2013年01月28日

境界線上のホライゾン(4)下

境界線上のホライゾン4〈下〉―GENESISシリーズ (電撃文庫) [文庫] / 川上 稔 (...
境界線上のホライゾン4〈下〉―GENESISシリーズ (電撃文庫) [文庫] / 川上 稔 (著); さとやす (TENKY) (イラスト); アスキー・メディアワークス (刊)

上巻からこっち、ウルキアガの外堀が埋められてってると思っていたら、むしろ追い込められてたのは成実の方でしたよ。なんという落としぶり。伊達家中からの御膳立てもあったとはいえ、狙いすまして見事ものにしてのけるとはこのウキー、できる! それにしてもこの作者は相変わらずカップルのいい空気描き出してくれますわ。中巻までも姉キャラ馬鹿なウルキアガと「冷静女?」の「?」な部分がよく出た二人の掛け合いには十分楽しませてもらってましたけど、この巻は二人の関係がさらに深まってくからもうやばい。二人の相対戦が始まる場面以降めちゃくちゃいい空気漂わせっぱなしでしたね。それまではなんとか顔に出そうになるニヤけを噛み殺しながらよんでましたが、それ以降は外で読むとか危険すぎる(挿絵的な意味でも)。成実って、登場当初から、青竜の問題に絡む政宗の問題に対する自責の念やすぐ先に待つ伊達家出奔の聖譜記述に絡む伊達家中への負い目などから、クールに振る舞いつつもどこかネガティブな心の内を感じさせるキャラではありましたよね。ウルキアガの果たした役割としては、その自責と別れによる陰りを祓(はら)い幸いな旅立ちの道に引き込んでみせたというところでしょうか。まあ本人からしてみれば、好きになった人を手に入れてきただけのつもりなのかもしれませんけど。そして最終章。ウルキアガ本気で成実のこと好きなんだなあと気付かされて、ちょっとうるっとくるものがありました。途中のやや強引な姉属性タグ付けは、やっぱりウルキアガは馬鹿だなあなんて思ってましたけど、その場面読んだらもう本気で馬鹿だなあとしか思えませんでした。うん、これだけだと何言ってるかわかんないね。既読者ならわかってくれると思います。とにかく、二人歩みだした道に多くの幸いのあらんことを、と願ってやまないところです(ということを思うのもすでにシリーズ何組目だろうか)。

上越露西亜との交渉で荒事になりかけた際、本国英国のことを持ち出して駆け引きの材料にして上越露西亜側を牽制するメアリにはちょっと驚かされた。けど、3巻以降は世間知らずキャラが定着してきてるイメージがあったとはいえ、それ以前を思い出してみれば、そもそもが王族どころか元女王で、傷跡が象徴するように自らの統治下で奪った命を弔ってたり英国のために自分の魂を捧げようとまでしてた人でしたよね。点蔵との幸せライフの方に意識を割いてることが多いというだけで、政治的な感覚を失ってしまうことはありませんか。後の対P.A.Oda戦にも英国は援軍を派遣してたりと、妹である妖精女王とは聖譜記述の系図上は敵対関係とはいえこの(金髪巨乳)姉妹の絆をしっかり感じさせてくれていいですな。まあ援軍については政治的な利害判断によるところの方が大きいんでしょうけど、それを言っちゃあ興が醒めるってもんでして。というか、ここでそういえばメアリって実は姉キャラでもあるんだよなということに気付いたり。

最上・義光。このキャラはこれまで登場してきた各国首脳部の中では普段からSっ気というか冷徹さめいたものを感じさせる人ではありますが、このキャラほど外交交渉にあたってウェットな感情を前面に出してきた人は初めてじゃないだろうか。それは駒姫の自害に端を発するもののようですが、このキャラのセリフからは理屈よりも感情的な折り合いを着かなければ妥結はありえないとまで思っているかのような胸の内が窺えて。理や利で協力を取り付けることができたこれまでと比べて一番厄介な交渉相手だったんじゃないかなーと思えたり(大久保もこんな傾向がありましたが、こちらはさらに深く根差していたと言えそうで)。最上の場合は上越露西亜や伊達と違って、王の肩にのしかかるおもりを肩代わりしたるともに支えてやろうとしたりするような役職者もいないようですし、なおさらぐるぐると深いところにはまってしまったりもするのでしょうか。ずけずけ物が言える鮭延がいるとストレスが軽くなってよさそうではありますが。そんな義光相手の突破口となったのがペタ子こと里見・義康というのは、ある意味納得というか。こちらも姉や兄のようだった者を突然亡くし、それになぜと問いを続けてきたキャラでしたからね。義光にとっても知らぬ仲ではないだけに、裏表のない彼女からの提案にはこみあげてくるものがあるんでしょうねえ。そして、悲運な自害を遂げた駒姫も無事、かつての約束通りの幸いを得て親元を旅立っていった。それを見届け、残った最上の家の終わりを見据えて武蔵への協力を決める。その義光の心の一連の流れに、実は成実に並ぶこの巻のキーパーソンだったんじゃないかと思うのです。そしてラストのイラストは、最初見た時誰かわかりませんでしたけど、たぶん義姫ですよね。角ありますし。手のかかる子供たちの問題が片付きそれぞれ親元を巣立っていったことで、ちょっぴり肩の荷が下りた母親同士の久しぶりの再会といったところでしょうか。羽柴による関東制圧以来、それほど長くないとはいえ、ままならない情勢を前に相当な緊張を強いられてましたからね。色々と積もる話もあるんじゃないかなあと想像してみるのも楽しそうですね。

