2016年05月23日

誓いのとき

誓いのとき―タルマ&ケスリー短編集 (創元推理文庫) -
誓いのとき―タルマ&ケスリー短編集 (創元推理文庫) -

あー、やっぱりこの作者さんと訳者さんによるタルマとケスリーの物語の文章はいいなあ。読んでるだけでなんだか安心感が得られて、心地のよいひとときが過ごせる。話の筋とは離れたところに存在するこの快さは、物語に触れる喜びを確かに感じさせてくれるのですよ。

今回収録されてた話では、なんといっても表題作の「誓いのとき」がよかったですね。望んでいた家族を得て、何人もの子供たちにも恵まれた彼女たちのその後の、穏やかで順風満帆な幸せに満ちていることといったら。しかも、それまでに得た伝手の関係から、娘がさる王女様と学友にして親友になっていたりとか、さらにその後の話ももっと詳しく書いてほしいと思わせてくれるところがあったりと、なかなか気になるところがてんこ盛りな余生ではあるようで。けれど一番よかったのはやっぱり、彼女たちの一番上の娘が、彼女たちに似て友達思いで芯のまっすぐな意志の強い女の子に育っているのがわかったこと。彼女を通して、またタルマやケスリーのように、親友のお姫様たちと面白い冒険譚がつむがれていくことになりそうな、そんな予感を抱かせてくれる子でしたね。

ああ、それにしても、タルマとケスリーの話はもうこれで終わりなんですね。上述のその後の話なんか見てても、もっといろんな話を通してこの雰囲気を味わっていたかったなあと思わされます。とはいえ、波乱万丈に富んだとまでは言わない、二、三の大きな戦いと、その他の小さな事件の数々をくぐり抜けた末に、みごと当初の願いを遂げたとある女傭兵二人の物語でしたからね。歴史を大きく動かすような英雄の話というわけではなく、いくつかの事件を通して得られた関係をもとに(それでも十分に立派な)成功を収めた冒険者たちの物語というところでしたから。二人にとってはその後の話として描かれていた以上の幸せは、ちょっと思いつかないですし。それに、今回のような隙間的な短編も、大きな戦いにおける地点間移動の旅程を比較的長めに見積もってるように思える都合上、入れ込む余地もそんなになさそうですし。ともあれ、作者さんによる同じ世界が舞台のシリーズには、同じように雰囲気のとてもいい話がいっぱいあるのがわかってますので、それを楽しみにどんどん読んでいきたいですね。二人の孫娘が主役の話もあるようですし、それにも期待しつつ。まあ刊行順的には、次は最後の魔法使者三部作でしょうか。ただこれ、手を出すのが遅かったこともあって、入手がなかなか難しい本になってるのが……。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 04:39| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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