2018年08月01日

あの娘にキスと白百合を(8)

あの娘にキスと白百合を 8 (MFコミックス アライブシリーズ)
あの娘にキスと白百合を 8 (MFコミックス アライブシリーズ)

あの娘にキスと白百合を 8 | あの娘にキスと白百合を | 株式会社KADOKAWA メディアファクトリー(あらすじを見るならこちらのほうが)
あの娘にキスと白百合を 8 缶乃:コミック | KADOKAWA(試し読みするならこちらのほうが)

今回のメインは生徒会長候補でライバル同士な関係のふたり。

今回もめっちゃ好きなやつでした。このシリーズに出てくるカップル本当に好き。

ライバル関係。意味に多少の幅はありましょうが、ここでは、それは実力伯仲している者同士、なにかと比較されがちでありながら、そこで自分が相手より劣っているとされることにがまんがならない間柄。当時の生徒会長に勧誘されて生徒会で働きだした龍海なぎさと虎山ひかりではあるけれど、もともと相性がよかったとはとてもいえず。次期生徒会長を決める時期が訪れて、いよいよその上下がはっきりつけられる時がやってきたという感じの流れ。

いいですよね。水と油な関係のふたりの競い合い。負けたくない、そもそもなんであんなやつに人気があるのか。そんなレベルで仲の悪いふたりが並び立って、どんな緊張感あふれたやりとりがくり広げられることになるのか……と思いのほか、ふたを開けてみれば、実はふたりは根っこのところでは腐れ縁な関係なのであったという、安心して読める百合仕様のお話なのでありました。こいつ腹立つ、人の気も知らないで。そんな相性最悪エピソードが盛りこまれつつも、それすらもにやにやしい描写がとてもいいのでした。

けれどそれはあくまで百合目線で映るビジョンであって。当人たちは真剣に嫌いな相手に勝とうとするのがポイントで。そのために、相手のことをあらためてよく観察してみることで、気に入らないんだけど認めざるをえない部分を見つけて、この方面ではかなわないなと心中で素直に認めたりとか、そのままにしておけば相手の不利に働くことが目の前にあっても、正々堂々と戦いたいという思いからあえてそれを取り除いてみたりする様子は、とてもいいものでした。こういうのは男女の関係でもそうですけど、女の子同士で見られると、なおさらとてもありがたいものがありますね。

というか、このふたりの場合、なんだかんだ言っててもズボラななぎさと世話焼きなひかりという組み合わせは安定感があってニヤニヤできるという部分でポイント高いのではありますが。

今回の選挙戦を通じて、互いにライバル関係として以上の意識が芽生えたふたり。仲の悪さが素直じゃなさに映るところが出てきたりと、とてもおいしい流れで、たいへん堪能させていただきました。できればまた描いてほしいふたりであります。

そして、ライバル関係といえば、シリーズ通して、メインのカップルの脇でありつつも描かれとおしてきた白峰さんと黒沢さんの関係も、同じくライバル関係からはじまったものでありまして。気づけばちょっとずつ変化してきてるこのふたりの互いに対する感情も、あとがきで作者さんもふれてるように、当人たちの中でかなり進展してきているところがありまして。何気にもうあとひと押しくらいでクライマックスを迎えられそうなところですよね。こちらも目が離せなくなってきてますね。

あと、巻末の番外編では、6巻でメインだったあの三人が登場しててたいへんうれしかったです。自分にだけ優しくない仁菜の態度に困り顔の諒がとてもかわいい。やはりこの三人はかわいい。ありがとうございました……。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 20:50| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月11日

ボクラノキセキ(1)

ボクラノキセキ 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)
ボクラノキセキ 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

すでに18巻まで出てる長編マンガですが、最新刊のあらすじを見てたらなんだかおもしろそうで、1巻のあらすじを見てもやっぱりおもしろそうなので、かなり後発ですが読みはじめ。

読んでみるとこれが期待以上におもしろいことおもしろいこと。主人公はどこかの世界で滅んだ国の王女の生まれ変わりで、現代日本で生活する少年・皆見晴澄。小学生の頃は前世の記憶について気にすることもなく周りに話していたりしたものの、当然のごとく馬鹿にされたりいじめられかかったりしたことから、それらの言動は若気の至りとして、現代日本に順応した生活を送ろうとする男子学生であったという。

