2017年08月18日

キングキラー・クロニクル(1)風の名前(4)

風の名前 4 (ハヤカワ文庫FT) -
風の名前 4 (ハヤカワ文庫FT) -

ああ、クォートとデナってわりと似たタイプなんだなあ。後ろ盾のないところから、自身の才覚と魅力を頼りにはい上がる糸口をつかんでいこうとしているところ。気を緩めれば路頭に迷い二度と浮かび上がれない暗闇に落ちていってしまいそうなぎりぎりのところになんとかぶら下がっているところ。いまのところクォートのほうが差し迫っている感はあるものの、お互いにあまり失敗していられる猶予はなく、かといって千歳一隅の機会をじっくり待つだけの余裕があるでもなく、少しでも成功に近づくチャンスがあると見るや飛びつかないではいられない。そんな必死な境遇にある者同士、うっすらとシンパシーを感じさせる描写がいいものでして。前回の感想でわりと実話系の話っぽい雰囲気を感じると書いたとおり、デナに惹かれながらも嫌われてしまうのがこわくて、慎重に慎重を期したアプローチによって友人にからかわれるほどの奥手ぶりを発揮しているクォートだけど、それが逆にデナにとってもいやな感じを抱かせない印象になっているのが、このふたりの関係の楽しみなところでもあり。

ともあれ、そんな切羽詰まった必死さとかなりの奥手さを別方面で同時に見せるクォートの、特にその前者において、一番に思うことはローレン師の言葉の的確さですね。クォートって、これまで若さと才能に任せて、とても勝ち気に様々なことに挑戦して、その才覚によってみごと実力を認められてきたんだけど、それだけじゃどうにもならないことってあるわけで。かの師の言葉を受け入れる余裕があればなあと思ってしまう部分があるんですよ。あくまでそんな余裕があれば、ではあるんですけど。ただその意味で、デナとの恋路は図らずもその辺のことに気づくきっかけにもなってくれそうなところであって。次の第一部完結巻でなんらかの転機が訪れるのか、行方が気になりますね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 23:16| Comment(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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