2018年02月06日

クリフトン年代記(1)時のみぞ知る(上)(下)

時のみぞ知る〈上〉―クリフトン年代記〈第1部〉 (新潮文庫) -  時のみぞ知る〈下〉―クリフトン年代記〈第1部〉 (新潮文庫) -
時のみぞ知る〈上〉―クリフトン年代記〈第1部〉 (新潮文庫) -
時のみぞ知る〈下〉―クリフトン年代記〈第1部〉 (新潮文庫) -

ジェフリー・アーチャー、戸田裕之/訳 『時のみぞ知る〔上〕―クリフトン年代記 第1部―』 | 新潮社
ジェフリー・アーチャー、戸田裕之/訳 『時のみぞ知る〔下〕―クリフトン年代記 第1部―』 | 新潮社

全体を通してさらっと軽い描写でありながら、転々ととどまることなく転がりつづけていく話が飽きを感じさせず、面白い。

戦間期のイギリスの労働者階級に生まれた少年ハリー・クリフトンが、貧乏生まれでありながら学業の成績からエリートへの道を進んでいくことになる物語。立身譚を予感させる第1部の話でした。

労働者の子どもは労働者として生まれ育っていくことが当然の社会で、数奇な縁から才能を見出され、母の苦労や支援者の助けを得ながらグラマー・スクールからオックスフォードへと、生まれを考えれば華々しいまでの学歴街道をひた走る。ここまでくればたいしたものですよね。そしてその過程では友情あり恋愛あり、楽しくも充実した学生生活を送ってる様子がほほえましくもあり。

ただ、話の進行はかなり早い。一冊で作中時間として10年以上経過してますので。プロローグ的な部分から数えれば20年以上ともいえるでしょうか。たしかシリーズ全体を通して人の一生を描くくらいの話になっていくんじゃなかったかというところ。

それもあってか、一つひとつのエピソードの描写ははかなりさらっとしてます。もっと描いてほしいと思う場面もあるんですけど、そうであっても先が気になって読み入らされてしまうのは、ひとつのできごとにあまりこだわることなくどんどん先へ先へと転がされていく展開の新規さに目を奪われてしまうから、なんでしょうね。それと、クリフハンガー的な章立て。章ごとに視点人物があっちに行ったりこっちに来たりするんですけど、多くの場合、それでどうなったんだろうかと気になるところでひとつの章が終わって次の章がはじめられる。それも、すこし前の時間から。だから、先の展開が気になってどんどん読み進めてしまう。同じ場面がくりかえし語られたりもしてるんですけど、先が気になる気持ちと、うす味な描写ゆえの不足感を満たしてくれる別視点の提供もあって、すらすらと読ませる面白さを感じる。この辺は、さらっとした描き方ゆえの味でしょうか。こういうのもまたいいですね。

実はクリフハンガーなのはラストもであって、第1部としてまとめるとどういう話だったのかといわれるととても困るところなのですよね。ハリーの少年期・学生時代の話でしたというくらいしかまとめようがなくって。終盤とか、もう完全に第2部につづく流れになってましたし。

とはいえ、それでも第1部のクライマックスはクライマックスはどこだったかと考えると、やっぱりハリーの結婚式だと思うんですよね。これもまたさらっといきなりハリーに恋人がいることが明かされて、学友ともども驚かされたりしたものですけど。というか、その場面にしても、まずその学友がとある女性にアタックするからハリーにもそのアシストをしてくれと頼む場面が先にあって、そっちはそっちでうまくいったのやらどうだったのやらと思っていたら、いつのまにかハリーのほうに恋人がいることが判明するという流れで。こういうのをさらっとやってくれるから面白いというか。

そして結婚式についていえば、自分でクライマックスとしてあげてますし、そこにいたるまでの描写的にもいかに運命的なふたりかという描かれ方をしてはいたんですけど、幸せな結婚式にはしてくれないから、この作者、やってくれるというか……。思えばこの第1部、シリーズはじまった当初から、ひとつの爆弾を抱えてましたね。当事者のうち一人でもその気になればいつ爆発してもおかしくないその爆弾が、いつ破裂するかと思っていたところ、それをあの場面に持ってきたのは、なんて面白ひどいことしてくれやがるというもので。ふたりの仲を深く描けば描くほど突き落とされる衝撃は増そうというもの。あれはもう完全に狙ってましよね。ふたりにロミオとジュリエットの演劇やらせるとかもうホント……。

でも、ふたりが知らない事実を知ってる読者の身からすると、黙ってるほうがむしろどんどん耐えがたくなってくる展開ではあったので、責めるに責めれないところがあるというか……。なんというか、もうふたりのめぐり合わせが悪かったとしかいえませんわ……。むしろ、ハリーが後にいうように、ことの告発はもうそれそのものが勇気ある行動としてほめたたえられるべきレベル。でもかといって、それで終わりにはならない事実をまたさらっと混ぜこんでくるから、気がかりを完全に断ち切ってももらえないところであり。ホントどうなるのこれ……。

ラストは別の意味で気になるヒキになってましたが、はてさてどうなっていくことやら。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 13:42| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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