2014年07月15日

翼の帰る処(4)時の階梯(上)

翼の帰る処 4 ―時の階梯― 上 -
翼の帰る処 4 ―時の階梯― 上 -

ヤヤヤエトが皇女様に押し倒、押し倒されるとか、それどこの同人誌ですかいえ公式でぇぇえええす!!!

すいません。あまりにも素晴らしい一場面に取り乱しました。

それにしても、あんな場面を一体誰が想像できたでしょうか。そりゃまあ、皇女様がヤエトを慕い信頼している様子は幾度も描かれてきましたよ。でも、そういう気持ちを表すのって、基本的にはヤエトが無茶してぶっ倒れたりしてた時だったじゃないですかー(以前の内容うろ覚えですが)。それが、ヤエトの身が危うくなってるわけでないにも関わらず、夢かと疑いたくなってしまうくらいに気持ちだけ先走らせて飛び付いてくるんですから。とてもご褒美的なシチュエーションなんだけど、そんな勢いで行動しちゃうような段階はまだ早いと思ってただけにちょっと心臓に悪かったというか。いったい何があったのやら。その理由らしきことは皇女様の口から告げられているのですが、本当にそれだけなのかと思えるくらいには突拍子もなかったもので。やっぱり、隠居して北嶺から長く離れてたので寂しく思ってたんでしょうかね。それっぽい会話もありましたし、ルーギンが何か吹き込んだとも考えられるでしょうか。だとしたらグッジョブと言わざるをえませんが、さて。

そんなわけで、皇妹殿下推測の理由も頷けてきてしまう隠居ですが、ヤエト本人が言うように、なーんか想像してた生活と違うんですよね。もっと悠々自適としたものを思い浮かべてたはずなんですけど、まだ世間のあちこちに放ってはおけない色んな繋がりが残ってるんですよね。

その第一が《黒狼公》という身分から伸びる糸で、その家と領地について。隠居は許されたものの、沙漠のこちら側に身内のないヤエトとしては爵位を譲る相手がいない。それではと先代の血縁から当てを付けたものの、そんな相手もまだ年若い少年で。成長した暁にはすっかり委せてしまえるのでしょうが、当面の間はヤエトが当主としての断を下さねばならない状態が続いていくわけで。まあキーナンその人はヤエトに対してとても素直でかわいらしい子なんですけどね。向上心もありますし、今のところ期待できそうな子ではあります。とはいえ彼については、そちらよりもスーリヤとの仲が気になります。

第二には北嶺の王たる皇女の副官という地位から伸びる糸。前述の寵臣とも言える関係のこともありますし、それが最も気になってるところでもあるのですがここでは置いて、皇子たちによる後継者争いの線を。前回までで脱落者も出ていますし、その際に皇女も大きく介入したりもしていたのですが、その行動はあくまで兄皇子たちとの関係や自身の個人的な感情に依ったものだったんですよね。すっかり渦中の人であるにも関わらず、皇女に確固たる方針はまだないんですよ。北嶺の王としての地位が判断に影響を及ぼしてきているようにも思いますが、場当たり的な域を脱することはできてないのではないでしょうか。なので補佐たるヤエトとしても、その場その場で意に沿った助言をしていくしかなかった。それが今回、ヤエトは皇女の熱にあてられて理想を口にしました。普段から覇気のない彼にしては珍しく静かな熱気に満ちていたその口調は、当人のつもりはどうあれ、墾望の色を帯びて感じられました。この一幕が、ヤエトに信を置き、好ましく思われたいと考えている皇女にどんな変化をもたらすのかなーと期待しています。

第三には《恩寵》の力を有する者としての立場から伸びる糸であり、目覚めつつあるという悪しき神の力(だっけ?)との対峙。こちらはまだよくわかっていないことも多いのでなんともですが、作中の人々にしてもそんな不明確なものの相手をしていられるのは、皇妹殿下も言うような隠居か、その被害を真っ先に被ることになる人たちくらいですよね。

こうしてみると、かくも世間はしがらみが多いものとつくづく思わされますが、そもそもヤエトの年齢とここ最近の経歴からすれば付き合いのある人たちは自然と第一線で活躍する人たちばかりになってしまうのではないかという気もしたり。爵位ひとつで決定的に人の縁を断ち切れるはずもないですから。むしろちょっとずつ理想に近づけていく楽しみがあるのではないでしょうか。ヤエト先生の隠居生活はまだまだこれからだということで。

ともあれ、下巻では動きのありそうな第三の線を楽しみにしたいですね。何かあると即座に伝達官の消耗も構わず臨でご登場遊ばす皇女様にも色々期待したいところではありますが。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 00:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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