2014年01月13日

ルナティック・ムーン(3)

ルナティック・ムーン〈3〉 (電撃文庫) [文庫] / 藤原 祐 (著); 椋本 夏夜 (イラ...
【中古】 ルナティック・ムーン (3) / 藤原 祐 [文庫]【あす楽対応】

かつて振り切ったと思った桎梏が再び姿を現す。それは本当に過去を乗り越えられているかが問われる時。辛くて、苦しくて、けれど逃げることも叶わず、ただ少しでも早くその時が過ぎていくのを待つほかない経験は、どうにもできない無力感とともに体に染み着いてしまうもの。そしていったん体が覚え込んだ反応は、矯正してやらないことには改まるものではありません。あの頃の自分とは違うんだとどれだけ言い聞かせてみても、反射的に弱気になってしまう体に、心まで引きずられてしまうのですよね。これをトラウマと、言うかどうかは知りませんが、これを本当に乗り越えるには、乗り越えたと思える体験とそこからくる自信が必要になると思うのです。辛い過去の記憶が蘇っても、うまく対応することはできるんだと、そう信じられることがいかに心強いことか。

翻って今回のシオンはというと、辛い記憶はすでに過去のものであるとはいえ、明確にそれを乗り越えて今があるというわけではなかったみたいなのですよね。むしろその過去との決別は罪悪で以ってなされていたわけで。後ろめたさを感じつつも、旧知の人間ともすっかり縁が切れたことで、記憶を封印するようにして新天地での経歴を重ねてきていたように窺えるんですよね。そうであるからこそ、不意の過去との対面に驚くほどの脆さを見せてしまう。冷血といえるほどのウェポンとしての彼女の性質を知っていれば意外とも思える一面ですが、過去の経験は自信に繋げられるものではない上に罪悪感すら加わっているのであれば、つまり彼女の弱点がここにあったというわけで。

ドツボにはまりかけてたシオンに救いの手を差し伸べるのは、彼女を追いかける立場だったはずのルナ。動揺するシオンに対し、わかった風な口を利くことなく、深く立ち入ろうともせず、それでいて弱気になる彼女の心に発破をかける。「僕の認めるシオン=エシュは過去の悩み一つで折れるようなやわな女じゃないだろう」とでも言うかのように。それは、心の奥底まで許し合い頼り合える親友同士でのやりとりとは違うように見えるものの、互いに認め合い切磋琢磨しあう戦友として、二人の距離が少しずつ近づいてきてるのを感じさせられるものであり。ルナの稀存種としての能力の成長もあり、追いかけられているはずが追いかける側に回っているように感じだしてるシオンですが、ルナもルナで持ち直したシオンに対してはやはり追いかけている感覚を持ち続けているようで。つまりは互いの得意分野で支え合ってるということか。ある部分では追いかけているつもりだから相手を認め、ある部分では先行しているつもりだから無様を見せられないと思い、なんというか背中合わせで支え合う感じとでも言いましょうか。このボーイ・ミーツ・ガールもなかなかいい感じの絆になってきてますね。行く末楽しみなところで。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 09:51| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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