2014年03月09日

ヴァルデマールの使者 新訳 女王の矢

閉鎖的な村の生活から逃避するように憧れていた〈使者〉の素養を持つ少女として見出だされ学院で前途への希望に包まれながら成長していく流れはいいですね。〈共に歩む者〉の存在といい、夢いっぱいの面白さ。

いくつか浮上してきた問題が干渉しあうことなく、一つ一つ淡々と解決させていった流れはどこかアマチュア作家によるWeb小説らしさも感じたり。そうはいっても主人公タリアの喜怒哀楽に共感しながら読み進めれたのは、筆力ゆえか希望に満ちた物語の魅力ゆえか。

一番のお気に入りはジェイダスとの交流。〈使者〉やその候補生たちが集う学院であっても寂しさを募らせていた二人が音楽を通して出会い、孤独を忘れ、あっという間に他の皆との温かい交流の輪に溶け込んでいく。竪琴を弾いたり、歌を歌ったり、それらが実に楽しそうで。音楽の素晴らしさを感じさせられましたね。

それと、同じヴァルデマールの物語より『追放者の矜持』が既読であったことから、女王セレネイの当初の様子は意外でした。あちらではまだ〈使者〉としては見習いか新米くらいだったと記憶しているのですが、前途は明るそうな印象を抱かせる人だったはずなので、あれから何年、あるいは十年以上が経っているとはいえ、隠しきれない後悔の念やうまくいかないもどかしさを抱えた人になっているとはとても思えなかったんですよね。まあ学院での生活って、欲にまみれた人の悪意から離れた環境ではありますからね。完全に隔離されてるわけでもありませんが、タリアを見ていても、変に性格を歪められることなくのびのびと学び育っていける場所のようですから。そこでは将来を期待させるように見えても、実社会で揉まれていくうちにその素質が歪な形に変化していくこともあるでしょうか。その辺は、割と絆を築けていたように思えたアルベリッヒがなんとかできなかったのかとも思いますが、出版年的にはこちらが先のようですし、あちらはむしろこんなだったセレネイにもあんなだったときがあったということなのかもしれませんね。なんにせよ、それは今回まさにタリアの役目となったわけで。娘のエルスペスともども頼りにして懐いている様子は、微笑ましいものがありましたね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 02:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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