2020年12月03日

A Life on Our Planet

気候変動についての情報は、海外の発信源から得るのがいいのではないいなというか。今の自分のアンテナだと、国内発の情報としてはろくに入ってこないし、入ってきたとしても変にゆがんだ形になってることが多くて、現実味のある感覚がまるでつかめないままになってしまうのが難点に感じるので。まあまずはあっちこっちの主張がまじってない科学系の情報からふれていかないと、いきなり極端な立場になってしまいそうではあるけれど。

それはともかく、ついさっき読み終わった本がこれ。サー・デイビッド・アッテンボロー(David Attenborough)著『A Life on Our Planet』。BBCにて野生の動物や自然にまつわるドキュメンタリーを制作していた人物による、半自伝・半啓発的な気候変動や生物多様性減少の実態、およびその対策について訴える内容。

気候変動に関して、海外発の情報にふれることの何がいいかというと、基本的に視野が広いんですよね。日本にいると、夏が暑くなったくらいでほかにあまり影響を実感することがなかったりするんですけど(これはさすがに自分の視野が狭すぎるのかもしれない)、世界的に見るとあちこちで影響が出てるみたいで。大規模な山火事だったり、北極圏の急速な温暖化だったり。

特に後者は、一部ではもう後戻りのできないくらいにまで温暖化が進行してるかもしれないという意見もあったり。それはあくまで誇張した表現なんでしょうけど、それでもそういう意見を見ていると、急進的な活動家が現れるのもわかる気がする部分はあるというか。現在は、全世界的な地球温暖化は食い止めれるかどうかのまさに瀬戸際にあって、この機会を逃せば、今の若者たちやその子どもたちは、もしかしたらそのせいで命を落としたり住む場所を追われることになるのかもしれない。そんな危機感が共有されているとすれば、一部の人たちが性急な活動に駆り立てられる心理は理解できるものがあるともいえる。

とはいえ、あまり危機感ばかりをあおりすぎると、逆にじゃあもう何をしても無駄なんだと捨て鉢な態度を招きかねない気もするので、もっといい方法があるのではと思うところではあり。具体的には、まずは主義主張の入り混じらない現状の理解を深めていくことが大事だと思うので、科学系のニュースに接するところからはじめていくのはどうかとか考えてみたり。それも、気候変動の情報に偏らない、いろんなサイエンス関連の情報に接するなかで、気候変動に関する研究の進展状況にふれていくのが、中立的な理解の進めかたとしてはいいんじゃないかというか。

それはともかく、この本の内容としては、そうした気候変動の問題とともに、それに付随して起こっている、生物多様性の減少とその対策について。この辺は動物や自然のドキュメンタリーを制作していた著者の経験がフルに活かされた論点でしたね。確かに、地球温暖化の影響を被るのは、人間だけではない。著者がそのキャリアの中で撮影してきたさまざまな生命も、人間社会の営みによって深刻なレベルで数が減ったり増えたりしているとなれば、問題意識を持つのもうなずけるところ。アフリカのサバンナや、アマゾンの熱帯雨林や、サンゴ礁の広がる海の中。あちこちの動物や、虫や魚たちをカメラに収めたときの様子が描かれたと思うと、彼らがみな環境破壊の影響を免れられずにいると知らされれば、持続可能な開発というものへの関心を高められようというもの。

ただ、現在のわれわれの社会の成長は自然を犠牲にすることで成り立っている。経済成長至上主義から脱却すべきだ、なんていわれると、じゃあ前近代に還れとでもいうのかと身構えてしまったりもしたんですが。でも、ここがこの本で面白かったことなんですけど、地球環境保護を訴えていながらも、自然に対して人間が手を加えることは否定しないんですよね。日本人の感覚からすると、「自然との共生」とか「あるがままの姿こそが自然」みたいな考えが思い浮かぶように思うんですけど、この本は自然を自分たちに都合のいいように改変することを否定しないんですよ。生物多様性の維持も、地球温暖化の防止も、その根っこにある問題意識は、そうした社会の営みが持続可能ではないということにあるのであって。持続可能な社会を実現することこそが最大の目的であって、それを達成するために科学の叡智を総動員しようという話がなされている。

それってつまり、現在に至る人間社会の発展の歴史を否定するということではなく、ちょっと軌道修正しようというか、目先を変えようということだと思うんですよね。社会の発展にブレーキをかけたりバックさせたりしたいわけではない。それなら、たぶん、受け入れがたく感じる人はそれほど多くないのではないかと思うんですよね。たとえ急進的な活動家たちには反発する人であったとしても。主義主張の入り混じったゆがんだ情報にばかり接していると、対立する主張のどちらに与するかみたいな話に思えてしまいがちだけど、それほど相容れない問題ではないように思うというか(この辺は自分の情報のアンテナがよくないのかもしれないけど)。

ともあれ、結局のところ人間が自然を支配する感じは産業革命発祥の地を思わせるところであり。一部、西洋の傲慢さを感じる部分もないではないですが、そういう考え方もあるのかと、おおむねでは興味深い内容ではありました。人に勧めたくなる本というわけではありませんが、読んでいて面白い一冊でした。
ラベル:David Attenborough
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 23:46| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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