2014年06月18日

町民C、勇者様に拉致される(4)

町民C、勇者様に拉致される〈4〉 (レジーナ文庫) -
町民C、勇者様に拉致される〈4〉 (レジーナ文庫) -

満足感いっぱいの話でしたわ。開幕当初はただ町民Cのモブキャラ的な一人ボケつっこみを楽しんでいたのが、終わってみると壮大なアドベンチャーを読み終えたような満足感。これ、特に評判聞きませんけど、実はすごい作品だったんじゃないでしょうか?

この巻の話は、1冊まるまる、3巻の終盤から突入したクライマックスですよ。町民Cから始まり、神子、浮遊霊になり……と、短い間にジョブチェンジを繰り返してきた「町民C」(名前が固定されないので便宜的にこれで)でしたが、3巻でようやく自分の素性が判明した。そうして自分がどういう存在か知り、自分の役割を知ったことでついに、「町民C」は「私」になったんですよねえ。ちょうどここが、3巻のラストでした。

それと同時に、3巻では、「町民C」を中心に動いてきた深蒼の勇者や始原の勇者が、独自の動きを始めたようにも見えたんですよね。けどそれは、このシリーズの大半が「町民C」の一人称視点で描かれているからそう見えただけで、勇者たちは勇者たちで、もともとそれぞれの都合で動いてたんですよね。近づく世界の終わりに対して、彼らなりの解決策を考えていて、それは「町民C」の手の届かないところで進められてしまって。「町民C」がそれを知った時、すべてはもう手遅れで。勇者と魔王の戦いは、近づくことすら叶わず繰り広げられ、見守るしかできない中で終わりを迎えようとしていました。

災厄の元凶を一身に背負った魔王が勇者に倒される。それは確かに一つの解決の形ではありました。けれど、そのどちらの思いも知った「町民C」にとって、それは到底受け入れられることではなかったのです。そんな結末は嫌だと、もっといい結末があるはずだと。これはいうなれば、ラスボス戦後にさらなるどんでん返しが待ち受けていたようなものでしょうか。クライマックスはまだまだ終わらないというか、第二のクライマックスに突入したというか、佳境としては長丁場のはずなのにページを捲る手が止まる気がまるでしなかったことといったら。この巻は章が少なかったこともあり、話もひと続きでしたから、本当に止めどころが見つけられなくなっちゃったんですよね。

そうして、「町民C」が願う結末をもたらすのは彼女の思い。幸せな結末を欲する彼女の思い。彼女だけでなく、皆の思い。幸せを願うあらゆる人の願い。他人の話を聞かない勢いでの「町民C」の一人語りを中心に描いてきたこの物語が、あんなにも大勢の願いで満ち溢れたのは驚きでしたね。この急激な世界の広がりよう、クライマックスにふさわしい盛り上がりを演出してくれました。

そんな壮大なクライマックスの後、町民Cとしてのささやかだけど確かな幸せを感じているエピローグ。これもまた秀逸だったんですよね。最後の一文がもう、絶妙なんですよ。あのクライマックスを乗り越えてきただけに心を打つんですよ。いい物語が読めて幸せだったなあと、そう確かに思えるラストでしたね。

一言でまとめると、すごくいい話でした。もっと色んな人に読まれるといいんじゃないでしょうか? ラブは薄めですが、やさしいファンタジーの世界ですよー。

そういえば、イラストってあんまり注意して見てなかったんですが、言われてみれば、この巻の途中までとそれ以降の「町民C」には確かに変化がありますね。書籍化されたのが連載完結前か後かはわかりませんが、なかなか細かいことで。とはいえかなり大事なことですからね。こういうところもしっかり描き分けられてるのっていいですよね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 19:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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