2017年03月21日

本好きの下剋上 〜司書になるためには手段を選んでいられません〜(2)神殿の巫女見習い(4)

本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第二部「神殿の巫女見習いIV」 -
本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 第二部「神殿の巫女見習いIV」 -

第二部完結巻。マインの家族への思いに泣ける。第三部のタイトルを見て察してはいたし、第二部途中から既定路線だったとはいえ、こんなにも早くそのときがやってくるなんて。急激な変化を余儀なくされて打ちのめされるマインや、マインの家族たち、ルッツやベンノさんたちの姿に胸が迫る思いでした。第一部から第二部への移り変わりも、マインたちの希望とは離れた思惑で決まってしまいましたけど、今回もまた否応なく重大な変化をつきつけられた形。マインや、彼女と深くかかわってきたすべての人たちに、強く生きてほしいと思わずにはいられません。

思えば、第二部二巻のラストくらいから目に見えてそこに至る流れがはじまっていたように思います。それ以前以後からラストにつながっていった流れもありましたが、特にマインの感情的な推移において。それ以前は、神殿で巫女見習いになったといっても、自宅からの通いであり、ルッツやベンノさんたちとも頻繁にやりとりをしていたこともあって、慣れない場所・慣れない人たちの中での巫女見習いの仕事といっても頼りなさを覚えていた節はそれほどなかったように思うんですよね。神官長のうしろだてもありましたし、側仕えの灰色神官・灰色巫女やその見習いたちを何人も味方につけていきましたし。けど、第二部二巻のラストで前世の記憶をふりかえることになって、そこで前の世界の母のことを意識させられて。なんの言葉も残すことなく今生の別れを果たしてしまった母への感謝の念や申し訳なさを抱く心境が描かれるにつれて、神殿での冬ごもりのときに肉親やごく近しい人たちが現れるとべったりひっつくくらいに甘えかからずにはいられなくなるほど家族への情愛を募らせていく心理がひしひしと伝わってきて。そういったことがあった末の今回の展開でしたからね。家族と離れ離れになる決定をつきつけられて魔力の暴走を引き起こすほどに取り乱すマインの気持ちがとてもよくわかってしまって。けれど、今度こそ大切にしようと思った家族とまた突然別れることになるつらさを誰よりも感じているにもかかわらず、それでも何があっても大切に思う人たちのために、心からの祈りをささげるマインの姿を見ていたらもうどうしようもなくなってしまって……。本のことばかりを考えていた前の世界での記憶があって。本のことだけでなく大切な人たちとのつながりが広がったこの世界で歩んできた道のりがあって。これまで生きてきたすべての人生があってこその感情ですよね。本当に、素晴らしい展開でした。

第一部ではゆっくりゆっくりと、わりとなるべくしてなるべきラストにいたった感があって。それに比べると今回はこの最後の巻で急展開という感じもあって、より一層感情を揺さぶらるものがあったように思います。

とはいえ今回の措置、領主側の視点から見ようとすると、それがいちばん手っ取り早かっただけという気もしなくはないんですよね。早いしもろもろの折衝を考えると楽だけど、関係各所がもっとも満足できる方法だったかという点ではどうなんだろうというか。もっと時間をかければその分だけうまく解決できるかどうかはなんともいえませんが、反論の余地を与えず自分たちで考えた決定をつきつけてくるところはさすが貴族というところ。その決定の絶対性がマインの大切な人たちへの思いと合わさって琴線にふれる展開になってくれてはいたんですが、その一方で逆らうことなどできない権力者の決断の暴力性とも映ってきて。やっぱり素晴らしい世界ですわと思う自分もいたり。

ともあれそんなこんなで、次回からは本格的に貴族の世界……になってるのかはわかりませんが、平民とは教養レベルが段違いな世界につづく道が示されたことは確かなわけで。そこにはさらにどんな世界が待ち受けているのかと、わくわくしているところです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:52| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/448220360

この記事へのトラックバック