2013年05月06日

夢の上 サウガ城の六騎将

夢の上 - サウガ城の六騎将 (C・NOVELSファンタジア) [新書] / 多崎 礼 (著)...
夢の上 - サウガ城の六騎将 (C・NOVELSファンタジア) [新書] / 多崎 礼 (著); 天野 英 (イラスト); 中央公論新社 (刊)

アーディン以外はあまり描かれるところの多くなかったケナファ侯に仕える6人の士隊長たち。彼らを中心にまたこの世界のお話を読むことができるのかと期待し、どんな話なんだろうかと思いながら読み進めてみると、なんと姉でした。……あ、これじゃ言葉が足りませんね。一人ひとりその生い立ちを語っていく話になっていたのですが、そこで判明した6人中3人が姉持ちという驚愕の事実。お姉ちゃん成分はここ最近ちょっと不足がちだったので不意打ちとはいえこれでもかとばら撒かれてわたしゃ感謝感激でございます。

「世界で一番速い馬」。精悍な体つきと女言葉という気色の悪い組み合わせを誇る第四士隊長シャロームの話。かつて気弱だったシャロームとは対照的に、男勝りの才気を持ちながらも卑しい存在とされる女に生まれたがゆえに周囲から認められずに追い詰められていったお姉ちゃんの悲劇がなんともいい感じでした。貧乏貴族の出世の糸口になることだけを期待され、それが果たされずに年月だけが過ぎ行くたびに犠牲を受け入れる建前としての貴族の誇りに囚われていく様が哀れを誘いましたね。

「天下無敵の大盗賊」。盗賊出身の若き双剣使い、第五士隊長ハーシンの話。家族のように育った義賊グループの姉貴分に想いを寄せるハーシン少年の初々しさが微笑ましかったですね。初恋が叶わないのはお約束ということで。リーフ姉の想い人を知った瞬間の唖然とした様子がたまりませんでした。

「汝、異端を恐るることなかれ」。変人とも称される名医である、第六士隊長トバイットの話。ヒロインはミアかと思えばアルカスだった感。さすが変人はこんなところまで変わり者である。

「あの日溜まりの中にいる」。無口だが誰よりも人の心の動きに敏感な第三士隊長イヴェトの話。この一冊で最高の姉萌え話はどれかとなれば間違いなくこれでしょう。母の死後、祖父に引き取られることになったイヴェトに年上ぶって狩りのなんたるかを教え込んだり、イヴェトが一人で釣りや狩りに出掛けようとすると初めての時はともかくすっかり慣れてからでも「心配でついて来たんじゃないからね」なんてテンプレ発言をかましてくれつつも付き添ってみちゃったりするのがもうかわいくってしょうがなかったですね。寒い冬の夜にイヴェトからお姉ちゃんの寝てるところに潜り込んで一緒に寝たりとかもうたまりませんね。懐かしそうに語られるそれらの話の、聞いてるこっちまでぽかぽかしてきそうな雰囲気といったら。とにもかくにもたいへんに素晴らしい姉小話でした。まあ、猫なん
ですけど。

「約束」。子供好きな柄も熊のような強面に悩む第二士隊長ラファスの話。姉じゃなくて妹だったよちくしょうめ。病弱で家族に負担をかけ続けている申し訳なさから、家族に当たるような発言を繰り返してしまっていた弟のファヒルに生きる希望を持たせたのがアライスだったというのは意外でしたね。というか、アライスはなにをこんなところでフラグなんか立ててるんですか。まあ後にちゃんと身を固めてくれたみたいなのはめでたいことですが。しかし、アーディンが結婚を勧めるというのは、なまじ叶わなかった彼自身の過去があるだけに結構な説得力になりますね。

「手紙」。言わずもがなの色男、騎士団最強を誇る第一士隊長アーディンの話。シリーズ1巻にてすでに生い立ちは語られており、改めてどんな話が語られることになるのかと思っていましたが、さらに過去、そして未来の話というセットできましたが。確かに、彼の父親については、本編ではよくわからないまま一方的に悪者にされてしまってましたが、こうして遡って語られてみるとまた複雑な過去があったんですね。他のどの章をおいてもこの話は本編の後に読んでおくべきでしょう。そして未来の話を読んでて思うこととしては、やっぱり罪作りな男ですなあというところで。

全編を通して過去を振り返るという形で語られていたわけですが、大団円を迎えた安心感があるからこそかつての苦難の時代を楽しむことができるんでしょうね。いつか希望が叶うと信じて生き抜いてきたからこそ、平和を享受できる今がある。その対比が、さまざまな思いを胸中に去来させていきますね。本当に、いいシリーズでした。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 00:54| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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