04日

水玉ハニーボーイ(8)

水玉ハニーボーイ 8 (花とゆめCOMICS)
水玉ハニーボーイ 8 (花とゆめCOMICS)

https://www.hakusensha.co.jp/comicslist/51475/

今回も仙石さんがかっこよくて満足した。男子以上に女子に人気なイケメンヒロイン、いいですよね。七尾家長女に家庭科部員たちにお姫にその他、すでに仙石さん大好きな人たちが多数ながら、またしてもオーバーキルぎみに女子の心を撃ち抜いていく仙石さんに惚れる。かたや男子のほうで撃ち抜かれてるのは藤君だけ。仙石さんの心のほうを射抜けるのは藤君だけでもあるので、いかにも藤君独走みたいな構図でありながら、ギャグ的な場面ではあるけれど、むしろ女の子たちが障害として立ちはだかる。さすがです、仙石さん。

というか仙石さん、中学時代からすでにイケメン力全開だったのね。立ち姿だけでも侍女子らしいかっこよさが漏れ出まくってて。小学生時代の小さな絵だとまだかわいらしさがあったのに、中2になるまでにいったいなにがあったというのか、おそろしい……。この巻で初めて話題にのぼったような気のする師範のことを話す仙石さんは、なんだか純粋な子どもっぽいかわいらしさがあったように思うんですけどね。次の巻ではその辺の過去に関わる話になったりするんでしょうか。なんにせよ、またかっこいい姿に期待したいですよね。藤君には悪いけれど、藤君よりも仙石さんの見せ場を期待する派。

まあでも、藤君の見せ場をいちばんに邪魔する障害は、実のところ仙石さんその人であるようにも思うのだけど。仙石さん自身も藤君への気持ちは自覚してるし、折を見てそれを伝えたいとも思ってる。でも肝心なところでタイミングが合わなかったり、照れてしまってうまくいかなかったりする現状。ドツボにはまりつつある感があって、進展するにはなにかきっかけが必要そうになっているところ。空回りしたエネルギーが別方向に向かってのイケメン力発動もあるし、ギャグとして流れることでのコメディ的なやりとりの面白さも、ぐんぐん増しててすごくテンポよく楽しめてたりするんですけどね。その意味で、師範の登場は、なにか転機になるのではと思ったり。まあでも、次回予告はやっぱりコメディな雰囲気なんですけど。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 13:37| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月18日

佐倉さんご指名ですよ(2)

佐倉さんご指名ですよ(2) (電撃コミックスNEXT)
佐倉さんご指名ですよ(2) (電撃コミックスNEXT)

佐倉さんご指名ですよ(2) | 電撃コミックWEB

メイド喫茶で女装して働かされる男・佐倉さんの話の2巻目。この巻も「佐倉さんがかわいかった」の一語ですべての感想が言い表せてしまえる内容。秋津や店長にはめられてあざとさを演出されるのはかわいいし、固定客からの大人気ぶりに涙目な様子はとてもかわいい。本当にどこをとってもすごくかわいい。なんだこの反則レベルのかわいさは。女装メイドはいいものです……。

中でも今回の見どころは、秋津さんのターンが多かったことでしょうか。なんだかんだいってこのふたり、両想いの関係ではありますからね。当初の弱みらしてアレでしたし。だからこそ、ふだんはあざとい女装姿に抵抗してみせる佐倉がたまに不意打ちで直球な気持ちを向けられると照れまくる姿はめちゃくちゃかわいいものがありまして。ただでさえかわいい佐倉さんのかわいさをさらに爆上げてくれる秋津さんの存在のありがたさたるや。秋津さんの性格が男らしいだけにより佐倉さんのかわいさが際立つというか。つーか、秋津さん、お嬢様設定はすでに出てたと思いますけど、今回ちらっとだけ出てきた過去話とか見る限り、めちゃくちゃハイスペックにもほどがあるじゃないですか。こんなもん、そのまますんなりくっついたら、佐倉これっぽっちも頭上がらなくなるやつじゃん。そりゃ、変なこじれ方もしますわというところ。でも、秋津さんはやっぱりSっ気のある言動の似合う人ではありますので。秋津さんに辱められる佐倉さんという構図こそが至高。たいへんよいものでした。

それだけに、これで終わりなのが悲しい。完結するからといってなにか特別な盛り上がりがあるでもなく、次の号でまたふつうにつづきが連載されてそうな感じの終わり方なのがまた……。とりあえず、表紙めくってすぐの作者さんのコメントに力強く同意しつつ、また似たような方向性のキャラがいる話を描いてくれるといいなあと期待を寄せることにしましょうか。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 21:46| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月01日

あの娘にキスと白百合を(8)

あの娘にキスと白百合を 8 (MFコミックス アライブシリーズ)
あの娘にキスと白百合を 8 (MFコミックス アライブシリーズ)

あの娘にキスと白百合を 8 | あの娘にキスと白百合を | 株式会社KADOKAWA メディアファクトリー(あらすじを見るならこちらのほうが)
あの娘にキスと白百合を 8 缶乃:コミック | KADOKAWA(試し読みするならこちらのほうが)

今回のメインは生徒会長候補でライバル同士な関係のふたり。

今回もめっちゃ好きなやつでした。このシリーズに出てくるカップル本当に好き。

ライバル関係。意味に多少の幅はありましょうが、ここでは、それは実力伯仲している者同士、なにかと比較されがちでありながら、そこで自分が相手より劣っているとされることにがまんがならない間柄。当時の生徒会長に勧誘されて生徒会で働きだした龍海なぎさと虎山ひかりではあるけれど、もともと相性がよかったとはとてもいえず。次期生徒会長を決める時期が訪れて、いよいよその上下がはっきりつけられる時がやってきたという感じの流れ。

いいですよね。水と油な関係のふたりの競い合い。負けたくない、そもそもなんであんなやつに人気があるのか。そんなレベルで仲の悪いふたりが並び立って、どんな緊張感あふれたやりとりがくり広げられることになるのか……と思いのほか、ふたを開けてみれば、実はふたりは根っこのところでは腐れ縁な関係なのであったという、安心して読める百合仕様のお話なのでありました。こいつ腹立つ、人の気も知らないで。そんな相性最悪エピソードが盛りこまれつつも、それすらもにやにやしい描写がとてもいいのでした。

けれどそれはあくまで百合目線で映るビジョンであって。当人たちは真剣に嫌いな相手に勝とうとするのがポイントで。そのために、相手のことをあらためてよく観察してみることで、気に入らないんだけど認めざるをえない部分を見つけて、この方面ではかなわないなと心中で素直に認めたりとか、そのままにしておけば相手の不利に働くことが目の前にあっても、正々堂々と戦いたいという思いからあえてそれを取り除いてみたりする様子は、とてもいいものでした。こういうのは男女の関係でもそうですけど、女の子同士で見られると、なおさらとてもありがたいものがありますね。

というか、このふたりの場合、なんだかんだ言っててもズボラななぎさと世話焼きなひかりという組み合わせは安定感があってニヤニヤできるという部分でポイント高いのではありますが。

今回の選挙戦を通じて、互いにライバル関係として以上の意識が芽生えたふたり。仲の悪さが素直じゃなさに映るところが出てきたりと、とてもおいしい流れで、たいへん堪能させていただきました。できればまた描いてほしいふたりであります。

そして、ライバル関係といえば、シリーズ通して、メインのカップルの脇でありつつも描かれとおしてきた白峰さんと黒沢さんの関係も、同じくライバル関係からはじまったものでありまして。気づけばちょっとずつ変化してきてるこのふたりの互いに対する感情も、あとがきで作者さんもふれてるように、当人たちの中でかなり進展してきているところがありまして。何気にもうあとひと押しくらいでクライマックスを迎えられそうなところですよね。こちらも目が離せなくなってきてますね。

あと、巻末の番外編では、6巻でメインだったあの三人が登場しててたいへんうれしかったです。自分にだけ優しくない仁菜の態度に困り顔の諒がとてもかわいい。やはりこの三人はかわいい。ありがとうございました……。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 20:50| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月11日

ボクラノキセキ(1)

ボクラノキセキ 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)
ボクラノキセキ 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

すでに18巻まで出てる長編マンガですが、最新刊のあらすじを見てたらなんだかおもしろそうで、1巻のあらすじを見てもやっぱりおもしろそうなので、かなり後発ですが読みはじめ。

読んでみるとこれが期待以上におもしろいことおもしろいこと。主人公はどこかの世界で滅んだ国の王女の生まれ変わりで、現代日本で生活する少年・皆見晴澄。小学生の頃は前世の記憶について気にすることもなく周りに話していたりしたものの、当然のごとく馬鹿にされたりいじめられかかったりしたことから、それらの言動は若気の至りとして、現代日本に順応した生活を送ろうとする男子学生であったという。

