2019年06月11日

オペラ座の恋人(5)・(6)

オペラ座の恋人(5) (オパール文庫) オペラ座の恋人(6) (オパール文庫)
オペラ座の恋人(5) (オパール文庫) オペラ座の恋人(6) (オパール文庫)

オペラ座の恋人D |オパール文庫
オペラ座の恋人E |オパール文庫

よかった……とは言えない部分も多々あったけど、でもひと言で表すならこの言葉になる。よかった……。

落ち着くべきところに落ち着くところを見届けられた安堵感。けれどそれ以上に、見違えるほどに立派になった結花の成長を思い返す感慨に。

思えば、クラシック音楽が好きすぎるだけで、自分に誇れるところがあるわけでもなく、友人らしい友人も大学に一人しかいなかった女の子が。ベルリンの歌劇場で果たした運命の出会いをきっかけにして、どれほど大人の階段をのぼっていったことか。

もともとクラシックつながりで覚えのあったドイツ語は長期休みに連れまわされるようにヨーロッパの各地をめぐるなかですっかり実用レベルになり、英語や礼儀作法もいろんな上流階級の人たちと接することで自然と使いこなせる水準で身についていき、それに関連してビジネス関連での興味や知識の幅も広がって、そしてなにより女性としての美しさも磨き上げられていって。

シリーズ後半と初期の頃を比べれば、もう違いは歴然ですよ。とりたてて言うところのなかった垢ぬけない女の子から、スキル面でも人脈面でも引く手あまたで目をひかれる魅力的な女性へと。その間、わずかに2〜3年。それだけあれば変化には十分ともいえるんでしょうけど、それでも大学生という可能性に満ちた期間を思わせてくれる見事なまでの成長ぶりですよね。こういう話は本当に胸をしめつけられるような、それでいて憧憬を抱かされずにはいられないような魅力で、心をわしづかみにされてしまうものがあります。

3・4巻からひきつづきの、結花の心の深い部分に巣くっていた恐れとの対峙については、微妙に解決してないような気がしてならないんですが、それでも結花本人が出した答えは、そうであるからこそ祝福せずにはいられない尊さがあって、いつまでもふたりの関係がつづくことを願わずにはいられない気持ちにさせてくれるものがあります。それに、何もかもを相手に預けきったペットと飼い主の関係(だけ)ではなく結花自身も積極的になるからこそ選び出すことができたふたりの形だと思うと、このふたりの夫婦の姿というのは、もう本当に、どこまでも祝福したい気持ちにさせてくれるんですよね。

愛する人ができて、賑やかな友人たちに囲まれて、幸せな家族と出会えて、一生ものの決意をして、一生ものの枷で縛りつけられて。そうして最後の最後にしみじみと幸せを実感する結花の姿が見れたのは、シリーズの結末としてなによりうれしかったです。

そしてそうなってもまだ貴臣の前で初々しく赤面したりする姿はあいかわらず男をそそる危うい魅力に満ちていて。この5・6巻だとふたりとも多忙でなかなか顔も合わせられない時間がつづいたりしていたことから欲求不満を募らせたり、会えた時間にその気持ちをぶつけるように互いに貪欲に体を求めたり、結婚するとなれば避妊も解禁で子どもができても構わない、むしろ早くにほしいくらいだよねな感じの浮かれたような行為の数々は、やっぱりとてもエロティックだったと思います。

結花本人としては、貴臣を中心とした周りに流されるようにして過ごしてきた結果。なので、本人としては自分がすごい人であるなんて(この期に及んでなお)微塵も思ってないんだけど、結婚式に集まったメンバーがもう本当にすごいんですよ。本人にはどれだけ自覚がないとしても、もうとっくに平凡どころではないですよね。

結花以外では、やっぱり絵里とラリーのカップルがよかったですね。ラリーからの公開プロポーズに取り乱す姿がすごくかわいかったです。エリー、お幸せに……。

それと、貴臣の姉の千煌さんも。貴臣が頭の上がらない存在として、基本的にどこでも我が物顔で振る舞う貴臣がやりこめられる姉弟のやりとりはそれだけでいいものでしたが、それにくわえて弟同様に結花の庇護者を自負する姿がとても頼れる女性ではありました。最終的には、結花とも家族としての絆で結ばれて、幸せの形をより広げていくことになって。この辺は本当にできすぎなくらいではあったんだけど、でもやっぱり幸せに満ちあふれた家族の姿というのは見ているだけでよろこばしいものがあります。

本当に、思えば遠くへ来たもので。全6巻、あとがきによると3840ページ。書籍のティーンズラブ小説としては異例の大作ながら、それでもあちらこちらとまだもっと見てみたかった場面がいくつも思い浮かんでくる。それほどにどっぷりと浸れる物語でした。

平凡な女子大生だった結花の、めまぐるしいまでの三年間の物語。素晴らしいシリーズでした。このシリーズを読んでいたここ二週間ほどはずっと、幸せな微睡みのなかで過ごしているような、幸せな読書の時間でした(読み終わった直後は頭がぼーっとしっぱなしで、なんだかまだ地に足がついてない感じもしますが……)。

素晴らしい物語をつむいでくださった作者さんに心よりの感謝を。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:49| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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