2017年01月29日

インヴィジブル・シティ

インヴィジブル・シティ (ハヤカワ・ミステリ文庫) -
インヴィジブル・シティ (ハヤカワ・ミステリ文庫) -

閉鎖的なユダヤ人のコミュニティに、自分を置いて出ていった片親がユダヤ人という出自のおかげですんなりと受け入れられて他紙の記者にはつかめなかった真実に近づいていくことになる奇妙な縁。面白かったですね。

宗教色の強い生活を送るユダヤ人社会を舞台にしながらも、その中で信仰生活に抑圧を感じる者、疑問を感じる者、けれど信仰を離れることを考えているわけではなく、より生きやすい生活、幸福になれる生活をあくまでも同じ信仰の内側で模索する人々の信仰生活の描写がよかったです。価値観とか道徳とか常識とか、分かちがたく生活の根底に根差している感じ。大仰に感じるようなものではなく、宗教ってこういうものなんだろうなあと。

被害者の情報も、一人の知人・縁者から聞いてわかった気になっていたらそれはあくまでも一面的なことにすぎなくて、信用を得ていくうちに何回かにわたって何人にも聞きこみを重ねていくことで後半にまでいたってやっと詳細な為人がわかる流れもよかった。何方向からも情報が集まることで平面的なプロフィールが立体的な奥行きを持ちはじめるようだったというか。この辺は、もしかしたらミステリーならそれほど珍しくはない描写かもしれませんが、普段読まないジャンルでもあり、新鮮に楽しむことができました。

最後、余韻を残しながらもこのまま続けようと思えば続けれそうな感じの終わり方だったなあと思っていたら、やっぱり本国では続編も出ているようで。そちらも邦訳を期待したいですね。今回の事件の取材を通して、嫌いだとばかり思っていたところから印象が変わってきた母親と出会うとしたらどんな再会になるんだろうかと、とても気になります。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 21:29| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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