2012年07月04日

神の棘 U

神の棘 2 (ハヤカワ・ミステリワールド) [単行本] / 須賀 しのぶ (著); 早川書房 (刊)
神の棘 2 (ハヤカワ・ミステリワールド) [単行本] / 須賀 しのぶ (著); 早川書房 (刊)

●ナチス・ドイツ時代――弾圧と、それでもやまぬ信仰と

作者のインタビュー記事に目を通してから読むと、なるほどと思わされる作品でした。

神を棄てた男と神の救いに己を捧げ続けた男。二人の視点を通して描き出される信仰の姿がとても印象的でした。日本では馴染みの薄い問題ではありますが、信仰とはここまで深く人々の生活や心の奥深くまで根差すものなんだなぁと。また、神を信じるがゆえに二転三転して見えるアルベルトの捉えがたい態度に戸惑うマティアスと、神を信じないがゆえに時に愚かしく見えるも前途に何度となく現れるマティアスを疎ましがるアルベルト。アルベルトがマティアスを陥れる形での再会となったかつての幼馴染み二人。彼らがかたや憎み、かたや疎ましがり、互いに理解しあえないようでありながら、それでも何度となく邂逅を果たすうちに、強く意識しあっていったのは、かつての同郷人でありながらかなり対照的な人生を歩むことになったがゆえなのかなあ。アルベルトの方は、普段マティアスを意識してた描写は薄かったようにも思うけど、最後まで読むと、そうだったんじゃないかと思えた。なんにせよ、互いにこうありたいという理想を確かに見据え、そこに至らない己の未熟を知るがゆえに、己にないものを持つ互いを意識せずにはいられなかったのではないか。

「神は自ら助けるものを助く」「神が人に大任を与えるとき、まずその者に苦難を与える」というような言葉があった気がしますが、償いの気持ちから神の道に没頭しだしたマティアスも、順調だった人生に狂いが生じたアルベルトも、戦争が泥沼化していく中でそれぞれの苦悩を抱え込んでいった。彼らが試練の中で下した決断は、作中で賛も否もあったわけですが、その迷いを知る身にとっては、糾弾しえないほどに尊い意志の為せる業だったと思うのです。
posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 22:04| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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