2014年04月18日

彩雲国物語 漆黒の月の宴

離れてみてわかる主上のすごさ。官吏としての視点から見た主上の姿は、あまりにも大きいものでした。昏君な振る舞いがふりであったとはわかってましたが、ただの一石を投じただけと思っていた秀麗と影月の茶州派遣で二鳥も三鳥も落としていること、またそれが事前に計画されていたようであることを知ると、想像力の限界の遥か上を飛んでいかれたような、ぞっとするほどの格の違いを感じさせられるのです。そのことに唐突に気付かされる場面は、うまかったですね。州牧の仕事の大変さに気を滅入らせつつもいつもの面子で他愛ないやり取りをしながら、この分ならぶっ倒れそうなくらいには苦労するだろうけど最終的にはなんとかなるんだろうなーと気を抜いたところでガツーンと来ましたからね。相手は国の頂点たる王。わかってるつもりでしたが、秀麗が自身の夢を叶えた上で再び対したいと願う相手のいる高みは、想像していたよりも途方もなく距離が離れていたんですよね。死に物狂いで研鑽を重ねてそれでも辿り着けるかどうか。稀有な才能がなければ最終的にはどんな努力も無駄に終わってしまいそうな、そんな高み。恋だの愛だの、そんな情を抱けるか否かなんて問題は、打ちのめされた思いによって吹き飛ばされてしまいましたわ。現時点で抱ける感情があるとするば、畏敬。劉輝の気持ちに答えるのはまだ無理だと痛感させられましたわ。

とはいえ劉輝の方としては、離れ離れになってることを寂しく思いながらも、秀麗の成長を信じ、彼女ののびしろを測った己の眼力を信じているので、伝わってくる情報から心を慰めれているようなのですが。この辺、主上は相手を一個の人間として敬意を持って接しているようだというか。彼と秀麗の間では、遠く離れていても相手のことを思い合うことで、あたかも気持ちのやりとりができてるようにも見えるんですよね。まだまだ時間は掛かりそうだけど、どんどんこれからが楽しみな二人になってきてますね……と思いきや、そうも悠長なことも言ってられなさそうな気配が。どうなっちゃうのでしょ?

その一方で、朔洵の秀麗への気持ちは、やっぱり一方通行だったかなあと。秀麗がほしいという気持ちは十分に伝わって来ましたけど、彼女自身の気持ちを特に考えてはなかったんですよね。策士としてはあの茶太保の警戒を潜り抜けながら思いのままに茶州を混乱に陥れるほどの稀有な才を見せてはいたのですが、なにぶん本質が冷めすぎてて人を人と思ってなかったというか。こう言ってはなんですが、策謀の絡まない対人経験が希薄過ぎたんじゃないかなあと。初恋は叶わないとも言われますけど、それってこんな感じで独りよがりになりすぎて嫌われちゃうってことなんじゃないかと考えてみたり。遅い初恋だとか浮かれる前に人と対等に真摯に向き合う方法を身に付けるべきだったのではないか、となると台無しか。いや、でも無駄毛論争での朔洵は、お綺麗な容姿に似合わぬくだらなさが笑えてよかったんですけどね。時にあの路線で行けるようになればどうだろうかと思わなくもないですが、やっぱりキャラじゃないですかね。そもそも、あの場面の掛け合いのテンポは野暮ったさ筆頭の燕青あってこそのような気もしますし。

そんな朔洵と静蘭の差しでの向かい合いですが、あの場面はまたよかったですね。上辺は危険な賭け試合に興じているようでいて、実態はお互い相手を殺してやるって気に満ちた空間の緊迫感、たまりませんでしたよ。間の嫌味の応酬も、あそこまで殺伐としてるといっそ清々しいというか。前科のある朔洵はまだしも、昔はどうあれ今の秀麗といるときの穏やかさとは比べ物にならない憎しみをたたえた静蘭の、静かに燃える怒りが見られるとは。懸けるものがものだけに、まさに譲れない男の戦いだっだのでしょうか。基本的に一歩譲った立ち位置にいる静蘭ならではの戦場なのでしょうね。

恋の方面ではなんといっても香鈴ですよ。彼女のさりげない好意の表し方に悶えました。あんな、普通気付かないようなところで、でもわかっちゃうとによによ笑いが止まらなくなっちゃうくらいはっきりと差を付けてくれるのですから。こういうの、粋っていうんでしょうかね。ともあれ今回、表紙の感じのように暗い印象も受ける話でしたが、その中でこの子のこの破壊力はおそるべきものがありましたね。

あと、英姫おばあちゃんも。一歩を踏み出す決意を見せた若人相手に威厳とともにびしっと締めたと思ったら、最後に惚気てみせるとは。あれぞさすがの貫禄ですわ。そして、霄太師と話す場面を読んでいると、香鈴をして敵わないと言わしめたのも頷けるというか。これもやはり年季が違うということでしょうか。春姫と克洵にしろ、香鈴にしろ、いずれこの人のようになれるのだろか。楽しみにしていきたいですね。

藍・龍・蓮ー! が今回も格好いいと思えてしまって悔しい。まあ、要所でやっぱり殊勲賞ものの活躍してくれてたもんなー。即座にそれを見抜けたのは、天才と言われる所以の一つでしょうか。相変わらず彼の美意識は奇人変人のそれですけど、あんまり堂々としてるせいか別におかしくないんじゃないかと思えてきている自分がいたり。いや、もしかしたら賛美者が現れたせいかも?

そんなこんなで、なんとか茶州に着任できたわけですが、次はどんな話になってるんでしょうね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 09:35| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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