2013年05月18日

天冥の標(6)宿怨 PART1

天冥の標6 宿怨 PART1 (ハヤカワ文庫JA) [文庫] / 小川 一水 (著); 早川書...
天冥の標6 宿怨 PART1 (ハヤカワ文庫JA) [文庫] / 小川 一水 (著); 早川書房 (刊)

やっぱりこわいですよ、このシリーズ。前の巻の話のせいでシリーズ全体にSF的ホラーな雰囲気が漂っているように思えて頭から離れなくなってしまってますわ。技術水準的には確実に進歩しているのだけど、確実に袋小路的な1巻の状況へと道が続いてる。人類の文明そのものを乗っ取られる危機すらどんどん現実味を帯びてきている。この巻も出だしこそ人類の話であり、また以前までのように科学技術の発達した未来世界の話を楽しめるのかと思っていましたが、ところどころに不穏な影が見え隠れするのでそのたびに思考が凍りつかされましたよ。鍵を握るのはやはりダダーのノルルスカインになるはずなのですけど、彼にとってはここが駄目ならまた別の文明圏に行くだけの話ですし、それにもう半ば諦めの境地に達してもいるんですよね。人類にとっても“彼ら”の協力の方が一見、はるかにありがたいものであるのはわかるのですが、背景を知るとそこにはただ恐怖しか感じられませんね。

とりあえず、5巻の話からは約150年後の話。巻末の年表によると1巻の話まであと300年程と、だんだんとその時が近づいてきているのが感じられます。同じく巻末の用語集を見て以前の話を振り返ってみても、1巻の話につながる単語がだんだんと増えてきているように思います。つまり、メニー・メニー・シープの植民市が築かれるのも、もうまもなくのことなのでしょうね。しかし、1巻の最後の最後のページを思い出してみても、どうも救世群と非染者という対立構図が出来上がりつつあるように思いますね。そして救世群が“彼ら”による援助を受け入れているのを見るに、これから“彼ら”とノルルスカインによる代理戦争の形に発展していったりするのでしょうか。そう考えて1巻の話を振り返ってみると、人類側にも意外に希望があるようにも思えますが、ラストがラストなんですよね。やはり、戦うとしたら相当厳しいものになるのでしょうね。

この巻の救世群で一番の重要人物といえば、非染者との対立路線を推し進める副議長のロサリオなのでしょうが、彼についてはまだ保留にするとして。彼に次ぐ人物となれば、イサリとミヒルの姉妹でしょうか。二人ともに次期議長候補として救世群の人々から注目を浴びる立場にありますが、思想にはっきりとした違いがみられるようになってきているのが面白いですね。おおざっぱに言ってしまえば、イサリは非染者との協調路線を、ミヒルは対立路線をといったところ。イサリがそう考えるのはひとえに非染者たちとの出会いの影響。公務でとある人工星を訪れた際に星のリンゴを探す冒険を一緒にした人たちの内の一人の男の子に好意のような感情を抱いてしまったがゆえのもの。というか、こんなところでタック・ヴァンディ氏がこつこつ育てていた明星が登場するとは思ってませんでしたよ。あれには、時間的なスケールもあって軽い感慨を催させるものがありましたね。話を戻して、一方のミヒルのそれは、宗教的な幻想を自分の身に重ねているような節もありますね。どちらの思想も救世群全体を巻き込むものでありながら、根本的なところでは自分の満足のためにそれらを志向しているように思えるところも面白くあり。とはいえ、現状の救世群内部の世論としては、圧倒的にミヒル路線が主流派なのでしょうが。

というわけで、巨大な恐怖感をもたらす存在の跳梁があり、一方ではそれを知る由もない人々が今を生きる姿があり。予断を許さない展開ですが、それだけに続きが気になるところでもありますね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 15:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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