そんなわけで、1巻を彷彿とさせるような生徒総会での正純の演説と馬鹿のトーリによる大見栄で完全再起を果たした武蔵勢。成実関連の流れでも窺えたように、末世を迎えようとする世界を背景にネガティブな事象がネガティブな気分を生みそれがネガティブな希望をもたらし、というネガな連鎖のすべてを幸いの道で覆い尽くしていこうとする底抜けのポジティブな気質に心浮き立たされます。そんな武蔵のメンバーが戻ってきたんだなあと感じられる一冊でした。トーリの大見栄も1巻同様、絵空事のような大見栄でありながら、心の底からできると信じてるからこそ出てくる自然な言葉であり。またそこにここ数カ月の経験からくる変化や不変が感じられていいなあといいますか。武蔵一同のもともとのポテンシャルもあり既にP.A.Oda組を凌ぐ勢いになってるんじゃないかと思えたりもしますが、これで押し切られてしまうような相手ではないでしょう。日本史的にも織田信長から羽柴秀吉にかけての時代ですし、世界史的にも聖連を押さえてるのである程度は無理が利きますし。なによりあれほどいいキャラ揃いの勢力、まだまだ別方面で盛り返してくることでしょう。今回は柴田組と丹羽が中心でしたが、未登場の十本槍も多い羽柴組や滝川との対戦もまた期待したいところですね。

その他、いいなあと思ったところをちょいちょいと触れていくとするなら、まず賢姉マジ強えってことでしょうか。1巻の対二代戦でわかってたつもりでしたけど、スランプ中とはいえ二代をいいように振り回して稽古つけてやったりとか、本当に武人じゃないんですかとツッコミたくなるレベルですよ。舞の上達に体捌きの心得は重要ということなんでしょうけど、舞踊のためってレベル超えてませんか? まあそんな一般人離れした賢姉様マジ最高ということで。

最上組で局所的に盛り上がってた食玩カード。難読武将がレア度高くなるっていうんだったら読みの確定してない武将ってどうなるうだろうか(そもそもそんな武将いるっけという疑問はさておき)。これまで作中登場した中では、改名後の名前での登場でしたが「戸次鑑連」の読みが一番難しそうかなというところですが。

信長の襲名が8年前ということは、P.A.Odaの伸長はここ最近急激に進んでいるということになるのかな。十年以上前からじっくり準備を進めてじわじわ拡大してきたイメージがあったのでちょっと意外というか。もしかして信長総長って実は結構若いという可能性も?

上越露西亜絡みで。イヴァン4世死亡後のロシアの動乱時代は、あれはあれで面白そうなんですよね。Wikipedia見てるだけでも偽ドミトリー1世・2世・3世なんていう、なんじゃそりゃとつっこみたくなるような人もいたりしたみたいで、そのうちもうちょっと調べてみたいなーという気もしています。

森・長可視点で進むと直政が本当に魅力的に見えてくるから困る。いや、むしろいい線行ってるという賢姉の言葉に同意したいくらいではあるものの、その、恋する少年フィルターっていいですなぁ……ということで。

立花夫妻のゾーンは他の組と比べて他人が立ち入れない度が高くてやばい。生真面目カップルは真顔で殺し文句級のアモーレ告げ合いまくるものだから破壊力が凄まじいことになっておる……。

あと、機関部長とか伊佐とか穴山とかもいいキャラしてたなあということで。

ついでながら、成立組以外で地味に気になるペアとしてチャットネーム百合花とふわあがいるんですがどうなんでしょうね?


posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 20:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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