2017年03月12日

魔法密売人 極道、異世界を破滅へと導く

魔法密売人 極道、異世界を破滅へと導く (電撃文庫) -
魔法密売人 極道、異世界を破滅へと導く (電撃文庫) -

なんともビターな読後感。いいですね。

自分がこれまで読んできたファンタジー作品としては結構異色な作品だったように思います。なんせ主人公が極道ですし。開始早々にえぐい暴力が吹き荒れてて、しょっぱなからとっつきにくさがあるんですが、そんな、感慨すら感じさせず人を殺せる男が異世界に呼び出される。王族の意思一つで人の命が簡単に奪われうる世界に、現代日本においては明らかにカタギの一線を越えた男が足を踏み入れる。ワクワクしてきませんか? 自分はとても興味をひかれました。

しかも、主人公・チシオを呼び出したクデン族(いわゆるエルフ)の少女・ルルルの、チシオを呼び出すに至った経緯がまた極まってる。陰謀か欲望か、なんらかの思惑からクデン族が王国の悪意にさらされて、滅亡の危機にさらされているという。もともと隠れ住むことを余儀なくされてたクデン族に王国に対抗できるだけの力はなく、そんな窮状を打開するための救世主として見出されたのがチシオなのだという。正直なところ、状況はチシオが呼び出された時点で極まりすぎててもうどうしようもない。でも、じゃあルルルを見捨てるのかというと、それをしないのが主人公であり、しかしそんな彼女をいいように利用する算段もつけるのがチシオでありという、悪事なれした冷血さを見せてくれるのがなかなかに外道な面白さ。

ぶっちゃけてしまうとこの話、明るい希望なんてほとんど描いてはくれないんですよね。どいつもこいつも悪人と、だまされるバカと、泣かされる被害者ばかり。主人公はルルルを利用するだけしようとしてなんら悪びれない悪人だし、ルルルは一族が見舞われた悲劇ですこしばかり情緒不安定ぎみだしで、そんな二人の視点を通して進んでいく話は、読んでて疲れるっちゃあ疲れる。けど、それでも先を期待しながら読み進めてしまったのは、わりと平気で人を半殺しにすることもできるチシオと、復讐心に駆られたルルルという火薬と火のような組み合わせが、いかにこの世界で炸裂してくれるのかと、そんな楽しみを抱かせてくれたからなんですよね。

極道の男が異世界に呼び出されて、魔法の存在する世界を暴力で蹂躙する。ワクワクするじゃないですか。この異世界の住人もバカばかりではないにしても、悪事なれしたチシオの前にはあと一歩のところで及ばなさそうで。吹き荒れる暴力の嵐の後にチシオが高笑いする展開になるのかと、思わせてからの、実はそうはならない展開。そこがでいちばん面白かったんですよね。途中途中で苦労しながらハードルをクリアしていって、たいしたことなかったなと、詰めの作業に入ろうとしたあたりでそれがひっくり返される衝撃。そこから回復しきる前に一気に窮地に追いやられる苦しい展開。その末の末の、結末までの流れが、怒涛のようでいてなんともいえない苦い後味を残してくれることといったら。最終的にこの主人公は、欲していたものをなに一つ手に入れられずに終わってしまったんですよね。手に入れたかったものはすべてこぼれ落ちていってしまって、それなのにしがらみと因縁ばかりが絡みついて尾を引いていく。すべてが裏目に出てしまったかのようなあの結末。いやー、この読後感。たまりませんね。しかも、最後の最後、次につづく的な最後のところでほのめかされていることは、つまり……。ぜひ、ぜひ2巻も出してください! よろしくお願いします!
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 05:26| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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