初出は2008年ということで、今から10年前ですか。でもここのところの異世界転生の流行り(いまは次に移行しつつあるという話も目にしますが)を見てると、なんだかそれをひっくり返したような設定で、とても新鮮に感じられるところがあるというか。しかも、生まれ変わりは主人公だけじゃなくて、実は主人公の高校のクラスメートに何人もいるらしいことがわかってきたりと、集団転移ものを思い起こさせる設定でもあるんですよね。

けれど舞台は現代日本だから、いわゆる中世ヨーロッパ的な元の世界であったような戦争は遠いかなたのもので、それにもかかわらず異世界の言語や文化、そしてなにより魔法の知識ははっきりと記憶に残されており、思い出しさえすれば魔法の力を行使することもできる。初め、前世の記憶をはっきり覚えているのは主人公だけだったものの、その影響をうけて自身の記憶に目覚めるクラスメイトたちが現れだす。けれど、彼らが必ずしも前世の王女ベロニカの味方だったとはかぎらず、人を傷つけ、殺める魔法の力が現代日本の高校にもたらされることになる、というのが1巻の流れ。

こう書くと、めちゃくちゃ現代異能的な話でもありますよね。現代日本への集団的な転生ものにして、現代異能アクションとなると……めちゃくちゃ新鮮で、めちゃくちゃワクワクさせられるじゃないですか!

1巻時点ではまだ、判明してる前世の記憶持ちは王女ベロニカの味方側の人たちだけで、アクションも偶発的なものだけでしかないけれど、魔法の存在しないはずの現代日本で適応していこうとしていた矢先に起こった以前の世界の縁や知識の流入が、彼の学園生活にどんな影響をもたらしていくのか、ものすごく楽しみにさせられますよね。

そして、告白して付き合いだしたその日のうちに、かつての主従だと判明してしまって関係がぎくしゃくしだしてしまった主人公カップルの行方はいかにというのも、とても気になりますね?
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 13:21| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

サマータイムレンダ(1)漂着

サマータイムレンダ 1 (ジャンプコミックス)
サマータイムレンダ 1 (ジャンプコミックス)

Web連載ページ(少年ジャンプ+)

タ、タイムループものだーー!?

幼馴染の女の子が亡くなって、その葬儀のために故郷に帰ってきた主人公の話ということで、ビターな感じの青春物語が展開されていくんだろうか思いきや、そうきたか……という。いやだって、田舎の夏、埋めようのない喪失感へのとまどい、再会した家族や友人たちとの悲しみの共有……ときて、これもう完全にノスタルジックなストーリーの予感をほうふつとさせる出だしじゃないですか。そういうの期待しちゃう設定じゃないですか。

けど、1話目読んでるうちにすこしずつ違和感を覚えてくるんですよね。いろんな登場人物が出てくるうちに、だんだん幼馴染の死にはなにか裏があったんじゃないかと思わせる要素がまぎれこみだす。ミステリー的な展開になるんだろうかという気もしてくるんだけど、それだけならまだ現実的な非日常の様子として、青春物語への期待はそれほど動揺するものではなかったんですよ。でも、1話目も後半になると、さすがにもうその思い込みではごまかしきれないくらいにおかしな雰囲気が加速してくる。描写もどんどんサスペンス的になってきて、緊迫感が増してくる。非日常がさらに非現実に移行していることだけがわかって、けれどそれ以上には状況を飲みこみきれないまま、どういうことなのどういうことなのと盛大に疑問符を抱えているうちに、物語は一度目の結末を迎える。そうして2話目を読みはじめてやっと理解が追いついてきて出てくる感想が冒頭のひと言なのでありました。

タイプループものはなあ……たてつづけにいくつも読むと慣れが出ちゃいそうなんでやや避けぎみなところはあるんですけど、読んでしまったからには、こんなん、つづきがめちゃくちゃ気になるに決まってるじゃないですか! しかも、そうしてひきこんでくるのは開始から70ページ程度のことであって。早い展開、鋭いインパクト。すごいですよね。

