あと、登場する相談者たちの多様さも、著者が記す範囲でその背景をたどっていくことの面白さにつながっていたと思います。爵位持ちの上流階級の家系に生まれた人がいれば、ゲイのカップルがいたり。カリブ地域の出身で結婚を機にイギリスに移り住んだ人がいればホロコースト生存者のユダヤ人の人もいたりする。離婚や再婚によって片親になったり継親・継子の関係が生じていたり、子どもとの死別を経験した人もいる。本当に多様な人たちが登場するので、両親と子どもがそろって暮らす核家族はすでに一般的ではなくなったという話がすとんと腑に落ちてくるというもの。三世代以上が同居するケースもありましたね。宗教的にも、特別な言及がない人たちは国教会かそこまで信仰を重視しない人なのかなと思えつつも、上述のユダヤ教徒がいればカトリックの信者もいたり。変わり種としてはエホバの証人の関係者が登場したケースが2例もあったことが驚きではあったでしょうか。とはいえキリスト教由来の宗教であることを考えれば、日本よりはなじみやすい社会なのかもしれない。ともあれ、そうした多様な背景を持つ人たちが登場しながらも、相談の契機となった家庭の問題は文化によらない普遍的なものばかりであり、だからこそ家族の愛の力を信じる著者のメッセージが遠く離れた日本の地の読者である自分にもしっかりと伝わってきたのだと思われます。
2022年05月07日
Julia Samuel『Every Family Has a Story』
家族の中で生じた家庭の問題に対して心理学的なアプローチで精神面での手助けをする、心理療法士による事例集的ノンフィクション。なかでも世代を遡ったところに問題の淵源を見出だす手法が印象的。解消されないまま放置されてきた過去のトラウマを認識し癒すことを通して現在の問題を解決するための道筋をつける様子はまさに家族の物語。問題やその解決の詳細にまでは必ずしも立ち入らなかったりするのでもの足りない部分もあったけれど、愛情を持って向き合う家族は必ず壁を乗り越えられるというメッセージは読んでいてあたたかい気持ちにさせてくれる一冊でした。
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