2019年06月08日

十三歳の誕生日、皇后になりました。

十三歳の誕生日、皇后になりました。 (ビーズログ文庫)
十三歳の誕生日、皇后になりました。 (ビーズログ文庫)

十三歳の誕生日、皇后になりました。 | 書籍 | ビーズログ文庫

シリーズ本編ともいえる『茉莉花官吏伝』のほうは未読。とはいえこちらはこちらで独立した話なので問題なく楽しめました。

十三歳の誕生日、莉杏は皇帝に後宮入りを願い出にきたはずが、現れたのは皇位を乗っ取ったばかりの皇子・暁月という男で、という話。

わけもわからないうちに皇后として簒奪の共犯者のようにされてしまった流れを思えば、いかにも暁月が悪人のようなんだけど、莉杏の
目を通してみると、露悪的ではあるものの悪人には映らないんですよね。それどころか、理解者に乏しいなかで誰よりも真剣に国の行く末を案じている人物ではあるようで。究極の悪行である簒奪も、そこに起因するものであるらしい。

らしいというのは、この話の主人公である莉杏がまだ十三歳になったばかりの少女であることもあって、そこまで権力闘争の深層を理解してはいない語り口になっているからであって。暁月をはじめとした周囲もあえて子どもにそんな汚い世界を見せないようにしてる部分もあるんでしょうけど。

それに象徴されるように、莉杏の長所は利口さではない。むしろ彼女の美点は、先入観を抱けるほどの知識もないことからくる素直さであって。皇后の夜の務めは文字通りにいっしょに寝ることであるなんていわれて、気合い十分で湯たんぽ代わりにされてる様子なんて、悪意からどこまでも距離を置いていさせたくなるほどの無邪気さの塊ぶりであることでしょう。あちこちに確執が渦巻いているらしい暁月の周りにおいて、莉杏がどれほど人の善意を思い出させてくれる存在であることか。

それに加えて、莉杏の美点は一心な健気さにもありまして。暁月って、露悪家だし、出会いは一方的に巻き込まれるような流れではあったけど、根っからの悪人ではないんですよね。それどころか、自分の都合で巻き込んだ莉杏のことを誰よりも気にかけている。莉杏のほうでもそんな彼の性質に気づけているからこそ、ほかでもない彼の皇后として、立派な女性になりたいという思いも抱けてくる。いい関係ですよね。

そんな莉杏が立派な皇后になるべくいくつかのステップが歩まれていくのがこの話だったともいえるでしょうか。章題が一問目、二問目となっているのに象徴されるように、この本の内容は莉杏が直面したいくつかの事件に答えを出していく話の流れ。出題者は暁月で、莉杏の側は考える役。結構重大な事件も起きるし、そもそも暁月としても莉杏が答えを出せるとは期待していない。子どもを寝かしつけるためのたわいもないやり取りのつもりだったはずなんだけど、莉杏ははりきって調査をして、先入観のなさから鋭い視点で答えに迫っていく。それと同時に、暁月を取り巻く周囲の情勢もだんだんとわかってきて、もっと立派になりたいという思いが強まっていく。暁月のほうでも、意外な活躍を見せる莉杏をだんだんと自分が巻き込んだ被害者としてではなく、隣にいる者として誇らしく思う気持ちが芽生えてくる。本当にいい関係ですよね。

特に最後のやりとりはすごく素敵で、ぜひともそうなったふたりの姿を見てみたいなあと思わされずにはいられませんでした。その過程も含めて、もっともっとふたりが互いにどんな成長を見せてくれるのか、見てみたくなるふたりではありますね。

そんな期待に応えるわけではないですけど、あとがきによると、このふたり、本編の二巻以降に登場しているようで。しかも、時系列的にはこの本の後のふたりであるようで。これはもう読まないわけにはいかないでしょう。そんな気持ちにさせてくれる一冊でした。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:34| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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