2019年03月18日

金の女領主と銀の騎士

金の女領主と銀の騎士 (アイリスNEO)
金の女領主と銀の騎士 (アイリスNEO)

女領主と男執事の主従恋物語。最高でした。最高に素晴らしかったです。

特に素晴らしかったのは、領主であるサリーナのキャラ。執事のエディアルドに淡い想いを寄せていて周囲にもそれと知られているにもかかわらず、本人を前にするとしどろもどろになってしまって打ち明けられずにいる。そんなラブコメ的においしいキャラかと思いきや、ここぞというところではとんでもなく思いきった言動を見せてくれるんですよ。奥手な女性に見えて、恋愛譚としてはかなりヒロイン主導の構図。

視点人物としては、最近読んだ女性向けとしては珍しく執事のエディアルドのほうであって。その上で、物語としても彼が主であるヒロインにモノにされる話であって。これ、レーベル的にアイリスNEOなので女性向けですけど、一部の男読者にも絶対需要ある話だと思うんですよね。すくなくとも自分は大好きなタイプの話でした。

その他、男執事であるエディアルドのほうもいいキャラしてるんでするよ。堅物鈍感主人公で、主のサリーナに一身に仕える元騎士。彼も実は主のサリーナに口には出せない想いを抱いていて、けれど彼女もまた彼に想いを寄せているなどとは思いもかけず主の側に侍り、ときにエディアルドの存在に心乱される主の胸のうちに気づくことなく彼女を支えることに喜びを見いだす。ほほ笑ましく気持ちになるような、ときにじれったくなるような両片想いの構図。

サリーナが自身に想いを寄せているなどとは露ほども思わないものだから、ときに隠し事をされたと思ってしまうやりとりにさびしさを覚えてしまうし、それは己が執事として至らないからだと反省を深めたりもする。本当のところを知っていれば的はずれな悩みでしかないんだけど、それほどまでに恋に疎い堅物ならではのすれ違いっぷりは思わずにやにやとしてしまうようなよいものであって。

というか、エディアルドって本当に不器用なほどにサリーナひと筋なんですよね。サリーナひと筋すぎて、実は卑しからぬ出自であるにもかかわらず、その想いに蓋をするようにして従者としての献身を捧げて、自身の将来のことよりも主のことを優先して、伴侶の心配までしたりする。そのくせ、彼女が自分ではない相手に好意を寄せているのではとの推測に痛む胸を押し隠す様子はあきれてしまうほどの忠実な従者ぶりであって。まあそれがいいところではあるんですけど。とはいえもどかしさはどうしようもないものがあって。

そんなドツボにはまったようにぐるぐると想いをこじらせていくエディアルドに対して、ずばっと切り込んでいってくれたのが主であるサリーナだったんですよね。鈍感な執事にも理解できるほどにはっきりと気持ちを伝え、頑なに身を引こうとする彼に逃げ場を与えぬほどに周到な舞台を用意して終幕を迎えさせる。これがもう本当にみごとな手際で。あそこまでされたら、もうめんどくさい悩みなんて吹き飛んでしまうしかないでしょうというところ。

序盤では内気とさえ思えたサリーナの決意と行動にはびっくりさせられるものがあったんですけど、思えば彼女の領主としての手腕は、亡父の跡を継いでまだ数年とは思えないそつのないものではありましたっけという。エディアルドの出自の問題など、もろもろ含めてすべてなんとかしてしまう鮮やかな手並み。恐れいるばかりですね。

それでいて、結ばれた形は主従としてではなく、兄妹のように育ったというかつての姿のようであって。両片思いのふたりがともに望んだあり方を、とんでもないほどの決意で自ら手繰りよせてみせたサリーナに心をわしづかみにされずにはいられませんでした。

本当に、素晴らしい話でした。久しぶりに大当たりの主従恋物語。大好きです。ありがとうございました。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 19:48| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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