2012年07月27日

永遠の曠野  芙蓉千里 V

永遠の曠野 芙蓉千里III [単行本] / 須賀 しのぶ (著); 角川書店(角川グループパ...
永遠の曠野  芙蓉千里III [単行本] / 須賀 しのぶ (著); 角川書店(角川グループパブリッシング) (刊)

●心の拠り所を求めたフミの魂の冒険、ここに完結。

1巻の帯で見た「冒険」という言葉は、この作品には合っていないのではないかと思っていたのだけど、改めて振り返ってみるととてもふさわしい言葉に思える。親に置いていかれ身寄りのなくなった窮状から身一つで大陸に渡って女郎を志したり、芸妓として比類なき名声を得たと思えばこれまた身一つで愛する男のもとに身を寄せたり。こうと決めたらそれまでのすべてをなげうってでも突き進むフミの選択は、冒険という言葉こそがよく似合う。

無謀な挑戦でも、フミならば思いもよらない結末を見せてくれるものと期待していたら、なんだか平凡なところに落ち着いてしまったように思えて、読み終えた直後には拍子抜けした感覚だけが残ってしまった。茫漠たる大陸の荒野を駆け回った末の終着点としてはなんという落差だろうかと。しかし、あとから振り返ってみると、これは「本物の太陽」を探すフミの心の流浪譚だったのだと思い至った。何かを為し遂げた成功譚ではなく、フミという一人の女性が確かな幸せをつかむ物語。芸妓としての名声を高めても、一世一代の舞をしてのけたら、その後にまで観衆の期待に応え続けることは不可能となった。不幸まで共有するつもりで愛する男のもとに走ってみても、野心に燃える男はいつだってフミだけを見てはくれなかった。そうした満たされきらない思いの果てに、フミは確かなものを手に入れたのだ。一見こじんまりとまとまったようにも思えるが、それまでの波瀾万丈があったがゆえに、その平凡さが掛け替えのないものに見えてくる。そう、平凡な幸せにも、それを手に入れるまでには思いもよらないドラマがあったりするのだ。


posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 20:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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