設定的には、出没するドッペルゲンガーとか、本物との入れ替わりとか、都市伝説的というか、田舎の怪談じみた雰囲気でありつつも、スマートフォンが結構重要アイテムになりそうなのはわりと現代的であり。けど、主人公が目にする「影」はどいつもこいつも殺意の高さが半端なくて、ターゲット認定されたら逃げるまもなく追いつめられてしまうものだから、対面することがイコールで死につながるとまでいえそうなやつらで。そんな相手と対決する恐怖感はいかにもサスペンスフルな流れでありまして。さっきまで仲よく話してたあの人とか、頼りになりそうなその人とかも、あやしく見えだしたらそれだけで警戒心を極限まで高められずにはいられない設定がとてもいい感じ出してます。(カバー下の絵日記とか、もう猟奇もののホラーっぽい雰囲気まで出してますよね……)

すでに2巻も発売されてるということで、順番無視してそっちもすぐに読んでしまいたい気持ちにもなってしまうぐらい。めちゃくちゃ気になりますね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 12:06| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月18日

透明な薄い水色に

透明な薄い水色に (百合姫コミックス)
透明な薄い水色に (百合姫コミックス)

やった、百合だー!

……いや、百合姫コミックなのになにを言ってるのという感じなんだけど、話的にはふつうに男の子も出てくるタイプのものなんですよね。さらにいうと、ふつうに男の子と付き合ってたり、男の子との関係が深まっていったりと、一見すると女の子同士のカップルが成立するみこみなんてなさそうで、それほど百合ものを読みなれてるわけではない自分としては、これは百合なのどうなのとある意味はらはらしながら読み進めざるをえない流れだったわけで。だからこそ、終盤の百合エンドな展開に喜びの声をあげてしまうものがあるのでして。なかなか意外な展開でしたが、こういうのもいいものですね……。

とかなんとかいう書き出しではじめてみましたが、この本に収録されている話は大きくわけて二つ。

ひとつめは、幼なじみの女の子に好意を抱く女の子が、けれど相手は別の幼なじみの男の子と恋人関係になってしまったために、言い出せず抑えきることもできない恋心を苦しく思う感じの話。

ふたつめは、アルバイト先の先輩の女の子に好意を抱く女の子が、けれどその先輩に想いは告げられず、それを知られてしまった後輩で満たされない心の隙間を埋めようとする話。

ストレートに女の子同士が好き合ってくっついて……という話ではない以上、紆余曲折あったりするんですけど、だからこそ女の子の泣き顔がとてもいいんですよね。言い出せない想いに悩んで、報われない想いに苦しんで。そんな抑えられない感情が涙となってあふれ出た瞬間を描いた表情。前段としてのもどかしい想いをしっかり描いてくれているから、胸をしめつけられるほどの気持ちがこれでもかと伝わってくるものがあって。特に、律からの否応もない「告白」を受けた一花と、失意の感情を傷のなめあい的な関係になってしまった中条にぶつける茜と。悲しさを激情でむりやり上書きするかのように怒りに染めあげられた表情が息を呑むほどに綺麗で、射すくめられるほどにまっすぐな心情として伝わってくることといったら。百合作品の登場人物に望む表情といえば、第一には作者もあとがきで書いているような「恋人に向けた笑顔」のはずなんですけど、この本の場合はもっと泣いてる顔を見せてほしいなんて、なんだかひどい人のようなことも思ってしまったり。それくらい、表情豊かでイキイキとした泣き顔を描いてくれてるんですよね。そして、だからこそハッピーエンドの感慨もひとしおだったり。

言い出せない想いをゆがんだ形で表現する不器用さがあったり、けれどその気持ちがあふれ出すとはっとさせられるぐらいにまっすぐだったり。こういうの大好物ですということで。とてもいい一冊でした。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:57| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月25日

悪舌のモルフォ(1)

悪舌のモルフォ(1) (シリウスKC)
悪舌のモルフォ(1) (シリウスKC)

『悪舌のモルフォ(1)』(青辺 マヒト)|講談社コミックプラス

美少年の下僕になってひたすら罵倒されながら興の向くままにあれこれつきあわされる話。いいよね。美少年。かわいくて。何言われても許せちゃう感じ。それを理解したうえで上から目線で罵倒してくる感じ。けど、そんな美少年になんだかんだ振り回されつつも離れられない元美少年作家の主人公もいいもので。書けなくなった作家の末路で自己評価が落ちこむところまで落ちこみきってるものだから、ストレートな美少年ご主人様のなにげないひと言に救われてる表情がとてもグッドだったり。ええ、ええ。つまり、自己評価の低いうじうじ系主人公と、そんな彼を戯れであれこれ振り回してくれる美少年ご主人様はいいものですということで。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 00:56| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月15日

