2020年03月01日

私の従僕(1)

私の従僕 1 (アース・スターノベル) - トール, La-na
私の従僕 1 (アース・スターノベル) - トール, La-na

わがままお嬢様と気苦労絶えない従僕の主従関係、素晴らしい。めちゃくちゃ好きなやつだこれ。

好奇心旺盛で、自分のやりたいことをしないと気がすまない気性のお嬢様。大貴族である父親に溺愛されているがゆえに突っぱねれば泣かせてとがめられ、かといってさせたいようにさせていてもなにか粗相があれば罰を下される。とんでもない悪魔のようなお嬢様なのだけど、そんな彼女の願いを(表面上は)すずしい顔で叶えてしまうがゆえに絶大な信頼を寄せられて、次から次へとくり出される無茶ぶりに心中で愚痴りまくってる主人公との関係性がめちゃくちゃおいしい。こういう主従関係の話大好きなんですよ。まあ主人公からすれば「主従関係」というところから勘弁してもらいたい事実になるんでしょうけど。

基本的に主人公視点で語られる話なので、わがままなお嬢様に振り回される苦労性な従僕という構図がベースになってはいるんですよね。でもそれはあくまで一方的な見方であって。同じ視点でもお嬢様のほうから従僕に向けられるキラキラとした信頼を目にしていると、お嬢様側からは、どんな願いだろうと鮮やかな手回しで叶えてくれる、この上なく頼りになる自分だけの従僕という感じで見えているんでしょうね。

この「自分だけの」というところがポイントで。大貴族のお嬢様なので、四六時中だれか従者やお付きの者に囲まれている子ではあるんだけど、それらはすべて、あくまで父や母に仕える人たちなんですよね。基本的にはお嬢様の望みに沿おうとするけれど、危険からは積極的に遠ざけようとするし、家の体面を考えるようやんわりと拒絶されたりもする。いってみれば父と母の管理下に置かれつづけている環境なんですよね。

そんななかで、主人公はどんな願いであれ、お嬢様の願いを拒否したりはしない。それどころか、万難を排して叶えてくれさえする。それが父親の不興を買い、むち打ちの罰を与えられることになろうとも。そうまでして自分ために働いてくれる従僕を、自分だけに仕える忠臣と信じて無邪気な信頼を寄せるようになるのはまったくもって自然な流れでしょう。なんという素晴らしい主従関係か。なんという抱腹もののすれ違いであることか。

いや、うん、主人公視点で語られる物語と、それを通しつつも見えてくるお嬢様から見た主人公と、それらを組み合わせることで浮かび上がってくる客観的なふたりの関係性がいかにもニマニマとほおをゆるませながらながめずにはいられないことといったら。

「『お嬢様、そこは人が乗るような場所ではございません』
『よし、ゴー』
 ゴーじゃないんだよゴーじゃ。
 ハーピーと煙は高い所がお好きというが、貴き方もそうなんだろうか。」(129ページ)

このふたり本当に大好きすぎる。主人公がお嬢様関係で降りかかる危難を思ってドキドキする気持ちは、恋でいいと思います。はい。お嬢様から賜る「栄誉」と書いて「むちうち」と読みます。当然ですね。はい。

この一冊を通して第一章ということで、まだまだつづいていってくれるシリーズだと思います。このふたりの完全にずれていながらも表面上は美しい主従関係ではある関係性を楽しませてもらいたいですね。ふたりいっしょにいろんなできごとを経験していくうちに、表面上だけでなく信頼関係が深まっていっている部分もありますし。そういった展開にも期待を寄せたいですね。1巻発売からやや時間はたっていますが、コミカライズも決定しているようですし、そちらも含めて、2巻を心待ちにしたいですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:43| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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