2017年05月11日

左遷も悪くない(2)

左遷も悪くない〈2〉 (アルファライト文庫) -
左遷も悪くない〈2〉 (アルファライト文庫) -

ひとり身の時は何気なく過ごしていた季節も、結婚したことで特別な意味を持つようになってくる。いいですね、こういうの。結婚したからこそ、意味の見いだせなかったできごとに特別な意味が見えてくる。これもそれぞれの背景を持つ者同士がひとつ屋根の下で暮らすからこそでしょうね。特にウリセスのジャンナへの接し方を見ていると、真っ向からの互いに譲らない言葉のぶつけあいだったろうやりとりに、相手の気持ちへの共感が少しずつ見えてくるようになっていて。それをもたらしたのが結婚したヴァレーリアと過ごしてきた日々の記憶だとわかる描写が素晴らしくて。それに限らず、ウリセスのジャンナ見る視線とレーアを見る視線のかげに、嫁に対する信頼がうかがえるのもとてもいい夫婦の雰囲気ではあります。わりとひとつの節でひとつの話としてオチまでついてることも多く、ラストの一文から伝わってくる熱い雰囲気にやられることもしばしば。

とはいえ、荒くれ者たちとともに荒事に対処する軍人と、同じく軍人の娘とはいえ荒事とは縁もなく大切に育てられてきた女性とでは、担いきれる互いの苦難の幅にも限度があるように思えるものでして。今回、ウリセスの元部下から語られた左遷の顛末を聞いていると、ウリセス同様、レーアには危機に際してただ逃げてほしいと思えてくるところもあり。けれど、そのときがやってきた場合にどれだけ役に立てるかわからないとしても、夫婦になったからには訪れうる危険を知りたいと願い、ともに乗り越えていかせてほしいと願う彼女の気持ちは、なによりも心を打つのです。それほどに、互いの視点で描かれる、レーアを大切に思うウリセスの心と、ウリセスを愛するレーアの心は、とてもいいものなのです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 13:58| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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