とりかえ・ばや(4)

とりかえ・ばや(4) (フラワーコミックスα)
とりかえ・ばや(4) (フラワーコミックスα)

とりかえ・ばや 4 | さいとうちほ | 【試し読みあり】 – 小学館コミック
とりかえ・ばや 4 | 小学館

ちょっと石蕗さんすごすぎませんかね……。まだ確定ではないですけど、もし本当ならこれはもうおそるべしですよ。

ただ、そうして後戻りのきかない事態への発展においてはとんでもなさを見せつけてくれる石蕗さんだけど、手が早いという印象では特にないところがあって。本当に好きになった人としかそういう関係になってはいないように感じるんですよね。沙羅とのやりとりはどこまでも焦がれるような想いに満ちた愛情の発露ですし、四の姫とのやりとりを見てても気持ちが通じ合っているところは十分にうかがえる。喜怒哀楽の感情が激しいからこそ見ていておもしろい人ではあるし、他人の感情への共感力も高いからその場その場で見れば好ましい人物に思えてしまうこともあるのはわからなくないというか。けど問題は、その情熱の対象がひとりには限られないということですよね。あちらへの恋情も本物。こちらへの感情も本物というわけで。そして心を通わせることと体を重ねることがわりと境目なくつながっていくタイプなものだから、結果として沙羅があてこするような人物像ができあがるというもので。まあそうはいっても、ラストの展開はすごすぎですけど。

これいったいどうなっちゃうんでしょうね。ものすごく気になってきましたよ。めちゃくちゃ下世話な興味心ですけど。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:31| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月01日

めがはーと

めがはーと (ビッグコミックススペシャル) -
めがはーと (ビッグコミックススペシャル) -

めがはーと | 小学館

夫婦や大切な人どうしで、寿命が譲渡できる世界を舞台にした読切短編マンガ集。いろんな愛の物語。

こういうの好き! っていう話がいくつもあって、かなり満足度の高い一冊。

もともと名前は聞いたことのある作家さんで、少なからず気にはなってたんですが、なかなか機会がなく。そんなときに新刊情報をチェックしてたらちょうどこの本を見かけまして。どんな話なんだろうかと試し読みを読んでみたら、もう即座に購入決定させてくれる話の雰囲気でひきこんでくれることといったら。

そんな、いきなりこちらの好みを打ち抜いてくれたのが「episode01」、大学生の男の子とその大学で働く年上のおねえさんの話。アザミさんが激烈にかわいかったです。観覧車のなかでの言葉が、もう、とんでもない殺し文句でした。お互い好き合ってて、付き合ってもいるふたりだけど、男の子のほうは自分の気持ちに自信がない。そんな男の子があんなこと言われたら、そりゃもうゴールイン直行ですわ。相当なものですよあれは。ひとつめの話ということで、舞台となる世界の紹介もかねた短めの話という感じもありますが、それもあって一直線に好みな展開を描いてくれてる感じがよかったですね。

そんな感じのピュアなひとつめの話から、ふたつめは都合のいい女の子の、傷つきながらもどうしようもない気持ちの話になったりして、けっこう雰囲気の温度差がすごかったんですが、青年コミックだとこんな感じにもなるのかなという偏った印象で納得してたりするところで。

一話読み終わったときの満足感がいちばんだったのは、次の「episode3」かもしれません。小さなころからかわいくてトップアイドルにまでなった妹と、そんな妹と比べたらどこまでも普通で平凡な兄の話。そんなふたりの許されない気持ちと、その行く末の話。重たいですね。タイトルにも含まれているようなメガトン級の気持ち。でも、だからこそ、最後の1ページにすごみがありますよね。あとがきを読むと、作者の目にはアイドルってこんなにもまぶしく映るものなんだなあと、そういう意味での新鮮な驚きもあったり。あと、そういうキャラとして造形されているだけあって、妹、かわいいんですよね。単純に顔がいい。そして、回想シーンでの、お兄ちゃんへの一心な想いがあふれ出る妹はかわいかったですね。バカだったあのころの自分みたいな思い出し方をしてるせいか、それが妙な隙を感じさせるというか。