初出は2008年ということで、今から10年前ですか。でもここのところの異世界転生の流行り(いまは次に移行しつつあるという話も目にしますが)を見てると、なんだかそれをひっくり返したような設定で、とても新鮮に感じられるところがあるというか。しかも、生まれ変わりは主人公だけじゃなくて、実は主人公の高校のクラスメートに何人もいるらしいことがわかってきたりと、集団転移ものを思い起こさせる設定でもあるんですよね。

けれど舞台は現代日本だから、いわゆる中世ヨーロッパ的な元の世界であったような戦争は遠いかなたのもので、それにもかかわらず異世界の言語や文化、そしてなにより魔法の知識ははっきりと記憶に残されており、思い出しさえすれば魔法の力を行使することもできる。初め、前世の記憶をはっきり覚えているのは主人公だけだったものの、その影響をうけて自身の記憶に目覚めるクラスメイトたちが現れだす。けれど、彼らが必ずしも前世の王女ベロニカの味方だったとはかぎらず、人を傷つけ、殺める魔法の力が現代日本の高校にもたらされることになる、というのが1巻の流れ。

こう書くと、めちゃくちゃ現代異能的な話でもありますよね。現代日本への集団的な転生ものにして、現代異能アクションとなると……めちゃくちゃ新鮮で、めちゃくちゃワクワクさせられるじゃないですか!

1巻時点ではまだ、判明してる前世の記憶持ちは王女ベロニカの味方側の人たちだけで、アクションも偶発的なものだけでしかないけれど、魔法の存在しないはずの現代日本で適応していこうとしていた矢先に起こった以前の世界の縁や知識の流入が、彼の学園生活にどんな影響をもたらしていくのか、ものすごく楽しみにさせられますよね。

そして、告白して付き合いだしたその日のうちに、かつての主従だと判明してしまって関係がぎくしゃくしだしてしまった主人公カップルの行方はいかにというのも、とても気になりますね?
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 13:21| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

サマータイムレンダ(1)漂着

サマータイムレンダ 1 (ジャンプコミックス)
サマータイムレンダ 1 (ジャンプコミックス)

Web連載ページ(少年ジャンプ+)

タ、タイムループものだーー!?

幼馴染の女の子が亡くなって、その葬儀のために故郷に帰ってきた主人公の話ということで、ビターな感じの青春物語が展開されていくんだろうか思いきや、そうきたか……という。いやだって、田舎の夏、埋めようのない喪失感へのとまどい、再会した家族や友人たちとの悲しみの共有……ときて、これもう完全にノスタルジックなストーリーの予感をほうふつとさせる出だしじゃないですか。そういうの期待しちゃう設定じゃないですか。

けど、1話目読んでるうちにすこしずつ違和感を覚えてくるんですよね。いろんな登場人物が出てくるうちに、だんだん幼馴染の死にはなにか裏があったんじゃないかと思わせる要素がまぎれこみだす。ミステリー的な展開になるんだろうかという気もしてくるんだけど、それだけならまだ現実的な非日常の様子として、青春物語への期待はそれほど動揺するものではなかったんですよ。でも、1話目も後半になると、さすがにもうその思い込みではごまかしきれないくらいにおかしな雰囲気が加速してくる。描写もどんどんサスペンス的になってきて、緊迫感が増してくる。非日常がさらに非現実に移行していることだけがわかって、けれどそれ以上には状況を飲みこみきれないまま、どういうことなのどういうことなのと盛大に疑問符を抱えているうちに、物語は一度目の結末を迎える。そうして2話目を読みはじめてやっと理解が追いついてきて出てくる感想が冒頭のひと言なのでありました。

タイプループものはなあ……たてつづけにいくつも読むと慣れが出ちゃいそうなんでやや避けぎみなところはあるんですけど、読んでしまったからには、こんなん、つづきがめちゃくちゃ気になるに決まってるじゃないですか! しかも、そうしてひきこんでくるのは開始から70ページ程度のことであって。早い展開、鋭いインパクト。すごいですよね。

