2014年09月24日

孤児の物語(1)夜の庭園にて

孤児の物語 I (夜の庭園にて) (海外文学セレクション) -
孤児の物語 I (夜の庭園にて) (海外文学セレクション) -

物語の中で物語が始まり、物語が物語を呼び、そうして物語は進んでいく。初めて読むタイプの話ですごく面白い。しかも語り出される物語の一つ一つが奇想天外なものばかりだから、次には何が始まるんだろう、どんな展開になるんだろうとどきどきわくわくしながら読み進めていくのが楽しくて仕方なかったです。帯に「果てしない入れ子細工の世界」とあったけど、まさにその言葉通りに語り紡がれる、物語による物語。読んでるうちに話を楽しんでいるのか物語の構造自体を楽しんでいるのかわからなくなってくるような、いやきっと後者なんでしょうけど、そんな読書体験に引きずり込まれていく面白さ。素晴らしいですね。まだもう一冊続きがあるようなので、そちらも心ゆくまで楽しみたいです。

慣れるまでは、入れ替わり立ち替わる語り部になかなか頭が追いつきませんでしたが、60ページくらい読み進んだあたりで物語に入り込めるようになっていったように記憶しています。そのきっかけになったのは、物語の基点である、スルタンの皇子と、最初の語り部となる孤児の女の子と、皇子の姉たちの周辺の物語でしたね。彼らのキャラクターがようやく見えてきたことで、作中の物語を理解するための土台が固まったように思います。汲めども尽きぬ奇想天外な物語を幾夜も続けて明かしていく孤児の女の子と、そんな彼女の口から語られる物語の魅力にすっかり虜になる皇子と、弟妹の世話を任されている役柄夜な夜な部屋を抜け出す皇子の不行状に目くじらを立てるその姉という関係性は、作中で一番興味をひかれているところであります。この一冊では変化が起こりそうでその兆しくらいしか見られなかった三人の関係がどうなっていくのかというのは非常に気になるところですね。というか、孤児の女の子、すべての物語を語り尽くしてはいけないみたいなことを言ってたわりに自分からどんどん語り継いでるだけど大丈夫なんでしょうか。

一つ一つの物語については、かなりぶつぎりなのでなかなか入り込みづらいところはあるのですが、そうしてさらっとした語り口で紡がれていく中に、物語通しのつながりが、はっきりとだったりさりげなくだったりしながら盛り込まれてたりするのではっとさせられるんですよね。後味よく終わった物語があったかと思えば、その後にまた苦難が待ち受けていたらしいとわかったりなど、共通する人物が登場するにしても一つでない物語があったりする。そんな作りに気付かされていく楽しさですよ。

ファンタジー的な部分では、皮売りという存在が面白かったですね。動物や植物の皮を、取引の対価としてだったり、盗むことでだったりしながら調達し、それを他人に売りさばいていくのを生業にしているらしい。それだけならばただの毛皮とそれほど変わらないようにも思えますが、皮売りはその皮を他者にかぶせることで、かぶせられたものを別の生き物に変えてしまうことができるらしい。それによって、クマだろうがアザラシだろうが化物だろうが普通にしゃべるこの世界で、人間と思ったら実はもともと違う生き物だったと語られたりなど、物語同士をつなぐ役割を担うことにもなってるんですよね。

そんなこんなで色々面白い作品ですよ。次はいったい、どんな物語が語られるんでしょうね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 14:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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