2013年10月16日

いばらの秘剣(1)竜の玉座

いばらの秘剣 1竜の玉座 (ハヤカワ文庫FT) [文庫] / タッド・ウィリアムズ (著); ...
いばらの秘剣 1竜の玉座 (ハヤカワ文庫FT) [文庫] / タッド・ウィリアムズ (著); 竹井 (イラスト); Tad Williams (その他); 金子 司 (翻訳); 早川書房 (刊)

これはまた、なかなか見ないタイプの主人公ですね。物語の主人公というのは主人公になるべく特別な生まれや育ちをしている人物が多いように思うのですが、この作品におけるサイモンは特筆することのないような城の使用人の一人で、付け加えるならば働き者には程遠い厄介者で。かといって不良というわけでもなく、白昼夢に囚われがちな子供っぽい少年ということで。なにか劇的な体験をすることになるとはとても思えない、それどころか誰かに頼らず自分一人で生きていく力があるかすら疑問を抱いてしまうような人物なんですよ。それが、偶然に偶然が重なるようにして重大な事件に巻き込まれることになってしまったわけですが、正直よく死なずに逃げ延びていられるなあと、どこかずれた感心の仕方をしてしまいます。

だって、サイモンときたら14歳と聞いても呆れてしまうくらいに稚気が抜けてないんですもん。半人前どころか小さい子にだって頼めるような仕事を任されてもろくに果たすことができないんですよ。庭の掃除を任せては途中で目に付いたものに気が逸れてあっちへふらふらこっちへふらふら、町までのおつかいを任せては財布を掏られてとぼとぼ帰ってくる始末。こんなありさまで、できる仕事があるものかっていう惨状ですよ。生まれは可哀想なところもあったようではありますが、だからといって周りから甘やかされた結果がこれでは、ねえ……。親身になって叱ってくれる人もいたとはいえ、それも一人だけだと避けがちになってしまいますから難しいところなんですが。

そんなサイモンですが、追手から逃げる中でちょっとずつ変化は見られてきてるんですよね。たった一人になっても生き続けられてるのがその証ではないでしょうか。しかも心強い味方もできたようで? 作中でその変化が起きていることを象徴していたような場面といえば、あの長く暗い地下のトンネルを這いずり回った場面でしょうか。自分が今どこにいるのかもわからず、どれだけの間そうしているのかもわからず、自分が生きているのか死んでいるのかすらもわからなくなるほどの暗闇の時は、読んでいるこちらまでもがいつしか悲観的になりついにはおかしくなってしまいそうなくらいに引き込まれる文章でした。ですが、それを越えたサイモンは、なにがしかの強さを手に入れたように思うのです。それはどことははっきりとわからないのだけれど、確かに彼を生かしているものだと思うのです。

その他、イライアス王子の人の変わりようを見るにつけてもプライラティーズがものすごく怪しいのですが、イライアス本人にも苦悩はあるようなので、冒頭の「警告」にもあったように予断は禁物ということを記憶に留めておいて、次の巻の展開を楽しみにしたいですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 09:24| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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