![復活の地〈3〉 (ハヤカワ文庫JA) [文庫] / 小川 一水 (著); 早川書房 (刊) 復活の地〈3〉 (ハヤカワ文庫JA) [文庫] / 小川 一水 (著); 早川書房 (刊)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51SHC77MYAL._SL160_.jpg)
災害復興とロマンス。二つの面からいい話でした。
はじめはお役所仕事としての災害復興にばかり注目してたけど、人の情が通いだすとこれほど劇的な話になるのだなぁ。そうだ。いくらノウハウがあって頭が回っても、一人でできることには限りがある。都市に住まう一人一人の住民が自発的に動き始めたとき、信じられないほどの巨大なエネルギーが生まれるのだ。そこにたどり着くまでは、官僚や政治家の勢力を味方に取り込むという手もあったが、それではいけない。それでは上から復興を押し付ける権力と、下で不平をこぼしつつも従わざるをえない住民に分かれてしまい、復興は遅々としておぼつかなくなっていただろう。また、星外勢力の介入を防ぐことも難しかっただろう。政府や官公庁だけでなく住民たちもが災害に立ち向かう当事者となったことで生じた気運が、災害に負けるものかという意志が、くず折れるたびさらに強くなって再生する都市の力強さや人間社会のしぶとさというものを見せてくれたと思います。
途方もない被害に恐れ慄くなか、自分も被災したが誰かの助けになることはできると奔走する人々のなんと力強かったことか。そして、死なせたくない人がいると懸命になる人々の姿にどれほど心震わされたか。特に心通じ合ってからのセイオとスミルの関係はすごくよかった。互いの考えていることが見通せる信頼感、相手のことが心配でも公人として一個人を優先させるわけにもいかないもどかしさ。それらを我が事のように読み入ってしまった。それだけにセイオがスミルを助け出した場面では叫び出したいような感情があとからあとから溢れてきた。そしてエピローグは、もう最高。文句のつけようもない素晴らしいロマンスでした。個人的な話ですが、最近、恋愛至上主義に飽きがきてて、恋愛感情というものを低く見ていたのだけど、この作品を読んでやはりいいものだと認識を新たにさせられました。そういう意味でも今この時期に読めてよかったと思います。