2017年04月01日

本好きの下剋上 〜司書になるためには手段を選んでいられません〜(3)領主の養女(1)

本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第三部「領主の養女I」 -
本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第三部「領主の養女I」 -

領主 とは

前回でもちらっと疑問に思いはしたんですが、第二部ラストの素晴らしさにすべて持っていかれた感がありまして。感想でも触れないままになってはいたものの、今回読んでてあらためてよくわからなくなってくるのがこの「領主」という地位ですよ。ローゼマインが養女として親子関係を結ぶことになった御家ではあるんですけど、この世界においてどの程度の立場なのか、微妙によくわからないんですよね。自分が領主という言葉を聞いてぱっと思い浮かべるのは、伯爵とか公爵とか、そういう爵位持ちで、王や皇帝なんかの主君から与えられた領土を統治する貴族のことで、家来や領民たちからすれば主ではあるものの主君に対しては仕える側に回る、いわば中間的な統治者なのであって。けれど、これまでの作中の説明では、ローゼマインが養女として迎えられた先は、中上級貴族と書かれていた人たちよりもさらに上に立つ権力者であるらしく。少なくとも伯爵の地位にある者が領主よりも下の地位と思われることは確かなんですよね。それどころか、前回から登場したギーベという称号が領主から土地を与えられた貴族を意味するものとして存在しているようで。このあたりのことを考えあわせると、領主の地位というものは少なくとも侯爵級以上。家来筋の者たちの爵位も自らの手で与えていると仮定すると、国王レベルの独立君主である可能性まで考えられるんですよね。まだ領地の外のことがよくわからないので確かなことはなんともいえませんが。

ともあれ、第三部のタイトルにもあるように、マインあらためローゼマインが養女となった先は、いち兵士の娘としての出自からしてみればとんでもないほどに高貴な領主様のもとで。新しい戸籍上の貴族の母や兄たち、養子先の母や兄や、側仕えや護衛騎士などなど、新キャラ多数登場で主人公ともどもまず名前を覚えるのにてんてこまいにさせてくれますこと。エピソードを通してであればそれほど名前を覚えることは苦ではないほうだと思ってるんですが、この一冊ではまだちょっとあやしい人たちがちらほらと。

とはいえ、いちばん記憶に残っているのはエルヴィーラお母様でしょうか。ローゼマインの経歴ロンダリングにて出自とすることになった騎士団長カルステッドの家の第一夫人であり、神官長フェルディナンドに対してアイドルのファンのように熱をあげる人でもあるおちゃめな奥様。なんですけど、それと並んで印象に残るのは彼女と夫であるカルステッドを中心にして見えてくる貴族の家庭の様子。ひとつの家庭だけを見て一般化してはいけないと思いますが、ともあれ具体的にいうと、男の社会と女の社会がかなりはっきりと分かれてますねというところ。夫と妻とはいえ別個の人間なので、それぞれの生きる世界があるというのは当然のことではありますが、カルステッド家の様子を見てると、男の社会は仕事の世界、家庭は女性と子供たちの世界であるように見えてくるんですよね。ローゼマインはそのどちらにも関わっているので両方の面を見ることができますが、片方の世界にいるときにもう一方の人たちが登場してくることはほとんどない。あってもほとんど主導権を握る側の決定を追認・実行する程度。役割分担がはっきりしているといえばそうともいえますけど、ここまで割り切ってるのはいっそドライとも感じられるというか。いっしょに悩んで助け合ってという仲睦まじさは見られない。甘々な新婚ものの話ばかり読んでるとおやっと思ったりもするのですが、それぞれがそれぞれの領分で貴族の社会を担っている姿を見てると、政略結婚の世界ならこういうものなのかなあという気もしてきたり。まあそれ以前に、単純に、成人している子供もいる夫婦としての長年のつきあいの中で形成されてきた呼吸なのかもしれませんけど。自分の子供ということにしたローゼマインをどう着飾らせようと悩むエルヴィーラに対するカルステッドの悟りきった感じの対応とか、領主家のほうでも、フロレンツィアさんが旦那の子供っぽいところをしかたない人なんて思いながらも領主夫人としてローゼマインの後見役を務めている様子とか見てると、いろいろ察するところがあったり。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 00:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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