2013年06月25日

烙印の紋章(11)あかつきの空を竜は翔ける(上)

烙印の紋章 11 あかつきの空を竜は翔ける 上 (電撃文庫 す 3-25) [文庫] / 杉原...
烙印の紋章 11 あかつきの空を竜は翔ける 上 (電撃文庫 す 3-25) [文庫] / 杉原 智則 (著); 3 (イラスト); アスキー・メディアワークス (刊)

オルバに向かって吹き寄せる“風”が、ついに不可能を可能にしてみせた。皇帝グール・メフィウスとの対峙において、互いの持ちよった手札を比べてみると、オルバに勝ち目なんかなかったはずなんですよね。皇太子になり替わっている立場というのは、それが明るみに出るだけで即座に破滅を招いてしまう致命的な弱点であって。であるからこそ、この事実を知る人物はオルバにとって計り知れない脅威となったわけで。ダグやライラに頑として冷淡な態度や厳しい処遇を与えたのもそれほどの重大事であるという認識を裏付けていたんですよね。それなのに、皇帝にまでその切り札を握られてしまっては、それこそ絶対絶命。そのはずだったんですが、やってくれましたよ、オルバは。あの瞬間には絶望感に頭が真っ白になりかけたんですが、見事にひっくり返してみせましたよ。それを可能にしたのは“風”。これまで数々の快挙を成し遂げることで得てきた勢いが、ついに皇帝すら超えるに到ったということなんでしょうね。正直、皇帝の面前で並べ立てた言葉では、本物の皇太子であることは全く証し立てられてませんよ。しかし、それにもかかわらず、並いるメフィウス宮廷の人々に、彼が本物の皇太子だと公的に認めさせてしまったんですよ。これはとんでもないことですよ。「皇太子ギル・メフィウス」とはそも何者か。これまでなら、皇帝グール・メフィウスのただ一人の息子である、というのがその答えだったはずなのですが、それが、メフィウスの臣下たちが認めた「ギル・メフィウス」であるという風にすり替わってしまったのですから。こうなってしまうと最早、並いる臣下たちこそが彼が皇太子であることの証人ですよ。宮廷の群臣すべてを敵に回してまでオルバの素性を暴露することは、例え皇帝であっても、というより皇帝であるからこそできないことでしょう。この瞬間はまさに、オルバが起こし、シークらが後押しし、ビリーナらが障害を取り除いてきた“風”が、メフィウス全土に吹き渡ったと言えるのでしょうね。あの場の空気をつかんでのけたオルバの雄弁と気迫たるや見事、実に見事というほかない堂々とした態度でしたわ。

しかし、すっかり人の上に立つ貴族としての覚悟が身についてきてるなあと思っていたら、今回はさらに上の皇太子になる覚悟すら固めてしまったのにはもう圧倒されるしかなかったですね。もともと必要に応じて人の上に立つ者としての気構えを身に付けてきていたのですが、皇帝と真っ向から対峙することになったとき、それはついに一勢力の長としてだけでは不足で、皇太子その人であることが求められることになった。しかし、泣こうが喚こうが、何しようが生まれを変えられるわけはない。あわや命運尽きたかというところだったんですが、そこでさらに脱皮を見せてくれるからオルバという人物はとんでもない。本物のギル・メフィウスでなかろうと、オルバはすでに一部から皇太子としての支持を集めているのは事実。その上で、皇太子とは何者か。それは、次代の皇帝である。国権の第一位は当然当代の皇帝ですが、その皇帝が支持を失ったとき、その後を襲うのは皇太子なのです。であるならば、皇帝と対峙するにあたって、その権威の何処を畏れねばならないというのでしょうか。むしろ呑んでかからずして、どうして敵の懐に飛び込んで生きて帰ることができるでしょうか。ここまでの経験が、人々の後押しが、彼をどんどん高みに押し上げるんですよね。これまで何度もオルバの化ける瞬間というのを見せられてきましたが、何度見せられても圧倒されるしかないですわ。すごい男ですよ。

それにしてもオルバという人物は、シークやゴーウェンなど、昔を知る人物からはいつメッキが剥がれるかと心配されがちであっても、ビリーナなど「ギル・メフィウス」として出会った人たちに対しては煙に巻きつつ度肝を抜きつつ油断ならないが何か大きなことをしてくれる人物という印象を刻みこんできたように思うのですが、ここにきてパーシルやビリーナにも心配されるキャラになってきてるという。もうちょっと前からだったかもしれませんが、いずれにせよ、近しい人からはだいたい心配されるキャラになってきてますよね。相関図を作るとオルバに伸びる矢印は信頼よりも心配が目立つ、的な。どんどん相手が大きくなってきてるので仕方ないのかなという気もするんですが、この事実に彼が気付いたらなんと言うのか。うるさがりながらも信頼するやつらのことだからと案外すんなり受け入れちゃいそうな気もしますが。

とにもかくにも、次でいよいよシリーズ完結。東の大国アリオンが出張ってきててどうなっちゃうのかというところですが、オルバとゼノンとエリックが再会して同窓会なんぞしつつ追っ払ってくれるんでしょうか……って、なんでこんな投げやりなテンションなのか。自分でもよくわかりませんが、ともかくこの勢いのまま大団円を迎えてくれていることを期待しつつ。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 13:22| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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