2016年09月02日

獣の奏者(3)探求編

獣の奏者 3探求編 (講談社文庫) -
獣の奏者 3探求編 (講談社文庫) -

あれほどきれいに片が付いたと見えたにもかかわらずのセィミヤの落ち着かな気な様子は、それだけ見ると首をひねりたくなるようなところでころではあるけど、前回ラストを思い出してみると、実は彼女、役としては主役級でありながら、明かされた真実に関していえば茅の外に近いところにおかれてましたっけ。目の前に動かしがたいまでの事実だけをつきつけられてから十年あまり、ここまで何の説明もなしって、エリンさんや、あんたら鬼かとつっこみたくなったんですが。そのことに疑問も抱いていたハルミヤならまだしも、セィミヤって、神にも等しき王家に生まれたからこそ高潔な心をもって国を治める指導者となろうという思いを心の芯にしてましたからね。それを人の座へと下ろしてやるということは、それはすなわちその芯を抜き取ってしまうということで。臣下たちはそれでも急激な変化を望まず彼女を立てようとしてくれてはいますが、そうはいってもセィミヤとしては何を心の拠り所としていいかわからないところでしょう。シュナンならばあるいは何か代わりになるものを一緒に見つけていくこともできるかと期待もできましたが、なまじ旧来の臣下たちがシュナンに敵意を向けるばかりに宮廷内の仕事ははかどらず。そして彼らがそんな態度をとるのは彼らがセィミヤを敬う気持ちを持ち続けており、シュナンこそは穢れた一族の者でありながら彼女を人の座へと下ろすこととなる変化をもたらした筆頭格と目されているからであり。セィミヤが彼らに率先してシュナンに協力するよう促せばそれである程度うまくいくだろうと頭ではわかっていても、それをすることは自分の立場がそうして引きずり下ろされてしまったことを自ら認めることと同義であり、最後にすがりつくはりぼてさえ失っては、彼女にとって生きている意味さえ見失ってしまうことになりかねないんですよね。それがわさるからこそ、セィミヤは一歩を踏み出すことができずに不安を取り去る救いの手を待つほかなくなっている。本当に、どうしてこんなになるまで放っておいてしまったのか。だから、王獣に可能性を見ればそれに飛びつかずにはいられなくなってしまう。うん。これはもう、前回、雰囲気だけいい感じにしてそれでよしとしてしまったツケの回収に回らなければならなくなった、そういう話でしょう。願わくは、真王の心に長く平安のもたらされんことを。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 19:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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