2018年12月30日

の、ような。(1)

の、ような。 1 (芳文社コミックス)
の、ような。 1 (芳文社コミックス)

好き。なんというか、もう……好き。あまりにも好みの中心を撃ち抜いてくる作品に出会うと、あれこれと言葉をひねりまわすよりもただただ「好き」という言葉しか出てこなくなるものなのだなあと、そんなことを実感させられる。このレベルになると、読んでて幸福感がすごいんですよね。自分でも気づいていなかった部分が満たされていく感じがするというか。やばい。やばい。とにかく……好き。全力でオススメします。

…………と、だけ書いて、作品の中身にまったく触れてないことに気づいたのでここから書いていくと。

あらすじとしては、ひとり暮らしをしていた作家の希夏帆(きなほ)のもとに、亡くなった親戚の子ども2人(中学生と幼稚園児)を彼氏が連れてきて、その彼氏ともども共同生活をはじめていく話。

個人的に、最近どうも家族ものの話に弱いんですよね。それも、血のつながった家族ではなく、そうではない者同士で家族になっていく話。なりよりも強力な血のつながりという絆がないからこそ、家族らしさの形という理想を手探りしていく様子がたまらなく大好きみたいで。この作品もその類型ではありました。

そのなかでも、この作品が特によかったのは、主人公の(とまで言っていいのかわからないけど少なくともメインの人物ではある)希夏帆というキャラクターについてであり。

両親を亡くしてしまった子どもを引き受ける人物として、これほどいいなあと思わされたキャラはどれだけぶりだろうか。このジャンルを好みだしてそれほどたってるわけでもないし、初めてと言ってもいいかもしれない。それほどまでに思わされたのは、中学生と幼稚園児という難しい年ごろの子どもたちを、親としてではなくあくまでも他人として、ひとりの大人として新しい保護者を務めていくそのスタンスにあったのであって。

希夏帆さん、自分の育ちでいろいろあったのか、とても子どもの目線に立った接し方をするんですよね。まあいっしょに暮らすようになったとはいっても知り合ったばかり。いきなり血のつながった肉親のようななれ合った空気を作りだすのは難しいかとは思いますが、かといって変によそよそしくなることもなく、印象としては常に一貫して、フランクな態度で子どもたちに接してるように見えるというか。ふたりの子どもたちがどちらも素直ないい子である部分も大きいんですけど、あまりにもいい子過ぎる部分もある。それで、迷惑をかけてないかと気をつかう子どもたちにあっさり困ってると認めてみたり、遠慮しがちな態度を見かねてあえて文句のひとつも実例として出してみたり、家族としてやっていくための必要以上の我慢を取り去るために子どもの思う大人っぽさからはちょっと離れた言動をちょくちょく見せる。子どもも大人もお互い慣れない相手との共同生活の中、子どもたちときちんと目線を合わせて、向き合って、歩み寄りを重ねて新しい生活を築きあげていく。そのスタンスは、一方的な教導関係ではなく、お互いをひとりの人間と認めて尊重しあいながらひとりひとりが主役となって家族の形をつくりあげていくかのようで。突然の生活の変化も含めて大変そうではあるけれど、それと同時に楽しそうだなあというのが伝わってくるんですよね。

彼ら子どもたちふたりを受け入れた理由についても、ここが特にすごいなと思ったところなんですけど、全然気負ったところがなかったんですよね。なにか特別な使命感めいたあったわけでもなく、かといって愁人くん(彼氏)が連れてきたからしぶしぶとというものでもなく。ふたりを引き受けることには賛成の意を表していたんですよね。それもごく自然に。助けが必要な子どもに手を伸ばすのは大人にとって当たり前のことだと言うように。これをなんの気負いもなく言えるのがすごいところで。そのうえで中学生と幼稚園児の男の子ふたりとその場で共同生活スタートできちゃうリソースの持ち合わせがあるのがさらにすごいところで。

希夏帆さん、年齢的には30代の半ばかそれくらいでしょうか?(同じ幼稚園のママさんよりやや年上な感じで読んでた記憶があるんですけど、あとから読み返すとそれっぽい描写が見当たらない……) まあそれはともかく、一般的な女性(とは)が家庭を持ち子どもを産み育てていく年齢をひとり暮らしで仕事に打ちこんできたことから、それなりの家事スキルはあり、居住空間も保有していた。それらは将来子どもを持つために準備されたものではなかったが、ふたりの子どもを引き受けるにあたって格好の用意ではあったわけで。〆切かかえた作家業に生活の変化はなかなか深刻な影響を与えるものの、そんな事情はあってもあまり表に出すことなく、むしろ他人より多く自分の時間を過ごしてきたのがそれを誰かのために使う番が回ってきただけだと、ごく自然に受け入れる様子に、なんだか理想の大人めいた姿を見た気持ちになるのです。本人自重してますけど、なかなかできることじゃないと思うんですよ(なにか、愁人くんとの関係で頼まれたら断れないものがあるようだけどそうだとしても)。

その意味で、愁人くんとの関係も気になりますね。もともと”半”同居状態だったとはいうものの彼氏どまりではあって。長い付き合いはあれど結婚はしていないという。文句はあれこれ言うものの、頼りにはしているしされている関係。もういっそ結婚してしまえばとも思うんだけど、それに対する回答は第1話のものがまだ有効でありつづけている状態であって……。うーん、なんなんでしょうね、このふたり。あの回答はあれでじゅうぶん理解できるものではあったんですけど。過去にあれに類するやりとりを経験してたりするんでしょうか。なんだかいろいろありそうな関係ではありまして。作中で連れ合い感が感じられるほどにふたりの過去が気になってくる感じ。同じ作中で男同士のカップルも友人として出てきてましたし、結婚の形というのもこの作品にとって重要なテーマだったりするんだろうか、どうなんだろうかというところ。

という感じでなんだかんだ書いてきましたけど、結論としては希夏帆さんが本当にいいキャラクターなんですよということで。
徹夜上等な作家生活に子どもたちとの共同生活が合わさって、ぼーっとした疲れ目な表情なことが多いですけど、それがまたいいというか。しかも、そんな表情をしていながら理想論的説教をかましたりするからなんというか、もう、好き。格好も基本的にラフなのにそのギャップがまたよくって。

そして、そんな希夏帆さんたちによってすこしずつ築かれていく家族の姿は、スタート地点ではいろいろ未熟だったのが、だんだん皆(特に大人の側が)成長してきてるのが見てとれて。向き合い、歩み寄りながら皆で足りないものを埋め合っていく家族。その基礎をなすのは家族というより共同生活なのかもしれないという気もするけれど、いいものですね。これもひとつの家族になっていく物語。

期待のシリーズですね。絶賛オススメします。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 21:03| Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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