2013年04月18日

幼女戦記Tuez-les tous, Dieu reconnaitra les siens (作者:カルロ・ゼン)

Arcadiaより。本編完結済み。まだ時々番外編が更新されてるようです。

近代の軍人ネタは合うものがあるなあと実感させられました。地味に一番ツボにはまったのは、毎話のように挿まれる登場挨拶的な自己紹介。調子としてはシニカルだったりハイだったり、ぼやき調子だったり可愛らしくだったりと様々なのですが、いかにも軍人っぽい感じがしてそれだけで作中世界の雰囲気を肌で感じ取れるんですよね。転生物なので年の割に大人びてたりしますが、むしろその辺のギャップがいいところであり。読んでくうちにあの「ターニャ・デグレチャフであります」という挨拶が癖になってくるというか。お気に入りキャラは最後までTS転生幼女ターニャ・デグレチャフ(中身はリバタリアンなリーマン)でございました。

話の流れとしては、基本的に世界大戦の知識を有するターニャの部隊の周りでは敵を圧倒しつつ、それでも戦略的にはだんだん追い詰められていくという末期戦のそれ。孤軍奮闘する爽快感はいいものですね。というか、その辺の流れは上層部とターニャとの壮大な勘違いの応酬の結果だったりするのが面白いというか。牽制程度の効果を上げさせるつもりで、けれどうわべは勇ましい命令を下したら本当にその通りの戦果を挙げてきちゃって上層部びっくり。ターニャとしても自分の命が第一だから仕方なく、けれど上層部の評価を落としたくはないからきっちり指令通りに仕事を果たしてきたら戦争狂と思われてどんどん第一線に送られちゃってびっくり。そんなスパイラルがどんどん回っていって敵味方ともに恐れられる存在になっていくのが面白おかしくもあったり。とはいえ、戦争が泥沼化していく中でのターニャの徹底したリバタリアンぶりは狂気と紙一重だったようにも思えます。でも、生還率は高いので部下からの評判はいいんですよね。航空魔導大隊のメンバーなんて、最初はターニャとしても育成は無理だからとしごきにしごいて振り落そうとしたらいつのまにか一人前の下士官たちができあがってたりして。その後もターニャ隊の洗礼を受けた古参兵たちの絆はいいものでした。ラスト付近とかエピローグ的な話ではもうね、すっかり心の故郷みたいになってるんだなあと感じさせられてやばいです。

ここからさらにネタばれ的な話を。

この話は大雑把に言ってしまえば末期戦物ですが、現代知識無双物でもありました。自分はそれほど知識がないのでよくわからないのですが、作中世界は世界大戦期の欧州に似た情勢になっていたようで。ターニャ(の中の人)にしてみれば、当時の細かな戦いまでは覚えていないといっても、一士官では知りえないそれぞれの陣営の内情や当時はまだ考案されていなかったはずの戦術等の知識はあるので、一人だけ有利な立場にはあったわけですよね。とはいえ、軍の戦略立案にまで関われる立場にはないので、帝国の敗色を覆すには到れなかったのですが。でも、その知識を全力でリバタリアン的な方面に発揮していく展開は痛快ですらありましたね。末期戦物なので最終的には破局を迎えるかと思いきや、ターニャ個人としては結局最後まで勝ち続けてしまったというのは、その辺のアドバンテージがゆえに為せたことでしょう。敗北の未来を避けえないのなら訪れる戦後によりましな形で国家を残せるようにしようという発想は、現代知識があってこそ。しかし、その方針で帝国の望みを託すことができたのは、ターニャの最大の理解者であり帝国軍中枢部の立場にあったゼートゥーアによるバックアップがあったからとも言えるでしょうね。末期戦気分を楽しむなら生粋の同時代人であるこのゼートゥーアに肩入れして読むのがいいでしょうか。敗北が決定した中でも泣き言を漏らす暇とてなく、刻一刻と近づく破局に対処したり、最後には自己犠牲的に帝国の罪を背負っていったりなど、泣かせてくれる人であります。終盤から合言葉のように語られる「ライヒに黄金の時代を」という言葉が、エピローグ的な話を読むにつけて胸に迫ってくることといったら。一番最近更新された若き日の話といい、知るにつれてどんどん惜しまれる存在になっていく人ですよ。でも一番のお気に入りはやっぱりターニャ・デグレチャフちゃんなのでありますが。

おしらせによると、書籍化も予定されているようで。感想での改善要望を考慮しつつ改稿しているとのことなので、そちらも楽しみなところですね。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 20:59| Comment(0) | TrackBack(0) | Web小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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