2013年03月09日

まおゆう魔王勇者(5)あの丘の向こうに

まおゆう魔王勇者 5あの丘の向こうに [単行本] / 橙乃ままれ (著); エンターブレイン (刊)
まおゆう魔王勇者 5あの丘の向こうに [単行本] / 橙乃ままれ (著); エンターブレイン (刊)

ようやく「丘の向こう」を見ることができました。そうか、これが魔王と勇者の目指したものだったのか。内政物としての要素があったので歴然とした違いが現れるのかとも思っていましたが、あまりやりすぎると丘どころか海の向こうに辿り着いたことになってしまいますか。形としては前巻まででほとんど出来上がっており、この巻で残るは仕上げと形が作り上げられていく過程で起こった混乱の収束。これまで出てきた多くの人々の願いの果てに辿り着いた地点は、それまでの流れを追ってきたがゆえに意義深いものに感じられますね。その後的な最後の章の書き方はゲームのエンディングみたいで、もうこの話も終わりなんだなと思うとなんだか悲しい気分が込み上げてきたりもしましたね。

そんな気分はごまかしてしまうべく、脇道にそれたことを書いてみることにしましょう。念願の「丘の向こう」を目にすることができてやりきった感のある魔王と勇者でしたが、そんな彼らを見ていてふと浮かんだ疑問があります。この「丘の向こう」って、他の人ともビジョンを共有していたものなんでしょうか? 4巻以前の内容はうろ覚えになってしまっているのですが……。とりあえず整理してみると、そのビジョンを最初に提唱したのは魔王であり、ともに推進しだしたのは勇者です。そして、彼らに接する人を通して感化の伝播が起こっていき、ついには大きなうねりとなって世界に変化がもたらされました。この時期を特徴づけるだろう思想にまで至ったと思われるビジョンなので、多くの人が何がしかの影響を受けただろうとは考えられるのですが、魔王と勇者と同じイメージを持っていた人となると、女騎士やメイド長などごく限られたキャラだけだったように思えます。しかし、それでも作中のキャラは、そのほとんどが、そうでなくとも南部連合陣営の関係者たちは、「丘の向こう」を目指していたようにも感じられました。それはなぜかと考えてみると、彼らには彼らなりの目的、「丘の向こう」があったということになるのではないでしょうか。例えば、メイド姉にしてみれば“虫けら”から人間になることでしょうか。青年商人なら新商業圏の誕生による商機の拡大でしょうか。その他にも、キャラごとに固有の理屈、さまざまな思惑や目的があったことでしょう。それら数々の「丘の向こう」のすべてを呑みこんでしまう程の壮大なビジョンを打ち立てていたのが魔王と勇者だったと、そういうことだったのではないでしょうか。最も遠大なビジョンであっただけに、魔王と勇者の「丘の向こう」を見れたことによる達成感が大きいのですが、多くのキャラクターたちがそれぞれの「丘の向こう」に辿り着いてもいたのでしょう。時代の変化が次第に魔王や勇者の手から離れていったのは、魔王や勇者とは必ずしも重ならないものの、彼らもまた彼らの「丘の向こう」を目指しだしたことの現れだったのではないでしょうか。そんなことを考えていると、「丘の向こう」はあらゆる人の心に存在してるという、そんな話だったのかなあなんてことも思えてきます。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 15:01| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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