2013年03月02日

そして花嫁は恋を知る 黄金の都を受け継ぐ姫

そして花嫁は恋を知る 黄金の都を受け継ぐ姫 (コバルト文庫) [文庫] / 小田 菜摘 (著)...
そして花嫁は恋を知る 黄金の都を受け継ぐ姫 (コバルト文庫) [文庫] / 小田 菜摘 (著); 椎名 咲月 (イラスト); 集英社 (刊)

ついに母帝エウノミアが主役として登場ですよ。シリーズでこれまでにヒロインとなったエリスセレナ、アンナマリア、プシュケの三人の母親であり、時に周囲の情勢等で左右されながらも娘たちのことをしっかり理解しそれぞれふさわしい嫁ぎ先の国へと送り出していったことから、仲人してもなかなかの目利きであり、総じていいお母さんという印象でした。しかし、少女時代はやはり年齢相応というか、立派にラブロマンスのヒロインしてますね。そしてなんといってもこの表紙のイラストが素晴らしい。賢母帝という印象だったエウノミアが、その印象にそぐわしい凛々しさを感じさせながらも少女らしい可愛さをたっぷりと含んだこの姿といったら。エウノミアたんとお呼びしてもよろしいでしょうか?

それはともかく、これまでの巻では、何代か続いた軍人皇帝による武力拡張路線の時代と一線を画し、婚姻外交を推し進めて平和裏にブラーナ帝国の勢威を広めた賢帝という感じの紹介をされていたと思うのですが、婚姻外交政策への転換にはエウノミアが女性であるから以上の理由があったのですね。言われてみれば、対外膨張政策を何代にもわたって続けていては、国の財政をとっても国民の生活をとっても疲弊が積み重なっていくばかり。とはいえそれに気付いても、こちらから折れてしまっては帝国の威信に関わる事態になってしまう。押すに押し切れず引くにも引けずというまさに泥沼の状態に突入していたわけですね。父帝が頭を悩ませつつも決を下せずにいたこの問題に停戦の方向性を明確に打ち出したのが、その一人娘のエウノミアであったと。なるほどなるほど。

もちろんそれだけですんなりと国内の諸勢力をまとめきれたとも思いませんが、その点、リフィニクスとエウノミアはいいパートナーだったと思います。リフィニクスは疑問を引き出し、引き出した疑問に対して回答の選択肢を示すのに長けていて、エウノミアはその選択肢の中から一つを選んで悔やむということがない。そんな印象を受けた二人ですが、これはそれぞれが学者と皇女という立場にあったからでしょうか。いずれにせよ、二人で力を合わせて乗り切っていったのでしょうね。それはまた別の話になるのですが、やっぱり気になるところではありますね。

表題作は『黄金の都を受け継ぐ姫』ですが、他に『緑の森からきた王女』という話も収録されてました。というか、ページ数的にもこちらのほうが1.5倍くらいありましたね。がっつりエウノミアのお話を期待していたのでちょっと残念な気もしましたが、こちらもこちらで面白いのでそんな不満もなんのその。

こちらの話はどこの世代に当たるかというと、作中ではラストになるまで明かされないのですが、わかってみるとこれがエウノミアのすぐ上の世代。つまり父帝ラスカレオスとその妃のお話なんですね。ブラーナは軍人皇帝時代であり隣りのゲオルグが王国となっていたので、大雑把な当たりはすぐにつけれたのですが、まさかそんなに近い時代だったとは。そこでびっくりさせられたわけですが、あとがきでもちょっと触れられてたことから何の気なしに表題作の方を読み返してみたら……。時の流れを思わされますね。

表題作でも継戦を訴える強い調子の声と停戦を求める声なき声の間で頭を悩ませていたラスカレオスですが、皇太子時代からすでに両者の葛藤を心の中に抱えていたんですね。普段は温和な好青年なんですが、アマリエがちょっときわどいところに触れたら途端に声を荒げたりするところなんかは正直ちょっとこわかったり。けど、レオンって、瞬間的にはむきになっても、その感情をまったくといっていいほどに引きずらないんだよなあ。どういう精神構造をしてるんだろうか。反発する自分と肯定する自分と、ここでも相互に葛藤する気持ちを抱えてたからでしょうか。謎です。

と、ここまで書いた後でぱらぱらと『緑の森を拓く姫』をめくってみたら、エリスセレナの祖母についての記述がしっかりありましたね。読んで1カ月も経ってないのにもう記憶から抜け落ちていたとは……。不覚。

これで終わりかと思いきや、まだありました。『はれの日の夜』というSS。久々のエリスセレナ登場でその初夜のお話。分量的にはあっさりしたものですが、いかにもそんな場面が想像できてしまうのが面白いところ。

そんなこんなで、終わってみれば、3世代にわたるヒロインが登場しており、これまで以上に作中世界の時間の経過というものを意識させられる一冊でした。さて、次はいつの時代のお話なんでしょう。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 16:17| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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