2012年06月25日

芙蓉千里

芙蓉千里 [単行本] / 須賀 しのぶ (著); 角川書店(角川グループパブリッシング) (刊)
芙蓉千里 [単行本] / 須賀 しのぶ (著); 角川書店(角川グループパブリッシング) (刊)

●20世紀初頭のハルビンにて、女の道を往き進む少女の奮闘を見よ!

育て親に置いていかれ、伝え聞いた花魁の娘という素性をよすがに、大陸はハルビンにたどり着いた少女フミ。大陸一の女郎になるんだと息巻くこの女の子の小気味いいこと。ともすれば女の地獄として、ともに連れられてきた当初のタエのように希望も持てず不安に押し潰されてしまいそうな娼館で、どでかい夢を掲げてみせる底抜けの明るさと意志の強さにまず目を引かれた。この子がどこまで伸びていくのか見てみたい、と。

でもそれだけじゃなかった。フミが人気になっていく様子は読んでいるこちらまで嬉しくなってくるようなものがあったけど、フミ以外の女郎さんたちもまたドラマを見せてくれる人たちばかりなんだこれが。女郎になるのが嫌で嫌でたまらなかったが、フミと夢を交換し女郎としての階段を登り詰めていくタエ。女の盛りをすぎて容姿は衰えていくばかりとなりながらもその手管で客を魅了する名女郎で、フミにとっても皮肉げな口調で女郎の業や誇りを身に染みるように教えこんでくれる千代。物静かでしっとりと薫るような美しさでありながら、内に秘める情念によって女郎の来歴というものを思わせる蘭。娘子軍として身一つで大陸に渡って娼館を始め、立地や情勢に苦しまされながらも立派に切り盛りしている女将。フミとの会瀬を楽しみながらも大陸浪人としての野心を忘れず両者を天秤にかける山村。舞手としてのフミにほれ込み旦那として名乗りを挙げながらも決して女としては愛さない黒谷。一人一人のキャラがその生い立ちや内面を感じさせてとても生き生きとして見える。読んでいる間に自然とその世界に入りこんだような気分になっていた。

そんなキャラクターたちのなかで主役を張ることになるフミだけど、埋もれてしまうことはなく、むしろ一番エネルギッシュに魅力的な彩りを放っているのは彼女だ。女郎を目指していたはずが、見よう見まねで覚えていた舞の才能を見いだされたことから芸妓としてデビューすることとなり、大陸には珍しい本格的な芸妓として名を馳せていく。その過程で、短気を起こして何度も失敗したり、やっと旦那がついたと思ったらその男にも啖呵を切ってみせたり(読者としては思わず快哉を叫んだ)、かと思えば初恋の人への慕情に泣き濡れたり、再会を果たすとそれまでの離れていた時間を埋めるように愛を交わし合ったり。そのときその時を精一杯生きてるのが伝わってきて、こちらまで元気をもらえるような人なんですよね。その真剣さを見ていると、行く末も期待したくなるというか。

ともかく、とてもいい話を楽しませてもらいました。でも実はこれまだ一巻なんですよね。一巻からここまで楽しめたのは久しぶりかもしれません。二巻ではどんな展開になっているのか、とても楽しみです。


posted by 青山尚之(あおやまたかゆき) at 19:47| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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