![針の魔法 ~スワンドール奇譚~ (ビーズログ文庫) [文庫] / 剛 しいら (著); 凪かすみ (イラスト); エンターブレイン (刊) 針の魔法 ~スワンドール奇譚~ (ビーズログ文庫) [文庫] / 剛 しいら (著); 凪かすみ (イラスト); エンターブレイン (刊)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/610uMvVOkCL._SL160_.jpg)
このヒロイン、裁縫や服のデザインの仕事を心の底から楽しんでる様子が随所にうかがえて、見ていて気持ちのいいキャラでしたね。やりたいことがはっきりしていて、そのために目指すべき仕立師という目標点が明確になっているものだから、地味な下積み時代もしっかり学べることを学んでいっているし、愚痴一つ言わないから好感が持てるんですよね。まあそれでも疲れて元気がなくなっちゃうことはあるんですが、そんなときの清涼剤というか特効薬になった、ヒーローであるハリィとの交流の様子が、またいいものでした。被服工房で働く身であるマリアンネとしては逢瀬を重ねる時間も取れないために、ハリィから勧められた図書館の本に手紙を挟んでやりとりし合うという、もどかしいような距離感。疲れた時などに手紙を読み返して励まされるマリアンネを見ていると、なまじ直接会わないからこそ文面からハリィの心情が伝わってくるようで、なんだかあったかい気持ちにさせられました。恋仲になっているともいないとも取れる微妙な間柄でのこのやりとりは初々しくて微笑ましかったです。そんなマリアンネが被服工房のドレス部門で初めてデザインを担当することになったのがハリィの妹のドリィでしたが、片足を悪くしたことからへそ曲がりな性格になっていた彼女に最高の“戦闘服”たるドレスを仕立てあげて、闘志を取り戻させてみせた流れは見事の一言。ドリィの恋がうまくいったかどうかは想像に任せるしかないようですが、マリアンネとハリィがいい雰囲気になってる裏で彼女もまずまずの雰囲気になってそうに見えたので、きっとうまくいくのでしょう。
一話完結ながらも同じ世界の話が続いているということで、記憶はかなり薄れてましたが、引っ張り出してみれば前の巻とのつながりがしっかり見えるところがあちこちにありましたね。前巻よりも前の時代なのか後の時代なのかは、ちょっとよくわかりませんね。一応、前巻の二人のうち片方は登場したと思うのですが、まるで判断材料にならないという。こういうところは不老不死も考えものですね。完全にこっちの都合ですが。それはそれとして、次はどんな話になっているのでしょうね。