2018年12月04日

予言の経済学(1)巫女姫と転生商人の異世界災害対策

予言の経済学 1 巫女姫と転生商人の異世界災害対策 (レジェンドノベルス)
予言の経済学 1 巫女姫と転生商人の異世界災害対策 (レジェンドノベルス)

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面白い。

予言とは、超常的に知りえた未来を伝える言葉であり、理屈を超えた経緯で直接的に未来を捉えた者の述べるところであるが、それゆえに知覚した話者の主観に左右されるものでもあり、信じられるか否かは話者の信用性に依存せざるをえない。真実を言い表しているのかもしれないし、虚言を弄しているのかもしれない。真実も含まれているのかもしれないが、あくまで一面的なものにすぎないのかもしれない。いつ・どこで・なにが起こるのか。だれが・どのようにしてその影響を被るのか。予言は超常的であるかゆえにそれらを明確にはしてくれない。対応は、ただ話者を信じるか否かに左右されるばかりである。

しかしこの話の主人公は、そこに別の側面からアプローチをかける。それは近現代の科学が用いる手法。課題に対して仮説を設定し、それを検証することで結論にいたる一連のプロセス。それをしてみせるリカルドという人物は、なるほど転生者であるわけで。

この、予言に科学的なアプローチでの検証を試みるという組み合わせ。これだけでもうわくわくさせてくれますよね。予見されたという災害に対してだれもが無関心にふるまうなか、ただひとり可能性を検討し、思いがけない援助も得ながら調査を進め、その末にこれしかないというもっとも起こりうる可能性の高い事態についての結論を導きだす。謎解きのような面白さですよ。結論が出た瞬間というのは、それだけでひとつのクライマックスであったことでしょう。

とはいえ、その結論はあくまで予言の話者を一から十まで信用するという前提に立つものであり、それへの対応にかかるコストを考えれば、主人公としても完全に無視することはできないまでも消極的な対応で済ませることも可能ではあったでしょう(まあさすがに予想される被害規模的にそれは言いすぎかもしれませんが、それはともかく)。それを、この陰険なまでに爪を隠し隠してきた猛禽にそれを明かさしめてみせたのは、その予言の話者であるところのヒロイン・アルフィーナの存在であったというのもまたポイントであって。

このアルフィーナというヒロイン、身分としては王族であるものの、反逆者の血を引くことから腫れ物に触れるような扱いをされる厄介者でもあり、そしてそれが理由で王族にしては政治的な感覚にうとい箱入りの王女さまであり。平民であるリカルドがアルフィーナとの交流を持つにいたったのもその感覚の欠如ゆえともいえるでしょうか。言ってしまえば、善くも悪くも純粋な性格なんですよね。いさかいを目にすれば心を痛めるし、打算をこめたやりとりにも心からの喜びを表すし。あまりにも裏表がないからこそ放っておけなくなるタイプというか。

リカルドが彼女の予言と真正面から向き合っていくことになったのも、その純粋さがもとだったでしょうか。院生経験のある転生者として、根拠のない予言を真剣に取り合う理由はない。けれど、いくつかの経緯があったとはいえ、これほどに根のいい少女が困り果てているのを見て、まっすぐな気持ちで頼られてしまって、断ることができようかというもの。災厄のもたらされるという地がどうも主人公と無関係ではなさそうだというのが大きかったように見せかけてますけど、これ絶対違いますよね。箱入りゆえの無防備さで頼られて、勘違いせんばかりの距離感でまっすぐな好感を示されて、よからぬ感情がちらとでも首をもたげなかったとは、とてもとても言えませんよねえ……。これはミーアの目も三角になろうというもの。ええ。たいへんいいものでした。

そんな感じの、予言を予測に変えて対策を練る物語、とてもおもしろかったです。2巻も来年4月に刊行予定ということで、楽しみにしたいです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:11| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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