けれどなにより、いちばん好きなのは、最後の話、「episode4」。キャバクラの嬢から漫画家のアシスタントになった女性と、その師匠にあたる漫画家の女性の話。つまりは百合なのでした。椎名さんがかわいい。ひとめぼれした心愛視点で描かれてるものだから、最初からすごくかわいい。同じ女性どうしだからどこか無防備だったりして、とにかくかわいい。偶然の出会いから、仕事仲間になって、関係性を深めていって……と、もう完全にお幸せにという雰囲気で、まさかこんなところで百合分が補充できるとはと意外な出会いに感謝の念を抱いたくらいでしたね。ただ、冒頭やら途中の挿入やらから、不穏な前フリされてたんで、結末としてはわりとお察しくださいというか。思えば最後のほう以外、全部、椎名さんがかわいさがいとおしくて、椎名さんの漫画の才能を尊敬する心愛視点での描写でしたからね。椎名さんを追いかけるように漫画を描きはじめて、無邪気に椎名さんを慕いつづける心愛に対して、椎名さんがどう思ってたかは、決定的な瞬間が訪れるまで気づけないでいたんですよね。見て見ぬふりをしていたというか。大好きな椎名さんといっしょに暮らしながら、大好きな椎名さんが教えてくれた漫画家としての道を進んでいくという、なによりも幸せで満たされていた時間が、一転して地獄のような苦しみにもがく日々へと転落する。その苦悩の隘路からふりかえるからこそ、過去の幸福な日々がどれだけあたたかで満ち足りた時間だったかを痛感させられることといったら。けれど、それでも、椎名さんが示してくれた道を進みつづけるしかない。進みつづけなければならない。なぜなら、その結末は自分自身の愚かさが原因なのだから……。そんな泥沼のような苦しみのなか、それでも椎名さんとの縁(よすが)にすがって生きあがく心愛の姿は、それゆえになによりも尊い想いの発露であると思うのです。重たいですよね。けれど、だからこそ素晴らしいと思うのです。とてもよい百合でした。

そんな感じで、内容的に読み応えのある話もいくつかあり、満足度がかなり高い一冊でした。こういうの好きなんですよねえ。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:09| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月19日

オネエ男子、はじめます。(1)

オネエ男子、はじめます。 1 (花とゆめCOMICS) -
オネエ男子、はじめます。 1 (花とゆめCOMICS) -

オネエ男子、はじめます。 1|白泉社
オネエ男子、はじめます。(1巻) | 白泉社e-net! 電子書籍

好きな女の子に男が苦手だからとフラれた主人公・高橋竜が、クラスメイトのオネエ男子・相良寅之輔に弟子入りしてオネエ修行をする話。4コママンガ。

めっちゃ笑った。好きな子にフラれて、でもあきらめきれなくて、なんとかお近づきになりたい。そこまではわかる。けど、どうしてそこからオネエの道を歩みだしてしまったのか。一歩目から方向性を間違えてしまった気がしてならない。でもおもしろいからいいか的な。

口調からはじまって、しぐさに気を付けてみたり、パンケーキを食べに行ってみたり、がさつな男子高校生がどんどん女子力高くなっていくのがおもしろい。そして、そんな兄貴にときおり女子として敗北感に打ちのめされてる妹のリアクションに笑う。

この巻の後半では女装にまで踏みこんで、順調に(?)がさつな男っぽさが消えてオネエ男子らしくなっている高橋だけど、肝心な目的である音鐘さんは空きスペースでのキャラ紹介で「あまり登場しない」と書かれる始末だったりして、完全に道を間違えてしまってる感がまた笑える。(終盤でおやっという展開があったりするけど、それがまたおもしろ……ややこしそうで、つづきが気になるところであり)

高橋の幼馴染の友だちである、燿市と伊織もそれぞれに個性的でおもしろくて。期待の新シリーズですね。

同作者の『水玉ハニーボーイ』のほうも読んでると、あちらのキャラに似た雰囲気のキャラを楽しむことができたり、あちらにも出てくるキャラの登場ににやりとできるかも。というか、あちらはあちらで、自分の美しさに自信ありなこちらの師匠とはまた違ったオネエキャラの登場するラブコメ模様が面白い作品ではあるので、片方が気に入ったらもう片方も読んでみるといいんじゃないかなと思います!
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:30| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月02日

