2017年07月26日

恋する救命救急医 あなたのベッドであたためて

あなたのベッドであたためて 恋する救命救急医 (講談社X文庫) -
あなたのベッドであたためて 恋する救命救急医 (講談社X文庫) -
試し読み(出版社HP)

あー……このテーマはきっついなあ。なまじ主人公が救命救急医であるがゆえに、仕事上のミスは即座に患者の生命身体にかかわる問題になってしまう。その背景にどんな事情があったとしても、起きてしまった過失は取り返しのつかない事態につながりかねない。ほかごとに気を取られてて……なんて言い訳はもってのほか。そんな医療の現場を舞台にした話だからこそ、失敗してしまうことに関しては、尋常ではないプレッシャーがある。それに向き合うことについては、ごまかしが許されない厳しさがある。仕事との向き合い方そのものが問われているようで、考えさせられるものがある。

今回の話でいえば、主人公・晶によるミスは、外部的な要因による集中力の欠如がその要因だったのであって、主人公の責任についてはいくらか割り引いて見れなくもないとは思うんですよ。なんせ、今回登場した新キャラの堂上先生、研修医でありながら指導医の晶に対する態度がかなり悪かったですからね。それはもう足を引っ張ってくれるレベルで。まあ晶は晶で一人前に届ききらない頼りなさがようやく抜けてきたところでしたし、一方の堂上先生は晶より年上なことにくわえて自信の塊のような人だしで、はたからみててもこの主人公に指導をさせるのはちょっと能力を超えてるんじゃないかなと思えるところはあったというか。そして案の定、手を焼いているうちにミスにいたるという流れ。人選ミスなんじゃないかという気もしなくはないんですけど、かといって人員に余裕がある部署でもなし、それにできる仕事ばかりこなしていては成長がないといわれればそうかもしれないと思ってしまうところもある。いやそれにしてもきっついですよね。自分の失敗に直面する場面は。それが原因で、認められだしたと思っていた上司にけんもほろろに叱責されるのは。周囲から自身の無能に対する軽侮のまなざしを向けられるのは。読んでるだけで死にたくなってくる居心地の悪さ。立場をなくす感じ、ですかね。けど、晶は自己弁護的な態度を取ることはなく、失敗は失敗としてきちんと受け止めていたんですよね。自責の念に駆られすぎたり周囲の態度の変化に疲弊していった部分はありましたが、また初心に帰って手もとの仕事をこつこつと積み上げていくことで逆境を耐え忍ぶ。つらいけど、それしかないのかなという感じ。まあ態度の変わらない人もいましたし、それになりより晶にとっての一番の心の癒しはやっぱり恋人との逢瀬ということになるんですけど。なにもかもをさらけ出せる相手がいるというのは大きいですよね。

その一方で堂上先生。彼の終盤の展開もかなりきつくて。途中までの晶への態度を思えば因果応報と思えるところもないではないのですが、それですませていい話では全然ないのがまた難しくて。晶のケースと堂上先生のケース、今回の話においては作中の通りになりましたけど、重大性においてたまたま差がついたというだけのことでしかなくて。どちらも患者の生命身体にかかわるミスをしでかしたことに違いはないんですよね。むしろ自分が堂上先生に近いタイプだという自覚があるだけに、失敗することやそれを受け止め向き合うことに慣れてないのはこわいなあと改めて思わされたり。エリートっぽいキャラはそれはそれで好きなんですけど、堂上先生の場合は悪い意味でもエリートっぽかったということで。本当につらい。

どうやらシリーズ第3巻も発売予定があるということで、楽しみにしたいです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:16| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック