2017年03月02日

あなたに捧げる赤い薔薇

あなたに捧げる赤い薔薇 (アイリスNEO) -
あなたに捧げる赤い薔薇 (アイリスNEO) -

なにこの人たちめんどくさい。

わがままで、ぜいたく好きで、公然と浮気もしていて悪妻の評判隠れない伯爵夫人であるオフィーリア。けれども実際はすべて皆にそう思わせるための演技で、愛する夫のために、彼が本当に愛する女性と結婚することができるように自ら離婚の口実を作り上げていくけなげなヒロインで。

一方の夫であるオルフェウス。盲目の従妹との仲良さげな姿がたびたび見かけられ、オフィーリアの件については屋敷の使用人たちからも同情を寄せられるかわいそうな伯爵。けれどもいやなら離婚すればとも迫るオフィーリアに対して、彼が首を縦にふることは決してない。それはなぜなら――。

という感じで、出だし的に切ない系の話を期待してたところもあるんだけど、むしろそれ以上にすれ違いがこじれて収拾つかなくなりかけてく二人がじれったくてしかたなかったんですけど! 本当はお互いに好きあってるはずなのに、相手のことを愛しているからこそ、自分なんかよりも本当に愛する人といっしょにいる方が幸せになれるんだと身を引いてしまう。しかもそれが心のうちの悩みならまだしも、特にオフィーリアの場合は気合いが入ってて、本当に使用人には当たり散らすし、浪費だってしてみせるし、愛人という名目の友人だって作って堂々とデートだってするしで、それだけ行動力があるならどうしてもう一歩でもオルフェウスに踏み込んでみようとしなかったのかとも思ってしまうくらい。けどこの辺は、オルフェウス本人もそうだけど、お互い自分にはもったいないほどの人だと思ってるから、自分以外の異性と仲睦まじげにしている姿を見るとやっぱり……と思ってしまう。自分への自信の持てなさの表れのようでもあったんですよね。だからこそ、二人の気持ちがすれ違ったまま、どうして周りはこんなになるまで放っておいたんだと思ってしまうほどに、こじれるこじれる。

特にいちばん頭抱えたくなったのが、互いの本当の気持ちがわかって、という出だしからは物語の山場になりそうに思えた場面が半分くらいのところでやってきちゃったとき。え、これあと半分なにするのと驚いてたら、なんと、それで解決するどころかさらにドツボにはまってくんですよ、この二人は! というか、このヒロインは! 気持ちが通じあって、過去のすれ違いも誤解だとわかって、そしたらもう二人は幸せになりましたで終わると思うじゃないですか。なんでそこからさらにこじれるのさ! いや、まあ、わかるけど。すれ違い時代の振る舞いは、誤解だとわかればすぐに水に流してしまっていい程度のものではなかったけど! この辺、オフィーリアってすごくまじめなんですよね。そこが、新婚当初、オルフェウスが好感を抱いたところでもあったんですけど。でも、あらためてふりかえってみても、二人の問題としては、やっぱりそれで解決なんですよ。二人の親しい関係者以外は登場しないし、その外側の世界のことなんて、作中でも言われていたように、気にしないことにすればどうとでもなってしまう。それでも、そのままにしておいてはいけない。自分のためではなく、オルフェウスのためにも、なんとかする方法を考えなければ、そうでなければ顔向けができないと妙なところで意固地になるオフィーリアがもうめんどくさいこと! なにこのかわい……めんどくさいキャラ! 本編後の、番外編的なその後の話での、もう新婚といえるほどでもないのに初々しい様子もよかったですし、もう本当に、なにこのかわいいキャラ!

けれど、そうして話がもう少し広がったことで、オフィーリアとオルフェウスの二人だけでなく、その周囲の何人かも含めてしっかりと幸せなエンディングにたどり着くことができた展開がいいものだったんですよね。二人だけの話ではなくて、二人を中心にした、その周囲の人たちも含めた物語だったんだなあと。それを一冊に収めて読むことができた満足感でしょうか。それと、読後にタイトルを見返したときに感じる心地のよさまで。とてもいいお話でした。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:23| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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