![ジハード 1 猛き十字のアッカ (集英社文庫) [文庫] / 定金 伸治 (著); 集英社 (刊) ジハード 1 猛き十字のアッカ (集英社文庫) [文庫] / 定金 伸治 (著); 集英社 (刊)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/615EY361B4L._SL160_.jpg)
ヘタレ従者男とツンデレ主人少女の組み合わせは大正義!
もうほとんどこれに尽きるという感じですね。第3次十字軍を題材に取った物語で、そも第3次十字軍といえばイスラーム側はサラディン、キリスト教諸侯側では赤髭王フリードリヒ、尊厳王フィリップ、獅子心王リチャードと歴代屈指の名将たちが戦いを広げる…………という感じなのですが、そんなことはこのさい脇においてしまって。切れ者だけどヘタレな従者とそんな従者にご執心のツンデレ主人のお約束のようなやりとりをひたすらニヤニヤと楽しむのが素直な楽しみ方ではないかと思うんですよ。それくらいにキャラが立ってますよこの作品。
とにもかくにもエルシード殿下のツンデレぶりときたらですね、それはもう神懸ってると思ってしまうほどの素晴らしさなのですよ。一言でいえば素直じゃない。それもヴァレリー限定(その他の人に対する態度が記憶に残ってないだけという可能性は否定しない)。ヴァレリーをいたく気に入ってるのはちょっと彼女の態度を見てればまるわかりなんですが、それを一度として素直に表現しやがりませんよ。それを象徴する場面はいくつもあるんですが、序盤の方だと、サラディンの陣営に加わりたいと願うもキリスト教徒であることから疑惑の目を向けられるヴァレリーを唯一信頼していたかと思えば、皆にその才覚が認められだすと途端にあれは大したことはないとか言い出したりとかいうところでしょうか。なんというか、人物も気に入ってるし、能力も誰より認めてるんだけど、他人にちやほやされるのが気に入らないという感じなのか。ヴァレリーは「わたしのもの」だから栄誉も苦難も賞賛もすべて自分から与えられなければならない、みたいな。この可愛らしい独占欲がたまらんのですわ。
そんなこんなでまだまだこの空気を楽しんでいたいなというというところ。その他のところでは、それぞれのキャラに軍略や武勇や諜報などの活躍できる得意分野が設定されていることから、もうエルシード軍が最強なんじゃないかという気もしてしまうんですよね。一般向けとしてバランスを整えたと言いますけど、整えきれてない気が。まあもとが少年向けと考えればなんのそのというところですが。
そんな感じで、リチャードとベレンガリアのコンビがいい味出してて油断ならなさそうな敵ですが、こののちの戦の趨勢はどうなっていくのかなというところで、次の巻も楽しみにしたいですね。