2013年05月01日

禁断の花嫁 兄王に愛されて

禁断の花嫁 兄王に愛されて (ティアラ文庫) [文庫] / ゆきの 飛鷹 (著); 成瀬 山吹...
禁断の花嫁 兄王に愛されて (ティアラ文庫) [文庫] / ゆきの 飛鷹 (著); 成瀬 山吹 (イラスト); プランタン出版 (刊)

素晴らしい一冊でした。なんかもう思わずExcellent!とか口走っちゃいそうな(実際口走ってたかも?)傑作でした。

許されない兄妹の愛。その禁忌を犯すがゆえの背徳感あふれる愛の姿が情感たっぷりに描かれていくのが素晴らしい。いけないとは思いつつも兄王に惹かれる心を忘れられず、触れられ愛されるたびにいよいよ禁断の愛に縛られていく淑雪の心理をなぞっていると、こちらまで見てはいけないものを垣間見てしまっているような、えも言われぬ興奮を覚えてしまいました。そして、兄の祥紀に迫られて、許されないとわかっていても愛する人と一つになる幸福感に押し寄せられ他の何事も考えられないほどに溺れいってしまう場面の淫卑でいて犯しがたい艶めかしさといったら。兄妹愛を描いた作品としても素晴らしく、その背徳感をしっかりと含ませた情交の場面も濃厚で素晴らしくと、こういうのが読みたかったという期待に応えて余りある一冊でしたね。

以降もひたすら褒めちぎっていきたいと思うのですが、どこから書こうと迷うくらいなら前から順に書いていってしまおうということで、まずイラスト。特にカラーなんですが、これがまた好みの雰囲気なんですよね。白い肌に濃い色の髪がこぼれ落ちている様は、なんとも言えない艶っぽさを感じさせてくれます。

ページをめくっていくと目次が来ますが、ずらりと並ぶ章題がこれがまためくるめく背徳と愛欲の世界を想像させることといったら。作中の言葉選びでもそうなんですが、中華な話であることも加わってか、漢語や和語の表現のみを使って描き出されているから匂い立つばかりの妖艶な雰囲気がありありと伝わってくるんですよね。これもまたたまらない魅力でした。

そして話が始まると、まず本編より十年前の前日譚に序章と第一章という二つもの章が割り当てられていた(序・終合わせて全十章構成)のですが、この過去が全編通して非常によく効いてるんですよ。淑雪の心に禁忌というものを刻みこみ、それと同時に忘れがたい甘美の味を教え込んだ一連の出来事。それは、淑雪にとっては全ての原点であるからこそ折に触れて想起され、背徳と幸福という相反する二つの感情を湧き起こさせる。いけないとわかっていても愛する兄と一緒ならどこまでだって堕ちてもいいという気持ちでいっぱいにさせられる。この出来事を踏まえているからこそ、兄から離れられなくなっていく運命に一片の諦観もなく無上の幸福すら感じてしまう心理が真に迫って見えるんですよね。

そして本編が始まると、忌むべき不義淫蕩が幕を開けることになるのです。思えば淑雪も最初は兄の花嫁になることを望むだけの純な思いの少女だったでしょうか。しかし、10年ぶりに目見えることになると、途端にそれだけでは治まりようもない疼きを覚えるようになってしまうのが魔性の目覚め。それまで温めてきた想いもあれ、一目ですっかり兄の虜になってしまった淑雪の燃えたつような恋情は、すでに心酔する相手に対するそれでしたね。祥紀に視線を向けられるだけで感じ、声をかけられるだけで体を火照らせてしまっては淫乱のそしりも妥当というもの。けれど、穢らわしいという非難は、禁忌と幸福を一括りにして記憶する淑雪にとっては歯止めになるどころか後押しになってしまうとなれば、決して後戻りすることのできない運命だったのでしょう。ひとたび体を重ねてしまえば、ともに破滅を迎えてもいいと思える人と一つになる幸せを知ってしまえば、背徳感を覚えるがゆえに一層激しく想いは燃え盛り、深みにはまればはまるほどに増していく充足感には飽和を迎える気配などまるでないんですよ。祥紀が覇道を行く過程で幾人もの流血を目にすることになるのですが、それすらも淑雪の心がより強く祥紀に縛られていくことにつながってしまうとは。それはさながら政争にこと寄せた二人の愛を確かめる儀式のようで、血生臭さの中にすら腐爛した果実のようななんともいえない香りを漂わせていて。もはや兄以外を愛せないと悟った淑雪と、彼女を手許から離す気など微塵もない祥紀との関係は、いつ破滅が訪れるものとも知れない危うい愛でありながら、そうであるがゆえにその瞬間を享受する二人の幸福感に満ち満ちていて、たまらない魅力を感じるものなのでした。

また、二人が体を重ねる場面も妖艶で扇情的なことといったら。これについても色々書きたいところではあるのですが、その魅力を伝えるだけの言葉を持たないので、悔やまれますがこんなところで。

返す返すも素晴らしい一冊でした。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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