2017年08月23日

理想のヒモ生活(7)

理想のヒモ生活 7 (ヒーロー文庫) -
理想のヒモ生活 7 (ヒーロー文庫) -

面白い。面白いなあ。このシリーズは善治郎がアウラと離れた場所にいるときほど面白く感じられる。それはひとえに善治郎がアウラを女王として立て、自分は王配として一歩下がった立場であろうとするがゆえ。アウラにとっての国のかじ取りにもっとも好ましく、もっともさしつかえのない行動を選ぶことを旨としているため。王宮では密にやり取りをしながら自分の行動を決めていくことができるものの、ひとたび遠く離れた土地に来てしまえば、現代ほど通信技術の発達していない世界のこと、たとえ緊急事態が発生しても連絡を取りあおうとすればそれこそ日単位での時間がかかってしまう。だからこそ、その場で頭を働かせることが求められる。まだ熟知しているとはいいがたいこの世界の情勢や貴族間の関係の知識を動員し、状況をできるかぎり正確に整理し、アウラがもっとも望むであろう方針(それができないならばもっとも面倒を起こさない方針)を推測し、その方向に事態が推移していくように対処する。そのために頭をフル回転させてなにが最善なのか、それがわからずともとにかくより悪い方向に事態が転がっていかないための策をと考えていく。まるでその場にいないアウラとの駆け引きをしているかのような流れを、様々な人たちの思惑をていねいに追いながら描いてくれるのがとても面白くって。

これが善治郎が最初から王族として主体的に動いている人物なら話は早いんですよ。その場で考えて、それに基づいて行動して。なにはともあれ自分を中心にして対処することができる。けれど、善治郎にとっての行動規範はどこまでも女王アウラの利益のためにというところから発しているのであって。王配としての影響力を発揮することになる場面ではどうしてもそのことに思いをいたさざるをえない。そのうえ困ったときの相談相手も筆頭はアウラでそれ以外はいないといってもいいようなものであって。そんなわけだから、考えられるかぎり考えたうえでいちばんいいと思える方針を選ぶことにしても、本当にこれでいいのかという不安がつきまとう。ましてまだこの世界での外交というか社交というかには経験不足な善治郎が、どの程度その方針通りに事態を転がしていけるかもわからない。想定通りに物事を運ばせることができたところで、どこかにしこりが残るかもしれない。そんな何重もの不安を抱えながらの不測の事件への対処。ハラハラさせられる展開と一件落着の安堵感がいいものでしたね。さすがに百戦錬磨のプジョル将軍を思い通りに動かすことまではできませんでしたが、そんな我の強い将軍に対して角が立たないように手綱を取ってみせた、新婚のルシンダさんは注目に値しますね。あまり自分を前面に出さないようにしているようでしたが、前評判通りの賢女なようで。彼女が内助の功を発揮すればプジョル将軍からもそのうち角が取れていくんだろうかと思ったり。ただまあどちらも頭の回る人なので、タッグを組んで相手に回られると善治郎とアウラとしてはとても困らされることにもなりそうな。とはいえそれはもう少し先の話でしょうか。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:28| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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