彼女になる日(3)

彼女になる日 3 (花とゆめCOMICS) -
彼女になる日 3 (花とゆめCOMICS) -

彼女になる日 3|白泉社
彼女になる日(3巻) | 白泉社e-net! 電子書籍

どの話も三芳と間宮がいちゃいちゃしすぎててたいへんにやにやしかったです。ありがとうございました。

「羽化」にともなう体の変化があり、心の変化があり、それらにとまどいながらも関係を深めていったふたりが、満を持してラブラブムード全開な生活をお見せしてくれました。それぞれの両親に挨拶したり、旅行先ではやくも夫婦として扱われてうれしさを感じたり、誕生日プレゼントを渡すのもきずなを深める話になったりと、裏表紙の「結婚間近」な雰囲気をこれでもかと感じさせてくれる仲睦まじさでございました。

思えば、これまでの巻はふたりの関係がまだどうなるか、未知数なところが多分に含まれていたこともあり、ほかのキャラクターが間に入ってきたりといった展開もありましたが、この巻ではそんな展開もほぼなく、ほとんどまるまる一冊、三芳と間宮の話だったといってもよさそうな。なにより、上にもあげたようなイベントをこなしながらも、互いに対してドキドキする気持ちを抱いたり、安心を感じたり、互いの一番であることを求めあったり、そうした感情を通しての結びつきを深めていく様子がとてもいいものでありまして。そうして心からの幸せを表情にあらわす様子はこちらまであてられてしまいそうになるものがありまして。いいですよね。

そしてラスト、三芳と間宮の関係は、単に互いを好き合う男と女だからというだけのものではなく、小さいころからのつきあいを通して築かれてきた絆のうえになりたつ、このふたりだからこその関係なんだなあと思わせてくれる話がノスタルジックですごくよくて。一冊通してふたりへの祝福の気持ちがこれでもかと強められる話ばかりでしたね。

とはいえ次回予告によるとまだひと波乱あるようで……? どうなっているのか、楽しみにしたいです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 20:37| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月31日

くちびるに透けたオレンジ[新装版]

くちびるに透けたオレンジ 新装版 (IDコミックス 百合姫コミックス) -
くちびるに透けたオレンジ 新装版 (IDコミックス 百合姫コミックス) -
くちびるに透けたオレンジ - ロクロイチ(百合姫コミックス):電子書籍ストア - BOOK☆WALKER -

百合えっち。いいものでした……。かわいい女の子の体をかわいい女の子がいじめてるのって、視覚的にとても至福感があるというか。いろいろひっくるめてありがとうございましたという感想に集約されていく読後感。

そんな絵的な素晴らしさにくわえて、その雰囲気をひきたてて読み入らせてくれたのがそれぞれの女の子たちの関係性でありまして。

一作目の表題作は、都会から転校してきた洗練された美少女の叶に目を奪われた地味な少女の千鶴が想いを募らせていく話。ついつい見とれてしまうほどにきれいでおしゃれな叶のようになりたいという気持ちは、自分にはむりだと思うほどに憧れへと高じていって、しだいに同じように装い、そこに叶本人との接触の想像を重ね合わせるにいたる。病的な妄想めいた行為でありながら、抑えられないほどに募る憧憬と諦観をていねいに描いていくことで、繊細な想いの発露として表れるそれらの行動に目を離せなくさせられるものがあって。だからこそ、叶が千鶴に対して抱く感情が語られたときには、千鶴ともどもただただ信じられないような感情の爆発があったんですよね。クライマックスのもりあがりがとてもよかったというか。ありがとうございます。もうそれに尽きます。

ふたつめの「閉じててね、心」は、男女の恋愛にうといいとこのお姉さんと、彼女に自分だけを見ていてほしいと願う女の子の話。甘えるふりをしていとこのお姉さんを独占しようとする女の子と、そんな彼女にお姉さんぶろうとして独占されるいとこのお姉さんの関係性はとてもいい雰囲気でありまして。読切なのでページ数は一作目に比べるとかなり少なくはありましたが、それでも必要な部分はしっかりおさえつつふたりの関係を描いてくれて、視覚的にもやっぱり至福な場面がちゃんとあってと、こちらもよいものでございました。

繊細な雰囲気あふれる百合えっち、とてもよかったです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:04| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする