2016年04月03日

氷と炎の歌(5)竜との舞踏(3)

竜との舞踏 (3) (氷と炎の歌 5) -
竜との舞踏 (3) (氷と炎の歌 5) -

やっぱり区切りつかなかったかー。これはたしかに、どこかで見かけた、あまり話は動かなかったという感想にも同意できなくはない第五部の物語ではありました。とはいえ、それは第四部まで読んできていればある程度は予想のできるところではあったはずで。むしろ、そんななかにもたまらない見せ場があったのがやはりなにかをしてくれるシリーズではあり。

今回、一番の見せ場があったのは、ほかのだれでもない、デナーリス。異郷の地の民の反抗に悩まされ、愛すべきドラゴンたちさえ諸刃の剣としての性格から苦しめられることにもなっていた苦境。それを打ち破る楔となったのは、やはりドラゴンだったんですよね。意に沿わぬ譲歩を余儀なくされた敗北感、敵の有力者にわがものと自認する都市を大手を振って歩かれる屈辱感、そしてそれを受け入れざるを得ない無力感。そんな鬱屈とした感情に包まれているさなかに突如として現れたドラゴンは、それはもう災厄そのものでしたね。一瞬にしてその場を恐慌に陥れ、人を殺し、秩序を壊し……その場にあったなにもかもがあっという間にめちゃくちゃにされていく圧倒的な暴の力。ひ弱な人間の力など及びもつかない破壊の権化。これこそがドラゴンの第一の権能。これこそがデナーリスの手に入れた力。撒き散らされたそのおそるべき力は、しかし、ふさぎこんでしまっていた空気を瞬時に吹き飛ばしてくれる巨大な一撃でもあったんですよね。誰もがパニックになり、我先にと逃げ惑うなかでドラゴンと対峙したデナーリスこそは、やはり彼女こそはドラゴンの母。ドラゴンを従える圧倒的なカリスマの女王ですよ。彼女に比べれば、ほかの「王」たちなどなにほどのことかあらん。烏合の衆を一瞬で畏怖させられる力を従える者が、ほかにあるか。戦乱を収め、秩序をもたらすのに必要なものはほかでもない、力なのだと、これまで何度も作中で見せつけられてきた。そのもっとも分かりやすい、圧倒的な力の持ち主がここにいる。Khaleesi! 《母》よ! 今こそ、ついに飛翔のとき来るか。どこまで行き着くことになるのか。その行く末を、見届けずにはおれませんよ。

一方、西のウェスタロスで注目せずにいられないのは、やはりなんといっても、表紙にも描かれているジョン・スノウ。総帥としての力で異分子の筆頭格を排除し、なんとか自らの路線を軌道に乗りかけてはいるものの、不満を募らせ続ける古参の隊員たちとの摩擦に煩わされずにはいられないすっきりしなさが面白くあり。ジョンの視点に立てば、《異形》の到来を前になぜ彼らは味方を選り好みしようとするのかというところであり、しかし反発する者たちにとっては、危機を目前に控えるからこそ信頼できない味方を身中に抱えることは警戒せざるをえない。というより、ジョンは《異形》の襲来を近い将来確実に起こることととして話を進めているが、そもそもその前提が正しいという保証がないのであり。(物語としては、これでなにもなかったら興ざめでしかないのですが。)そんな状況で強権的に物事を決めていくのだから、反発を受けるのは当然のことでしょうね。むしろ、不満を抱きながらも命じられたことはしっかりこなしてるんだから、ここの隊員たちはよそに比べてなかなかに献身的といえるのかもしれません。そんな様子が伝わってくるのがとてもいいんですよね。それに、ジョンとしても、そうして反発されながらも物事を進めていくために、信頼できる仲間たちをどんどんよそに送り出さざるをえなくなって、総帥の地位についたときよりもさらに孤独とそれに伴う悩みを深めていっているのが面白くあり。この山を越えれば、ジョンもひとかどの人物になってるんじゃないかと思えるところであり、期待したいところ……ではあるんですが、彼の章の最後で不穏な展開が……。何かのインタビューでスターク家から死者が出ると作者が言及してるそうですし、ドラマ版のシーズン6の予告映像などから戦々恐々としているファンの声もあるみたいですし、予断は許されないところでしょうか。

とりあえずはそんなところ。ここからがさらなる見せ場となるこの竜との舞踏の行く末としては、デナーリスにこそ一番の期待を……というところではあるんですが、彼女、圧倒的な力はあってもそれを統治面でうまく機能させる腕には一貫して不足してますからね。そういった面で頼れる《手》があればいいんですが、この世界でそんな信頼できる人物を見つけられる展開なんてあるんだろうかと考えると遠い目をしてしまいたくなるところではあり。

まあなにはともあれ、まずは本国での第六部発売を待ちたいところ。どうも、まだすぐには出そうにないようですが……。ともあれ気長に待ちたいですね。じっくり取り組んで、またあっといわせてくれる話を楽しませてもらいたいですから。

あ、あと、用語解説にあった「血縁関係の怪しい親子」というの。具体的に誰のことかはわかりませんが、第一部から重要なキーになりつづけている例の姉弟のこともあり、物語の雰囲気的にあってもおかしくないよなあと思えてしまうのがこのシリーズ。明かされることがあるにせよ、ないにせよ、誰のことだろうかと考えただけでこわくなってくる情報。さらっとこういうこと書いてくるのがこの訳者さんの心憎さでしょうか。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 01:24| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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