2013年09月30日

おこぼれ姫と円卓の騎士 将軍の憂鬱

おこぼれ姫と円卓の騎士 将軍の憂鬱 (ビーズログ文庫) [文庫] / 石田リンネ (著); 起...
おこぼれ姫と円卓の騎士 将軍の憂鬱 (ビーズログ文庫) [文庫] / 石田リンネ (著); 起家一子 (イラスト); エンターブレイン (刊)

前回ラストの重苦しい空気を受けて、それをすっきりきっちり取り払ってしまいたいところではありますが、覚悟は固まっていても経験が足りなければすぐにはまだまだ難しいところ。ではどうするべきか。それは簡単。経験値が足りないなら稼ぎに行けばいいのです。これまで手を付けていなかった内務に、外交に、積極的に関わって行くのです。レベルを上げるのです。

こうして、レティーツィアの初の外交使節の任が始まるのでした。もちろん、経験だけでなく実績を積み上げることも大切です。実績を積み上げればそれだけ玉座への道は盤石になり権力も強まっていきます。すると、ますます高ランクの仕事が舞い込むようになり入る経験値も増えていくのです。完璧です。実に誂えたようなレベリングコースが描かれるではありませんか。既に未来の王たちによるお墨付きもありますが、加えてなお優れた女王へ至る軌道が見えるかのようです。

そんな第一の外交は、まずは場慣れをするために無難な仕事から。ええ、いきなり無理難題に挑む必要などありません。パワーレベリングは強力な支援が得られてこそです。数ある選択肢から選べるのなら、準備もなくいきなりそんなものに挑むのはただの考えなしです。獅子の子だって親から突き落とされることはっても、自分から谷に飛び降りるなんてことはしないのです。

そのはずが、なぜか到着早々頭を抱えてしまうような事態が待ち受けているのは、まあ主人公に補正がかかるのは仕様といえるでしょうということで。なぜとぼやいている暇があれば手を打たねばとばかりにあれこれ奔走させられるレティーツィアでしたが相手もさる者。このままではやりこめられてしまうというところまで追い詰められてしまいもするのですが、そのときに開き直ってみせるのです、レティーツィアは。そして、その開き直り方がアレというのは、以前聞いた一言がすりこまれてるということなのでしょうか。納得できてはいなくても、そんなことにはならないはずと考えていると、案外、もしそうならここではこうするだろうなんて考えが過ぎってしまうものかもしれません。

本人としては後悔しきりの場面でしたが、こちらとしてはついにそちらに足を踏み込んだかと拍手喝采です。これまでも天然でたらしこんでるところがあって、十分その素養ありと見てましたが、当人が自覚的にそういう行動をとったというのは気持ちの上で区切りとなりうるポイントでしょう。しかもいきなりこれまでの守備範囲を大きく広げる大胆な出足です。これはその後、間を埋めるにしろさらに間口を広げるにしろ期待がかかるというものです。そのうえ、一歩目を踏み出したと自覚したら、そこで止まるどころか全速力で駆け出し始めてしまうのですね。敵手たるノーザルツ公の面前でやってしまった手前、納まりのつかないところはあったのかもしれませんが、取り繕おうとすらしないのがいっそ清々しいといいますか。この一冊の間に、二段三段とどんどん駆け上がってしまうのだから驚きです。

そして、そんな期待高まる未来の女王様は、ドタバタの中で当初の裏目標であった仲間の獲得も済ませてしまうのですからたいしたものです。獲得というより籠絡と言った方がよさそうな雰囲気すら漂っていましたが、1,2巻と読んできているとむしろこちらの方がもともとの素養に思えるのです。相手の懐に入りこみ、揺さぶりをかけて意識させ、ちょっと弱いところも見せて支えてやらねばという気にさせる。そうしてすっかりその気にさせたところで私に従いなさいと拒否を許さない――そもそもありえない――命令をつきつける。これは時に耳に痛い諫言もためらわない忠臣としての騎士の誘い方とは違うように思うのです。ただただ王に心服する部下を集めるやり方ではないでしょうか。当然有能な者を選んでいるのではありますが、むしろそうであるだけに寵臣の集まりを想像させるといいますか。

それに関していえば、デュークへの言葉もずいぶんひねくれた表現が薄れてきましたね。中途半端にひねくれた表現が残ってるだけにより一層アレっぽくなってるというか。こちらを見てても、本当に自重しなくなってきたと感じさせられるのであります。

そんなレティーツィアも子供のころの夢は実に可憐な女の子らしいものだったのですね。それがどうしてこうなったという感はありますがそれはさておき。その夢はもう諦めたと自嘲気味に語るレティーツィアではありますが、後世の王の言によるとそうでもないらしいんですよね。そちら方面でも期待していきたいところです。

それにしても、今回の騒動は本当に一体なんだったのでしょうか。ただのはた迷惑な一件だったようではあるのですが、そうだとするとレティーツィアの苦労と釣り合わないといいますか。どうも釈然としないものが残るのです。何かまだ裏があるのではないかと疑いたくなる、というより裏があってほしいという願望ですか。そういったものが抜けやらないのです。

次回は、今回のステージボスとの共闘イベント発生ということで、レティーツィアとしてはもう少し後に手を付けるはずだった問題とぶつかることになるようですが、果たしてどんな難関が待ち受けているのかと、期待してみることにします。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 10:05| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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