設定的には、出没するドッペルゲンガーとか、本物との入れ替わりとか、都市伝説的というか、田舎の怪談じみた雰囲気でありつつも、スマートフォンが結構重要アイテムになりそうなのはわりと現代的であり。けど、主人公が目にする「影」はどいつもこいつも殺意の高さが半端なくて、ターゲット認定されたら逃げるまもなく追いつめられてしまうものだから、対面することがイコールで死につながるとまでいえそうなやつらで。そんな相手と対決する恐怖感はいかにもサスペンスフルな流れでありまして。さっきまで仲よく話してたあの人とか、頼りになりそうなその人とかも、あやしく見えだしたらそれだけで警戒心を極限まで高められずにはいられない設定がとてもいい感じ出してます。(カバー下の絵日記とか、もう猟奇もののホラーっぽい雰囲気まで出してますよね……)

すでに2巻も発売されてるということで、順番無視してそっちもすぐに読んでしまいたい気持ちにもなってしまうぐらい。めちゃくちゃ気になりますね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 12:06| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月18日

透明な薄い水色に

透明な薄い水色に (百合姫コミックス)
透明な薄い水色に (百合姫コミックス)

やった、百合だー!

……いや、百合姫コミックなのになにを言ってるのという感じなんだけど、話的にはふつうに男の子も出てくるタイプのものなんですよね。さらにいうと、ふつうに男の子と付き合ってたり、男の子との関係が深まっていったりと、一見すると女の子同士のカップルが成立するみこみなんてなさそうで、それほど百合ものを読みなれてるわけではない自分としては、これは百合なのどうなのとある意味はらはらしながら読み進めざるをえない流れだったわけで。だからこそ、終盤の百合エンドな展開に喜びの声をあげてしまうものがあるのでして。なかなか意外な展開でしたが、こういうのもいいものですね……。

とかなんとかいう書き出しではじめてみましたが、この本に収録されている話は大きくわけて二つ。

ひとつめは、幼なじみの女の子に好意を抱く女の子が、けれど相手は別の幼なじみの男の子と恋人関係になってしまったために、言い出せず抑えきることもできない恋心を苦しく思う感じの話。

ふたつめは、アルバイト先の先輩の女の子に好意を抱く女の子が、けれどその先輩に想いは告げられず、それを知られてしまった後輩で満たされない心の隙間を埋めようとする話。

ストレートに女の子同士が好き合ってくっついて……という話ではない以上、紆余曲折あったりするんですけど、だからこそ女の子の泣き顔がとてもいいんですよね。言い出せない想いに悩んで、報われない想いに苦しんで。そんな抑えられない感情が涙となってあふれ出た瞬間を描いた表情。前段としてのもどかしい想いをしっかり描いてくれているから、胸をしめつけられるほどの気持ちがこれでもかと伝わってくるものがあって。特に、律からの否応もない「告白」を受けた一花と、失意の感情を傷のなめあい的な関係になってしまった中条にぶつける茜と。悲しさを激情でむりやり上書きするかのように怒りに染めあげられた表情が息を呑むほどに綺麗で、射すくめられるほどにまっすぐな心情として伝わってくることといったら。百合作品の登場人物に望む表情といえば、第一には作者もあとがきで書いているような「恋人に向けた笑顔」のはずなんですけど、この本の場合はもっと泣いてる顔を見せてほしいなんて、なんだかひどい人のようなことも思ってしまったり。それくらい、表情豊かでイキイキとした泣き顔を描いてくれてるんですよね。そして、だからこそハッピーエンドの感慨もひとしおだったり。

言い出せない想いをゆがんだ形で表現する不器用さがあったり、けれどその気持ちがあふれ出すとはっとさせられるぐらいにまっすぐだったり。こういうの大好物ですということで。とてもいい一冊でした。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:57| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月25日

悪舌のモルフォ(1)

悪舌のモルフォ(1) (シリウスKC)
悪舌のモルフォ(1) (シリウスKC)

『悪舌のモルフォ(1)』(青辺 マヒト)|講談社コミックプラス

美少年の下僕になってひたすら罵倒されながら興の向くままにあれこれつきあわされる話。いいよね。美少年。かわいくて。何言われても許せちゃう感じ。それを理解したうえで上から目線で罵倒してくる感じ。けど、そんな美少年になんだかんだ振り回されつつも離れられない元美少年作家の主人公もいいもので。書けなくなった作家の末路で自己評価が落ちこむところまで落ちこみきってるものだから、ストレートな美少年ご主人様のなにげないひと言に救われてる表情がとてもグッドだったり。ええ、ええ。つまり、自己評価の低いうじうじ系主人公と、そんな彼を戯れであれこれ振り回してくれる美少年ご主人様はいいものですということで。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 00:56| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする