2013年06月03日

おこぼれ姫と円卓の騎士 女王の条件

おこぼれ姫と円卓の騎士 女王の条件 (ビーズログ文庫) [文庫] / 石田リンネ (著); 起...
おこぼれ姫と円卓の騎士 女王の条件 (ビーズログ文庫) [文庫] / 石田リンネ (著); 起家一子 (イラスト); エンターブレイン (刊)

うおう。殺伐とした雰囲気が漂っておる。1巻を読んで凛々しい王女様がぐいぐい引っ張ってくれる爽快な物語が幕を開けたと思っていたら、ごく近しい兄弟や騎士たちに対しては男前なくらいに振る舞ってくれる未来の女王レティーツィアであっても、国内の勢力争いの前では微力に過ぎなくなってしまうのですね。そういえば、もともと王位継承権を巡って争っていたというフリートヘルム兄の派閥とグイード兄の派閥は、内戦を起こしかねないくらいに激しく水面下で争っていたんでしたっけ。そして、レティーツィアのもとに継承権が転がり込んできてからは、三派閥ですくみ合う形になってたんでしたか。それでも、対外的には険悪でも実際には、レティーツィアを介してとはいえ、言うほど仲が悪くはなさそうな、むしろそれぞれお互いよりを戻したがってるかのような親近感すらあったのですが……。それが、なんなんですか、まるで出口の見えないこの陰鬱とした暗闘は? 今回、直接的な衝突は一切起きてないんですよ? でも、抜け出せない泥沼にはまっている状況は、なまじ血が流れるよりもきついですよ。何かが起これば、それがどれほど悲惨な出来事であれ、そこからなんとか事態改善へと流れを変えるきっかけも見いだせるかもしれませんが、ここの火種は何の変化もなく燻ぶり続けているんですよ。問題の構図は見えてきましたが、解決の糸口はまだ全くつかめていない状態なんですよ。派閥の代表者であるといってもフリートヘルム兄やグイード兄はしょせん神輿。担ぎ手たちが諦めなければ争いの舞台から降りることはできないんですよね。彼ら貴族たちだって家門の盛亡がかかっていますから、中途半端なところで退くわけにはいかないでしょうね。いくら後押しする王子殿下たちは争いたくないと思っていても、一蓮托生の身となってしまっているからにはどうしようもないのでしょう。これには前提として、水面下の闘争を繰り広げる三大侯爵家の勢力が王家にとっても侮れないものであることが関わっているのではないかと思いますが、それにしてもレティーツィア達を出口の見えない迷路に閉じ込めているかのような構図を作り出してみせるのは、やはり権力への執念ですかね。その貴族たちがまだ一度も姿を現していないだけに、余計に敵の巨大さを感じます。息がつまりそうな状況が続くとしんどいですが、こういうのもまたいいんですよね。

そんな状況でも、レティーツィアは後の諡に相応しく忠実な僕候補を増やしているのはいいものですね。今回はあらすじ通りグイード兄が……というか、あれ本当だったのかよ! サラッととんでもないこと言ってやがった。冗談のわからない奴というこの人の評価は、お堅いという意味でもあれ、とにかく真面目な人柄の現れでもあると好意的に解釈していたのだけれど、ただユーモアを解さない堅物なだけだったかー。いや、うん、わかってはいたはずだったんですよ。でも、この人のは本気で洒落になってない。知らずには先に進めないことだったんだとは思うけど、知ったことで泥沼感増しましたよね。非情になりきる覚悟を決めるレティーツィアも、それはそれで凛々しく素敵でしたが、愛する兄たちに本心ではない冷酷な要求を突きつける姿は痛ましくもあり。ここの兄妹は三人ともそうした事情に束縛された付き合いをしてきていたとは思いますが……。ともあれまあ、結局、グイード兄も妹のこと好きでしたとわかったので満足ではありますよ。ちょっと剣呑ですが、共犯関係ですかね。いいものです。

そして、レティーツィアの中で高まるデュークの評価。デュークはそれでも不満そうだけど、フリートヘルム兄が言う通り、素直に身内を褒めないレティーツィアにしては相当な評価ですよね。信頼してるからデュークの前では弱ってるところも隠さず見せるようになってるし。この二人、なかなかニヤニヤできる関係になってきましたね。男女の関係には程遠いですが。というか諡が諡なので、近づいたり遠ざかったりしながらもこのくらいの距離感を維持してくれるのがいいような気もしますが。

そんなデュークと“すっごく仲がいい”関係になったレオンハルト殿下も気になるところですが、彼に焦点が当てられることはあるのでしょうか。

そんなこんなで、最後の方でささやかな涼風が吹くも後味の悪さは隠しようもない展開だったので、こんなところで読み止まってはいられないと思わされたシリーズ2冊目でした。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 17:57| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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