2013年06月18日

タムール記(1)聖騎士スパーホーク

聖騎士スパーホーク―タムール記〈1〉 (ハヤカワ文庫FT) [文庫] / デイヴィッド エディ...
聖騎士スパーホーク―タムール記〈1〉 (ハヤカワ文庫FT) [文庫] / デイヴィッド エディングス (著); David Eddings (原著); 宇佐川 晶子 (翻訳); 早川書房 (刊)

スーパーチート幼女ダナエちゃん、Debut!

という感じで、『エレニア記』の続編にあたる『タムール記』が開幕しました。今回のお話は、エレニア記の舞台となったイオシア大陸を西に渡り、ゼモック国よりさらに西に広がるダレシア大陸になります……などと脇道について書き出すよりも、やはりダナエちゃんについて語らねばなりませんね。まだ6歳と年端もいかない童女なのですが、そこはさすがエラナ様(とスパーホーク)の娘、ちょっと気を抜けないくらいのとんでもない高性能ぶりを発揮してくれますよ。特筆すべきはなんといっても魔法の腕。いまさら言わずもがなな点ではありますが、この水準の魔法は何度見てもちょっと都合がよすぎるくらいに便利ですよね。戦闘にはもちろんこんな幼児を参加させるわけにはいかないのですが、荒事以外での貢献はこの巻だけでさえ計り知れないものがありますよ。スパーホーク以外は気付いてすらいないとはいえ、地味にめちゃくちゃすごいことやってくれてます。しかも、スパーホークにも娘としてしっかり懐いてて、愛するお父さまのたっての頼みなら結構すんなり聞き入れちゃうものだから、ありがたみが薄れてしまいそうなほどの大盤振る舞い。こうなると、必要な時だけ陰から援助の手を差し伸べるような形だったフルートちゃんはすっかり過去の人になってしまいますね。……うん? まあ気にしない気にしない。

ダナエちゃんの魅力はそれだけに留まらないのですよ。やんちゃさの抜けきらないナイスミドルなスパーホークの娘、というのはどうでもよく、権威とか愛嬌とか色々使って周囲をいいように振り回してのけるエラナ様の娘らしく(まあそれも実は関係ないんでしょうが)、周囲を振り回してなおかつそれを仕方ないなあと済まさせてしまう可愛らしさがあるんですよね。一番の被害者はもちろんスパーホークなんでしょうが、運命を持たない者の代償というか役得として甘受してもらいたいところ。だんだんとタレン少年がお仲間に加わりつつあることですし。盗賊からも教会騎士からも女王からも期待されて、将来どの方面に進むことを選ぶんだろうなと楽しみな少年ではありましたが、まあ実際『エレニア記』のエピローグの時点で本人の預かり知らぬうちにほぼ決定づけられてしまってましたよね。そして、スパーホークの見たところ、この巻で自ら決定打を入れてしまったとのこと。当人は知らぬこととはいえ、まあ目を付けられたが最後というところなんでしょうね。合掌。こちらとしてはひたすらニヤニヤと行く末を楽しみにさせていただきたいと思います。

今回はエラナ様の出番も多いですね。神々との戦いも待ち受けていそうな旅に同行するのは危険極まりないのですが、そこはエラナ様、一度こうと決めたらスパーホークだって総大司教だって止められるものじゃありません。娘が生まれて6年になるといってもスパーホークとの仲は良好どころか、スパーホークが任務で側を離れているとどんどん機嫌が悪くなってくるというお熱さ。機嫌の悪いふりでスパーホークに甘えかかる駆け引きのようなやりとりは、それはもういいものでしたね。やはりエラナ様は素晴らしいお方です。

主役級としてはそんなところですが、だんだんとその周囲でも恋の季節が訪れつつあるのが面白さを増量させてますね。一番に挙げるべきはやはりクリングでしょう。『エレニア記』時代からミルタイにぞっこんで、とはいえ戦士であることに誇りを持ってるミルタイに結婚する気なんてあるのかなと思っていたところ、あれから6年ほどにもなっているというのにいまだ求婚中という息の長い攻防ぶり。それでもあきらめず遠い草原の地から何ヶ月かに一度、律儀にミルタイのもとに現れ続ける根気には頭が下がる思いがしますよ。本当に本気なんだなあ。厄介な女に惚れてしまったもんだと憐れみに似た気持ちすら抱いていたのが恥ずかしいですね。というか、ミルタイの方でも、まったくのれんに腕押しなのかと思えば、クリングが求愛の言葉を告げにやってくるのを楽しみにしてもいたようで、案外(というと失礼か)ロマンチックなところもあったものですね。でもそうとわかると、この6年程って、もう付き合ってたと言ってもいいくらいの状態だったのかな。恋は結婚するまでが花とも言うとか言わないとかですし、こういう関係もまたいいものでしたね。

同じく恋の話題でダークホースとしては、ストラゲンですね。まさかこいつにいいお相手が見つかるとは……。しかもこのお相手との関係、お互いがお互いのことを気に入らないようでありながら、それほどムキになる相手がその一人だけというのがより相手を特別視してるのが伝わってきていいですよね。本人たちには否定されそうですが、普段のひねた態度やおっとりした態度との歴然とした違いは、どう取り繕ってもごまかせるものじゃないですよね。ラブコメしてますねえ。いいものいいもの。

シリーズ全体を通しての大きな話としては、まだちょっと見えてこないことが多くてなんとも言えないところ。タムール帝国入り以降に大きく動き出してくれるのでしょうか。なんにせよ次の巻も楽しみなところです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 17:57| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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